goo blog サービス終了のお知らせ 

ひろの東本西走!?

読書、音楽、映画、建築、まち歩き、ランニング、山歩き、サッカー、グルメ? など好きなことがいっぱい!

臨場(横山秀夫)

2005-05-10 11:00:00 | 17:や行の作家

rinjou臨場(光文社)
★★★☆:70点

最近、横山作品の評価は低めなのですが、本作もまずまずですか。
読了したのが少し前かつ読み方が分散したこともあって細かな内容をかなり忘れてしまっていました。
が、後述の紅蓮魔さんのブログに細かな記載があって、思い出すのにとても役立ちました。
紅蓮魔さん、ありがとうございました。

終身検視官:倉石、52才。上司の命令など平気ではね除け、我が道を行く強烈なキャラクターが凄いです。
細身で長身孤影の古武士といったところでしょうか。
しこりのように凝り固まった職人気質とやくざな物言い。俳優で言えば誰がふさわしいんだろう? 全然思いつきませんでした。

謎解きには、うーんやられたと思うもの(「赤い名刺」)と、そんなの分かる訳がないと思うもの、玉石混淆でしたね。他の人間とは全く違った結論を導き出す倉石の観察力・洞察力・推理力には舌を巻きましたが。
全8編の中では「赤い名刺」「餞」「真夜中の調書」が印象的でした。

倉石はかなり重い病を持っているようですし、意外に部下思いや人情家の面もあるようで、そこに少~し親しみを覚えました。
”伸ばした二本の指でこめかみの辺りを擦る”ようなさりげない敬礼や倉石学校を卒業してゆく一ノ瀬に、「銀座で飲むときは電話をよこせ。毎晩ド田舎のバーじゃ内蔵が腐っちまうからな」
ぶっきらぼうな送る言葉がgood!
「ぺえぺえの小娘じゃねえか。五年十年イロ磨いてから出直してこい」「キャア、嬉しい!」
この小坂留美との掛け合いシーンにはにんまり。

◎参考ブログ:

  ウッドストック1979(紅蓮魔さん)
  日だまりで読書(そらさん)2009-4-25追加


はぐれ牡丹(山本一力)

2005-05-09 20:45:00 | 17:や行の作家
hagurebotanはぐれ牡丹(角川春樹事務所)
★★★☆~★★★★’:70点~75点

私自身、5冊目の山本作品です。
これまでに浸ってきた山本ワールドとはちょっと雰囲気が異なっていました。

大店の跡取り娘でありながら、好きな人と一緒になるために家を捨て、股引をはいて野菜の棒手振りまでやってしまう主人公の一乃。元気で明るく、考えついたら即行動するおきゃんな妻・一乃は新キャラでした。夫・鉄幹とのやりとりも面白く、夫婦漫才といった雰囲気も。
全体的には良い意味で明るくライト感覚、言い換えればやや深みに乏しかったでしょうか。
非常に読みやすく、あっという間(2時間半くらい)に読み終えてしまいましたが、個人的にはもうちょっとゆったりとした”しみじみ系”が好きですね(^_^)
好きなシーンを一行一行かみしめるようにして読むのが山本ワールドでの至福の時間ですし・・・。

物語の序盤、墓前で夫が小紋柄を着た女と並んでひざまずいているのを見て涙をこぼした一乃。
おおっ、山本ワールドの始まり始まりと期待したのですが・・・。
分厚くなっても良いから、もう少し各登場人物について書き込んで欲しかったなあというのが本音です。
それと人情物などの場合、悪役・敵役・憎まれ役に凄い奴がいるとぐっと盛り上がるのですが、その点でも平兵衛や寅吉は物足りなかったです。もっともっと悪い奴らでないとね。
花火職人・松次郎はgood!
季節はずれの花火を見つめていたお加寿も良かったです。

まあ今回は、一力さんがこのようなタッチの小説も書けるということで良い方に評価しましょう。
直木賞作家にえらそうなことは言えないのですが(^_^;
でも80点はつけづらいな。

そうそう、贋金作りの話は「損料屋喜八郎始末控え」にも出てきたはずです。
内容的にも似通った箇所があり、多少気になりました。





損料屋喜八郎始末控え(山本一力)

