頭の中は魑魅魍魎

いつの間にやらブックレビューばかり

ビッグなサプライズ『ラスト・タウン 神の怒り』ブライク・クラウチ

2015-09-29 | books
あの「パインズ」の衝撃的なラスト。続編の「ウェイワード」の驚愕するラスト。そして、第三作がこちら。

解説の北上次郎氏が書いているように、「パインズ」と「ウェイワード」のネタばらしをしないと本作の面白さを説明することは難しい。

ミステリーのかなりSFよりなものだということは言っても構わないかと思う。しかもSFに詳しくなくても全然問題ない程度にSFがまぶしてあるだけなので門外漢でも無問題だ。

この世に神というものがいるなら、どんな気持ちかわたしにはわかる。人間というものは自分で答えが出せないとすぐ神に頼る。神にあたえられた安全な場所でぬくぬくしていながら、神を憎む。神が破滅する世界に背を向けてなんら手を打たなかった気持ちも、いまになってみればよくわかる

M・ナイト・シャマランがドラマ化した「ウェイワード・パインズ」をスカパーで今観ている。結末が分かっているのに、また映像化されたものを観たくなる。そのぐらいに面白い。

単にびっくりするだけでなく、人間の存在そのものについても考えさせられる、実は哲学的な小説でもあるのがまたいい。

ラスト・タウン―神の怒り― (ハヤカワ文庫NV)

今日の一曲

ラスト・タウンというタイトルとただタウンつながり。Billy Joelで"Uptown Girl"



我ながら、選曲が古い。では、また。
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『ふしぎなイギリス』笠原敏彦

2015-09-27 | books
イギリス(このブログでは英国と表記していますが、本の中ではイギリスと表記されているのでそれに倣います)に7年滞在した毎日新聞の記者が見聞したイギリスについて書いた本。

日本よりも「柔らかい立憲君主制」や「ロイヤル・ウエディング」の意味、サッチャーの「小さい政府」の功罪、ブレアの「近代化」の話など、70年代後半からつい今のキャメロン政権についてまで、ちょっと古い話から新しい話まで網羅している。とても読みやすいし、知らないことも多かった。

歴史についてだけじゃなく、政治や経済運営についても考えるヒントがたくさんある。イギリスについて知りたい人には強くオススメしたい。

ふしぎなイギリス (講談社現代新書)

今日の一曲

イギリスと言えば、The Sex Pistolsで、"Anarchy In The U.K."



では、また。
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『与楽の飯 東大寺造仏所炊屋私記』澤田瞳子

2015-09-25 | books
「若冲」がひっくり返るほど面白かった作者による新作は、奈良の大仏。

聖武天皇のはた迷惑な信心より始まることになった大仏作り。銅や金を集めてくるのも大変だし、現場の作業員たちも大変。作業をする人たちの食事を作る炊屋を中心にし、近江から来た役夫である真楯の視線で描く、東大寺の大仏作りとは…

いやいやいや。大仏作りって本当に大変だったんだよ、と見てきたように人に話したくなるぐらいに実感が湧いてくる。

たぶん歴史的な資料から分かることに、フィクションもしくは想像を大幅に加えているのだろうと想像するけれど、歴史的に正しいか否かということにはあまり気にならず、むしろきっとこうだったに違いないと思ってしまう。司馬遼太郎が創った「司馬史観」ではないけれど、作家が創った想像を、事実としてあったことだと飲み込んでしまうのは、正しいことではないのかも知れないけれど、小説は楽しむために読んでいるのであって、事実を知るために読んでいるわけじゃないので別に構わないだろうと思う。

役夫として地方からやって来た者たちの方言がきつくて意思の疎通に苦労をした話なんて、言われてみれば確かにそんなこともあったに違いない。

行基も登場するのだけれど、その登場のさせ方もまた巧い。

与楽の飯 東大寺造仏所炊屋私記

今日の一曲

大仏の曲は思いつかないので、レキシで「古墳へGO!」



では、また。
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『ザ・バット 神話の殺人』ジョー・ネスボ

2015-09-23 | books
「コマドリの賭け」のノルウェーミステリー、ハリー・ホーレシリーズの第一作。

オーストラリアで殺された女性がノルウェー人だったのでハリーはシドニーに派遣されることになった。二転三転する犯人像。オーストラリアの歴史を孕みつつ進むプロット。調べてみると浮かび上がったのは一連のレイプ事件。謎は解けるか…

