頭の中は魑魅魍魎

いつの間にやらブックレビューばかり

『にじいろガーデン』小川糸

2014-10-31 | books
夫が家からいなくなった。6歳の息子の草介と暮らす泉35歳。駅のホームで飛び込み自殺しそうな女子高生を見つけた泉は声をかけ、そして自殺をとどまらせ、そして仲良くなる。女子高生の名は千代子。お嬢様ではあるが親とはうまくいっていない。泉の家に頻繁にやって来るようになった。そして事件が。千代子にキスされてしまったのだ。そして彼女の愛を受け入れるようになった泉。千代子の親は同性愛を許さない。二人は息子とともに駆け落ちすることにした……

なんて書くと、逃避行の持つ淫靡な雰囲気とか、同性愛の後ろめたさのような感覚が小説のあちこちにばら撒かれているように思うかもしれない。それは全然違う。むしろ、干したばかりの布団のような柔らかくて懐かしい、そんな匂いがする小説なのだ。

田舎に住むという選択をした後は、「田舎で暮らすとはどういうことか」という話もたくさんあるし、草太という「小さな息子が、母親が二人いるという状態をどう理解するか」という話もあるし、彼女たちの家族構成が「どう他人に受け入れられるか」という話ももちろん出てくる。

わたしたちの関係を詮索したりうがった目で見たりする人はいなくなった。つまり人は隠すから、そこに何があるか見たくなるのだ。きっと、誰もが素っ裸で歩いていたら、痴漢をしたり隠し撮りしたりする気持ちだって、失せるのでないかと思う。


確かに。禁止されるからやりたくなるということは多い。ゲーム、不倫、ギャンブル、いたずら。隠すから見たくなるものも結構あるのかも。(パンチラに興味を持つ男子が少なくないのもそれか?)

「人って、生まれてくる時に、同じ量の粘土を与えられているんじゃないかと思うんだ。はじめはさ、丸い粘土の固まりに、親指を突っ込んだだけの、原始的な小さな器なんだけど、それが成長するにつれて、一回り大きなぐい飲みくらいの器になって、更にもっと大きな湯呑茶わんになったりする。人によっては、平べったい皿だったり、汁物を入れられる深めの鉢だったり、いろいろなの。こんなふうに、植木鉢になったりする人もいるかもしれない。常識から言ったら穴は欠点になっちゃうけど、穴が開いているからこそ植木鉢としての役割をまっとうできるの」

穴だらけで、おちょこのように小さい男、まさに器の小さい私でも何かの存在意義があるのだろうかと思った。なんつって。


しかし、すべてが温かい。本当に温かい。最近寒くなってきたけれど、読むと温まる。とってもいい小説だった。

にじいろガーデン

今日の一曲

上手くいきそうでうまくいかない。ありすぎては困るし、なくては淋しい。それは恋。悲しい恋を歌う、Keisha WhiteのThe Weakness In Me



では、また。
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『トランク・ミュージック』マイクル・コナリー

2014-10-30 | books
マイクル・コナリーは、LAの刑事ハリー・ボッシュシリーズを4冊書いたあと、新聞記者のマカヴォイによる「ザ・ポエット」を出す。その後、ボッシュが主人公になる本作を出した。

ロールスロイスのトランクの中で見つかった遺体。映画関係者らしいが、作っている映画は商品にはならないようなものばかり。どうやらマフィアの金をロンダリングしていたようだ。ボッシュの上司やチームメイトとは以前とは違って、気持ちよく仕事ができる。被害者の足どりを追って行ったラスヴェガスのカジノで見たのは、以前付き合っていたエレノア・ウイッシュだった。彼女が事件に関わっているのだろうか… ボッシュの捜査を妨害する輩をどう蹴散らすか…

何と言うか、ハリー・ボッシュシリーズ(あるいはマイクル・コナリーの作品)は間違いないと言うか、必ず楽しめるだけのクオリティが確保されている。この安心感が、むしろ、一気に連続してシリーズを読んでしまえ!の冷えたビール的な読物じゃなくて、たまにちょっとずつ読む、ちびちびとすする熱燗のような読物に、私の中で位置づけられているのかも知れない。

