唐松林の中に小屋を建て、晴れた日には畑を耕し雨の日にはセロを弾いて暮したい、そんな郷秋の気ままな独り言。
郷秋<Gauche>の独り言
ノーベル文学賞と村上春樹
ノーベル文学賞が、日本時間の今夜8時に発表になるようですね。
もう20年以上になるでしょうか、この季節になると村上春樹氏の受賞を願うファン(とそれにつられてマスコミ)が騒ぎ出すようになってから。
私が思うにノーベル文学賞は、所謂純文学作品に与えられるものであり大衆文学や娯楽作品、エンターテインメント、ライトノベルに類する作品の作家におくられるべきではないと。
私が思うに「純文学」とは、読後の読者の人生に何某かの痕跡を残すもの、つまり読者の人生に何某かの影響を与え、それがひいては世の中、つまり社会にも何某かの影響を与える可能性のある文学であること。読んで楽しい、面白いだけの作品は純文学作品とは云いません。
私が思うに村上春樹氏の作品は所謂エンターテインメントです。面白いです。読んでいてどんどん引き込まれていきます。読み終わった時に「あぁ、読み終わっちゃった。もっと読みたいのに」と思いますが、その後には何も残りません。私の人生を変えるような痕跡は何も残しません。もう一度書きます。氏の作品は所謂エンターテインメントであると。
ですから私が思うにエンターテインメント作品作家である村上春樹氏は、そもそもノーベル文学賞の対象外なのです。いや、私は氏の作品を過小評価している訳でも酷評している訳でもないのです。むしろ高く評価しているのです。エンターテインメントとして。
私は氏の作品をたくさん読んでいます。そして読むたびに書評擬きも書いています。ハードカバーの単行本だけではなく出先で読むための文庫本まで揃えてある作品もいくつかあるほどです。嘘だと思うなら
https://blog.goo.ne.jp/gauche7/s/%E6%9D%91%E4%B8%8A%E6%98%A5%E6%A8%B9
をご覧ください。はっきり云って私は、村上春樹作品のファンです。ファンなら氏のノーベル文学賞受賞を願うだろうと思われるかもしれませんが、私は願っても望んでもおりません。先にも記した通り彼はエンターテインメント作品作家ですので、ノーベル文学賞とは最初から住む世界が違うのです、残念ながら。
いや、考えてもみれば残念ではないのです。ノーベル文学賞はまったく別な世界の価値、出来事ですから。村上春樹作品にふさわしいのはノーベル文学賞ではないのです。そうだ、新しい文学賞を作りその賞を氏に贈れば良いのです。世界で最も優れたエンターテインメント作品作家に贈る「村上春樹文学賞」。最初の受賞者はもちろん、村上春樹氏です。
と云う訳で、例によって記事本文とは何の関係もない今日の一枚は、青葉山荘で咲いている秋明菊。
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横浜市青葉区の住宅地の中に残された小さな里山の四季の移ろいを毎週撮影・掲載しているblog「恩田の森Now」に、ただいまは10月6日に撮影した写真を7点掲載いたしております。季節が進み行く森の様子をご覧いただけたら嬉しいです。
https://blog.goo.ne.jp/ondanomori/e/2f8e969b8d33848c530d36cb3cdf9b16
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#ノーベル文学賞 #ノーベル賞文学賞 #村上春樹 # 比喩の天才 #純文学 #大衆文学 #娯楽小説 #エンターテインメント
「街とその不確かな壁」読後感想文(のようなもの)
4月17日と26日に、村上春樹氏の新刊「街とその不確かな壁」について書きましたが26日に書いた通り、ゆっくりゆっくり読んでおりましたがさすがに4月中には読み終わってしまっておりました。
本を読んだら読書感想文。と云うか小学校・中学校の時に、読書感想文を書かなければならずイヤイヤ読んだ方もおられるかもしれませんね。私は自由意志で読みましたが、なんとなく感想を書いてみようかなと云う気分になりましたので以下、感想文(のようなもの)。
小説には珍しく「街と壁」には「あとがき」がついております。そのあとがきに村上氏がこう書いておりました。
「ホルヘ・ルイス・ボルヘス(注)が言ったように、一人の作家が一生にうちに真摯に語ることができる物語は、基本的に数が限られている。我々はその限られた数のモチーフを、手を変え品を変え、様々な形に書き換えていくだけなのだ。ーと言ってしまっていいかもしれない」。
注:ホルヘ・フランシスコ・イシドロ・ルイス・ボルヘス・アセベード(Jorge Francisco Isidoro Luis Borges Acevedo(1899年8月24日 - 1986年6月14日)はアルゼンチン出身の作家。