うーむ。長い。

ネタは悪くないし、オーストラリアの蘊蓄も面白い。しかし文庫で530頁も費やすほどのものじゃないと思う。

しかし、処女作だから大目に見てあげたいし、それに「コマドリの賭け」のようにどんどんと上手になっていったわけだし。

ただ、これを読んでおくと後の物語が分かりやすくなるというポイントは少なかったように思う。

オーストラリアの神話や歴史に関しては、ミステリーと無関係だったとしてもかなり読ませる。

ザ・バット 神話の殺人 (集英社文庫)

今日の一曲

作者はジョー。Jimi Hendlixで"Hey Joe"



では、また。
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店名にツッコんでください113

2015-09-21 | laugh or let me die
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『中野京子と読み解く名画の謎 ギリシア神話篇』『旧約・新約聖書篇』中野京子

2015-09-19 | books
ギリシア神話や聖書がもとになっている絵画について簡単な説明をしてくれる本。

とても読みやすい。(としか言いようがないかな)

パンドラの箱の元ネタのパンドラは人類最初の女性だった。

人間が増長するのに怒ったゼウスは何か禍いを与えようとする。人間には男しかいなかったが神には男神と女神がいて、女神がいかに厄介なものか知るゼウスは、パンドラを創った。ヴィーナスが優美を、ディアナは月の秘密を、ミネルヴァは糸紡ぎの才をアポロンは美声を。そしてヘルメスからは泥棒と嘘つきの才をパンドラに与えた。

ゼウスがパンドラを送ったのはプロメテウスの弟のエピメテウス。「メテウス」=「考える者」 「プロ」は「前もって」なのでプロメテウスは「先見の明がある者」 「エピ」=「後から」なので、エピメテウスは「後知恵しかない者」「後悔する者」という意味。プロメテウスは弟にゼウスの贈り物が受け取ってはならないと警告していたのに、妻にしてしまった。パンドラはエピメテウス宅にあった固く封印されていた甕を開けてしまった。そこから病気や貧困、煩悶、狂気というパンドラ以前はなかった災厄がこの世に溢れてしまった、という話。知らなかった。

中野京子と読み解く名画の謎 ギリシャ神話篇中野京子と読み解く 名画の謎 旧約・新約聖書篇

今日の一曲

淫蕩放蕩の女神ヴィーナス。とても古い曲を。桜田淳子で「気まぐれヴィーナス」



では、また。
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『髑髏の檻』ジャック・カーリー

2015-09-17 | books
腰を抜かすようなミステリーを連発するジャック・カーリーのカーソン・ライダーのシリーズは第6弾。

ボビー・リー・クレンラインという格闘家は対戦相手を殺したこともあるし、自分を負かした相手を拉致監禁したこともある。そしてアラバマ逸脱行動矯正施設から脱走した… 刑事カーソンは長期休暇をとることにした。ケンタッキーの山奥でフリークライミング三昧の日々を過ごすつもりだった。しかし、周囲で連続殺人事件が起こった。宝探しサイトで座標の書き込みあった場所に行った者は発見したのは遺体だった。ネット上に書き込まれていたのは座標だけではなく、=(8)= という不思議な記号だった。そして殺人は続く。犯人は誰か。動機は…

さすがジャック・カーリー。ドキドキさせながらも社会性の強いテーマがぶち込まれている。

格闘技と関係があると書いてもネタバレにはならないだろう。あとはカーソンの兄のジェレミーがとんでもないタイミングで現れるのもまた巧い。

ところで、先日別のところで、子供に対する実験について読んだ。4歳の子供の忍耐力を測る「マシュマロ実験」というもの。Wikipedia内の説明 これと同じ話が本書にも出てきた。4歳時点の忍耐力がその後の人生を予感させるとは面白い。

短期的な欲求よりも長期的なリターンを求めるほうが幸せになれる可能性が高いということなのだろうか。「ヤンキー的文化」で良しとされる刹那的な生き方はやはり負け人生の素になるのだろうか。

髑髏の檻 (文春文庫)

今日の一曲

本とは無関係。たまたま見かけた懐かしい映像。今見ると歌詞も格好もどうかしているとしか思えないのに、この頃はこれがダサいを通り越してかっこよかったのだろう。近藤真彦で「ホレたぜ!乾杯」



では、また。
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超弩級ミステリー『コマドリの賭け』ジョー・ネスボ

2015-09-15 | books
ノルウェーミステリー。

老人が高性能ライフルを手に入れる。ネオナチはベトナム人を襲撃する。時は1999年。一転して1942年、第二位次世界大戦時、ノルウェーの若者5人がナチスドイツに協力してソ連と戦っている。亡くなる者あり、生き残る者あり。負傷したときに出会った看護師と恋におちる者あり… ライフルとネオナチの件、真相を知った刑事の身が危うくなり…

