アメリカ小児歯科学会(American Academy of Pediatric Dentistry : AAPD)では会員向けに毎年 Reference Manual なるものを発行しています。これは、学会が小児歯科臨床のあらゆる分野に関してガイドラインを示しているものです。実際は、学会の中で各分野の専門家からなる委員会で話し合って作成されているものです。
ニューヨーク大学小児歯科で学生に臨床を教えていた時も、インストラクターは結構このマニュアルにこのように書いてあるとか言っていましたので影響力があるのでしょう。日本の大学病院と違って、常勤の教官は少なく、大多数が開業医でパートタイムで大学に来ていますし、私のような東洋人のオッサンもいますので、マニュアルに頼らざるを得ない事情もあります。
よい意味では学生をあるレベルまで上げることはできますが、誰から教わっても理屈的には同じこと?という部分もあります。
2006年度のマニュアルでフッ素のところをチェックしてみたら、Use of Fluoride とFluoride Therapy という項目がありました。
アメリカの歴史におけるフッ素のむし歯予防効果で最大ものは、水道水に微量のフッ素を入れるWater Fluoridation(日本語では上水道フッ素化というちょっと変な訳)で、55%から60%のむし歯減少率が得られています。水道水にフッ素が含まれていない地域ではフッ素を含む含む錠剤やドロップを年齢に応じて一定量服用するよう奨めています。この効果はドロップをなめている時に溶け出す口内のフッ素の影響と、服用することで唾液中のフッ素濃度がわずかに増加するからと言われています。
水道水中のフッ素も微量ですから、低濃度であっても毎日というのが結構効果的ということになります。ドロップなどのフッ素製品をいつまで服用して欲しいかというと、少なくとも16歳までと記載してあります。この年齢は私も非常に同感です。
永久歯むし歯が多発するのがティーンエイジャーで、奥歯のかみ合わせ部分や歯間など通常の歯みがきでは及ばない部分ですから、フッ素がかなり有効ですね。
日本では残念ながらこのような手段がないので、家庭でのフッ素うがい、フッ素ジェルの使用、歯科医院でのフッ素塗布などを組み合わせることになります。
マニュアル的といっても最近の考え方が記載してありますので、大いに参考にはなります。項目の中には学校での自販機販売アイテムに関するPolicy on Vending Machines in Schools というのもあります。