呆れる仲井間知事の訪米




 仲井間知事は普天間基地の「県外移設」を米政府に直接訴える目的で渡米した。講演をやったり、有力議員と会談をやって普天間の「県外移設」を直接訴えた。
 会談を終えた知事は「新たな解決策を模索する正しい方向だ」と延べ、会談の成果を語った。新聞の社説も「普天間見直しの道明け」と仲井間知事の訪米の意義を強調している。佐藤優氏は新聞に連載しているウチナー評論で、仲井間知事の講演の全文をHPページで掲載して、アメリカ政府や国連に沖縄が構造的差別と闘っていることを訴えれば、官僚の強硬論を封じ込める効果的手段になると述べている。
 仲井間知事の訪米をマスコミや評論家は新しい展開の原動力になると絶賛である。しかし、仲井間知事が訴えたのは普天間基地の「県外移設」である。「県外移設」というのは、沖縄以外の日本国内に普天間基地を移設することである。仲井間知事はアメリカの有力者に普天間基地の国内移設を訴えたのである。グアムやアメリカ本国に移設するように訴えたわけではない。

 「県外移設」は日本国内の問題であり、アメリカが直接関われるような問題ではない。レビン氏らが嘉手納飛行場への移転を提案したのは、嘉手納飛行場はアメリカ軍が使用していてアメリカが調整できる立場にあるからである。
嘉手納飛行場内はアメリカの管轄になっているから、普天間基地との統合案を提起できるが、「県外移設」はアメリカ軍とは関係のない土地の問題となるからアメリカが口出しすることはできない。口出しすれば内政干渉となる。
 
 日本政府が「県外移設」を決め、アメリカ政府やアメリカ軍にアドバイスを求めるのなら、アメリカが色々提案するのは可能かもしれないが、日本政府が「県外移設」を決めていないのにアメリカ政府が「県外移設」を主張することはできるはずがない。
 普天間基地の移設は橋本元首相が決心したことから始まったのであり、アメリカ政府が日本政府に働きかけたからではない。もしアメリカが日本のアメリカ軍基地について変更したいときは日本政府と交渉するだろう。それも実務者同士の交渉となり、交渉が成立して初めて、予算関係で議員との交渉が始まる。
 仲井間知事がアメリカの有力議員に「県外移設」を訴えたのは的外れであり、なんの効果もない。

 「辺野古移設は不可能」と言ったレビン氏でも、仲井間知事が訴えた「県外移設」は「興味のない問題である。アメリカにとって「県外移設」は日本国内の問題であり、アメリカの国会議員であるレビン氏が関われる問題ではないからだ・

 仲井間知事の訪米は茶番である。
仲井間知事が本気で「県外移設」を目指しているなら、アメリカに行くべきではない。辺野古移設を決定している日本政府に交渉しても仲井間知事と日本政府の主張は平行線にとなり、「県外移設」が受け入れられる可能性はゼロに近い。
 仲井間知事が行く場所は一箇所だけだ。それは普天間基地を受け入れてくれそうな場所である。もし、普天間基地の受け入れを承諾するしてくれる場所があったら、それを根拠にして政府を説得して普天間基地の「県外移設」を実現させればいい。

 「県外移設」が実現しない理由ははっきりしている。普天間基地の移設を受け入れる都道府県がなかったからだ。小泉元首相や鳩山元首相の時に「県外移設」をやろうとした。あの時普天間基地の移設を受け入れてくれる都道府県があれば「県外移設」が実現していた。「県外移設」が実現しなかったのは普天間基地を受け入れてくれる地域がなかったからだ。それは鳩山元首相の時のマスコミ報道で明らかになった。

 沖縄の県知事が「県外移設」を実現するために行動しなければならないのは一通りしかない。国内で普天間基地が移転できる場所を見つけることだ。軍事戦略上、普天間基地の移設できる場所は沖縄からの距離が限定的である。鳩山元首相時代に普天間基地の移設可能な場所は調査済みでもある。だから交渉相手は限られている。
 仲井間知事は移設可能な場所にいき、そこの住民や首長と交渉する以外に「県外移設」を実現する方法はない。仲井間知事だけではない。「県外移設」を主張する沖縄の市町村長や国会議員も、移設可能な場所に出かけ、現地の住民や首長を説得するべきだ。それ以外に「県外移設」を実現する方法はない。
 アメリカに行って「県外移設」を訴えても、それは国内問題だといわれるだけだ。実は仲井間知事がアメリカで行った演説は、米国の外交問題ニューズレター「ネルソン・レポート」で酷評されたらしい、ところが酷評された原因は、仲井間知事の「県外移設」の主張を、在沖米軍基地の即時前面撤去要求と取り違えたからだという。苦笑するしかない話である。
  
 全然効果がない仲井間知事の訪米は、仲井間知事が普天間基地の「県外移設」を真剣に取り組んでいるというパフォーマンスであり、県民へのアピールである。

 仲井間知事だけでなく、市町村長や国会議員は「県外移設」を主張しているのに、政府に要求するだけで、「県外移設」場所を自分で直接探そうとしないのは、普天間基地の移設を受け入れてくれる都道府県がないと認識しているからである。
 実現できない「県外移設」を主張しているのは県民の票を獲得するための選挙用のパフォーマンスである。
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