「だれかが彫刻家に、ただの御影石の塊をどうやったら女性の美しい像にすることができるんだ、と訊ねた。すると、彫刻家は、女でないあらゆる部分を削り落とすだけのことだと答えたという。」

「ぞっとするわね、ときどきだれがいい人間でだれが悪い人間なのか区別がつかなくなるのは」


トランク・ミュージック〈上〉 (扶桑社ミステリー)トランク・ミュージック〈下〉 (扶桑社ミステリー)

今日の一曲

舞台のカリフォルニア出身のバンド。The OffspringでPretty Fly



では、また。
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『物語のおわり』湊かなえ

2014-10-29 | books
イヤミスの女王のようなイメージがあるけれど、「山女日記」のような、そうでもない作品もある湊かなえ。連作短編集の本作。

地方のパン屋の娘。本を貸してくれる高校生の男子の影響で本が好きになった。小説家になりたい。その男性も好きになった。パン屋を継がなくてはならない、しかし小説家になりたいという葛藤を描く、最初の短編。次の短編は、別の主人公が何かに悩むことと、それと関連して冒頭の彼女が書いた小説をその主人公が読むという形式をとっている。

面白い形態だと思ったのだけれど、相変わらず湊かなえらしく、テクニックが先に来てしまっていて、ストーリーの不自然が鼻につく。ああ駄作だなと思いつつ読んでいた。しかししかし、そう思った私が間違っていた。全部で8篇ある中で4つ目辺りから面白くなってきた。いや面白いというよりも、ええ話やなーと思ったり、各短編の関連性の付け方が巧いなーと思ったり。

今までの「泣ける」とか「感動する」にはもう飽きた。エキセントリックな形で感動したいと心の中で叫び続ける人に薦めたい。

ドラマ「Nのために」の放送が始まった。原作を読んだはずなのに、何ひとつ覚えていない。もしかすると湊かなえの、奥深いところにある価値は、読んだ人に内容をすぐ忘れさせるところにあるのかも知れない。エンターテイメントはそれでいいのだよ。たぶん。

物語のおわり

今日の一曲

物語は終わる。逆に物語は終わらない。と言えばNever Ending Storyなのだけれど、オリジナルではなく、E-girlsのカバーで。



E-girlsはK-POPのコピーに過ぎないよという知り合いがいて、また彼女らはかわいくていいじゃんと言う知り合いもいる。K-POPのことはよく分からないのだけれど、どうなのだろう。

では、また。
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便利ってさー

2014-10-27 | days
>便利になって、長生きするようになって、手にした時間はどこに…

「日本景観論」という本のレビューに対して、パールさんという方に、上記のようなコメントを頂戴しました。コメントについて考えているうちに、長くなったので、返信込みで以下に書いてみます。


海外に情報を伝える方法として、船で手紙を送るしかなかった時代。1857年、英国統治下のインドでシパーヒーの反乱がインドで起こりました。その情報が英国本国に届くには時間がかかり、反乱の収拾は遅れました。その後、英国はモールス信号を使った電信に注目し、インド英国間にはケーブルが引かれました。情報戦争で他国の一歩先を行ったという感じでしょうか。

その後、電報、電話が発明され、ファックス、電子メール、など伝えたいと思った情報を遠くにいる相手に伝えるスピードは飛躍的に速くなりました。

さて、情報を伝える側や受け取る側、100年前と今現在と較べて幸福なのはどちらなのでしょうか。情報が相対的に速く早く伝えられるようになったことは、イコール幸福なことなのでしょうか。

移動手段はどうでしょう。たとえば商社マン。アメリカに出張に行くには、昔は船。たしか1か月近くかかったのではないでしょうか。飛行機が登場したら、LAまでアンカレッジ経由かかった時間は20時間ぐらいでしょうか。それが今では10時間ぐらい。ずいぶんと速くなったものです。

