頭の中は魑魅魍魎

いつの間にやらブックレビューばかり

生えろよ生えろ

2015-03-30 | travel



マレーシアだったか、あるいはベトナムの空港にて。







ザ・毛生えグスリって感じ。

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NHKの大河ドラマにぜひ

2015-03-28 | books
NHK大河ドラマ。視聴率が不調だそう。「花燃ゆ」は初回だけ観たけれど、二回目以降は全く観てない。来年の三谷幸喜脚本の「真田丸」は楽しみだし、視聴率も回復するような気がする。(家人は「真田太平記」を読んでいる最中で、私もそのうちに読み返したいと思っている)しかし大河ドラマが今後視聴率をコンスタントにとるのは難しいのだろう。

ラジオでアメリカ在住の映画評論家の町山智浩氏が言っていたのは「今、ネット配信ドラマの『ハウス・オブ・カード』がすごく面白い。大手ネットワークはスポンサーの顔を窺いながらドラマを作っているから面白くない。テレビを持たない人もアメリカで増えている。ネット配信のドラマを観る人しかいなくなる日が来るだろう」

確かに『ハウス・オブ・カード』は面白い。リアルな政治ドラマで、ケヴィン・スペイシーのヒールぶりもいい。そして、アメリカだけじゃなく日本でもテレビドラマが面白くなくなっている。『ハウス・オブ』や『ハンニバル』を観ていると、日本でもこれだけ思い切ったドラマができればなあと思う。(『ハンニバル』はNBCで放送されたそうだけれど、一般の人が誰でも観られるようなドラマじゃないような…)

てなことを思いつつ本を読んでいた。

未来のことを書いているはずなのに、まるで過去に実際に起きたことを描いているかのよう。圧倒的な世界観、膨大な数の登場人物、鮮やかに色づけされた人物像、重厚長大な物語。これはNHKの大河の原作になるではないか!

そう。「銀河英雄伝説」である。やっと7巻読み終えたところの中間発表として言わせていただくと、これは大河にするしかない。

アニメになったそうだけれど、ここはNHKの総力をあげて実写版にしていただきたい。歴史ものじゃねえじゃねえかとのツッコミに対しては、これは歴史ものなのだと言い返しておく。

銀河英雄伝説〈7〉怒涛篇 (創元SF文庫)


今日の一曲

伝説。と言えばレジェンド。John Legendで"All Of Me"


では、また。

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2015-03-26 | travel


これから順番に謝罪に行く列に見えなくもない。










@箱根の九頭龍神社

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『絶叫』葉真中顕

2015-03-24 | books
江戸川区でNPO法人の代表理事が殺害された。同居の女性が行方不明になっている… 国分寺署の刑事は、市内のマンションの変死体事件を捜査。亡くなっていた女性の過去を追いかけていくと、過去に何度も戸籍が変わっていることが判明した…

宮部みゆきの「火車」と黒川博行の「後妻業」と似たストーリー展開。

文章が硬いというか、不自然な感じが好みじゃなかったのに、話にグッと引き込まれた。

可愛そうな女が人生逆転できるかのスリルがメインとも言えると、刑事の捜査の進み方がメインとも言える感じ。

絶叫

今日の一曲

絶叫、叫び、泣き。Beatlesの"While My Guitar Gently Weeps" 演じるはGeorge Harrison、Eric Clapton、Phil Collins、Ringo Starr、Elton John等。



ギターが泣いている。

では、また。
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店名にツッコんでください101

2015-03-22 | laugh or let me die
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『猟犬』ヨルン・リーエル・ホルスト

2015-03-20 | books
ノルウェーのミステリー。警部ヴィスティングは17年前のセシリア殺害事件の捜査責任者だった。容疑者ハーグルンは逮捕され、公判で有罪が確定した。しかし出所したハーグルンは自分を有罪とした証拠は偽造されたものだと主張しはじめた。ヴィスティングは停職となる。彼の娘は新聞記者をしている。別の殺人事件を追いかけてると、父親の事件と交差してゆく…

おっと、これは好み。

地道に進む捜査(と言っても停職中の刑事が自分で調べる+記者の調査)がとてもいい。北欧ミステリの「ガラスの鍵」賞、マルティン・ベック賞、ゴールデン・リボルバー賞を受賞したにも納得。警察小説かくあるべしという手本だと思う。

解説によると、北欧というのは、スカンジナビア諸国(ノルウェー、スウェーデン、デンマーク)にフィンランド、アイスランドを加えた5か国で、人口2600万ほどだそうだ。