村上氏の「街と壁」はまさにその通りの作品。氏自身も良くお分かりのようなのだが、ならば何故「街と壁」を書いたのか。氏は「歳を取ってくると、あといくつ長編が書けるかと思う。決着をつけたかった」と語っているようだが、私に云わせれば、「街と壁」は手を変え品を変え捏ねくり回しただけの、まさに蛇足的作品なのである。コロナ禍で他にすることがなかったからなのか、あるいは作家の性でただただ書かないではいられなかったと云うことなのだろうか。
4月26日に書いた通り第一部は1985年の「世界の終わり」そのものであり、第三部はその要約的変奏。長い第二部は新しく書かれたものですが、これはいつもの「村上ワールド」でファンの皆様の期待を裏切りません。好きなものはいつでも何度でも食べたいですよね。お楽しみいただけることとは思いますが、読み終わっても後には何も残らない、氏のいつものエンターテインメント(娯楽的作品)です。
第二部に登場する図書館がある町のモデルが、福島県南会津町であるように読めることから、「ハルキスト」の聖地巡礼で会津が賑わうのではないかと福島県内では盛り上がっているようです。
参考:福島民報の記事 https://www.minpo.jp/news/moredetail/20230414106367
第二部は「私」が図書館長につく場面から始まるのですが、「私」がその面接のため「東京から図書館に向かう際に、東北新幹線を郡山で降り、在来線で会津若松まで行き、ローカル線に乗り換え、山と山との間を縫うように抜けて着いた駅の前には(タクシーが一台もいない)タクシー乗り場と(バス待客が一人もいない)バス乗り場があり、図書館までは歩いて十分ほど」と書かれているのです。会津若松からのローカル線が会津鉄道だとすれば、「私」が降りた駅は(人口一万五千人の)南会津町にある会津田島駅となり、その駅から十分ほどのところにある図書館が第二部の舞台(モデル)なのではいかと云う訳なのですね。
しかし、ここに問題が一つ。東京から南会津町にいくのに、どうして新幹線に乗って郡山に行き、在来線に乗り換えて会津若松まで行かなければならないのか、と云う問題です。
新幹線で郡山、郡山から磐越西線で会津若松、若松から会津鉄道で会津田島まで行くと4時間35分程度、10,740円かかりますが、東京から北千住に行き、そこで東武鉄道の「リバティ会津」に乗車すれば野岩鉄道、会津鉄道を経由し3時間24分、5,683円で会津田島に到着です。どうしても東北新幹線に乗りたい、郡山と会津若松を経由したいと云うならば別ですが、そう云うこだわりがないのであればどう考えても「リバティ会津」利用がお得です。一時間早く着き、電車代はほぼ半額なのですから。
小説ですので必ずしも事実に沿う必要はない訳ですが村上氏が、「私」が館長になる図書館が南会津町にあることを想定(前提に)して書いたのだとすれば新幹線に乗りたい、会津若松を経由したいと云う強い希望があったのか、単に「リバティ会津」を知らなかっただけなのか。図書館のある町までの経路と車窓風景を詳細に描写していますが、それはフツー使うであろう経路ではないだろうと云う突っ込みを入れたくなってしまう訳ですね(若松で途中下車し歴史の街を探訪したいと云うのであれば話は別ですが)。
と云うわけで、読書感想文ではなく「読後いちゃもん文」になってしまいましたが、書いてみました。これから読む、読みたいと云う方もおられるかも知れませんのでネタバレにはならないように一応、気をつけたつもりです。私は、村上作品は少数のあえて読んでいないものを除いてほとんど全て読んでおりますが、ハルキストではありませんので熱烈な信奉者にはお叱りを受けそうなことを書いたかも知れませんが、あくまでも「独り言」ですので気になさらないでいただけましたら嬉しく思う次第です。
【参考】最近書いた「街とその不確かな壁」に関する記事
「街とその不確かな壁」 2023/04/26
https://blog.goo.ne.jp/gauche7/e/c20b46a76ab004e886dc3246f0afc80b
「村上春樹氏の新作? 地図が必要ですね」 2023/04/17
https://blog.goo.ne.jp/gauche7/e/e06ab10b12b51d86a4fef661f097a133
【参考】もう20年近く前のことになりますが村上氏の読むべき作品とその順序について書いておりますので、興味を持たれた方はぜひご覧ください。
「物事には順序ってものがある」 2005/12/12
https://blog.goo.ne.jp/gauche7/e/143cacac50d7e630ec2312972c714ef8
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#村上春樹 #新作? #街とその不確かな壁 #世界の終わりとハードボイルド・ワンダーランド #ハルキスト #聖地巡礼 #大物作家作品の校閲 #校閲したのか?