さて、商社マンくん。船で出張しなくてはいけない時代に、「もしアメリカまで10時間で行けたら、どう?」と尋ねたら、「そりゃ、さぞかし楽だろう。今の激務から解放されるし嬉しいね。未来はそんななの?」と言うでしょう。さて、彼の仕事は楽になり、昔よりも暇ができているでしょうか。過労死とは昔の言葉で、今は死語なのでしょうか。

「便利」さとは、何かをすることが短時間でできることだと思いますが、短時間でできることがすなわち「とっても良いこと」なのでしょうか。

「便利」なって幸せになれるはずでした。でも、毎日会社のパソコンに膨大なメールがやって来て読んで返信するだけで1時間もかかる状態になる人もいます。A地点からB地点へ簡単に移動できるようになっていまった代わりに、途中の景色を全く知らないまま過ごしてしまう人もいます。カーナビに頼ることで、地理感覚も失ってしまった人もいます。(私の事です)

物事には必ず裏と表、2面があります。便利の裏側には何があるのか。我々が便利さを得た代りに何を失ったのか。考える時が来たのではないでしょうか。

(ここでバンと演台を叩く)

便利さの裏側には、我々がみな自分の時間を無駄遣いし、そして他人の時間を無駄遣いする。そんな現象が隠れているのです。

浮いた時間をそれほど有効に活用できない、そんな愚かな生き物が人間なのです。せっかくもらったお小遣い。そして、わかっちゃいるけどめられない、それが人間なのです。

今よりも情報の伝達が速くできるようになるとすると、近未来には、相手の脳に直接言いたい事を伝えられるようになるかも知れません。そんな時代が来て欲しいですか……

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以上、弁論大会中学生の部風でお送りしました。

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今年読んだ本1位かも知れない『銀河英雄伝説4<策謀編>』田中芳樹

2014-10-25 | books
軍を率いるにの優れ、権謀術数にも秀で、クールな男がA国の宰相になった。いわばカリスマが宰相になった。そのライバルの国Bでは、歴史の勉強をしたいだけの穏健な者が、仕方なく軍に入り、しかしながら、軍事に天与の才能があって、軍を率いてA国に勝った。しかし、A国とB国は一進一退を繰り返し、どちらが優勢か甲乙つけがたい状態にあった。A国には絶対君主がいて、B国は民主的な共和制。それに加えてC国。小国で軍事的には弱い。しかし通商を握る。

というような物語を描きたい場合、どういう設定にすればよいだろうか。

現代の実在の国に当てはめるのなら、A国は中国、B国はアメリカ、Cは日本?習近平がカリスマ的指導者で、オバマが民主的指導者で、と描いたら嘘になってしまうし、今現在ある国でそのような指導者が、仮に存在したとして、と描くのもかなりリアリティに欠ける。

過去の歴史に当てはめるのも難しい。だったら、全く架空の世界で、これこれこういう国がありましたとさ、と書くとたぶんそれがファンタジーになるのだろう(ファンタジーはほとんど読まないのであまり詳しくない)

それを未来の設定にしてみる。500年後の未来。未来だったら、宇宙の中にいくつも星を支配する国家という大きな設定にできるし、過去の歴史や現在の世界情勢に囚われず自由に描ける。宇宙の覇者になるのはA国なのか、B国なのか、あるいはC国なのか。また、未来なのだから、ある程度ロケットが飛んだり、ワープしたり、科学が大幅に進歩した状態を描いてもおかしくないだろう。しかしあくまでも三つの国の、政治、外交、財政、あるいは人間の嫉妬、自己顕示欲、というような文系のアプローチからは逸脱しない。それがこの「銀河英雄伝説」なのだ。

だから、SF食わず嫌いの私のような、想像の翼が小さい粗忽者が読んでも、とってもとっても楽しめる。いやいや。むしろ、これほど面白い小説には二度と会えないかもしれない。

大きなブロットも、小さな描写も、台詞も、人物も、全てが行き届いていて、何の文句もつけようのないすごい作品。神は細部に宿ると言うけれど、だとすれば神が住んでいるのはこの小説の中に違いない。