日本の5分の1の人口なのに、世界で読まれるミステリーのヒット作が近年結構生まれている。スティーグ・ラーソンの「ミレニアム」や、アーナルデュル・インドリダソンの「湿地」、ヘニング・マンケルのヴァランダー・シリーズ、ユッシ・エーズラ・オールスンの特捜部Q」など。

正確なことは知らないのだけれど、世界で読まれている本の中では、日本の作家が書いたミステリー(を外国語に翻訳したもの)よりもずっと北欧のものの方が多いだろうと想像する。

北欧ミステリーには、いつの時代でも、どこの場所でも通用する「普遍性」があるからかも知れない。その普遍性に私はすごく惹かれる。

猟犬 (ハヤカワ・ポケット・ミステリ)

今日の一曲

猟犬→Led Zeppelinの"Black Dog"と思ったら既出だったので、"Immigrant Song"



深夜にこういう動画を観ていると、光陰矢のごとし。時間は湯水のごとし。

では、また。
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『銀河英雄伝説6 飛翔編』田中芳樹

2015-03-18 | books
ちょっとずつ読んでいる「銀英伝」 やっと第6巻に突入。

ラインハルト率いる帝国、ラインハルトの暗殺を目論む地球教団、引退してしまった同盟のヤン。(と書くとかなり怪しげな話のよう) 動乱へと続く道…

5巻を読み終えてから時間が経ってしまってるのに、すっと入れる。ドラマを観ていると、冒頭に「前回の説明」が挿入されていることがあって、前回の内容を覚えている場合は不要だなと思うことが多い。「銀英伝」はその「前回の説明」らしきものがないにもかかわらず、そして前の巻を読んでから時間が経っていても、すぐに物語に入り込める。「前回の説明」っぽく見えないのに、さりげなく少しずつそれを入れている。その様が絶妙に巧い。

それと、未来のことを描いているはずなのに、まるで過去に現実に起きた歴史を描いているかのよう。地に足がついている物語。

銀河英雄伝説〈6〉飛翔篇 (創元SF文庫)

今日の一曲

宇宙、銀河、惑星… Phantom Planetで"California"



では、また。
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『日本退屈日記 日本の凋落と再生』サイモン・メイ

2015-03-16 | books
ロンドン大学の哲学の教授が客員教授として一年間東大で教える。そのときの見聞録。

日本を美化するでもなく、英国を美化するでもない、ありそうでなかった本。

鉄道に乗ると、いくつかの点が著者の注意を惹く。

第一点は、大勢の大人、それも企業の社長や政府高官だとしてもおかしくない年配の男性でさえ「戦争と平和」くらいの部厚い漫画雑誌を読んでいることだ。この種の雑誌の中身は、まだ十五歳にも満たない少女を含めて、挑発的なポーズをとっている女性の絵がどしどし出てくる。

武器や陰謀論に関しては、

第三点は、日本人は何かを無批判的に受け入れていたかと思うと一転して極度に猜疑心を動かせることがあり、逆に後者から前者に急変する場合もあるということである。

飲み会については、

後刻、コンパが始まると、話題は肩の凝らないものとなり、今度はめいめいが自分の趣味について語ることになった。

そう言えば、我々は酒の席でないと「本音」を語れなかったりする。

日本の都市は、ほとんど信じられないほど猥雑である。日本人は、望めば集団的に計画を立てることができるとくその評判にもかかわらず、「都市計画」という名に値するものは何もなく、人家は僅かな例外を除けば味もそっけもない箱と同じで、内装も実用一点張りでお世辞にも美しいとは言えない。

忘れるという粗暴な技術を会得した国ありとすれば、それは日本国である。

たいがいは、どこに国でも人は相手を見上げるか見下げるかするのだが、日本人はこの二つを同時にやることができる。

まことに、ここで大まかに単純化して言うならば、宿命に応えて、宿命そのものか、宿命への人間の隷属に、高貴さの要素を「吹き込む」道は三通りあると言えよう。その一は、宿命を免れるか正当化しようとすることであり、(西洋の応え方)、その二は宿命を英雄的に肯定するか、さもなければ悲劇的に宿命に屈服するかであり(ロシアの応え方)、その三は宿命への応じ方を「即興」する(そのつど適宜に対応する)ことである(日本の応え方)。

日本論ばかり読んでいても仕方ないけれど、たまに読むととても面白い。

日本退屈日記―日本の凋落と再生

今日の一曲

著者はサイモン・メイ。Rod Stewartで"Maggie May"



