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超弩級ミステリー『コマドリの賭け』ジョー・ネスボ

2015-09-15 | books
ノルウェーミステリー。

老人が高性能ライフルを手に入れる。ネオナチはベトナム人を襲撃する。時は1999年。一転して1942年、第二位次世界大戦時、ノルウェーの若者5人がナチスドイツに協力してソ連と戦っている。亡くなる者あり、生き残る者あり。負傷したときに出会った看護師と恋におちる者あり… ライフルとネオナチの件、真相を知った刑事の身が危うくなり…

うーむ。うーむ。登場人物が多すぎて、筋立ても複雑な割に、収束の仕方も上手でない。にもかかわらず、箆棒に面白い。いや読めないか。べらぼうに面白い。

ネオナチネタとテロ(?)、戦時と現代の交錯。最も好みのパターンなだけじゃなく、登場人物の味がまたいい。

本作はハリー・ホーレシリーズの第3作。第4作の「ネメシス」の評判(書評七福神の七月度ベスト)がよく、第3作の謎がこちらで解決されるというので、だったら4作の前にこっちを読もうとした次第。他に第1作の「ザ・バット 神話の殺人」と第7作の「スノーマン」が邦訳されている。順番通り出してくれれば読みやすいと思うけれど、もろもろ大人の事情があるのだろう。

ちなみに本作は絶版となってしまっている。版元のランダムハウス講談社は倒産してしまったから。

本作で残った謎については、これを読んだけど忘れてしまって、でも「ネメシス」を読みたいという人のために、下にネタバレを書いておく。

コマドリの賭け 上 (ランダムハウス講談社文庫)コマドリの賭け 下 (ランダムハウス講談社文庫)
ネメシス (上) 復讐の女神 (集英社文庫)ネメシス (下) 復讐の女神 (集英社文庫)

今日の一曲

作者はジョー。元イーグルスのギタリスト、Joe Walshで"In The City"



【一部をネタバレ】「コマドリの賭け」で積み残された謎とは、プリンスの件。プリンスとは刑事ヴァーレルのこと。ネオナチからライフルを購入したいと頼まれて、南アフリカから非合法に入手したのはヴァーレル。同僚刑事のエレンは、ネオナチに手数料を支払っていないことがヴァーレルの携帯電話で話されるのを聞いてしまった。それでエレンは殺されてしまう。主人公ハリーはエレンを失った喪失感でいっぱいになるが、ヴァーレルのことは全く知らないまま「コマドリの賭け」は終わってしまう。「ネメシス」でそれに触れなかったらぶっとばすところだった。ヴァーレルが何者か詳しい描写もなかった。

では、また。
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