「卿の言うのは、中学生むきの、マキャベリズムの講義だな。そのていどのことを私がわきまえていないと思うか」

盗賊には三種類ある、とは、誰が言ったことだあっただろうか。暴力によって盗む者、知恵によって盗む者、権力と法によって盗む者…

腐敗した民主政治と清潔な独裁政治のいずれをとるか、これは人類社会のおけるもっとも解答困難な命題であるかも知れない。

過去を美化することは、遠ざかる女性の後ろ姿だけを見て美女と決めつけるにひとしい、と、誰かが言っていた。

そこの、SF食わず嫌いの貴方。騙されたと思って、最初の方だけでも、読んでみなされ。(第一巻のレビュー

銀河英雄伝説〈4〉策謀篇 (創元SF文庫)

今日の一曲

なぜかジャズ。Bud PowellでYardbird Suite



では、また。
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『ニッポン景観論』アレックス・カー

2014-10-23 | books
「犬と鬼」などで、古き良き日本を守るべきだと論じてきた著者。いかに、余計な看板や注意書きが日本の景観を損ねているか。日本中どこにいっても同じでつまらないかということを、今回は、写真多めな新書で論じている。

多くの人と共有できる意見かどうか分からないのだけれど、私はほぼ同意見。前から思っていたことが軽く噴出してしまった。

日本中どこに行っても、「お年寄りには席をゆずりましょう」「安全運転」「この中に入ってはいけません」などの張り紙、看板がある。99パーセント不要なモノばかり。(本当に大切な看板なんてあったっけ?)そんなことをいちいち言う方も言われる方も、どうかしてるぜ(ブラックマヨネーズ吉田風で)大事なことを、必要なタイミングで言うのでなく、不必要なことをたくさん言うのが日本的な体質なのだろうか。

地方に行くと、がっかりすることが少なくない。東北に来ているのに、神奈川と景色があまり変わらない。仙台も金沢も名古屋も博多も、どこに行っても、駅周辺では似たような景色しか目に入って来ない。車を運転して、市の中心を離れると、これまたどこも同じような景色。旅行が、そこでしか見られない名所をちょっと見るツアーに参加するだけで充分になってしまう。開発が、結局、日本中どこも同じ状態を作り出してしまった。

外国からお客さんをたくさん呼びたいのなら、このような開発はすべきではなかっただろう。国内をあちこち旅行する日本人を増やしたいなら、日本各地はそれぞれ全然違うという多様性を担保しておくべきだっただろう。(毎年毎年新製品を生み出すということで消費マインドを刺激するというのが日本的な経済刺激策だったけれど、それって「正しい」のだろうか)

家屋に関しても、どこに行っても同じような建て売り、同じようなマンションばかり。しかも耐用年数が数十年しかないので、また新しく建て替わる。そして古き良きものな何ひとつなくなる。ヨーロッパでは、地震が少ないということもあるけれど、100年も前の建物に住んでいる人が多くいる。古くからの景観を保っているのであれば、そこに行けばそこにしかないものが見られるわけで、そこに観光に行く意味もあるわけだ。

古くから歴史があって、古さを売り物にできる国だったはずなのに…

失ってしまったこと、今現在失いつつあることがたくさんある反面、食べ物や安全など、日本にはたくさんいいものがある。

でも残念ながら、金その他の諸々の条件が整えば、ここ日本は、老後に住みたいと思う場所ではないかなー。

ニッポン景観論 (集英社新書)

今日の一曲

失った何か。30歳になって何の変哲もない容れ物になったと歌う、Lost In Timeの「30」



では、また。
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『エブリシング・フロウズ』津村記久子

2014-10-22 | books
大阪、中三、ヒロシ。の日常を、さっぱりとした文章で描く。かなり淡々とした話が続く。ヒロシが気になるソフトボール部の子、昔塾で一緒だった子。しかし、退屈な話が続くので寝そうになってしまう。そこへ山場その1が。友達のヤザワが、中二の女子を妊娠させ捨てたという噂が流れる。ヤザワに対して度を超えた攻撃がされるようになる。山場その2。ソフトボール部の大土居。小一の妹に対して義父がいやらしいことをしているらしい。大土居は彼女を守ろうとするが、母親は義父の話しか聞かない……

