むし歯に関しては以前治療したところに不具合があるとか詰め物が外れた割れたなど、以前のむし歯の後遺症とも言えます。歯肉に関しては歯石が付いていたり歯周病が進んでいるとか、詰め物をした歯間に物が詰まりやすいとかいう場合が多いようです。
例えば奥歯の溝部分に黒いものが見えると「虫歯??!!」と思われる場合が多いかと思いますが、実はある日気づいただけで、以前からあった場合が多いはずです。大人の歯では、その人がむし歯になりやすい場所はすでに治療がされており、それ以外のところはなりにくい場所ですので健全という訳です。
では「ある日気づく黒い着色はむし歯なの?」 「むし歯だったら放置しておいたら進むわけ?」 という疑問は当然ありますよね。まずはむし歯初期は、透明感のあるエナメル質が白濁してきます。それから茶色っぽくなると歯に穴が開いてくる始まりです。黒っぽいのは、この段階でむし歯がストップしたか、単なるステインです。
「むし歯ってストップするの?」 と思われる方もいらっしゃると思いますが、虫歯進行は脱灰と再石灰化のバランスですからある時進行しても環境が変わればストップ循環になります。わたくしはこのような場合患者さんに「もとむし歯」と説明していますが、通常、むし歯=削って詰めるまたは被せると思っていらっしゃるでしょうから、納得されているかは疑問があります。
いずれにしてもそのような着色がいつからあってどのように変化して来たかは分からないわけで、未来的に経過を見る中で判断がより明確になります。特に奥歯ですと審美的にはほとんど問題になりませんので、要は、黒い=虫歯=削るというのを1回検診しただけで決めたくないということです。
以前はこのような時間軸を入れた予防歯科的考えや理論はありませんでしたので、ほとんどの歯医者は削って銀歯というロジックでした。削らない歯科というのは、だんだんと増えていると思います。