うーむ。うーむ。登場人物が多すぎて、筋立ても複雑な割に、収束の仕方も上手でない。にもかかわらず、箆棒に面白い。いや読めないか。べらぼうに面白い。

ネオナチネタとテロ(?)、戦時と現代の交錯。最も好みのパターンなだけじゃなく、登場人物の味がまたいい。

本作はハリー・ホーレシリーズの第3作。第4作の「ネメシス」の評判(書評七福神の七月度ベスト)がよく、第3作の謎がこちらで解決されるというので、だったら4作の前にこっちを読もうとした次第。他に第1作の「ザ・バット 神話の殺人」と第7作の「スノーマン」が邦訳されている。順番通り出してくれれば読みやすいと思うけれど、もろもろ大人の事情があるのだろう。

ちなみに本作は絶版となってしまっている。版元のランダムハウス講談社は倒産してしまったから。

本作で残った謎については、これを読んだけど忘れてしまって、でも「ネメシス」を読みたいという人のために、下にネタバレを書いておく。

コマドリの賭け 上 (ランダムハウス講談社文庫)コマドリの賭け 下 (ランダムハウス講談社文庫)
ネメシス (上) 復讐の女神 (集英社文庫)ネメシス (下) 復讐の女神 (集英社文庫)

今日の一曲

作者はジョー。元イーグルスのギタリスト、Joe Walshで"In The City"



【一部をネタバレ】「コマドリの賭け」で積み残された謎とは、プリンスの件。プリンスとは刑事ヴァーレルのこと。ネオナチからライフルを購入したいと頼まれて、南アフリカから非合法に入手したのはヴァーレル。同僚刑事のエレンは、ネオナチに手数料を支払っていないことがヴァーレルの携帯電話で話されるのを聞いてしまった。それでエレンは殺されてしまう。主人公ハリーはエレンを失った喪失感でいっぱいになるが、ヴァーレルのことは全く知らないまま「コマドリの賭け」は終わってしまう。「ネメシス」でそれに触れなかったらぶっとばすところだった。ヴァーレルが何者か詳しい描写もなかった。

では、また。
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『私と、妻と、妻の犬』杉山隆男

2015-09-13 | books
47歳、大学の教員の私。妻との二人暮らし。カルチャースクールの生徒である女性の不倫関係が妻にバレて、家を出た。8年の別居生活の後、生活が苦しくなってきたので、また妻のいる家に戻ってきた。前に飼っていたのは犬のなな。ななが亡くなった後、今飼っているのはメイ。ななとの暮らしやメイとの暮らし、妻との息が詰まる暮らしを描きつつ、「私」という人間に迫る…

うーむ。犬の二匹の可愛さもいいけれど、この「私」の体たらくが素晴らしい。

一人で外食ができないという「私」に対して、不倫相手のかおりのセリフは、

「生きていくうえでいちばん欠かせない、しかも最初にクリアしなければならない問題は、食べることよね。野生の動物もまず我が子に餌のとり方、狩りの仕方から教えるでしょ、だからそのもっとも肝腎なことで母はまだ十歳のわたしに覚悟をつけさせたかったんだと思うの。自分で自分のいろいろなことに始末をつけることが生きることなんだって、一万円札を渡してね。当時のわたしは母の言いたかったことのおそらく三分の一も理解できてなかったでしょうけど、母の気迫は幼いわたしにも伝わってきたのね、それで自分を納得させて、ひとりランドセルしょって吉野家のカウンターに座ってたんだと思う。それを考えると、いまだにひとりで外食ができないってこと、カズキさんが考えてるよりずっと大きくて本質的な問題をふくんでいるかもしれないわよ。大袈裟に聞こえるかもしれないけど、生きていくことの覚悟みたいな……」

「わたしがこんなこと言える分際じゃないってことはとうにわかっているけれど、奥さんの気持ちがなんだかすごくわかる気がする。だってカズキさんって、奥さんと全然向き合ってないんですもの」

主人公「私」に感情移入し、奥さんこわいなとか、犬かわいいなと思いながら読む部分が多いのだけれど、たまに出てくる「私」の良くない部分がこの小説の肝だと思う。

根本的にダメ人間だというわけではないのに、どういうわけかあちこちでひっかかる部分がある。しかもかなりの確率で「これは自分のことを指摘されているような気がする」と思わされる。

