頭の中は魑魅魍魎

いつの間にやらブックレビューばかり

『スポーツ遺伝子は勝者を決めるのか?』デイヴィッド・エプスタイン

2015-04-29 | books
Nature VS Nurture 氏か育ちか。

古くて新しい疑問。トップアスリートになるには、遺伝が重要なのか、それとも努力か。様々なアプローチを通して、科学的にこの問いに答える。

時速150キロを超えるボールを打てるメジャーリーガー。しかし反応のスピードが一般人より速いとは限らない…

マスターレベルのチェスプレイヤーは、数秒しか見ていない盤面を再現することができる(一般人には無理) しかし無作為(チェスのゲームではありえない)に駒を置いた盤面では記憶力は一般人と同程度になってしまう…

ドイツの音楽学院でバイオリストについて調べた。トップとそうでない技量の学生では、単独練習の時間が全く違う…

高地生まれの人は耐久レースになぜ強いのか。アンデスの人は、赤血球の数を増やし、運ぶ酸素の量を増やすことで高地に対応してきた。(しかし血中の粘性が高くなるので、健康的とは言えない。) チベットの人は、赤血球の数は増やさず、高レベルの一酸化窒素を血中に持つ。(一般人なら敗血症になるほどの)それによって肺の中の血管を弛緩させ、血流を促進していることが分かった…

というようなことや、遺伝病、生まれつき筋肉が多い人、10000時間の法則(ある程度の技量を身に付けるには10000時間やらないとダメだという法則)についての検証、プロになるためにはいつから始めないといけないか、などなどスポーツ+周辺の話がたっぷりとある。

こういう本はすごく好きだ。自分の何に役に立つのかは分からなくても、「人間」について知るのにちょっと足しになっているからかも知れない。

スポーツ遺伝子は勝者を決めるか?: アスリートの科学

今日の一曲

著者はエプスタイン。と言えば、ブライアン・エプスタインがマネージャーをしていた、The Beetlesで"Day Tripper"



では、また。

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『暇と退屈の倫理学』國分功一郎(再読)

2015-04-27 | books
近代以降、人々は豊かになった。そして暇を得た。しかしその暇をどう使えばいいのか。

暇と退屈が、歴史的にどう発生してきたか、贅沢とな何か、そもそも退屈とは何かなどを、スピノザやルソー、ハイデッガー、マルクス、ガルブレイスらを著作をひもときながら考える。(追記:記事をアップした後で、2年前に同じ本のレビューをしていたことに気づいた。何か読んだことあったような気がしたんだよな… その記事はこっち 大丈夫か、おれ?)

序章、一章、二章だけをまとめると:

自分が追い求めるものの中に本当に幸福はあるのだろうか。パスカルは部屋でじっとしていればいいのに外に出るから不幸になると言う。パスカルの解決策は神への信仰である。

バートランド・ラッセルは、熱意があれば幸福だとするが、熱意が傾けられる趣味は大半の場合、根本的な幸福の源泉ではなく、現実からの逃避となっている。場合にっては人間は不幸を求めてしまう。しかし不幸に憧れてはいけない。

スヴェンソンは、退屈が悩みごとになったのはロマン主義のせいだと言う。近代以前、生の意味は一方的に外部から与えられた。しかし18世紀の啓蒙主義以降、個人それぞれが生の意味を自分で探求すべきだということになった(=ロマン主義)。しかし個人個人違う生の意味など存在しないのだから、諦める方がいいとスヴェンソンは言う。(多様性を叫ぶ人がたくさんいる一方で、ネトウヨやヘイトスピーチが向かう方角がかなり狭い一つの所であるという現代の我々の社会について考えてしまう)

西田正規の「人類史の定住革命」をヒントに暇と退屈について考える。1万年前に氷河期が終わってしまった。氷河期のときの方が、中緯度の地域では草原が広がっていたのでマンモスなど大型の動物をヤリで仕留めることができた。しかし森林が広がってしまうと小型の動物が多くなり、またヤリが使えない。そして定住生活をせざるを得なくなる。遊動生活の時には食料は平等に配布し、道具は貸し借りしていた。定住生活では食料を貯蔵するようになる。すると持つ者持たぬ者の格差が生じることになり、それが権力を生むことになる。持たぬ者は盗むので、法律が必要になって来る。この話が面白いのは、遊動生活は大変で、定住生活の方が楽だから「定住できるようになった」という従来の考え方は間違っていて「定住せざるを得なくなった」が正しいということ。そして、遊動時代には退屈しなかったのが、定住こそが暇と退屈を生み出したということ。

