頭の中は魑魅魍魎

いつの間にやらブックレビューばかり

珍客

2011-09-29 | days

知り合い宅の玄関近くで。








とてもちっちゃくて分かりにくいかも。

ヤモリだ。

見つけて、捕獲して、リリースした。

彼はこれから冬眠するのだろう。

どんな夢を見るのだろうか。

夏が終わり、初秋を通り越して晩秋のような日に思った。



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『1973年のピンボール』村上春樹

2011-09-27 | books

「1973年のピンボール」村上春樹 講談社 1980年

いやいや。驚いた。

何に驚いたかと言うと、過去にどんな村上作品読んだんだっけ?と思い(基本的には読み返したくない)自分の過去記事をindex頼りに読んでみた。読んでみたら、見事のどのレビューを読んでもストーリーが書いてない。という自分に驚いた。

なにしてんねん、俺。

まあ書いたそのときはストーリーを語りたくなかったのか、もしくはストーリーが分からなかったのだろうが。しかし、後で読み返したら役に立たないレビューじゃしょうがないだろう。

が、しかし、

今回もストーリーは書けない。書きたくないのではなく、つかめなかったので書けない。
1969年から1973年の大学生時代(?)、翻訳会社の設立、女性との恋、ピンボールマシンの話。

意味はつかめなかったけど、文章は読んでいて心地いいのは確か。


「あたしは四十五年かけてひとつのことしかわからなかったよ。こういうことさ。人はどんなことからでも努力すれば何かを学べるってね。どんなに月並みで平凡なことからでも必ず何かを学べる。どんな髭剃りにも哲学はあるってね。どこかで読んだよ。実際、そうでもしなければ誰も生き残ってなんかいけないのさ。」(文庫版93頁より引用)



ふーむ。

では、また。




1973年のピンボール (講談社文庫)
村上春樹
講談社
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『ダンス・ダンス・ダンス』村上春樹

2011-09-25 | books

「ダンス・ダンス・ダンス」村上春樹 講談社 1988年

フリーライターをする僕。札幌のいるかホテルに一緒に泊まった「彼女」への記憶。もう一度泊まろうとしたいるかホテルのその後。ホテル従業員の女性、13歳の少女ユキ、古い友人で俳優の五反田君、何かが繋がる繋がる…

うーむ。ストーリーを紹介するのが難しい。何を書いたところでハルキ世界を説明することのはならないような気がする。

浮遊する感じ、に書いたように、こんな小説に耽溺してはアカンアカンノヤ、という思いと、同時にドウシテ ワタシノコトシッテルノ?コノトウジョウジンブツ ワタシデショ?という思いが襲ってくる。

そう。村上春樹の作品を読んでいると、どうして私の個人的な内面世界がここに描かれているのだ?と思うことが多い。

例えば冒頭に描かれる僕とある女性との関係、彼の思い、彼女の思い、台詞、まるで私のことを書かれているようだ。ちょっと鳥肌が立った。

本作のテーマは自分の帰属感覚なんだろうと思う。内面世界を具現化した羊男との会話では、自分がこの世界に含まれているかどうかについて、というようなことが分かり安いようで分かりにくい会話が交わされる。

これがまた、私の胸に沁みる。久保田利伸の「TIMEシャワーに打たれて」には、「どこにいてもそこで生まれた気がしてる」という歌詞がある。しかし私はずっと前から「どこにいてもそこで生まれた気がしない」と思っていた。ずっとずっと前から。今もそう。この世界に含まれている感じがしなかったのだ。その私の思いに対して、答えを簡単に与えてくれるのではなく、自分で考えながら自分の答えを見つけていく、そんな機会を与えてくれた。

少なくとも、私が中学生、高校生、いや大学生のときでもこの作品を楽しむことは出来なかった。若くして楽しめる人たちは私よりずっと知的な成熟が早いんだろうと思う。私はやっとおとなになったよ。


 踊るんだよ、と羊男は言った。それも上手に踊るんだよ、みんなが感心するくらい。(文庫版上巻293頁より引用)




オドレオドレ タダオドレ リクツナンテ イラナイ




ダンス・ダンス・ダンス(上) (講談社文庫)
村上春樹
講談社

ダンス・ダンス・ダンス(下) (講談社文庫)
村上春樹
講談社
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ハワイ島の看板ドッグ

2011-09-23 | travel

ハワイ島はコナコーヒーの産地。

コーヒーはドリップして毎日飲んでいるけど、高級なものには縁がない。ブルーマウンテンが一番高級だと思っていたらその上があった。カルディでいくらか忘れたけど、ぶっちぎりでコナが高かった。