非常に不思議な小説であって、中年の悲哀小説でもあるけれど、また自業自得小説でもあったりする。この風味はさすがに若者にはまだ分からないだろう。とちょっと上から目線で失礼する。

今日の一曲

ドラマ「みんなエスパーだよ」の主題歌はこの二番だった。高橋優で「(Where's)THE SILENT MAJORITY」



この唄の怒りのようなものが「私」に対する怒りと近いようなそうでもないような。

では、また。
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『反知性主義 アメリカが生んだ「熱病」の正体』森本あんり

2015-09-11 | books
最近の若者は本を読まなくなったとか、くだらないバラエティ番組ばかりが増えているという文脈で使われる「反知性主義」という言葉もあるけれど、本書が扱うのは違う。

キリスト教のアメリカ的な発展とはどういうものだったのか、欧州のプロテスタントとアメリカのピューリタンとの違い、アメリカ人の自己啓発好きはなぜなのか、なぜアメリカでは、大学卒等のインテリに対するカウンターな存在がリスペクトされるのか。これらの問いに「反知性主義」というキーワードで答えようという本。

うーむ。面白くて、しかも自分がちょうど知りたかったこと満載。堅い本なのにエンターテイメントのごとくに読んでしまった。(ちょうど知りたかったと言うと、ついこの間までしょっちゅう考えていたみたいだけれどももちろん違う。読んで知ると、まるでついこの間まで考え続けていたみたいに感じるのだ、ある種のスゴイ本は)(恋というのも好きになってしまってから、「こういう人を求めていたんだよ」と思ったりするけれど、こんな人を求めていたなんて思ったことはなかったりするわけで)

中途半端な宗教改革に過ぎないと英国国教会を批判し、よりピュアなものを求めアメリカへ向かったピューリタン。カトリックでは、聖職者は典礼だけできれば良かったから、必ずしも高い知性は必要なかった。しかしプロテスタントでは、聖書を読めなければならないから、ヘブライ語やギリシア語の知識も必要だったし、それを分かりやすい言葉で伝える技術も必要だった。イギリスのいい大学を出た牧師がアメリカで聖職者として働いていたが、彼らが亡くなってしまったらその後はどうすればよいのだろう。

ということで設立されたのがハーバード大学。なんと最初は牧師の養成学校だったのだそうだ。プリンストンもイェールも同様だそうである。

元々は、牧師だけではなく信者全員が聖書を読み神のメッセージを受け取れるという理想がプロテスタンティズムにはあったはず。しかしそこに極端なまでの平等思想が加わると、神の前では万人が平等なのだから、学のない者でも、神の前では尊い人格であるということになる。この辺がヨーロッパのプロテスタントとアメリカのピューリタン以降の様々なプロテスタントとの違いのようだ。それを本書では「リバイバリズム」と呼んでいる。

それ以外にも、トマス・ジェファソンやベンジャミン・フランクリンや大統領アンドリュー・ジャクソンなどの有名どころから、聞いたことのない大物伝道師たちの逸話を通して「反知性主義」がアメリカを読み解く鍵だとする。

展開の仕方、読み安さ、適度な知的刺激、痒いところに手が届く気配り、まさに、完璧な本。マストリードという手垢にまみれた言葉はあまり使いたくないけれど、みんな、ユーマストリードだよ。(@みんなエスパーだよ)

反知性主義: アメリカが生んだ「熱病」の正体 (新潮選書)

今日の一曲

著者があんり。と言えばやはり、杏里で「スノーフレイクの街角」



著者は男性で、ICUの教授なのでイメージはだいぶ違うけれど。

では、また。
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『校長、お電話です!』佐川光晴

2015-09-09 | books
「おれのおばさん」シリーズが終わってしまい、泣き暮らしていた日々。もうあれほど胸を熱くすることは叶わないのか… 

と思っていたら、佐川光晴の新作が出た。校長?表紙からしてドタバタコメディなんだろうか。あまり期待しないで読んでみた。

47歳、埼玉県内の中学校の校長になった、柴山緑郎、通称シバロク。民間人から登用された前校長がヒドイ奴だった。パワハラによって先生は自殺未遂。生徒は荒れた。シバロクは中学の立て直しに邁進する。休職中の先生を復帰させられるか。夜中に学校に侵入してタバコを吸い、酒を飲んだ者たちにどう対処するか。教頭は役に立たない、前校長は引き継ぎを拒んでいる…

なんだなんだ。面白いではないか。いや、ただ面白い以上だった。

校長の抱える様々な課題。全てが現代的でリアルだった。

シバロクの前向きな姿勢にも好印象。とても素敵で胸が熱くなる話だった。(こんな校長がいる中学校なら、ぜひ行きたい行かせたいと思う人はすごく多いと思う。シリーズ化希望)

校長、お電話です!