では、また。

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『西太后秘録 近代中国の創始者』ユン・チアン

2015-03-13 | books
清の末期、国政を私物化して、妹の子を皇帝(光緒帝)にして、傀儡として操り、光緒帝の新政を妨害した、というイメージがある西太后(慈禧太后) 彼女は実はそんな人ではなく、中国の近代化を進めた人物だとと指摘するのは、「ワイルド・スワン」で文化大革命の実情を教えてくれたユン・チアン。西太后は実は「有能で」「いい人」だった、あるいは言われているほど悪い人ではないということが分かり、だいぶイメージが変わった。

イメージは「浪費家」「守旧派」、光緒帝が西洋のやり方を取り入れようとしたのを妨害したというものだったけれど、それはある程度創られたイメージだったようだ。

西太后の生い立ちや権力を握っていく過程はすごく面白い。

一番興味を持って読んだのは、日清戦争から下関条約に至る苦悩とか、康有為や袁世凱などの怪しげな人物が雨後の竹の子のごとく現れるあたり。人物描写がなんとも読ませる。(康有為にはもっと有能な正義の味方的なイメージを持っていたよー)

西太后秘録 近代中国の創始者 上西太后秘録 近代中国の創始者 下

今日の一曲

映画「ラスト・エンペラー」は光緒帝よりも後に、満州国の傀儡皇帝となった溥儀の生涯を描く名作。音楽を担当したのは坂本龍一。ということで坂本龍一と村治香織で、"Merry Christmas,Mr Lawrence"



では、また。
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『火星に住むつもりかい?』伊坂幸太郎

2015-03-11 | books
治安維持のために創設された「平和警察」 危険人物とみなされればすぐに処刑。しかも公開処刑。そんなナチス支配下のドイツを思わせる近未来の日本。罪のない人が裁かれる時代に立ち上がった正義の味方。「平和警察」とどう闘うのか…

今日本が向かっている先への警告をしようとしている、ディストピア小説だと読んだ。多様化を口にするわりに、結局単一化してしまう。民主的っぽいんだけど、実は全体主義的。「生きやすい」んだけど「生きにくい」そんな世界。

善悪の対立の構図、特に正義の側のあり方がチープな気がしたのだけれど、それがかえって伊坂幸太郎らしい」「リアルじゃないのがかえってリアル」感を募らせる。

「そんなのは『病気保険』を『健康保険』と言い換えるのと同じで、印象操作です。公開殺人を、、みんなで興味本位に眺めているだけです。子供だって見ているんですよ」

「とんでもないですよ。世の中には、悪なんて存在しません。全部が、正義と言ってもいいくらいです。害虫という虫が存在しないのと同じですよ。虫自身からすれば、自分自身は益虫です。ただ、薬師寺さん、平和警察が危ういのは、一般市民のことをアリのようにしか見ていないことですね」

「だから、社会の人の考え方も、一つに揃えないほうが自然な状態だと、思うんですよ。全体の力は弱くなりますが、安定します」

「ええ。偽善だ偽善だと叫ぶ人は、単に『良さそうなことを』をやっている人が鬱陶しいだけなんじゃないか、って」


火星に住むつもりかい?

今日の一曲

本のタイトルの元になっている曲。David Bowieで"Life On Mars?" 伊坂幸太郎は、この曲は「火星に住むつもりかい?」という意味だと思っていたけれど、実際は「火星に生物が?」という意味だったそう。



歌詞を見ても意味はよく分からないけれど、この本が火星に関係がないのと同じくらい曲の方も関係がない。

では、また。
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『スナイパーの誇り』スティーヴン・ハンター

2015-03-09 | books
ワシントン・ポスト特派員のキャシー・ワイリーから連絡があった。「昔の雑誌を調べていたら、1943年のソ連には4人の女性スナイパーがいたことが分かった。その内の一人の「ミリ」のことを調べようとしたのに、1944年以降の記録が残っていない」というメールを受け取ってモスクワに飛んで行った、元海兵隊員でスナイパーのボブ・リー・スワガー。話は、1944年→現代→1944年→現代と交互に描かれる。

ミリはナチスの高官の暗殺を命じられてウクライナに向かったことは分かった。そのナチスの高官とは誰なのか… 凄腕スナイパー「ミリ」の名前はなぜ記録から消えたのか。暗殺に失敗し、殺されたのだろうか…

挿入される「テリアヴィブにおける幕間劇」という章。現代、イスラエルの諜報部員が世界の市場の値動きをウオッチしている。すると怪しい動きがあって…

現代で謎解きをしていると、また新たな謎が現れ→1944のシーンで少しずつ謎が解かれる→また現代のシーンに戻る。このタイミングが絶妙に巧い。

久しぶりに読んだ、スティーヴン・ハンター。なかなか良かった。

スナイパーの誇り(上) (扶桑社ミステリー)スナイパーの誇り(下) (扶桑社ミステリー)