面白いのと、つまらないのの中間にある。何と表現したらよいか。

間中は、塾で最も成績のいい篠崎舞と付き合っている。篠崎は、典型的な、努力しているように見えなくても勉強ができるタイプの女子で、おっとりしていて性格が良いと言われている。ヒロシもそう思う。まあまあ美人でもある。そういう女はいる。男は一様に、手持ちのものにがつがつと積み上げていくしかないものだが、持っている女ははなから何でも持っている。

「思い通りになることが多かったら、逆にどうにもならんことばっかりが気になるんかも。知らんけど」

というような気になる言葉も出てくるから、油断できない。

しかし、タイトルのようにエブリシング・フロウズ。万物流転、諸行無常。Tout Passe, Tout Casse, Tout Lasse. 歳をとるたびに染みてくる。

エヴリシング・フロウズ

今日の一曲

主人公、ヒロシ、ひろし、と言えば広島。広島と言えば、出身のグループ。PerfumeでMagic Of Love



では、また。
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はじめての〇〇

2014-10-20 | days
はじめてのおつかい、とか、はじめてのお見合い、はじめてのお泊り、など色々と人生の初体験はございますでしょう。

しかし、








2回目の人はあまりいないかと…


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『ギフテッド』山田宗樹

2014-10-18 | books
アメリカで腎臓に奇妙な腫瘍を持つ少年がいた。しかし腫瘍ではなく、未知の臓器だった。この未知の臓器を持つ人間が世界中にいることが分かり、「ギフテッド」と呼ばれた。日本では、検査の結果、ギフテッドと認定された児童を保護するために、第一種特殊児童保護育成制度が実施された。しかし結果として、特殊能力を持つであろう彼らに対する差別意識も出てくる。主人公、達川颯人がギフテッドとして小学校で差別され、ギフテッドばかりが集められた学校に転校するところから、物語はスタートする。後に、保護育成制度は撤廃されてしまった。同級生たちは大学に進学したりして社会に出て行った。時は流れ、彼らは32歳。しかし同級生の一人が、カルトのようなものをはじめてしまったらしい……

全体を同じような感想を持ちながら読むことができなかった。すごく面白いなと思いながら頁を捲ることもあれば、また詰めが甘いなと思うこともあった。ネタは特に終盤すごく大きくなる(まさかそう来たか!)(終盤、すごく面白かった)ので、上中下三巻ぐらいに広げて、ディテールをかなり細かく書いて欲しい小説なのに、やや説明が短すぎるように思った。

「神は細部に宿る」と言ったのは、ファン・デル・サールだったか、いやそれは元オランダ代表のキーパーだ。ファン・デル・ファールトだったか。それもオランダ代表だ。たしかファン・デル・ミース・ファン・デル・ローエだったっけか。

例えば「銀河英雄伝説」のようなディテールが、何もツッコミを許さないほどに完璧なものとなっている作品と較べると、やや雑だと感じてしまう。

例えば、瞬間移動できる能力があったとして、それをある程度(タキオン粒子を説明に使うとかして)科学的に説明すると、それはSFになって、そういうことについて何も説明しないとそれはファンタジーになる(と思う)

本作品は、科学的に説明をしようとするのでSF的なポジションにあろうとする。にもかかわらず、説明しない部分が多いので、ファンタジーのようにもなってしまう。そのどっちつかずな感じを、もっと説明を省いて、短編のファンタジーにしてしまうか、さっき書いたように、説明しまくって重厚長大なSFにしてしまえば、この「いいネタを持ってる」小説が、20年経っても読み続けられるものになるのではないだろうか。と老婆心ながら思った。

つまらなくはなかったんですよ。ええ。

ギフテッド

今日の一曲

超能力、超常現象。と言えばsupernatural SantanaのアルバムsupernaturalからSmooth



feat.Rob Thomasだった。彼の歌声を知ったのはこの曲だったと思う。しかし、Carlos Santanaかっこいいな。だいぶ前の高中正義とのジョイントライブのときはそれほどとは思わなかったのに(その頃、私の神は高中だったからだろうと思う)