以上簡単にまとめさせてもらったけれど、全体の三分の一にも満たない。

暇と退屈について考えてそれが何になるのかと思うけれど、それが何になるかではなく、考えることそのものが、暇と退屈をなくす、のかも知れない。

暇と退屈の倫理学暇と退屈の倫理学 増補新版 (homo Viator)

今日の一曲

退屈と言えばbored Deftonesで"Bored"



では、また。
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店名にツッコんでください103

2015-04-24 | laugh or let me die
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『アンダーグラウンド・マーケット』藤井太洋

2015-04-21 | books
近未来。表の通貨、日本円と仮想通貨「N円」が流通する世界。N円は脱税や違法取引に使われるが、同時に大量に流入した移民の生活を支える。日本人でも正社員になるのは難しく、フリーのIT技術者が多くいる。主人公木谷もそんなフリーのIT技術者。知り合いの店のサイトの改造を請け負うと、巻き込まれる謀略の中へ…

近未来はきっとこんな風になるに違いないと思わせる圧倒的なリアリティ。仮想通貨についてずいぶん深い話が展開される。ITなど自分が詳しくない分野についても、説明しすぎず、しかし分かりやすく描写してくれる。

「オービタル・クラウド」同様に読みやすいのに、ストーリー展開の先が読めない。続編もすごく読みたい。

アンダーグラウンド・マーケット

今日の一曲

アンダーグラウンド。Ben Folds Fiveで"Underground"



では、また。
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『そうだったのか!朝鮮半島』池上彰

2015-04-19 | books
戦後、日本による支配から解放された朝鮮がどのような経過を経て、今のような状態に至るようになったか。北朝鮮と韓国の対比、歴代の韓国大統領の政策や不祥事などかなり詳しく書いてある本。

韓国だけ簡単にまとめると:

ライバル金九の暗殺→李承晩大統領の独裁 1950年5月反李承晩が選挙で多数。しかし朝鮮戦争勃発 李承晩は、「初代大統領に限り三選規定を撤廃する」という憲法改正をしたかった。1954年の国会議員選挙で改憲に必要な与党議員の数は三分の二。投票箱のすり替えなど不正手段を使って改憲に必要な136議席を獲得した。しかし改憲案の投票では135人しか賛成しなかった。ここで強引な技を繰り出す。全議席303の三分の二は135.3議席だから、四捨五入すれば135議席。だから改憲案は可決されたとした。「四捨五入」改憲と呼ばれたそう。

また李承晩ラインを設定し軍事境界線を引いた。その中に竹島が含まれていた。それは一方的な宣言で国際法を無視したものであったが、国内の反李勢力を抑えるための人気取りが必要だった。1960年の大統領選挙の不正に国民は怒り、4・19民主革命が起こる。李はアメリカに亡命。

1961朴正煕少将による軍事クーデター。1965年日韓基本条約、日韓請求権並びに経済協力協定を締結。日本は韓国に3億ドルを無償で2億ドルを低金利で貸し出す。「両締結国は請求権に関する問題は完全かつ最終的に解決されたこととなることを確認する」とされた。

1973年金大中事件勃発。日本のホテルから大統領候補の金大中が拉致された。KCIAが実行。1974年、在日韓国人の文世光が大阪府警の警察官の拳銃を盗み、韓国の光復節の記念式典で朴正煕大統領を狙撃。弾はそれて大統領夫人が死亡。文が北朝鮮の工作員だと金正日が認めたらしい。1979年、KCIAの部長が大統領を射殺。

クーデターで全斗煥保安司令官がクーデター。民主化を求めるデモが激化すると光州事件が1980年。死亡者多数。全斗煥独裁体制へ。64あった新聞のうち44を廃刊に追い込む。全斗煥が金大中に死刑判決を下したことにアメリカは懸念を持っていたが、全斗煥のアメリカ訪問を受け入れる代わりに、金大中の死刑を減刑させた。