「街とその不確かな壁」
17日に村上春樹氏の新刊「街とその不確かな壁」が届いたことを、そして読み始めたことを書きましたが昨日、ようやく第一部を読み終え第二部に突入しました(遅読なんです)。集中して読めば一日半あればで読めてしまう分量ですが2,700円(税別)もする本を一日半で読んでしまったのではもったいないのでゆっくり、ちびちび読んでおります(ケチなんです)。もっとも、最近のCDは3,200円くらいしますが(40年前もそのくらいした) 、録音(再生)時間は最大74分(当初規格)と40年前と同じですから本はタイパは悪いけれど、コスパは抜群に良いということになりますね。と云う訳で、昨日ようやく第一部を読み終えて第二部に入りました。
17日に「骨格は1985年の『世界の終わり』そのものです。果たして新作と云えるのかどうか。読み進むにつれて、新作ならでは驚きの展開は、ないんだろうな・・・」。と書きましたが、第一部はその通りでしたが、第二部はまったく新しく書かれたもののようです。なんとなく「海辺のカフカ」の香りがいたしますので驚きはなく、と云うことはいつもの「村上ワールド」です。ファンの皆様、ご安心ください。
なお、「世界の終わり」の僕が「私」に、一角獣が「単角獣」に、門番が「門衛」に変わっていますが、その意図は不明です。
で、第二部を読み始めて、郷秋<Gauche>のふるさと「郡山」の名がいきなり登場したのにはびっくり。内容と感想についてはここではまだ書きませんが、ただ、ちゃんとした校閲を経たのだろうかという疑問が生じたことは書いておく必要があるでしょう。毎年ノーベル文学賞の有力候補となるほどの作家の作品には、校閲者も恐れ多くて「赤」を入れられないということなのでしょうか。でも、有名作家であればあるほど間違いは許されませんから念入りな校閲が必要なはずです。新潮社、しっかりせよ!
郷秋<Gauche>校閲(その1)
p.204 「そのZ**町は会津からさほど遠くないところにあるということだった。」
→「会津」とは福島県の西半分を占める会津地方(旧会津藩領)全体を指す言葉。ですから、この場合には「(会津)若松から」としなければなりません。
郷秋<Gauche>校閲(その2)
p.245 「図書館にはWi-Fi設備などは設置されていなかったから、私が自分のコンピュータにアクセスできるのは自宅に限られていた。」
→自分のコンピュータには好きな時、必要な時にいつでもアクセスできます。「限られる」のは(Wi-Fi等を経由した)インターネットへのアクセスです。
第二部(本書は全655頁の内、半分以上を第二部が占めています)をもう少し読み進んだところでまた感想なり「いちゃもん」を書いてみたいと思いますのでどうぞお楽しみに。
【参考】もう20年近く前のことになりますが村上氏の読むべき作品とその順序について書いておりますので、興味を持たれた方はぜひご覧ください。
「物事には順序ってものがある」
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横浜の住宅地の中に残された小さな里山の四季移ろいを毎週撮影しているblog「恩田の森Now」に、ただいまは4月22日に撮影した写真を7点掲載しております。晩春から初夏へと向かう森の様子をご覧いただけたら嬉しいです。
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#村上春樹 #新作? #街とその不確かな壁 #世界の終わりとハードボイルド・ワンダーランド
村上春樹氏の新作? 地図が必要ですね
右下が「世界の終わりとハードボイルド・ワンダーランド」
に綴じ込まれている「街」の地図。文庫版にも入っております。
村上氏の新作? 「街とその不確かな壁」が届きました。これは、新作なんでしょうかね。まだ第一部のチャプター7までしか読んでおりませんが、骨格は1985年の「世界の終わり」そのものです。骨格だけではなく、壁も門番も「世界の終わり」そのものです。果たして新作と云えるのかどうか。読み進むにつれて、新作ならではの驚きがあることを期待したいと思いますが、驚きの展開は、ないんだろうな・・・。