そのコナコーヒーの農園がたくさんあって見学できる。

レンタカーを駐車場にとめて、見学しようとしたら、こんなやつがとことこと出てきた







何やら、こっちこいよ、俺についてこいよと言っている風。

ついていくと、たまに後ろを振り返り、ちゃんとついてきているか確認している。おーぷりてぃ。







建物から出てくると、ちゃんと待っていて、次の場所に案内してくれる。おーまいがっ。

犬は飼ったことがないし、今の環境にいれば無理。しかしいつか飼うのなら、ビーグルかジャック・ラッセル・テリアがいいと決めている。

牛にひかれて善光寺参り。

犬にひかれてコーヒー農場見学。

自分が気に入るシチュエーションがいつ、どんな場所でやってくるか決して事前に予想することなんて不可能、ということを確認した、ハワイ島の一日であった。

では、また。
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浮遊する感じ

2011-09-21 | days

「本の雑誌」で荒山徹の「十兵衛両断」が面白いとあった。あまり読まないジャンルなんだけども、突然読みたくなって読み始めてみた。

柳生十兵衛は実は朝鮮人とすり替わっていたというような、ちょっと信じられない、にも関わらず読んでしまう不思議な連作短編集。柳生+朝鮮+妖術が軸になるというだけあって、怪しさとリアリティが混在する感じがなかなか。

ところが、読んでいる途中で、もたれてきた。胃が疲れているのにこってりしたものを食べている感じ。作品には何の罪もなく、単に私の消化力の問題。

だったら何も読まないというわけでもなく、浮気するために積ん読山脈からいくつか取り出してペラペラめくっていた。友人から借りたままずっと返してなかった村上春樹「ダンス・ダンス・ダンス」をめくり始めた。最初の数頁を読んで何度も脱落してたけれど。

今回はすぅっと頭に入ってきた。なぜだろう。今の自分の気持ち(=自分では説明がむつかしい)に合う。戸隠へのたびの宿で読んでいたら、スイスイと進んだ。

たびの帰り、信州の北は遠く、運転は長時間になる。どういうわけかカーオーディオで聴き始めた、山下達郎のCOZYとARTISANというアルバム。これがスルスルっと心に沁みてくる。特にヘロンとFRAGILEとエンドレス・ゲームという曲。嗚呼。

しかし、これじゃいけないと思った。村上春樹と山下達郎が一年365日心に入ってくるようでは。他の作品が入ってこないようでは。

うまく説明できないんだけど、ドロドロとしたリアリティから離れた作品世界に耽溺ばかりしていると、現実逃避(うーん、それとも違うか)、好ましくない自分のリアルな生活に眼を背けるために触れていた作品に、リアルな生活が取って代ってしまうような気がする。

うーん。ことばにするのがむつかしい。少なくとも、村上春樹や山下達郎が大好きな人に対して何やらネガティブなことを思っているわけじゃない。

私自身がその世界に自分を持っていかれそうで、オイオイアブナイアブナイ と思うのと、持っていかれるということは、それだけ物語の力が強いということもまた思う。

では、また。




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ホノルルの夜

2011-09-16 | travel




ハワイ島に行った帰りに一泊だけした、オアフ島。

そこで見かけた夜の風景。

もうちょっとキレイな写真をアップすればいいのにと思いつつ。

まだまだ残暑が厳しく、毎日「あちーなー」と思いつつ。

では、また。

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うぉう

2011-09-13 | days
岡ひろみのメラメラトマト鍋の素 お蝶夫人のキラキラ白湯鍋の素
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『犬と鬼』アレックス・カー

2011-09-11 | books

「犬と鬼 知られざる日本の肖像」アレックス・カー 講談社 2002年

著者はアメリカ生まれ、横浜の米軍基地に暮らし、エール大学で日本学を専攻、慶應義塾大学で研修、アメリカの不動産開発会社の日本代表、徳島の古民家を購入した、というような人物。その彼が書いた、日本論とは…

うーむ。考えさせられることが多い。

外国人が書いた日本論は、新鮮だったりして面白く読んだ時期もあったけど、いつしか飽きてしまっていた。たまたま機会があって手に取った本書には後頭部をガツンとやられてしまった。

日本がなぜ土建国家になったのか、バブル、官僚制、京都の景観などを取り上げ、いかに日本が「よろしくない」方法で日本を「ダメ」にしてきたかが書かれている。Amazonのカスタマー・レビューを見ると、極端に賛否両論。否定している人は、細かい部分での正確さの欠如をあげる人と、アメリカ人が何を言うんだという言い方をしている人がおられる。なるほど、色んな見方があるんだなと思った。


欧米人が日本について書くとなると、「日本はこうすべきである」といった表現が多くなりがちだが、本書はそれを避けている。これは外国人が日本に対して何かを要求するのはおかしい、という私の信念からだ.(379頁より引用)


