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ひろの東本西走!?

読書、音楽、映画、建築、まち歩き、ランニング、山歩き、サッカー、グルメ? など好きなことがいっぱい!

蒼龍(山本一力)

2005-02-25 22:28:00 | 17:や行の作家
souryuu-1蒼龍(山本一力)
★★★★☆:90点

「あかね空」で直木賞を受賞した山本作品を久々に読みました。
極上の味わいの中編集で、山本ワールドを堪能。

個人的には「のぼりうなぎ」「菜の花かんざし」「長い串」の3編が良かったです。中でも「のぼりうなぎ」に一番感銘を受けました。物語としては予定調和的な甘さがあるのかもしれませんが、私はこの世界を高く買いますね。

弥助の真摯な態度・覚悟・努力良し。柾之助の景気づけ、その心意気良し。久右衛門の人を見る目・人を信じる心良し。膳吉・こまりの親娘良し。商売がたきでありながら急場に救いの手を差し伸べる木下屋・柏原銘木良し。かつえ・松吉も素晴らしい。
どんな苦労・嫌なことがあっても我慢する、たとえ不得手と思われることでもやり方を工夫する・努力する、人に接する真摯な態度は決して変えない、何があっても自分の良いところは信じる・・・。
これらを続けていれば必ず道は開けるということでしょうか。
中編小説なのですが、人と人の在り方や心の持ち方など大切なことを改めて教えてもらいました。素晴らしい作品です。

「菜の花かんざし」 武士としての矜持、夫婦・親子の情愛が丁寧に描かれていました。
「長い串」 ラスト近くの掛川藩江戸留守居役・甲斐伊織の恩返しに涙。
この2編についても書き出せばきりがないのですが・・・。

オール讀物新人賞を受賞した「蒼龍」。荒削りな直球の魅力があるのかもしれませんが、私としては後年の熟達した作品にひかれました。ただし、題材としては非常に面白いと思いました。

「あかね空」と並び、本書も最上クラスにランクインです。








影踏み(横山秀夫)

2005-02-21 19:00:00 | 17:や行の作家
kagehumi-1影踏み(詳伝社)

”ノビカベ”ことノビ師の真壁修一が全編の主人公。全7編の各編ごとに短いエピソードが完結しながらストーリーが展開していく。

内耳に住みついた(?)亡き双子の弟・啓二との会話が不思議な雰囲気を醸し出す。一種の二重人格ものともとれますね。
数字の記憶に抜群の才能を示す啓二が重要な役割を演じていましたが、横山作品としては異色の描き方か。
様々な出来事・事件にはさりげなく伏線が張られていましたが、読んでいる途中は殆ど気づかずじまいでした。
天才的なカンでそれに気づく真壁には完敗。

全体としての評価は”まずまずかな?”と思いましたが、恋人の保母・安西久子はなかなか魅力的でgood。



真相(横山秀夫)

2005-02-17 21:54:16 | 17:や行の作家
sinsou-1真相(双葉社)
★★☆:50点

横山秀夫、どうした!?
2002年頃初出の作品集なので、今頃どうしたと書くのもおかしいのですが、こう書かずにはおれません。
とても「陰の季節」「動機」「第三の時効」「クライマーズ・ハイ」といった傑作群を書いた作家の作品とは思えなかったです。
警察組織内部を描いた作品だけが素晴らしいのではないことは、新聞社を題材にした「クライマーズ・ハイ」でも分かっているのですが・・・。
人物描写は平凡だし、横山作品独特の熱気も全然感じられず。
題材的にも何か気分が悪くなるようなものが多くて、全く感情移入できずじまいでした。
何じゃこれはと思いながら通勤の電車内で1日で読み終えてしまった。。。

謎解き的なところにほんの僅か見所があったくらいで、全5編中、表題作のみが合格ラインギイギリでしょうか?
これまで「深追い」を最下位にランキングしていたのですが、本作は更にその下ですね。グスンです。

で・す・が!
傑作群は綺羅星のごとく輝いていますし、私にとっての打率は4割を超えていますので、次の作品に期待します!


第三の時効(横山秀夫)

2005-02-08 14:22:00 | 17:や行の作家

daisannojikou-1第三の時効(集英社)
★★★★☆:90点

最近2週間で「半落ち」「顔-FACE」「深追い」「第三の時効」と横山作品を集中して読みましたが、「第三の時効」が断然良かったです。順位をつけるとすると、第三の時効>半落ち>顔>深追い でしょうか。

全6編の中では、「第三の時効」と「密室の抜け穴」が良いと思いました。特に、「第三の時効」は凄かったです。二班の班長・"冷血"楠見、恐怖の実況中継。そして真犯人に放つ3つの言葉。並み居る刑事たちの戦慄。凄すぎる。。。
「密室の抜け穴」で三班の班長・村瀬がしかけた罠も見事。
”青鬼”朽木は、正当派な分、彼ら二人に比べるとやや部が悪かったかな?
こんな部下を率いる課長・田畑の微妙な気持ちもうまく描かれていました。

一班と三班は反目しているようで、ときに情報を交換したりする。
それらもベタベタしない乾いた感じが好ましかったです。

参考ブログ:あさひなさんの”きょうのできごと” (5/4追加)
        ざれこさんの”本を読む女。改訂版”  (5/20追加)


深追い(横山秀夫)

2005-02-03 23:28:42 | 17:や行の作家
hukaoi-1深追い(実業之日本社)

読んでいて、あれっ?横山秀夫らしくないなと思ってしまいました。
警察組織内部の描写が少なかったからでしょうか。
それで評価されるのは著者の本意ではないでしょうが、あの独特の雰囲気がないと何となく寂しいもので。
全体的にやや物足りない感じは否めませんでしたね。

中では、退職する警察官の再就職先あっせんをテーマとした「訳あり」が一番良いと思いました。
県警本部への未練、自分を飛ばした本部警務課長に対する意地。
ラストの巡査長・鈴木との電話での会話は味わいがありました。
”滝沢は構わず腹の底から笑った。” very good!

他では表題作の「深追い」と「仕返し」を評価します。

今読んでいる「第三の時効」は”らしさ”が出ていて、いい感じです。
ムードたっぷり、読み応え十分!