ところで、オリジナルたる「世界の終わり」(書籍)にあって、今回の「街とその不確かな壁」にないものが一つあります。それは「街」の地図。この地図がないと「街」の成り立ちや様子を理解するのが難しいのではないでしょうか。
村上氏にはハルキストと呼ばれる熱烈なファンがいることは承知しておりますが、まさか「世界の終わり」を読んでいないハルキストはいないでしょうね。だって、「世界の終わり」を読んでいない読者が「街とその不確かな壁」を読んでもその内容を十分に理解することはできないんじゃないかと思うんですよね。他の作家の作品はいざ知らず、村上氏の作品(特に初期作品)には読むべき順番があり、この順序を踏まないと彼の作品を十分に理解し楽しむことができないんです。
もう20年近く前のことになりますが村上氏の読むべき作品とその順序について書いておりますので、興味を持たれた方はぜひご覧ください。
「物事には順序ってものがある」
https://blog.goo.ne.jp/gauche7/e/143cacac50d7e630ec2312972c714ef8
横浜の住宅地の中に残された小さな里山の四季移ろいを毎週撮影しているblog「恩田の森Now」に、ただいまは4月16日に撮影した写真を7点掲載しております。春爛漫となった森の様子をご覧いただけたら嬉しいです。
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#村上春樹 #新作? #街とその不確かな壁 #世界の終わりとハードボイルド・ワンダーランド
【7日間ブックカバーチャレンジ Day:5】
5日目は、村上春樹著 「世界の終わりとハードボイルド・ワンダーランド」 1985年6月15日初版 私の手元にあるのは1988年10 月25日発行の27刷 新潮社
現在は新潮文庫で入手可
Day:3でご覧いただいた遠藤周作の「沈黙」同様、新潮社の「純文学書き下ろし特別作品シリーズ」として刊行されている。小説を純文学作品、大衆文学、ライトノベル、娯楽作品、いやこれはエンターテイメントだなどと分類もしくは格付けする必要はなく、読みたいと思った人が読みたいと思った作品を読めば良いと思うのだが、「純文学書き下ろし特別作品シリーズ」として刊行されたとなると、やはりそのような格付けであるのかと思ってしまうも方がおられるかもしれない。
私は特に村上春樹氏のファンと云うわけではないが、彼の作品はほぼ全て読んでおります。やはり面白いし、実に現代的な小説なので。でも、彼の本質を知るためには全てを読む必要はなくて、「風の歌を聴け」「1973年のピンボール」「羊をめぐる冒険」「ダンス・ダンス・ダンス」そして 「世界の終わりとハードボイルド・ワンダーランド」 を読めば十分です。と云っては熱心なファンに叱られるでしょうか。
私はこれまでにも村上春樹氏については幾度も書いています。検索をかけたところ20件ほどヒットしました。私の彼および彼の作品の評価はこのようなものであると云うことで列記しておきます。Stay at Homeで時間が有り余っておられる方はのぞいてみてください。
同じだ・・・ 2017/03/20
フル・グランド? 2017/03/11
素晴らしき村上春樹ワールド 2017/03/08
世界の終わりとハードボイルドワンダーランド 2017/01/29
村上春樹氏は決してファンを裏切らない 2013/04/12
村上春樹氏の新刊 2013/02/17
村上春樹氏、落選 2012/10/11
村上春樹氏が最有力候補? 2012/10/10
村上春樹氏、原発を語る 2011/06/12
村上春樹氏、落選 2010/10/08
『1Q84』は比喩の見本帳もしくは『水戸黄門』 2010/06/30
1Q84 2010/04/17
村上春樹氏、記者会見に登場 2006/11/12
ノーベル文学賞 2006/10/12
物事には順序ってものがある 2005/12/12
東京奇譚集 2005/10/11
本というよりは、読書について 2005/09/06
#村上春樹 #ハルキスト #世界の終わりとハードボイルド・ワンダーランド
【7日間ブックカバーチャレンジ】については7月17日掲載のblogをご参照ください。