ここ10年くらいの日本に対して抱く強い危機感。政治も経済も文化も。ちょうどその気分と合致したのか、本書がドキッとさせてくれたのだろうと思う。読みながら昔を思い出したり、日本の悪い所をよく考えさせてくれる。良い所はあまり記述されていないので、まるで○○すべきだと言われているような気分になるが、上記のように○○すべきだと著者が書いているわけじゃないのだ。


細部へのこだわりと仕事への情熱もあり、世界一優れた「近代」国家となりうる条件をすべて備えていた。が、そうはならなかった。(163頁より引用)

日本では、いったん「オン」のボタンを押したが最後、どこにも「オフ」のボタンはない(201頁より引用)



アレックス・カー氏がインタビューで http://www.globe-walkers.com/ohno/interview/alexkerr.htm 日本は破産するしかない、と言っているけど、まさにその通りだと思う。バブル崩壊、金融システム崩壊、保険破綻、証券会社破綻、年金破綻、55年体制の崩壊と色々な「破産」「出直す」「再生する」チャンスがあったのに、再生する兆しすら見えない日本は、今後もこのままなのだろうか… 日本を愛する一人として、何が出来るのだろうか…と思うけれど、しかし、

「一億総中流社会でいいじゃん、まあそんなに居心地が悪くなければいいじゃん、てゆうか現状打破とかめんどいし」というような空気を自分が吸い吐きしているということも否定できない。だから、具体的に何をどうしたらいいのか、えらそーに言うことばを持たない。そんなんじゃいけないけど。

では、また。





犬と鬼-知られざる日本の肖像-
アレックス・カー
講談社
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『温室デイズ』瀬尾まいこ

2011-09-09 | books

「温室デイズ」瀬尾まいこ 角川書店 2006年(初出野生時代2004年8月~12月)

荒れる中学校。小学校時代のいじめをとめられなかったことを後悔するみちる。そのときにいじめられ、別の小学校へ転校したのに、みちると同じ中学に入学した優子。無二の親友となった二人の視線から、荒れた中学校を描く。

うーん。色々と考えさせられる。いじめや学級崩壊、学校破壊という今も昔もそこにある問題についてとてもリアルに感じる。そして引き込まれるストーリーのうまさ、それが強くある。しかし、必ずしも中学生と教師だけの問題じゃなく、もっと広い範囲にあてはまる人間描写とか台詞が心を強く打つ。


教室に行きたくない。そういう私に別室登校が認められ、学校に行きたくなければ、次のものが用意される。教室でまともに戦うみちるには、誰も手を差しのべないけれど、逃げさえすればどこまでも面倒見てもらえる。教室で戦うのはドロップアウトするよりも何倍もつらいのに。私はそんなことを考えながらも、ひたすら『坊ちゃん』を読んだ。(113頁より引用)



目の前にある困難に立ち向かう者と、いつも逃げる者。それは学生だけじゃなく大人にも言えること。逃げることがいつも悪いことではもちろんなく、困難から逃げないことはいつも良いことではないけれど。私自分自身について省みるいいヒントになったし、社会全体(というほどエラソーなことでもないけど)について、ボヤンと考えるヒントにもなった。

そういう、ヒントをくれる本は私にとっていつも、美味しい食事だ。

では、また。




温室デイズ
瀬尾まいこ
角川書店
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映画「ソーシャル・ネットワーク」

2011-09-07 | film, drama and TV

DVDにて鑑賞。

facebookの創業の前後の経緯に「フィクション」を加えて描く。どこまでが事実なのかは分からない。ある「起業」と「現象」と「人物」を描いた映画だと思い、気にせずに楽しませてもらった。

主人公マーク・ザッカーバーグの天才ぶりと人を人と思わないサノバビッチぶり。こういうやついるよな、いやしかしひどいなーと何度も思った。ラスト近辺で弁護士が「あなたは悪い人ではなくそれを演じている」と言うけれど。

ナップスターのショーン・パーカーをジャスティン・ティンバーレイクが演じていたりハーバードの学長として元財務長官のラリー・サマーズ役を演じる役者がいたりしておっと思った。

ザッカーバーグの、ここで描かれた人物像は、決してfacebookに対するいい宣伝にはならないだろうと思う。しかし宣伝映画なら観る気はならないだろうけど。

うーん。何回かここでレビューを書き直しているんだけど、どうもうまくまとまらない。特にこういう映画は。

コードを書くことに秀でた者たちと彼らが所属する集団に金が集まるという傾向は、あと何年続くのだろうか…




ソーシャル・ネットワーク 【デラックス・コレクターズ・エディション】(2枚組) [DVD]
クリエーター情報なし
ソニー・ピクチャーズエンタテインメント
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『犯罪』フェルディナント・フォン・シーラッハ