なんてことを言うとったらこんな動画見つけてもうた。史上最高のフュージョンギタリスト、高中正義のReady To FlyをSantanaと一緒に演奏しているとこ。




ヤマハのSG2000というギターは高中が使ってるは知ってたけれど、ここではCarlos Santanaも使ってた。知らんかったー。何やら昔のことを色々思い出して、思わず江頭が、いや目頭が熱くなってしまった。

では、また。
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『群青のタンデム』長岡弘樹

2014-10-17 | books
警察に同期で入った、戸柏耕史と史香。それぞれに手柄をあげながら競い合う、ライバル関係。各章ごとに事件を解決する様を描き、最後には警察を定年退職した後までを描く。ちょっと変わったミステリ…

各章を読み終えるたびに、ちょっとした違和感が残る。そしてラスト近辺になると違和感が増大する。史香の異例の出世の裏側がこの小説の肝だということは分かるのだけれど、最後まで読んでもそれが何だか分からない。

195頁には「いろんな形があるもんだな。〇〇ってやつには……」という台詞があるのだけれど、この意味が分からない。

249頁では『じゅんさぶちょう』『けいぶほ』『けいぶ』『けいし』『けいしせい』と書いた札を並べる意味は耕史なら分かるとあるが、この意味もさっぱり分からない。

もう一度読んでも分かりそうになかったけれど、もう一度読んだ。やはり分からない。もう一度読んだら、ちょっと分かってきた。さらにもう一度読んだら、あーそうかと分かった(と思う)

うーむ。いくらなんでも分かりにくい。私のようなボンクラでない読者はすぐに分かるのかも知れないけれど。

全てを説明しないのと、時間が高速で流れていく様は新鮮だった。

群青のタンデム

今日の一曲

タンデムと言えばバイク。と言えば尾崎豊で「15の夜」



リアルタイムでは尾崎について、その音楽もそれほど好きではなかったし、何よりもファンたちが新興宗教の信者っぽかった。しかし時間が経過してやっと曲の良さも分かってきたし、ライブ映像の尾崎にはまるで、舞台の役者のような神々しさがある。その神々しさに惹かれればそりゃ、宗教みたいなものになってしまうのは当然なわけか。

では、また。

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『フォルトゥナの瞳』百田尚樹

2014-10-15 | books
木山慎一郎、自動車のコーティング会社に勤める。超がつくほど真面目。ある時突然、他人の体の一部が透けて見えるようになってしまった。そして後に、その人物は死んだ。木山はもうすぐ死ぬ人の体の一部が透けて見える、という能力を得てしまったのだ。病気で死ぬ人は無理でも、事故で死ぬ人は、乗る電車を一本遅らせたり、家を出るのを10分遅らせることで、死なずに済むかも知れない。他人の生死をコントロールできる男に降りかかった運命のいたずらは一体何をもたらすのだろうか……

百田尚樹の、政治的な発言など作家以外の活動については、必ずしも受け入れられるものではないけれど、作家として生み出した作品については肯定的に受け入れてしまう。

読みやすい、ポイントを押さえている。この小説も同じ。

小説を通して、何を言おうとしているのか、そのポイントもたぶん誰が読んでも同じように掴めるし、同じような感想を持つのだろう。2年もすれば読んだことすら忘れていまいそうだけれど、エンターテイメントはそういうものなんだろう。

普段本を読まない人が「今までで読んだ本の中で一番面白かった。すげえ感動した」と言うのではないだろうか。

いい本なんだよ。決してつまらない本ではないんだよ。

しかしなー、自分に関して言えば、こういう本ばかり読んでいると、いつかこういう本しか読めなくなるような気がする。消化のいい、噛まなくてもいい物ばかり食べていると、いつか噛めなくなる日が来るように。

フォルトゥナの瞳

今日の一曲

瞳、と言えば、Kim CarnsでBetty Davis Eyes



では、また。

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超絶ミステリ『その女アレックス』ピエール・ルメートル

2014-10-13 | books
フランスのミステリーはあまり読んだことがない。珍しい体験。

30代のキレイな女、アレックスが誘拐監禁される。なんとかその場から逃げようともがくアレックス。ああ、かわいそう…と思いきや、アレックスはとんでもなくヤバイ女で…と思いきや…という、貴方の首をひねり足をすくうジェットコースターな小説。

