物事には順序ってものがある

 やっぱり物事は決められた順番にやらないと上手く行かないものなのだ。時々「俺には俺のやり方がある」とばかりにこの順序を無視する輩がいるが、まず、上手く行かない。順序とは、先達が散々試して、散々懲りた挙句にできあがったセオリーなのだから。

 って、別に難しいことを言うつもりはない。郷秋<Gauche>が今日言いたいのは村上春樹作品を読む順番のことだ。

 郷秋<Gauche>の読書傾向は大変偏っている。好きな作家しか読まないし、その好きな作家の数が著しく少ない。が、数は少ないが好きな作家の作品は徹底して読む。何度も、だ。そうは言っても、更に上手を行く方に「お前の読みは浅い」と言われてしまえば返す言葉もないのだけれど。前置きはさておいて、郷秋<Gauche>的村上春樹作品読書順はこうだ。

1.風の歌を聴け 1979年初版発行
 群像新人文学賞を受賞した、村上のデビュー作である。これ以降の彼の作中人物の萌芽をここに見ることができる。

2.1973年のピンボール 1980年初版発行
次に、この作品を読まねばならぬ。なぜならば、これをここで読んでおかないと、これ以降の作品に登場する「僕」及び「鼠」がいったい何者なのかまったく理解できないからである。

3.羊をめぐる冒険 1982年初版発行
 「僕」をはじめ『1973年のピンボール』登場人物による、まさしく冒険物語である。

4.ダンス・ダンス・ダンス 1988年初版発行
 『羊をめぐる冒険』から6年を経てはいるが、これが事実上の続編かつ完結編である。

5.世界の終りとハードボイルド・ワンダーランド 1985年初版発行
 谷崎潤一郎賞を受賞した、郷秋<Gauche>的には村上春樹の最高傑作。単独で読んでも十分楽しめる作品だが『ダンス・ダンス・ダンス』読後にこの作品を読むことにより、より深い理解が可能となろう。深読みの方であれば『羊をめぐる冒険』後でも可。

 上記5作品を順に読んでおけば、他の作品についての読む順番は特に重要ではないと郷秋<Gauche>は考える。一般的には氏の代表作と言われることも多い『ノルウェーの森』(1987年)が登場しないことに疑問をもたれる方がいるやも知れぬが、この作品は村上作品の中では特異なものとして置づけられるものであり、従って前述の読書順には関係なく読むことに大きな問題はない。



 2、3発掘できなかったものがあるかも知れませんが、
これが村上氏のほぼ全作品です。ここに積み上げた
のは所謂単行本(ハードカバー)ですが、例えば上に
あげた5点などは旅行の機中などで読むために文庫
版も取り揃えております。

 ここ数年の作品の中では良く出来ている『海辺のカフカ』(2002年)は、部分的には『世界の終りとハードボイルド・ワンダーランド』の続編と言うこともできる作品である。したがって『世界の終り~』のあとに読むのが順当と言える。

 1992年初版発行の『国境の南、太陽の西』、氏最大の長編『 ねじまき鳥クロニカル』(同1994-95)も単独で読むことのできる作品ではあるが、より深い理解を助ける意味では前述の5作品の後に読むことをお薦めしたい。

 「村上ワールド」などと形容される独特の作品世界を持つ作家は決して多くはない。これも氏の作品世界に魅せられる方が多いことによるものであろうし、同時に「私的村上作品論」が多数存在するのも事実である。そんな中で郷秋<Gauche>が氏の作品の読書順について書くのは冒険とも言える行為だが、郷秋<Gauche>とは異なるご意見をお持ちの方があればぜひともそれをお聞かせ頂きたい気持ちもあり、あえて書いてみたものである。
コメント ( 8 ) | Trackback (  )
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コメント
 
 
 
時すでに遅し? (ねこじゃらし)
2005-12-13 21:44:42
今ごろそんなことおっしゃっても困ります!「ノルウェー」「ハードボイルド」「国境」「風」「カフカ」「ダンス」の順で読んでしまったのですから。どうやらこれから大急ぎで「ピンボール」と「羊」を読む必要がありそうな・・・。それにしても、こうやってみると、村上春樹のタイトルの付け方って“凄い”ですね。
 
 
 
郷秋の蔵書 (郷秋)
2005-12-13 22:26:43
昨晩は訳あって掲載できなかった郷秋<Gauche>架蔵の村上春樹作品の写真をただいま掲載いたしました。



こして積み上げてみると見ると『ねじまき鳥クロニカル』(全三巻)のボリュームと発売当時斬新だと言われた『ノルウェーの森』の装丁が確かに目立ちますね。
 
 
 
急いで! (郷秋)
2005-12-13 22:31:35
ねこじゃらしさん、初めまして&コメントありがとうございます。



ねこじゃらしさんwrote:

>どうやらこれから大急ぎで「ピンボール」と「羊」を読む必要がありそうな・・・

「羊」の前に「ダンス」を読まれたのでは、さぞかし難解であったことと思います。今一度「羊」-->「ダンス」順で読まれることをお薦めいたします。



ところでねこじゃらしさん、「初めまして」ではないような気が・・・



 
 
 
私もほぼ同じ順序です (いとちゃん)
2005-12-13 23:27:48
こんばんは、郷秋さん。

私もほぼ同じような順で読みました。

(多分、下の順番だったと思います。)



1.風の歌を聴け

2.1973年のピンボール 

3.羊をめぐる冒険 

4.世界の終りとハードボイルド・ワンダーランド

5.ノルウェーの森

6.ダンス・ダンス・ダンス 



大学時代の友人に勧められ、発表されるとほぼ同時に読んでいたので・・・。

 
 
 
チェコ語訳の「・・カフカ」 (ねこじゃらし)
2005-12-13 23:47:39
先日、友人(日本人です)が、チェコはプラハ、電車の中でチェコ語訳「海辺のカフカ」を読んでいるチェコ人を見かけたそうです!よほど声を掛けようかと思ったけど「気恥ずかしかったのでやめた」と言っていましたが、カフカの本場のチェコ人はこの題名をどう思ったか、聞きたかったですね。

ところで、私はいつもお世話になっている“ねこじゃらし”です。
 
 
 
同じ世代? (郷秋)
2005-12-13 23:47:44
いとちゃんさん、コメント&TBありがとうございます。



村上氏デビュー時の高校生以降、つまり今の40歳台以上の年代は基本的には作品の発表順に読んできたことでしょうから問題はないと思いますが、それより若い世代、特に今の高校生や大学生にはこの読書順をちゃんと教えてあげる必要があるんじゃないかなって、本気で心配しています。
 
 
 
チェコのカフカ! (郷秋)
2005-12-14 21:08:08
ねこじゃらしさん、こんばんは。



>ところで、私は

やっぱりそうでしたね(^^)。

>チェコ語訳「海辺のカフカ」

アメリカだけではなくヨーロッパやアジアでも読まれているようですね。

物語の中に描かれた自然、街、食べ物、風習などから、彼らはどんな日本を想像しているのでしょうね。実に興味があります。



 
 
 
おおー! (カンジ)
2005-12-14 22:09:21
オイラも春樹大好きっす。

ちゃんと、順番に読みましたよー!

初期の村上作品を読むと…

やたら、ビールとタバコが欲しくなりました!(爆)
 
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