県民投票にふさわしくない県民投票

県民投票にふさわしくない県民投票
沖縄タイムスに「県民投票主権の行使」というジャーナリスト・今井一氏へのインタビューが載っている。
彼は本土で行われた主権のある住民投票と主権のない辺野古移設の賛否を問う県民投票の違いを理解していない。理解していないから県民投票は主権の行使と誤った説明をするのである。
 
「今回の県民投票に一部首長は批判し、関連予算を否決する議会も出ている」ということに今井氏は、
「首長や議員のリコール同様地方自治法にのっとった直接請求権の行使なのに、もし投票させなければ主権行使の機会を奪う前代未聞の暴挙だ。奪われた人々が自治体に訴訟を起こす動きになるだろう」
と述べている。

 今井氏は住民投票の歴史に詳しく、全国初となった1966年の新潟県港町を皮切りに430件以上の住民投票が実施されたと述べている。具体例として、
〇大阪府高石市が堺市と合併を問う住民投票
〇大阪府高石市堺市との合併を問う住民投票
〇滋賀県与那原町の地域合併を問う住民投票
〇ソ連からの離脱を問う国民投票
を挙げている。
 四つの住民・国民投票に共通するのは住民の生活利害に直接関係しているものであることだ。イギリスの国民投票もEUからの離脱を問う英国民の生活に直接関係するものであった。住民投票なら住民の利害、国民投票なら国民の利害を問うものである。同じように県民投票であるなら県民の利害を問うものでなければ県民投票として成立しないと言えるのではないか。
 今井氏は県民投票が県議会で決まったことだけで、首長・議会が県民投票を実施しなければ主権行使を奪う行為であると批判している。今井氏は投票内容を無視して形式的に考えている。今回行われる県民投票は辺野古移設賛成が四分の一以上になっても辺野古移設反対が四分の一以上になっても辺野古移設には全然影響しない。県民投票には最初から住民の主権がない。それが今回の県民投票である。
それに辺野古移設で住民生活に影響するのは宜野湾市民と辺野古地区民である。他の市町村民の生活に影響しない。利害に関係のない県民が辺野古移設の賛否の投票をする資格はないのではないか。 
共産党など左翼は辺野古移設しても県民全体の被害や危険は同じであるという理由で辺野古移設に反対している。辺野古移設しても県民への影響が同じなら辺野古移設に賛成か否かを問う県民投票は無意味である。共産党や左翼の主張からも県民投票をやる必要はないことが分かる。 
住民主権のない県民投票であるから県民投票を実施しなかったからといって住民主権を奪うことにはならない。住民主権のない今回の県民投票のほうが住民主権を奪っている。
国民主権とは民主主義のルールにのっとって住民の利益を優先する政治のことである。しかし、県民投票には県民の利益は関係ない。県民投票として成り立たない。マスコミの世論調査と同じである。
 県が県民投票を実施しない市町村長を訴訟の対象にしないというのは、しないではなく、できないということである。
 
 全国で過去に一度だけ県民投票があり、やったのは沖縄県である。
1996年の日米地位協定の見直し及び基地の整理縮小に関する県民投票である。賛成票48万2,538票で89.09%であったが、県民投票が整理縮小を左右することはなかった。決定権のない県民投票であったのは今回と同じである。前回は県民全体に関することであったが、今回は宜野湾市と辺野古区という一部地域に関する投票であり、前回以上に県民投票にふさわしくない。
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