今日の一曲

スナイパーの歌、が見つからなかったので、Talking Headsで"Psycho Killer"



では、また。
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店名にツッコんでください100

2015-03-07 | laugh or let me die
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『英国一家ますます日本を食べる』マイケル・ブース

2015-03-05 | books
原著"Sushi and Beyond: What the Japanese know about Cooking"から和訳された「英国一家日本に食べる」の方に収録できなかった部分を新たに訳出したのがこれ。図書館で借りたので前著を読んでないのだけれど、何も問題なし。

まだ行ったことのない築地の市場について、「借金してでも今の場所にあるうちに死ぬまでに行った方がいい」とあるのを読んで、よし、今度行こうと思って築地市場のオフィシャルサイトをすぐに調べてしまった。

我々庶民がなかなか食べられない高級食材を食べるエピソードが多い。本ワサビ、松坂牛、27年物の醤油、ふぐなど。

小耳にはさんだ話が本当ならば、日本人はヒンドゥー教徒よりも熱心に牛を崇拝している - 少なくとも殺してしまうまでは。そして日本の牛は、パリス・ヒルトンのチワワでさえきっとあきれるほど甘やかされている。ビールやマッサージを楽しみ、酒を身体にすり込んでもらい、BGMでリラックスしているというのだ。聞いたところでは、そのおかげで肉 - 欧米ではコウベビーフ、ワギュウビーフなどという名で知られる - が信じられないほど軟らかくなり、クリーミーな脂肪がデルタ地帯の川みたいに網目状に入るらしい。もちろん、そのおかげでコストも高く、人気も高い。一角獣以外で神格化されて崇められている動物といえば、日本の牛しかいない。

実際に神戸牛を飼育しているところに牛のマッサージに行くところなんてなかなか楽しかった。

我々日本人が和食についてどう考えるべきなのか、決して無視できない示唆がある。

日本の人は - 1億2700万人の人を十羽ひとからげにして悪いけれど - 季節を、場合によっては神様を崇めるように、とても重んじ、素材の質や純度を鋭く見分け、風味や見た目にこだわり、欧米人よりもはるかに多様な食感を楽しmぬということだ(僕にとって難易度の高い食感もある - すりおろしたイモを喜んで食べる日が来るとは思えない)。一方、日本の伝統的な料理が急激な変化にさらされ、末期的状況に陥りつつあることも、僕には発見だった。だしを取るための鰹節、昆布、海苔、豆腐、そば、酒の消費量は、もう回復不能なほど下降線をたどっている。ちょうど、世界では長年人気を集めてきた鮨だけでなく、さらに幅広く「和食」を認知する動きが始まっているというのに - その結果、和食はユネスコの世界無形文化遺産に登録された - あまりにも皮肉だ。著名な料理人である村田吉弘氏と、僕が日本の料理の師と仰ぐ服部幸應氏も、日本料理の衰退を憂いていて、僕も彼らと同じく衰退を恐れている。

うーむ。高野秀行は著書に、その国の人を理解する三大要素は「言語」「料理」「音楽」だと書いていた。我々が口にするものが、カタカナだらけになるにつれて、我々は日本人だかアメリカ人だかイタリア人だかフランス人だか、自分たちのアイデンティティがわけわからなくなってしまうかも知れない。どこも似たようなものになってしまうのは、つまらない。

英国一家、ますます日本を食べる (亜紀書房翻訳ノンフィクション・シリーズ)

今日の一曲

本とは無関係で。Mark Ronson ft. Bruno Marsで"Uptown Funk"


では、また。
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『恋するソマリア』高野秀行

2015-03-03 | books
「誰も行かないところへ行き、誰もやらないことをやり、それを面白おかしく書く」をモットーとするタカノ。「謎の独立国家ソマリランド そして海賊国家プントランドと戦国南部ソマリア」で講談社ノンフィクション賞と梅棹忠夫・山と探検文学章を受賞。そしてまたソマリアについて書いたのがこれ。

結論から先に書くのを許されたし。これは読むべし。以上。以下蛇足。

前作はとても面白かったのだけれど、若干政治的にどうのこうのという記述があった。卑近な例で恐縮だけれど、(「ワセダ三畳青春記」にはゲラゲラ笑っていた)家人には薦めなかった。しかしこれは満を持して薦められた。なぜならとっても読みやすく、抜群に面白いから。