https://blog.goo.ne.jp/gauche7/e/3c77c1e13e3e63c3435ecb30b2d0f499
#7days #7bookcovers #BookCoverChallenge
横浜の住宅地に残された里山の四季の移ろいを毎週撮影し掲載しているblog「恩田の森Now」。ただいまは7月12日に撮影した写真を5点掲載いたしております。梅雨の晴れ間となった森の様子をご覧いだけたら嬉しいです。
村上春樹氏、本年も選外
誤解がないように最初に断っておくが、郷秋<Gauche>は村上春樹作品を読み楽しむことにおいては人後に落ちないと自負している。その上で云えば、村上春樹は、あの賞に相応しい作家であるとは思っていない。もし「比喩文学大賞」なる文学賞があったとすれば、彼こそがその大賞受賞に相応しい作家であるとは思うのでありますが。だってそうでしょう。彼の作品は比喩の百貨店であったり、時代を切り取りそれを放り込んだ万華鏡のようであったりはするけれど、川端康成が書いたどこまでも静謐で美しい、声に出して読んでみたいと思うほどの日本語の域には全く達していない。次に日本人作家がその賞を受けることがあるのだとすれば、川端康成を凌駕する美しい日本語を操る作家でなければならないと、郷秋<Gauche>は思うのであります。
「恩田の森Now」 http://blog.goo.ne.jp/ondanomori に、ただいまは 9月24日に撮影した写真を5点掲載いたしております。稲刈りの時を迎えた森の様子をどうぞご覧ください。
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同じだ・・・
「ある時点から私は新しい音楽をほとんど聴かなくなってしまった。そして気に入っていた古い音楽だけを、何度も繰り返し聴くようになった。本も同じだ。昔読んだ本を何度も繰り返し読んでいる。新しく出版された本にはほとんど興味が持てない(村上春樹の新刊を除いてはと云うことだが)。まるでどこかの時点で時間がぴたりと停止してしまったみたいに。」 村上春樹著『騎士団長殺し 第2部 遷ろうメタファー編』 222頁。
私と同じだ。私って、「騎士団長」の私ではなく郷秋<Gauche>のこと。私も音楽も本も、新しいものにはほとんど手を出さない。お気に入りの古臭い音楽と本を繰り返し聴いて、そして読んでいるのだ。考えてみみれば実に偏屈でつまらない、人に好かれない後ろ向きの性向だ。
そう云えば、村上春樹作品の主人公が「僕」から「私」に変わった。初期の作品はもちろんのこと、近作に至っても彼の作品の主人は常に彼自身であるわけだけれど、さすがに六十代も半ばを過ぎて「僕」では自身との乖離が大きいことに気づいたのだろうか。
しかし、相変わらずの村上春樹ワールドである。以前にも書いたけれど、村上春樹版の「水戸黄門」である。全く期待を裏切らない。「世界の終わりとハードボイルド・ワンダーランド」以降の作品のエッセンス(ピース)を抜き出して並べ、いくつかの新しいピースを加えシャッフルしながら完成させたジグソーパズルである。
それにしても素晴らしい、恐ろしいばかりの才能だ。彼がこれまでに創って来た、彼にしか創ることのできない珠玉のピースを組み合わせて全く新しい、同時にこれまでの彼の全ての作品と相似形でもある物語をつくりあげているのだから。
村上春樹の作品についてはたびたび書いている。blog内検索をしてみたらかなりの数の記事が引っかかって来た。
http://blog.goo.ne.jp/gauche7/e/4e23168813a327fdce9ccf27aec7b77d
この記事以降にも書いているけれど。
例によって記事本文とは何の関係もない今日の一枚は、咲き始めた木五倍子(きぶし)。
毎週撮影・掲載している「恩田の森Now」に、ただいまは3月18日に撮影した写真を5点掲載いたしております。まごうことのない春がやって来た、そんな森の様子をどうぞご覧ください。
「恩田の森Now」 http/:blog.goo.ne.jp/ondanomori
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フル・グランド?