独裁政権の強硬策が続く中、1987年デモが激化。6・29民主化宣言。 陸軍士官学校の同期の盧泰愚に後を継がせる。大統領は議会による間接選挙でなく直接選挙に憲法改正。その裏には、野党の金泳三と金大中が対立して野党票が分裂するだろうという読み。読み通り、 盧泰愚政権誕生。今度は全斗煥の不正蓄財が追及される。1988年ソウル・オリンピック。

1992年金泳三大統領当選。与党は金大中が当選すると与党が光州事件の責任を強く問うだろうから金泳三の方がましだと判断。今度は、盧泰愚前大統領の不正蓄財が追及される。裏献金が527億円。盧泰愚と全斗煥の双方に対して、国民は内乱罪を適用することを望む。時効で適用できないのに、二人を逮捕した後で法改正し光州事件やクーデターの責任を取らせるべく、時効を停止させる。

列車転覆など大型事故が続き、1997年金大中大統領当選。アジア通貨危機によりIMFの韓国経済管理。2000年金正日と会談。日本文化解禁。小渕首相と日韓共同宣言。

2002年盧武鉉大統領。反日政策へ。日本に対する謝罪要求。竹島問題。2009年収賄の疑いで事情聴取、自殺。

2007年李明博大統領。竹島上陸で日韓関係は最悪に。2012年実兄が逮捕。

2012年朴槿恵大統領…

殺されるか、自殺するか、訴追されるか。韓国の大統領はなかなか幸せになれない…

朝鮮半島にはそんなに興味が持てないでいた。歴史に関しては強い関心を持っている時代や地域がかなり限定されている(159cm、Cカップ、1980年生まれのみ可、みたいな)ので、知っているようで知らないことが多く、大変面白く読んだ。

そうだったのか! 朝鮮半島 (そうだったのか! シリーズ)

今日の一曲

何かK-POPの曲を。Sistarで"Alone"



では、また。
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神保町へ

2015-04-17 | travel
久しぶりに神保町に来た。

かつどんが旨い、たつ屋はなくなってしまった。キッチンカロリーやキッチン南海、カレーのボンディ、天ぷらのいもやなど昔よく行っていた店に行くのはやめて、食べログで評価の高いうどんの、丸香へ





かけうどん(400円)とちくわ天(160円) うどんもいいけれど、だしが本当に旨い。混んでいるだけのことはある。

東京堂へ



カフェが併設されていて、昔とはだいぶ変わっていた。



でも日本三大奇書「ドグラ・マグラ」「虚無への供物」「黒死館殺人事件」を並べているあたりがにくい。

書泉は一階は少し変わったけれど、ほとんど同じ。三省堂はレジが広くなったけれど、基本的には昔と同じ。

古書店はそんなに変わってない。







昔よく行っていた店がなくなっていたけれど。

古書店では岩波文庫と講談社学術文庫を扱っている店が増えた印象。

ある店では、絶版のサンリオSF文庫全197冊+新装版4冊で40万円の値段がついていた。

あとは、古書店に若い店員さんが増えた。気難しそうなむ爺さんが店番していたのも昔のことらしい。

てな感じで4時間半も本屋にいた。

本を読むより、本屋にいる方が好きなのかも知れない。
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『神様のカルテ0』夏川草介

2015-04-15 | books
「神様のカルテ」「神様のカルテ2」「神様のカルテ3」に続く新作は、昔に戻る。

前3作では長野の病院で働いていた栗原一止(いちと)はまだ医大生。卒業試験と国家試験の真っ最中。クラスメイトと一緒に勉強する日々…<有明>
後に一止が勤める本庄病院に彼が研修医としてやって来る以前を描く…<彼岸過ぎまで>まだ新米の一止の苦労の日々…<神様のカルテ>
後に一止の伴侶となる榛名が冬山へ写真を撮りに行った。そこに怪我をし死にかけた人がいて…<風山記>