2011-09-05 | books

「犯罪」フェルディナント・フォン・シーラッハ 東京創元社 2011年
VERBRECHEN, Ferdinand von Schirach 2009

現役の弁護士である作者が、現実に遭遇した事件を元に描いた連作短編集。O・ヘンリーの短編集並み、あるいはそれ以上。

フェーナー氏 嫉妬深い悪妻を持つ開業医が犯した罪は…

タナタ氏の茶碗 先祖伝来の茶碗を盗んだ者の行く末は…

チェロ 大金持ちの息子と娘は父親から愛を与えられなかった…

ハリネズミ 犯罪者ばかりの家庭では優秀な男が、逮捕された兄のために諮ったプランは…

幸運 娼婦の彼女と、その彼。殺人事件の顛末は…

サマータイム 大富豪が、女子大生を殺した?

正当防衛 ヤンキー二人組に駅で襲われそうになったさえない男は、目にも止まらない技で、彼らを殺すが…

 伯爵の息子が羊を殺している。女の子が行方不明に。彼が?

 美術館でずっと毎日同じ部屋で警備しなくてはならなくなった男は…

愛情 カニバリズム カニバリズム

エチオピアの男 銀行強盗で逮捕された男の意外すぎる過去は…


てな感じ。

面白いなんてもんじゃない。すごい。面白い。面白すぎると何度となく唸りながら読んだ。

それぞれ全てに、強烈なオチがある。実際にあったことだとはちょっと信じられない話ばかり。うーむ。うーむ。

なんと言うか、人間の奥の方、奥の奥の方ってこんな感じなのだろうかと、とりとめもない想像&妄想に走らせてもくれた。

では、また。



犯罪
フェルディナント・フォン・シーラッハ
東京創元社
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酷使

2011-09-03 | music




夜布団に入り、iPodを聴きながら眠る。

朝になると、イアホンが絡まり絡まる。

ということを毎晩続けていると、

断線し、耳穴に入れる部分も壊れた。

夜中には、これらが私の首を締め顔に絡まっているのだろう。

ビデオに撮っておけばちょっとしたホラーだ。


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『謎の十字架 メトロポリタン美術館はいかにして世紀の秘宝を得たか』トマス・ホーヴィング

2011-09-01 | books

「謎の十字架 メトロポリタン美術館はいかにして世紀の秘宝を得たか」トマス・ホーヴィング 文藝春秋社 1986年
KING OF CONFESSIORS, Thomas Hoving 1981 

十年以上前に、美術品に関する、まるでミステリーのようなドキュメントを読んだ記憶があってまた読んでみたいと思った。昔のメモを探し出してきたんだけど、判読できない。それからしばらくして、著者がメトロポリタンの館長だったことを思い出して、ネット検索してやっとタイトルが分かった。

メトロポリタン美術館でキュレーターとして若い時を過ごすホーヴィング。象牙でできた十字架について耳にする。それは全長2フィート、たくさんの彫像が刻まれ、ラテン語、ギリシア語、ヘブライ語の銘文もぎっしりと刻まれていると言う。売主はユーゴスラビアからオーストリアに帰化したトピーク・マチューアン・ミマラと称する男。かなり怪しげ。まだ売れていないというその十字架について調べてみると、メトロポリタンの館長ジェイムズ・ロリマーは購入を却下したということが分かった。

ホーヴィングは何とかトピークに連絡をとり、チューリッヒの銀行の金庫でその十字架を眼にする。その十字架は紛れもない傑作だと確信したホーヴィング。食わせ物の館長をどう説得すればいい?ライバルのクリーブランド美術館、大英博物館、ヴィクトリア&アルバート博物館の動きはどうだ。美術界を蠢く海千山千の者たちとの闘いの行方は…

いやいやいや。興奮した。読みながら「面白いよ。面白すぎるよ」とつぶやいてしまうくらい。

この十字架は本物なのか(現物をニューヨークで調べることをトピークが許さないので簡単には分からない。写真撮影も許さない)、トピークは何者なのか、盗品ではないのか(彼はナチが略奪した美術品の返還委員会のメンバーだったので怪しい)、ライバルの動き、館長の言動。ミステリーのように謎が提示されそれが解かれていく様を楽しむことができる。

極めて詳細な各登場人物の台詞、なめらかなストーリーテリング。再読のはずなのに、初めて読むように興奮させてくれた極上のエンターテイメントだった。

では、また。




謎の十字架―メトロポリタン美術館はいかにして世紀の秘宝を得たか
トマス・ホーヴィング
文藝春秋


↑新刊は在庫がないようだ。


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