「騎士団長は今ではピアノの上に腰掛けていた。真っ黒なスタインウェイのフル・グランドに」。村上春樹著「騎士団長殺し 第一部 顕れるイデア編」408頁。
グランド・ピアノやフル・コンサートは良く見聞きしますが、フル・グランドとは初めて聞く言葉です。
例によって記事本文とは何の関係もない今日の一枚は、開花した猫柳。
毎週撮影・掲載している「恩田の森Now」に、ただいまは3月4日に撮影した写真を4点掲載いたしております。春がちょっと足踏みをしている、そんな森の様子をどうぞご覧ください。
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素晴らしき村上春樹ワールド
もともと遅読なところに持って来てこのところ本業が珍しく忙しく(過労死が心配なほど仕事をされている方から見ればヘソでお茶が沸くほどのものだとは思いますが)夕食(と体内のアルコール消毒)が済む頃には眠くて眠くて。チェロもここ数日触っていないほどですから(師匠がこの駄文を目にされんことを祈る)読むどころではないのです。そうは云っても少しは読んでいる訳でありまして、ようやく上巻のここまで読み進むことができました。
それにしても、さすがと云うべきか相変わらずと云うべきか偉大なワンパターンと云うべきか(比喩の見本市度がやや低下?)、元へ、素晴らしき村上春樹ワールド! 永年の読者である郷秋<Gauche>の期待を裏切らない完璧な村上作品です。期待を裏切らないワンパターンと云う意味ではあの偉大なテレビドラマ「水戸黄門」さえも超えているように思えます。「世界大衆文学賞」グランプリ受賞がまた一歩近づいたのではないでしょうか。
と云う今日の駄文は、ファナティクな村上ファンからカミソリが送られて来そうな「村上春樹歴」38年の郷秋<Gauche>がおくる郷秋<Gauche>的村上春樹賛。為念。
毎週撮影・掲載している「恩田の森Now」に、ただいまは3月4日に撮影した写真を4点掲載いたしております。春がちょっと足踏みをしている、そんな森の様子をとうぞご覧ください。
「恩田の森Now」 http/:blog.goo.ne.jp/ondanomori
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世界の終わりとハードボイルドワンダーランド
昨日の記事の写真、リペアの済んだばかりのテーブルに置いてあった本。村上春樹氏の「世界の終わりとハードボイルドワンダーランド」です。気を衒ったわけではなく、新しくなったダイニングセットを見に来た義妹が、ついでに貸していたものを返してくれたものですから。
「世界の終わりとハードボイルドワンダーランド」は1985年に新潮社の「純文学書下ろし特別作品」シリーズとして世に出た作品です。その3年後には文庫化されている村上春樹氏の最高傑作です。郷秋<Gauche>はほとんどの村上作品を読んでおりますが、彼の代表作は「世界の終わりとハードボイルドワンダーランド」と断言できます。
たくさん売れたのは他の作品だと思いますが、彼の作品の根っこは「風の歌を聴け」とこの作品にあります。この二つを読めば、その後の彼の作品を読まずしても村上春樹を理解できます。別の云い方をすれば、この二つの作品を読んでいなければ、その後の彼の作品をいくら読んでも氏の作品の本質は理解できないのではないかと思います。村上春樹ファンにはぜひとも読んで欲しい「古典」です。
「考える人」2013年夏号
たいして考えもしない郷秋<Gauche>に相応し季刊雑誌、「考える人」の夏号が届いた。No.45と書かれている。季刊だから11年続いていることになるが、創刊後2、3年は次の号が出るまでうず高い平積みのままで、いつ休刊と云う名の廃刊になるのかと他人事ながら心配していた身には感慨深いものがある。
さて、今号の特集は「数学は美しいか」。多分、美しいのだと思う。でも、郷秋<Gauche>は数学が嫌いだ。消費税とお釣りの計算ができれば数学、いや、算数は十分だと思っているほどである。でも、郷秋<Gauche>が好きか嫌いかとは関係なく、数学は美しい、ような気がする。何の根拠もないけれど。