2005-04-09 23:33:00 | 17:や行の作家
sonryouya
損料屋喜八郎始末控え(文藝春秋)
★★★★(☆):85点

山本一力の単行本デビュー作ですか。これも良かったです(^_^)
氏の作品では1つ前に読んだ「大川わたり」(同じく85点)と合わせて、「合わせ技、1本!」でも良いかなと思いました。
最近のお気に入り作家では、若干出来不出来の差が激しい横山秀夫を差し置いて殿堂入りとしましょう。

他の山本作品から考えると、ちょっと珍しい(?)ややクールな喜八郎が主人公。
一代限りの末席同心であったとはいえ元は武士。腕も立つなら弁も立つ。頭の回転も抜群で悪い奴らに立ち向かう。
28才、かすれ声で、細面の両目は深くくぼんでいるとの主人公像。俳優でいえば誰かな?と考えたのですが、ちょっと思い浮かびませんでした。
寡黙な分、喜八郎の心情がつかみきれないもどかしさはありましたが、さすがは山本一力、たっぷり読ませてくれます。江戸屋の女将・秀弥との間に交わされるほのかな恋心もいとよろし。

一応悪役・にくまれ役で登場する伊勢屋、これがなかなか存在感あり。喜八郎や秋山にこてんぱんにやられてばかりですが、なかなかどうして・・・。良いこともするんですよね。伊勢屋と笠倉屋の番頭二人も良い味を出していました。

「いわし祝言」で描かれる清次郎とおゆきの祝言のシーンは感動的でした。

おゆきの白無垢の襟元に陽が当たり、絹の織目がきらきら輝いている。切れ長の瞳が、ときどき清次郎に流れた。相手を愛おしむ目を見せるおゆきに、長屋の住人が吐息を漏らした。

ここに至るまでが色々あって、久々にツーンとしてしまいました。
清次郎に迷惑をかけた伊勢屋からは番頭によって祝い酒の四斗樽が届けられるなど、ホロリとさせられやしたぜ。








看守眼(横山秀夫)

2005-03-18 23:30:00 | 17:や行の作家
kansyugan-1看守眼(新潮社)
★★★☆:70点

最近読んだ横山作品では「真相」「影踏み」よりは上で、まずは合格点といった評価です。
過去の名作群に比べると全然物足りないですが、全打席長打はあり得ないでしょうし、単打でも良しとしましょう。

全6編の中では「静かな家」がベスト。「看守眼」「午前五時の侵入者」が合格レベル。
新聞社内部が題材の「静かな家」。電子編集の描写も興味深く、また、あの「クライマーズ・ハイ」と似た味わいもあって面白かったです。
短編(中編?)なので軽めなのは仕方ないですが、殺人事件の謎解き部分はうまい!と思いました。殺人事件のアリバイ作りに利用されたことに気づくあたりの描写はgood!伏線もきちんと張ってあり、この点も申し分なし。

「看守眼」は、近藤からの「一夜を供にした仲だからな」という照れながらの電話と間際になって送られてきた回想手記が印象的。
「午前五時の侵入者」は、間接部門であっても警察内部が舞台になったときの横山作品は面白いことを再認識しました。

参考ブログ
diary私の思うこと
tetuyaのホームページ




大川わたり(山本一力)

2005-03-14 23:08:00 | 17:や行の作家
ookawawatari-1大川わたり(詳伝社)
★★★★(☆):85点

良かったです。
またまた山本ワールドに浸ってしまいました。
が・・・、感銘度は少し前に読んだ「蒼龍」の方がわずかに上でしたか。「蒼龍」に★★★★☆(90点)をつけたので、マイナス5点としました。但し、素晴らしい作品であり高く評価していることに間違いはありません。

ラスト近くには映画の「スティング」ばりの大ドンデン返しがあり、見事にひっかかってしまいました。その分、爽快感があった反面、ちょっと深み・味わい・しみじみ感に欠けていたような気がしました。惜しい!
また、あえて気になった点をもう一つだけ挙げると、弐吉・新三郎(・与ノ助)などの悪党(敵役)が善人に比べて弱すぎる気がしたことでしょうか。もっと強くふてぶてしい悪党であれば、より面白くなったはずです。

最後は大団円で終わるであろうことは予想していました。しかし、それを予想した上で最後まで一気に読まされてしまう、読ませる作者の筆者は凄いと思います。
「あかね空」「蒼龍」プラス本作品で”お気に入り作家の殿堂”入りも考えたのですが、まだ著作がかなりあるようですし、もう1~2作待ってみたいと思います。