今日の一曲

校長は、プリンシパル。と言えばやはりプリンス(強引) Princeで"Raspberry Beret"



では、また。
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店名にツッコんでください112

2015-09-07 | laugh or let me die
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『声』アーナルデュル・インドリダソン

2015-09-05 | books
アイスランドミステリー、「湿地」「緑衣の女」に続く第三作。

ホテルのドアマンが殺害された。ホテルの地下に住み、ドアマン以外の様々な雑用をこなしていた男が。サンタクロースの恰好をし、股間にはコンドームを着用した状態で。調べてみると、被害者は昔はボーイソプラノの歌手で、レコードを2枚発表していたことが分かる。今ではそのレコードにはかなりの付加価値がついているらしい。スターだった少年がどうして落ちぶれることになったのか…

やっぱり面白い。なんら期待を裏切らない。

アイスランドという国はいかに危険なのかなどと思ってしまうが、訳者あとがきによるとアイスランドはとても安全な国だそうだ。

「世界の殺人発生率ランキング」によると、人口10万人当たりの発生率1位はホンジュラスの90.40件。2位がベネズエラで53.70件、上位には南米、アフリカ、アジアの国々が続く。西欧諸国ではアメリカ合衆国が109位で4.70件。215位は同率で日本とアイスランドが0.30件。216位がシンガポールで0.20件、リヒテンシュタインとモナコが0.00件。世界で三番に安全な国が日本とアイスランドだということだ。へー。

小説の方は被害者の栄光と挫折だけでもすごく読ませる。それ以外にも主人公の刑事エーレンデュルの家族関係もクロスオーバーする。テーマは「栄光と挫折」+「家族」だと言ってよいと思う。

声

今日の一曲

声。AIで"VOICE"



では、また。
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『武士道ジェネレーション』誉田哲也

2015-09-03 | books
「武士道シックスティーン」「武士セブンティーン」「武士道エイティーン」に続く、そしてシーズンファイナル。

相変わらずの剣道バカの香織。そしてなんと結婚してしまった早苗。高校を卒業した後、24歳ぐらいまでの二人を描きつつ、道場のその後やあれやこれや。

久しぶりに読むので、入り込めるかと思ったら全くの杞憂。むしろ前のめりに読んでしまった。

二人のキャラクター、特に香織のキャラがいい。道場が閉鎖されるかのピンチや、子どもたちの指導、そして○○の伝承、○○人との出会い。

何か打ち込めるものがあれば、必ず人は輝けるのだというような説教臭いことを思った。

薄っぺらなレビューにて失礼(読んでしばらく時間が経ってしまって忘れてしもうた。てへ)

武士道ジェネレーション

今日の一曲

ジェネレーション。少女時代はGirls' Generationと呼ぶんだったっけ。黒い服がちょっと色っぽい、少女時代で"Genie"



では、また。
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39歳の恋『残りの人生で、今日がいちばん若い日』盛田隆二

2015-09-01 | books
書籍編集者の柴田直太朗39歳はシングルファーザー。小4の娘は我孫子の実家に預けている。小説家志望の女性と恋愛関係(?)のような関係にあるが、彼女の最近の言動に不穏なものを感じている。百貨店に勤める山内百恵39歳は最近仕事を辞めてしまった。転職先を探すのに苦労したが、池袋の書店に勤めることになった。結婚相談所に登録し何人かの男性に会ったが、ピンとくる人にはなかなか出会えない。作家のサイン会を通して出会った柴田と百恵。障害はいろいろあるけれど、この恋は実るのか…

なんということのないはずなのに、なぜか夢中になってしまった。

柴田の娘の苦悩、柴田の母親というちょっと面倒な存在、離婚した妻の事情。柴田に感情移入してしまう。読む多くの読者が、自分は柴田と似ていると思うのではなかろうか。(たぶんすごくいい女である)百恵の内面もすごくいい。

いい女といい男が結ばれる、なんて単純な物語じゃないのもいい。

アラフォー男女の恋愛事情。若者のとは違う味わいがある。

残りの人生で、今日がいちばん若い日

今日の一曲

主人公の名は直太朗。ちょうどそんな季節でもある。森山直太朗で「夏の終わり」




では、また
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