で、今号の「数学」以外の主な記事。長期連載が売り物の雑誌だが、相変わらず「ニッポンの里山」(今森光彦)、「動物たちの惑星」(岩合光昭)、「東北巡礼」(吉本直子・中野晴生)、「日本のすごい味」(平松洋子)は、相変わらず素晴らし。
「娘と私」(さげさかのりこ)は、今回はちょっと悲しいけれど、楽しい。「考える手」の今号は「コシナのレンズ」だから写真・カメラ好きは必読。村上春樹の特別寄稿「魂のいちばん深いところ」は、郷秋<Gauche>が読むのは次号が届く直前になりそうな予感。たいして考えもしない郷秋<Gauche>の事だからたいした意味はない。ただ、読むための心の準備に時間がかかりそうだと云う程度のことだ。
新潮社の提灯持ちをするつもりは毛頭ないが、「考える人」は今どき実に珍しく良心的、もっと判り易く云えば良質な、最近良く見かける言葉を使えば「コスパ」が高い雑誌である。たいして考えもしない郷秋<Gauche>の評価だからと、眉に唾しながら読んでみるのも一興かも。
「恩田の森Now」に、6月29日に撮影した写真を掲載いたしております。夏色の濃くなる森の様子をどうぞご覧ください。なお、今週末は明日撮影、明後日までの掲載を予定しております。
http://blog.goo.ne.jp/ondanomori/
村上春樹氏は決してファンを裏切らない
腰巻(帯とも云う)に書かれた「心を世界につなぎとめておくための営みだった。」
村上春樹氏の新刊の帯に書かれた21文字で、21文字だけで、この本を読まずとも、この本の98%を理解することが出来る。もっと云えば、21文字ではなく「つなぎとめておく」の8文字だけでも十分理解が可能である。
村上春樹氏は決してファンを裏切らない。この新刊には、「羊を巡る冒険」で氏が確立した「村上春樹ワールド」が間違いなく展開されているのだ。「水戸黄門」か、あるいは「フーテンの寅さん」か、はたまた「遠山の金さん」か。いずれにしても、寸分違わぬ「村上春樹ワールド」が展開されていることが、たった8文字で理解できてしまうのが良いのか悪いのか。
はい、読ませて頂きますよ、勿論。だって、ファンですからね。内容も読後感も半ば判っていても、それでも読みたくなる、それが村上春樹氏の作品です。そう云う意味では「1Q84」はちょと(だけ)新鮮ではあったけれど、今度のこれには「新鮮」や「驚き」は無いだろうな。と云う思いが裏切られることを期待しつつ、ページを繰り出すとしよう。
blog:恩田の森Now(土曜日撮影、日曜日Up済み。是非ご覧ください)
http://blog.goo.ne.jp/ondanomori/
村上春樹氏の新刊
今日の神奈川新聞に「村上春樹さん4月に新作」との記事。「文藝春秋」が、村上春樹氏の新作長編を4月に刊行することを明らかにしたとの内容。しかしだ、これは文藝春秋の広告ではなく、新聞による報道。ある作家の新刊がでることが、出版社の広告ではなく新聞が報道するのって、異例の事じゃないだろうか。
まっ、それだけ村上氏の作品が注目・支持されていると云う事ではあるのだが、件の記事には「(前略)村上さんはフランツ・カフカ賞、エルサレム賞など国際的な文学賞も受賞」と、次は「ノーベル文学賞!」と云わんばかりの論調であるが、それはどうかと思う郷秋<Gauche>であるぞ。
今日の一枚は、郷秋<Gauche>がお勧めする村上氏の著作二点。例えば代表作「ノルウェイの森」、近作「1Q83」が話題になる村上氏だけれど、氏の作品の理解するためにはどうしても読んでおく必要があるのがこの二冊である。
村上春樹氏、落選
昨日、「村上春樹氏がノーベル文学賞の最有力候補か?」と書いた以上、その結果について書かなければ、無責任との誹りを受けることだろう。と云うか、既に本日の小文のタイトルに書いた通りである。今日は本分なしのタイトルだけでも良い程か。ところで一番がっかりしたのは本人だろうか、あるいは出版社だろうか。やっぱり本人なのだろうな。
