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板垣氏の理論は、私には理解しにくい理論だ。
若い頃、基調報告をすることになっている川満信一氏の公園を聞いたときがあるし、詩も読んだこともあるが、私には理解しにくかった。理解できないというわけではない。ただ、私は単純な人間で、リンカーンの有名な演説「人民の、人民による、人民のための政治」が理想の政治と思っているし、民主主義社会がいいと思っている。「黒人も白人も黄色人種も赤い血が流れている」とか「日本人である前にひとりの人間である」という単純な考えが私の思想の基本である。私の思想は高校時代の授業で習った民主主義を基本にしている。

板垣氏の理論は複雑で難しい。
板垣氏は、チュニジア、エジプトの革命からはじまった体制変革は欧米が中心を占めてきた「近代世界」をつくり変える21世紀の普遍的な<新しい市民革命>の先駆であると述べている。私にはこの説明が分かりにくい。独裁国家であったチュニジアやエジプトで自由・平等を求めて市民の決起があり、その勢いはあっという間に広がって、独裁者が武力で弾圧することをあきらめて、独裁国家を打倒したと単純に理解すればいいのではないか。エジプトで見られたように宗教中心の革命でなく市民革命だったことも大きな力になった。「欧米が中心を占めてきた「近代世界」をつくり変える21世紀の普遍的な<新しい市民革命>の先駆である」と難しいことを言わないでもいいのではないかと私は思う。

中東の革命を単純に自由・平等・人権を求めた市民革命であるとすれば、このような革命はヨーロッパでも起こっている。中東だけの特別な市民革命であるとはいえない。
ソ連崩壊も市民革命だった。東ドイツ、ポーランドなど社会主義国家から民主主義国家に変革した国々は市民革命であったし、それはチュニジアやエジプトと同じ市民革命だった。

エジプトの市民革命が非暴力・不服従の闘いであったのは結果論であって、もし、大統領が武力制圧をしようとした場合はリビアのように内戦になる恐れもあった。内戦にならなかったのはエジプト軍が中立の立場を取り、アメリカ等のヨーロッパの国々が大統領に圧力をかけたからだ。

板垣氏は「市民が決起する非暴力・不服従の政治革命はこれから世界中で広まっていくだろう」と断言しているが、ソ連が崩壊した後は社会主義国家は次々と民主主義国家に変わった。アジアで独裁国家は中国と北朝鮮だけであり、独裁国家はかなり減少している。すでに民主主義国家になった国では市民革命は起こらない。どうして、「これから世界中で広まっていくだろう」と断言するのか理解できない。次はどこで市民革命が起こるかを具体的に示すべきだ。

「中東は市民社会の元祖だ」は私には意味不明だ。もし、中東が市民社会の元祖であればとっくの昔に中東は民主主義国家になっていたはすだ。
民主主義国家は信教は自由であるし政教分離が基本である。しかし、中東は宗教色が強く、宗教が政治に強く影響を与える。宗教が政治力を持っている中東が市民社会の元祖というのはわけがわからない。イスラム教はスンニ派とシーア派に分かれていて、政治の世界では差別しあう。それなのに「自由・平等・友愛」がイスラムにあるとは信じられない。

イスラエル・パレスチナ問題は非常に難しい問題で、選挙ではハマスが過半数を取ったのにアメリカはハマス政権を認めなかったという差別扱いもあり、アメリカも対応の仕方にも問題がある。しかし、「中東革命が同時発生した真の根源は、パレスチナ問題だ」と言い切る板垣氏の考えは私には理解できない。
中東で起こった革命は市民革命であり、長い間支配し続けた独裁者を打倒して民主主義国家を樹立するのが目的であった。イスラエル・パレスチナ問題とは関係ないと思う。

板垣氏はチュニジア、エジプトの革命は市民が決起した革命だと言い、階級・民族などこれまでのモノサシと違う革命主体は市民であることを強調している。ところがリビアでは、反体制派を自称「反体制派指導部」呼ばわりして、反体制派を市民とは認めていない。理由は反体制派を応援するアメリカやNATOがカダフィ大佐側に空爆を行ったからだ。
稲垣氏はカダフィ大佐側への欧米の攻撃に反対している。そして、欧米が応援した途端にリビアの反体制派を市民と認めていない。マスコミ報道・インターネットで調べれば反体制派が市民であるのははっきりしている。板垣氏が反体制派を市民と認めていないのは事実を無視している。リビアの反体制派を市民と認めない稲垣氏の本性は市民革命主義者ではなく、反欧米主義者であることが分かる。

アメリカは大統領も議員も選挙で選ぶ民主主義国家である。そのアメリカが植民地主義であり、人種主義であり、軍国主義であるとする根拠はどこにあるだろうか。アメリカは多民族国家である。あらゆる人種を受け入れているのがアメリカだ。オバマ大統領は黒人である。アメリカは人種主義ではない。
軍国主義というのは戦前の日本やミャンマーのように軍部が政権を握り政治・経済・国民を支配することである。アメリカは軍隊に対しては完全に国民に選ばれた政府がイニシアチブを握っている。アメリカが軍国主義であるというのは間違っている。

イスラエルは色々問題があるが、しかし、議員は公正な選挙で選ばれる民主主義国家である。民主主義国家のイスラエルでパレスチナ人が決起するとはどういうことなのだろう。市民革命を起こそうするなら、イスラエルはすでに市民革命は終わっている。武力蜂起をするのは弾圧されるに違いない。一体板垣氏は、パレスチナ人が決起するのを具体的にはどのようなイメージをしているのだろう。私はイメージできない。

「超近代的な新市民革命の内面化」「自己決定の全面的開花」「新しい世界を獲得的に開く『万国津梁』にも通じる」
東京大学の名誉教授のような頭がいい人間の言葉は私には分からない。

ただはっきりしているのは、板垣氏はリビアを市民革命ではないというように、自分の都合で市民革命であるかでないかを決め付けるような人間であるということと、関係が薄い中東の市民革命とパレスチナ問題を強引に結びつけるような、主観が強く、客観を無視するような人間であるのは確かだ。
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