「犬と鬼 知られざる日本の肖像」アレックス・カー 講談社 2002年
著者はアメリカ生まれ、横浜の米軍基地に暮らし、エール大学で日本学を専攻、慶應義塾大学で研修、アメリカの不動産開発会社の日本代表、徳島の古民家を購入した、というような人物。その彼が書いた、日本論とは…
うーむ。考えさせられることが多い。
外国人が書いた日本論は、新鮮だったりして面白く読んだ時期もあったけど、いつしか飽きてしまっていた。たまたま機会があって手に取った本書には後頭部をガツンとやられてしまった。
日本がなぜ土建国家になったのか、バブル、官僚制、京都の景観などを取り上げ、いかに日本が「よろしくない」方法で日本を「ダメ」にしてきたかが書かれている。Amazonのカスタマー・レビューを見ると、極端に賛否両論。否定している人は、細かい部分での正確さの欠如をあげる人と、アメリカ人が何を言うんだという言い方をしている人がおられる。なるほど、色んな見方があるんだなと思った。
欧米人が日本について書くとなると、「日本はこうすべきである」といった表現が多くなりがちだが、本書はそれを避けている。これは外国人が日本に対して何かを要求するのはおかしい、という私の信念からだ.(379頁より引用)
ここ10年くらいの日本に対して抱く強い危機感。政治も経済も文化も。ちょうどその気分と合致したのか、本書がドキッとさせてくれたのだろうと思う。読みながら昔を思い出したり、日本の悪い所をよく考えさせてくれる。良い所はあまり記述されていないので、まるで○○すべきだと言われているような気分になるが、上記のように○○すべきだと著者が書いているわけじゃないのだ。
細部へのこだわりと仕事への情熱もあり、世界一優れた「近代」国家となりうる条件をすべて備えていた。が、そうはならなかった。(163頁より引用)
日本では、いったん「オン」のボタンを押したが最後、どこにも「オフ」のボタンはない(201頁より引用)
アレックス・カー氏がインタビューで http://www.globe-walkers.com/ohno/interview/alexkerr.htm 日本は破産するしかない、と言っているけど、まさにその通りだと思う。バブル崩壊、金融システム崩壊、保険破綻、証券会社破綻、年金破綻、55年体制の崩壊と色々な「破産」「出直す」「再生する」チャンスがあったのに、再生する兆しすら見えない日本は、今後もこのままなのだろうか… 日本を愛する一人として、何が出来るのだろうか…と思うけれど、しかし、
「一億総中流社会でいいじゃん、まあそんなに居心地が悪くなければいいじゃん、てゆうか現状打破とかめんどいし」というような空気を自分が吸い吐きしているということも否定できない。だから、具体的に何をどうしたらいいのか、えらそーに言うことばを持たない。そんなんじゃいけないけど。
では、また。