ノーベル文学賞が取れなかったことで思い出すのは故井上靖の逸話である。彼は毎年この時期になるとそわそわし、発表があると云う晩は仲間と共に前祝をしつつ電話のベルが鳴るのを待っていたとは有名な話であるが、ついぞベルは鳴らないまま彼岸に旅立ってしまった。
いや、村上春樹氏が井上靖と同じようになると云っている訳ではない。郷秋<Gauche>の考えとは勿論無関係に、遅くとも数年の内には受賞することだろうと思いはするが、そうなれば郷秋<Gauche>の中でのノーベル文学賞の定義は、「上出来の娯楽小説を書く作家に与えられえる賞である」と、書き換えなければならないことになるなぁ。まっ、村上作品のファンとしては氏がますます面白い作品を書いてくれるのなら、それはそれで良しと云うことなのではあるが・・・。
お口直しになるかどうかは判らないけれど、例によって記事本文とは何の関係もない今日の一枚は先週金曜日に撮った昭和記念公園の秋桜。お目当ての黄色いコスモスはまったく期待外れだったが、なかなか良い公園であることを確認することが出来たのは収穫であった。
村上春樹氏が最有力候補?
山中伸弥氏にノーベル医学生理学賞が贈られることで大いに盛り上がり、関連株価もストップ高との報道。誠に同慶の至りであるが、今度は日本時間の明夜発表される文学賞候補者筆頭が村上春樹氏であるとの話題が沸騰。村上氏は既に2005年頃から候補者として名前が取りざたされているが、2009年の「1Q84」の世界的大ヒット以降「候補者序列」はうなぎ上りで、今年は複数の大手ブックメーカーで首位に立っているとのこと。
最初に云っておくが、郷秋<Gauche>はかなりヘビーな村上春樹作品の読者だと自認している。このことはこれまでblogに書いて来た氏の作品に関する拙文をご覧いただければご理解いただけることと思うが、その上で、郷秋<Gauche>は氏が、つまり氏の作品がノーベル文学賞に相応しいのかと疑問を抱いていることを告白する。
ノーベル文学賞の選考員が何を基準の受賞者を選んでいるのか知る由もないが、郷秋<Gauche>は、純文学作品、つまり、読み終えて「あ~面白かった」で終わるのではない、時に読後に世界の成り立ちについて考え、あるいは人の生き様、自分の生きようについて考えたくなる、小説の形式こそとってはいるけれど、その奥には哲学書とも云える程の深い思想性を忍ばせている作品、そのような作品の著者にこそノーベル文学賞が与えられるべきだと信じている。
その意味では、村上氏の作品は純文学の対岸に位置する娯楽(=大衆)小説であると、実に芸術性の高い極めて上質な娯楽小説であると郷秋<Gauche>は云いたい。「あ~面白かった。終わり」と、氏の作品読後には常にそのように感じるのだ。
いや、ノーベル文学賞はお前が思っているようなものではないと云われれば、反論出来るような材料は何も持ち合わせていない郷秋<Gauche>ではあるが、村上作品について語れと云われれば三晩は語れるだろうと思うぞ。もっともそんなものに付き合いたい変人はいないことだろうから、その代わりに、これまで村上作品に縁の薄かった方のための読書ガイドとして、郷秋<Gauche>がこれまでに書いた村上作品に関する拙文の幾つかを列記しておく。興味を持たれた方は、特に氏の作品を読む順序(物事には順序ってものがある)をチラ見の上で、氏の作品を手に取ってお楽しみいただけたら幸いである。
郷秋が書いた、村上春樹及びその作品に関する記事
村上春樹氏、原発を語る
村上春樹氏、落選
『1Q84』は比喩の見本帳もしくは『水戸黄門』
1Q84
村上春樹氏、記者会見に登場
ノーベル文学賞
物事には順序ってものがある
東京奇譚集
本というよりは、読書について
今日の一枚は、郷秋<Gauche>の書架にある村上作品を積み上げてみた図。7年前に書いた物事には順序ってものがあるに掲載した写真の再掲であることをお許し頂きたい。
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