広辞苑の謎

その壱 物故者が編者である訳
 広辞苑の編者は、1955年発行の第一版から2008年1月に登場した第六版まで、一貫して新村出氏であるとされている。しかし、当の新村氏は、第二版(1969年)が登場する2年前、1967年8月に没している。したがって、広辞苑の編者として関ったのは第二版の途中までであるはずだが、1976年12月発行の第二版補訂版以降も、編者としてその名前を留めている。今では国語辞典の代名詞までになった広辞苑の編纂に、新村氏が寄せた並々ならぬ熱意を忘れぬための顕彰の意味があるのだろうか。
 ちなみに、広辞苑の第一頁は、今も、第一版出版に際しての、新村出氏による「自序」である。

その弐 広辞苑には「広辞苑」がない
 総項目数24万を誇る広辞苑にも、「甲子園」はあっても「広辞苑」の項はない。「『広辞苑』によれば・・・」とは、随筆などの常套句であるが、果たして「広辞苑」とは何なのか、広辞苑を引いてもその謎を解くことは出来ない。広辞苑に載せるまでもない、日本人なら誰でも知っているべき言葉ということなのであろうか。
 ちなみに、「随筆の書き方講座」などでは、「『広辞苑』によれば・・・」という書き出しは、如何にも陳腐だから避けたほうが良いと教わるらしい。

その参 紙に印刷された広辞苑第七版は登場するのか
 第三版から第四版までが8年、第四版から第五版までが7年。第五版出版から9年が経過し、もはや紙に印刷された広辞苑は登場しないのだろうと思いかけた頃に「第六版近く登場」のニュース。これにはいささか驚かせられたが、果たして紙に印刷された広辞苑第七版が登場するや否や。郷秋<Gauche>は、広辞苑は言葉の意味を調べる道具ではなく、日本語に関する読み物と考えているので、紙に印刷した、本の形をした広辞苑第七版が出版されることを願ってやまない。
 ちなみに、郷秋<Gauche>は広辞苑第四版のCD-ROM版が出たとき(1995年頃であったか)にすぐに購入してみたが、「読み物」には適さないこと、当時のPCでは常時ドライブにCDをセットしておかなければならなかったことなどから、実用に供することはほとんどなかった。
  

 今日の1枚は、郷秋<Gauche>がオフィスで使っている広辞苑第六版。新しい辞書を手に入れると、新しい知識を手に入れたような気がして、ちょっと嬉しくなる。ただし、これはまさしく「気がする」だけで、「新しい知識を手に入れる可能性を手に入れた」だけである。第五版では巻末に収録されていた漢字・難読語一覧、アルファベット略語一覧が別冊付録(本体と同じ函に収まる)とされ、さらに、第五版にはなかった日本文法概説や手紙の書き方などが加えられている。

「新村出編 広辞苑 第六版」岩波書店 定価 本体8,000円(2008年6月30日までは特別定価 本体7,500円)、机上版は同12,000円(同13,000円)
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