どれを読んでも、ぬっくりとほっこりと温まる。とくべつな~ものがたりを~あなたに~あ~げる~あったかいんだから~♪(と言っておけばよいだろうか)

医療に対して厳しい視線もあり、また人間に対して温かい視線もある。

「神様がそれぞれの人間に書いたカルテってもんがある。俺たち医者はその神様のカルテをなぞっているだけの存在なんだ」

このシリーズを読む度に信州に行きたくなる。

神様のカルテ0

今日の一曲

外科医と言えばsurgeon マドンナのライク・ア・バージンのパロディ、 Al Yankovicで"Like A Surgeon"



では、また。
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『それを愛とは呼ばず』桜木紫乃

2015-04-12 | books
54歳、伊澤亮介。東京で勤めていたホテルが火災に遭い職をなくした。故郷の新潟に戻って来て、飲食店や美容院、ジムなどを経営する「いざわコーポレイション」に勤め始めた。すると勤務先の女社長に見初められ、10歳年上の女性と結婚することになった。そして副社長に。

白川紗希、29歳。北海道出身。美少女コンテスト準優勝のあと、芸能界入り。リポーターやグラビアもやった。しかしもう仕事が来ない。夜は銀座のクラブでホステスとしてアルバイトしている。

大切な人をなくした、亮介と紗希が出会う。そこで生まれるのは天国か地獄か…亮介、紗希それぞれの目線で交互に描く連作短編集。

うまい。やはり桜木紫乃はいい。期待を決して裏切らない。

ネタバレを避けて詳しくは書かないけれど、亮介は会社を追い出されて、北海道のリゾートマンションを売る仕事に就く。このマンションはバブル期に建てられて20年も経ったのに7階以外は売れていないという代物。しかも7階に人が住んでいる気配はなく住んでいるのは…(ああ、怖かった) そんな売れそうもない物を売らされる立場。これが何ともせつなく、読ませる。

さらには売れない芸能人、紗希。事務所はくびになってしまうので、ホステスだけで食べていかなくてはいけなくなってしまった。29歳、キレイなのに、売れない。この人生どん詰まり感。桜木の手にかかると、笑えないのに悲しいのとも違う。人生のリアリティに溢れているからだろうか、笑えるとか悲しいとかを超越しているのかも知れない。

単純な恋愛ものだろう。どうせこの年の離れた二人が結ばれて、泥沼になって、みたいな話なんだろう?どうせ。などと思って読むと、下から上へ大きく足をすくわれる。恋愛小説なのかどうかも分からない。

そして、ラスト。これが気に入らないという人もいるかも知れない。真逆のラストを求める人もいるだろう。しかし、これがいいのだ。これでいいのだ。桜木紫乃にハッピーエンドを求めてはならぬ。人生にハッピーエンドなどないのだ。みな、苦しめ。生きるとはただ苦しむものだとブッダも言っていた。よね?

それを愛とは呼ばず

今日の一曲

悲しい恋の歌。Radioheadで"Creep"



では、また。
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『死にたくなったら電話して』李龍徳

2015-04-10 | books
大学をめざす三浪の徳山。バイト先の仲間に誘われてキャバクラに行った。すると、一人のキャバ嬢が徳山の顔を見て、爆笑する。他の子と較べてもかなりの美人。しかも徳山のことが気に入ったらしい。 → (小説ではお決まりのルーティン)恋愛が始まる。しかししかし、一筋縄ではいかないこの小説。かなりエキセントリックな彼女とのエキセントリックな恋の行方は…

おおっと。これはなんともすさまじく面白い。

彼女がどうエキセントリックなのかが読みどころの一つ。部屋の本棚には「殺人」とか「虐殺」の本がたくさん並んでおり、彼女の脳内にはそれらが住んでいる。彼女のそれらに関する話を聞きながら、徳山は興奮し、語りながら初美も興奮し、セックスをする。通常の読者はこんなのを読むとひいていくのかも知れないけれど、このブログの読者はほとんどがヘンタイだから、たぶん前のめりになって読み耽ってしまうのではなかろうか。

言わば、初美と一緒に堕ちていく感じ。堕落と破滅と死への旅。

読んでいて翻弄しまくられた。翻弄されたい方は読むべし。

死にたくなったら電話して

今日の一曲

昨年末のグラミー賞で4部門受賞した、Sam Smithで"Lay Me Down"



