橋下大阪市長、野田首相をほめ殺しか? そして遠藤周作「イヤな奴」

 人を虚仮(こけ)にする発言のイメージしかない橋下大阪市長が、珍しく人を褒めているようだ。その褒められた人がなんと野田首相だと云うから、郷秋<Gauche>はびっくり驚いたぞ。

  各社の報道によれば、野田首相が被災地のガレキ処理問題に関して、災害廃棄物処理特別措置法に基づき各都道府県に受け入れを要請する意向を示したことについて、橋下徹大阪市長が「すごい覚悟を持たれた決断。こういうことができれば、首相の支持率は一気にうなぎ上りに回復する」と評価したとか。

  先にも書いたが、人をこけにする発言のイメージしかない橋下氏が野田総理を褒めるのって、何か裏がありそうで、「ほめ殺し」じゃないかと、ついつい思ってしまう郷秋<Gauche>だぞ。

  だいたいがだ、そんな発言をしたところで、首相の株が上がるなんてとても思えない。だってそうだろう。どこぞの市(会えて名前は出さない。以下同様)では、宮城・岩手のガレキ処理に大反対し、県知事がほとほと困り果てている。どこぞの市では津波に流された松を送り火として燃やすのを拒否。どこぞの市では、福島から避難・転校した小学生に「放射能はあっちに行け」と。どこぞの市では福島ナンバーの車に給油拒否。どこぞの市では支援物産展での福島県産品販売拒否。どこぞの市では福島はおろか周辺地域への修学旅行拒否。まぁ、例を上げれば切りがない。

  事ほど左様に被災地、取り分け福島の人と物は嫌われているのだ。そんな中で首相が「災害廃棄物処理特別措置法に基づき」云々などと云ってみたところで、強権発動だとか基本的人権を無視しているとか反発されるのが関の山。東北各県での評価は上がったとしても、首都圏や中部・西日本での反発は必至だ。だからこそ、静岡県島田市や北九州市の英断を、郷秋<Gauche>は福島人の一人としてまったく嬉しく、文字通り「有り難い」と思うのである。

  昨年を象徴する漢字は「絆」であったと大きく報道され、実際に「絆」と云う字を、言葉を見聞きすることが非常に多かったこの一年だが、先に記した被災地拒否の多くの事例を見る限り、絆だなんて、上っ面、言葉だけの話だろうと思わざるを得ない状況である。絆とは「断つことのできない人と人とのつながり。離れがたい結びつき」のはずだが、受け入れ拒否、門前払いとなると、これは絆なんて話じゃないだろうと、郷秋<Gauche>は思うぞ。

  遠藤周作の、あれは「イヤな奴」だったろうか。主人公(遠藤周作自身だ)がキリスト教系の学生寮の仲間と御殿場にあるハンセン病患者の為の病院に慰問に行く。そこで入院患者と野球をするのだが、遠藤が打った球を患者チームの一人に取られて塁間で往生する。塁間で途方に暮れる遠藤にボールを持った患者が「行きなさい。触らないから」と云う。遠藤は自責の念に駆られる、そんな話しだったと記憶している。

  上っ面ではやれ支援だ、やれ絆だと云いながら、いざ自分の市で震災ガレキを燃やす話になると、福島県産品を販売するとなると、子どもが修学旅行に行くとなると、途端に反対運動を開始する。そんな気持ちも、郷秋<Gauche>も判らないでもない。逆の立場であったら、郷秋<Gauche>だって反対運動の先頭に立っていたかも知れない。こういう問題は紙一重なのだ。だから、責めることはしたくない。責めはしないけれど、騒がないで欲しい、せめて福島人の神経を逆なでするような言動だけは慎んで欲しいと思うのである。

  まぁ、いろんな人がいると云うことだ。いろんな人がいるけれど、それが認められる日本で良かったとも思う。勿論、いろんな人の中には、進んで福島人を受け入れようとしている人だっている。手を取って身体と心の温もりを伝えようとしている人だっている。そんな人がいる、それも一人じゃなくて大勢いることを知って、救われる思いの近頃の郷秋<Gauche>であるぞ。

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