日本語処理の技術史

 
 講談社が出しているブルーバックスシリーズの「パソコンは日本語をどう変えたか」を読んだ。日本語の「文章」をどう変えたかが書かれているのかと思ったらさに非ず。日本語と云っても主として漢字がコンピュータ上で扱えるようになるまでの歴史とその後の更なる発達について書かれたものである。考えてみれば、ブルーバックスに「文章論」ご期待した郷秋<Gauche>が悪い。期待した内容とは異なってはいたが、読んでは面白い本であった。

 書名は「パソコンは・・・」であるが、話はメインフレーム(大型の汎用コンピュータ)で日本語、つまり漢字を扱えるようになる所から話が始まり、PC-9801、ワープロ専用機、DOS/Vマシン、携帯電話、そしてWindows Vistaまでの漢字処理歴史が一望できる。

 メインフレーム時代における漢字入力の方法としてシフト方式が紹介されているが、郷秋<Gauche>には懐かしかった。郷秋<Gauche>が初めてコンピュータ上で漢字を使った時の入力方法がこれであったのである。1.5cm*2cm位の大きなキーに漢字が12個書かれていて、お目当ての漢字の位置を10キーの数字の位置で指定して(つまり左右の手の指で同時に二つのキーを押すのだ)一文字一文字入力する和文タイプライターのようなものであった。

 程なく仮名漢字変換システムに移行したので、この漢字入力デバイスは1、2年しか使わなかったような気がする。仮名漢字変換方式が一般化してからの発達は読者諸氏もご存知の通りであるが、それ以降の技術としてはVistaと共に登場した新しいフォント「メイリオ」の話が興味深かった。

 郷秋<Gauche>も仕事で時々Vistaのマシンを使うことがあるのにまったく気づかなかったのだが、Vistaにはメイリオと呼ばれる新しく開発されたフォントがセットされているようである。これまでの「MS UIゴシック」と「メイリオ」とを比べると「メイリオ」の方が断然読みやすいのである。手作業で進められたというフォントデザインの話はなかなか面白いし、「メイリオ」命名の元が「明瞭」である話も可笑い。

パソコンは日本語をどう変えたか ― 日本語処理の技術史 ―
YOMIURI PC編集部編・著
講談社 (ISBN:978-4-06-257610-9)
発行年月 2008年8月 20日
253p 18cm頁
900円(税別)
コメント ( 0 ) | Trackback (  )