琉球新報「ひずみの構造」批判 4





沖縄の島ぐるみ運動といえば祖国復帰運動である。「祖国に復帰すれば、核も基地もない豊かな生活ができる」というのが祖国復帰運動のうたい文句であり、祖国復帰運動は同時にアメリカ軍事基地撤去運動であった。軍用地料の値上げを主張するということはアメリカ軍基地を認めるということであり祖国復帰運動とは相容れない。軍用地料の値上げに動いたのは基地容認派の自民党系の組織であり、祖国復帰運動を主張する革新系の組織とは対立関係にあった。

このことから考えると、島洋子さんの説明では軍用地の値上げを主張する島ぐるみ運動と、祖国復帰運動との沖縄には二種類の島ぐるみ運動があったことになる。しかし、軍用地主たちが大規模な集会を持ち島ぐるみ運動をしていた記憶は私にはない。軍用地主は働きもしないのにお金が入ってくる。だから軍用地をもっていない人間から羨ましがられたりねたまれたりしていた。
祖国復帰運動をしている側からは、アメリカ軍に土地を貸すということは戦争に加担していると見られていたし、軍用地主が軍用地料の値上げ運動をしたら、戦争を認めたよくばり人間として非難されていたはずである。だから軍用地主が表だって運動できるはずがなかったし、運動はしなかった。
軍用地の値上げは、現在と同じように土地連の代表者が政府と政治交渉をしたのであって、島洋子さんのいうような島ぐるみ闘争はやっていない。

アメリカ軍による土地接収への反対運動、米兵による殺人、婦女暴行、交通事故などへの抗議運動や犯罪を犯した米兵がアメリカ軍事裁判で無罪なったことへの抗議運動が島ぐるみ闘争として展開されたのであり、祖国復帰運動とドッキングさせることによって大規模な運動と発展していった。そのような祖国復帰・反基地運動に対して、「米軍は商業に打撃となるオフ・リミッツをちらつかせ闘争の沈静化を図った」のであり、軍用地料値上げ運動に対して、オフ・リミッツをちらつかせたなんてあり得ないことだ。笑ってしまう。戦後のたった60年余の歴史であるのにこんなに事実とずれてしまうとは信じられない。

普天間基地の辺野古移設に地元である辺野古は賛成している。辺野古はヘリコプター基地関連の仕事や収入が生じて過疎化にストップができるからだ。しかし、辺野古に基地ができてもなんの収入もない他の地域は辺野古への普天間基地移設に反対している。
基地から恩恵を受ける地域は基地に賛成で、基地からなんの恩恵も受けない地域は基地に反対するというのが沖縄の基地に関する基本構図である。

沖縄の島ぐるみ運動は、祖国復帰、アメリカ軍事基地撤去のスローガンでもりあがったのであり、共産党、社会大衆、公務員、教員、マスコミが主流になって展開されてきた。それは今も同じである。

「中部から人材が輩出されないのは軍用地料がある故、ハングリー精神が失われた」というのは間違っている。中部は軍用地が密集しているために街として発達しにくい。それに比べて那覇は軍用地がすくないだけでなく、県庁、那覇港、那覇空港と経済が発展する条件が揃っている。
環境の違いであって軍用地料は関係ない。そもそも多くの人間は軍用地料をもらっていないのであり、軍用地料をもらっている人間の割合は低いのだ。

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