百年小説

 本とは云ってもこのところ新書か文庫、せいぜい選書くらいしか買っていなかったのだが、久しぶりに蔵書印を押してみようかと思うほどの本を買った。厚さ7cm、1331ページ。試しに重さを量ってみたら2.1kgもあった。とても寝転んで読めるものではない。仕方がないので机に向かい姿勢を正し、オンザロックのグラスを片手に正しく読んでいる。

 別に難しい本ではない。古くは森鷗外(「森『鴎』外」と書いたが、正しく表示されているだろうか)の「杯」から太宰治の「富嶽百景」まで、一人一篇の短編小説が作者の生年順に51作品収められているものである。しかしだ、タイトルは何ゆえに『百年小説』なのか。百年読み継がれて来たということなのか、これから百年読み継がれて欲しいという期待を込めての命名なのか。いずれにせよ毎日一篇ずつ読むとすると二ヶ月間楽しめる。価格は7,000円近いが51の作品が収められているから一篇辺り135円。そう考えると安い買い物である。

 読んだことのある作品は数篇に過ぎないが、それとて数十年前のこと。時を経た記憶とあらためて読んでみてのズレはあるや否や。そんな楽しみのために既読の作品からページを開いてみることにした。昨日は太宰治の『富嶽百景』。今日は国木田独歩の『武蔵野』。どちらもしみじみと味わえる佳篇であった。明日以降暫くの間、折に触れ読後感想の小文が登場することと思うが、お嫌でなければお付き合い願いたい。

『百年小説』
ポプラ社
2008年12月10日初刷発行
23cm / 1331p
ISBN 978-4-591-10497-2
税別 6,600円

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