では、また。
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店名にツッコんでください102

2015-04-07 | laugh or let me die
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『断裂回廊』逢坂剛

2015-04-05 | books
公安調査庁の女性管理官が新興宗教の関わる事件の謎+冒頭の公使館内賭博事件の謎を解く。

そんなに悪くはないし、ミステリーとしては及第点なのだけれど、時代物以外のほぼ全ての逢坂作品を読んだファンとしては、、、ネタが小さく、主人公が注意深くなさすぎて、軽い読み物になってしまった、と言ってしまう。特に「百舌シリーズ(MOZU)」を読んでいると。

断裂回廊 (文芸書)

今日の一曲

たまたま見かけた映画The Millionaress(ハズ求む) ソフィア・ローレンとピーター・セラーズが出演している。彼女の美しさ+かわいさがすごい。まだ途中までしか見てないのだけれど、映画も面白そう。ということで映画まるごと一本ご紹介。1時間半もあります。



では、また。
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『限界点』ジェフリー・ディーヴァー

2015-04-03 | books
ディーヴァーの新作は、ノンシリーズもの。アメリカ連邦機関の警護官が主人公。対する敵は、襲撃のプロ中のプロ。ハブVSマングースの闘い。

クライアントはある人物を襲撃し、審問して情報を吐き出させることを、依頼してくる。クライアントにとって重要な情報をもっているからだ。対する警護官はその人物が襲われることのないように、移動させたり、隠したりする。

本作では、(主人公の警護官とは無関係な)警官が何か重要な情報を握っているらしく、彼の身を守らねばならないということになる。襲ってくる敵…彼と妻と娘の身を守る…しかし、敵はその警官から情報を得たいのだろうか…誰かほかの者からではないだろうか…

さすがのディーヴァー。どんでん返しに次ぐどんでん返し。そこは普通は返さないだろうという部分まで返す。(むかし、吉原では遊女と二回目に会うことを「裏を返す」と言ったそうだけれど、ま、それは関係ないか)

単純にどうやって襲撃してくるのか、どうやってブロックするのか、それだけでもたっぷり読ませるのに、それ以外にも読ませどころが多い。いや多すぎ。

襲撃シーンは個人的にはラーメン二郎のごとくに「こってりしすぎ」て、おかわりは難しいのだけれど、それ以外の作戦を立てたり、考えたりするシーンはすごく好きだ。

限界点

今日の一曲

原題はEdge と言えばU2のBonoの相方のEdge "Live Is Blindness"



では、また。
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『白い迷路』ジェイムズ・トンプソン

2015-04-01 | books
「極夜」「凍氷」に続くフィンランド警察ミステリー。第三作はそれまでとはだいぶ趣が変わる。

冒頭、主人公カリ・ヴァーラ警部は国家警察長官のユリ・イヴァロに金を渡し、犯罪者の情報を受け取る。なにやらイケナイお金のようだ。そう。カリは長官と結託して、犯罪者の金を盗み、山分けしているのだ。(なんだと)

そして、フィンランド国内の問題。移民に対する排斥運動。移民を擁護している政治家が殺され、頭部が切り取られる事件が起こった。担当するのはカリ。解決できるのか。

さらに、大富豪の子息の誘拐事件が未解決になっている。その大富豪に頼まれたフランスの情報機関の男が事件解決の協力を依頼してきた。しかしこの男怪しい…

てな具合で、二つの事件解決+「悪い刑事」物語となっている。

前の二作と全然違うのは「悪漢刑事」であること。しかし彼と二人の部下の悪い方へと進んでいくスピード感、そして意外な展開がたまらない。今年読んだミステリーの中でもトップクラス。

作者は昨年亡くなってしまったそう。もう一作は出版されているそうだから、翻訳も出るのだろうけれど、それ以降はこのシリーズは読めないのだろう。とてもとても残念だ。

今日の一曲

ジェイムズ・トンプソン。ジェイムズつながりで、James Brownの"I Feel Good"



昔はこんな激しい動きをしていたのね、

では、また。

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