以下ほんのちょっとだけネタバレします。ほんのちょっとだけなので許して。ネタバレが嫌な人は読まないで。



アレックスは、実は何人も殺していたのだった。いわゆるシリアルキラー。警察は通報によって誘拐事件があったと知ったので、アレックスを保護しようと監禁場所を捜索するのだけれど、なかなか見つからない。そして警察もその過程で彼女がシリアルキラーだと分かる。すると、誘拐の被害者を探すだけでなく、連続殺人犯を探すことにもなる。以降さらにどんでん返しがされて…実は、そうなのか…と思ったら…実は、そっちなのか…とどんでんが繰り返される。もちろんそれは言えない。396頁で出てくるネタ。思わずひっくり返ってしまった。嘘だろ。でもそれなら今までのあれが理解できる。そうかそのための伏線だったのか。おお。

サイコスリラーにはどんでん返しが付き物(なぜ?)だ。この本のどんでん返しを喰らうと、今までのどんでん返しは、実はどんしか返されてなくて、本当のどんもでんも返されるとはこういうことかと分かる。

特にどんでん返しもサイコスリラーも好物の私のような人間には、超が絶するほどオススメ。逆にどんでんもでんでんも返して欲しくないし、サイコなスリラーはお嫌いという人には全くオススメできない作品。

新潮145センチの警部など捜査陣もキャラ揃い。そっちが好みだと言うひとも少なくないと思う。

その女アレックス (文春文庫)

今日の一曲

アレックス、なぜか分解すると(なぜ分解する?)アニー・レノックスになる(なぜ分解する?)アニー・レノックスと言えばユーリズミックス。ということで名曲が多くて悩みながら、EurythmicsでThere Must Be An Angel



では、また。
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壇さんステキ

2014-10-12 | days
オール讀物2014年10月号は、壇蜜と桜木紫乃の対談が載っていた。

グラビアに作家の方が文章を書いてくださることってないですから、実現できて本当にうれしかったです。その時の文章は、昔の恋人を電車の中で見かけるというストーリーでしたが、実は私も元恋人のその後を風の便りで聞いたことがあったんです。そのとき、彼が不幸になっているか幸せになっているか、どちらだとうれしいかと考えたら、不幸だったときのほうが格段にバツがわるいなあと思ったんです。

桜木 別れた男は幸せでいてもらわないと、こっちが困るの。

そのとおりだと思います。自分が振ったことがきっかけで、1人の男の人生が転落していくなんて、現実ではあってはいけないことだと思うんです。その人が後々不幸だと、自分が費やした気持ちすらも報われない気がしてしょうがないです。


壇蜜という女性の、ビジュアルは置いておいて、内面がすごくステキだなと思うのはこういうことを言うから。

私も、自分が振った女性には幸せでいて欲しいね、なんて言ってみたい。振った女性なんて今までにいただろうかとか、そもそも彼女なんていたことがあったのだろうかというようなツッコミは一切受け付けずに。
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『荒神』宮部みゆき

2014-10-11 | books
江戸時代、東北の隣り合う二つの藩。永野藩と香山藩。永野は武力、香山は養蚕に優れていた。香山藩から一人の子どもが逃げ出した。永野藩で出世街道驀進中、曽谷弾正の妹がこっそりこの子をかくまうことになった。香山藩では、藩主が側室に産ませた子が病気になってしまった。山では暴れる何か超自然的なもの。二つの藩の運命は……

義理と人情。闘い、嫉妬、人のため、自分のため。江戸時代が舞台になっていても、このような普遍的なテーマを描くと常に宮部みゆきは巧い。

荒神

妙にサッパリしたレビューになってしまったのは、単に疲れているからだけです。すみまそん。

今日の一曲

山。MountainでMississippi Queen



では、また。


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店名にツッコんでください92

2014-10-09 | laugh or let me die
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