せっかく覚えたソマリ語を忘れたくないので日本に住むソマリ人を探したり、ソマリアに日本の中古車を売ろうとしたり、ランドクルーザーにのってタカノ史上最悪のドライブをしたり、外の人を家の中には招かないソマリの人の家に入ったり、料理を習ったり、装甲車に乗ったり。ハチャメチャ紀行。

あるグループの人々 - 民族であれ国民であれ県民であれ - を理解しようとするとき、何をもって「理解した」あるいは「理解に近づいた」と言えるのか。
大変難しい問題だが、三十年近く世界の各地を歩いてきた経験から、人間集団を形作る内面的な三大要素は「言語」「料理」「音楽(踊りを含む)」ではないかと思うようになってきた。

ソマリ人はものすごく「内向き」な人たちなのだ。行動は超・外向きで、思考・感覚が超・内向きとも言える。

この外向きで内向きな人々に対するタカノの考察が冴えわたる。文化人類学の天才なのではないかとちと思ったりもする。

ソマリには女性のジャーナリストが多い。

「ここで女性ができることは少ない。政治もビジネスも男の世界。NGOはそれよりマシだけど、やっぱり女性には仕事がなかなか回ってこない。ジャーナリストは女性がいちばんなりやすい職業なのよ」

ソマリアを知らない外国人にはひじょうに意外なことだが、内戦と無政府状態が二十年続く戦国都市モガディショでは民政がたいへん発達している。電気・水道・学校・」病院は主に各氏族の有力者が運営している。携帯電話やネットも当たり前のように普及している。市内や国内外の諸都市を結ぶバス・飛行機も普通にある。本当に何でもあり、ないのは政府ぐらいだったので、私はここを「完全民営化社会」と名付けた。軍も民営化されていると考えれば辻褄が合う。

私たちはソマリア・シリングを持ち合わせてない。「これでもいい?」と試しにドル札を見せたところ、「こんなもん、知らん」と首を振った。
ドルを知らないのか!すっかり感動してしまった。ソマリア・シリングは奇跡の通貨である。なにしろ、二十年前に政府が倒れ、同時に中央銀行も消滅したのに、そのまま国民の間に流通しているのだ。政府があった頃は公務員の給料を払うために札をむやに刷ったのでインフレがひどかったが、政府がなくなると札をする人もおらず、かえって通貨は安定してしまった。今ではケニアやエチオピアといった隣国の人たちもソマリア・シリングを買いに来るという。アフリカではどこの政府もカネをたくさん刷るから通貨の価値が下がる。その意味では政府はないほうがいいくらいだ。

政府なんてない方がいい。なるほど。

恋するソマリア

今日の一曲

高野、と言えば高野寛と田島貴男で"Winter Tale"



では、また。
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『火星の人』アンディ・ウィアー

2015-03-01 | books
どうでもいい余談より始めます。

作者は、アンディ・ウィアーではなく、アンディ・ウィーだと思っていた。ウィーと言えば、もちろんプロレスラー、スタン・ハンセン。中指と薬指を曲げて、人差し指と小指を伸ばして手を高く上げて「ウィー!」と勝利の雄叫びを上げる。この本を読み始めると→スタン・ハンセンが脳内で「ウィー」と叫ぶ→テーマ曲「SUNRISE」が流れる という状態だった。しかしちっともハンセン的な暴君な小説ではないなーと思っていたら、登場人物の中にヨハンセンという名前が出て来たので、思わず「ウィー!」と叫んでしまった…

どうでもいい話ですまぬ。

有人火星探査機でのミッション中に事故があり、マーク・ワトニーは死んだものとされ、他のクルーは地球へと戻ってしまった。しかしワトニーは生きていた。無線機は壊れ、地球と連絡がとれない。食糧には限りがあり、次に有人火星探査機がやって来るまでは生き延びられそうにない。どうすれば地球と連絡がとれるのか。どうやって生きるのか。ワトニーの苦闘…

おー。おー。思わず二回叫んでしまった。これは面白い。

火星人が出てくるわけでもなく、ダースベイダーも悪の権化も出てこない。ひたすら、科学的にどうやって、機械を使い、物理や化学、コンピューターの知識を駆使して闘うワトニーの姿が描かれる。そして彼の救出に苦闘するNASAの姿が描かれる。

難しい言葉が少なくないし、「ハブ」とか「MVA」などどういう形をしているのか分からないものが非常に多い。しかしそれが刺激する。普段全然使ったことのない想像力を。SFとは、見たことのない物を、文章を読むことで想像する小説なんだなとあらためて思った。

火星の人 (ハヤカワ文庫SF)

今日の一曲

もちろん、SPECTRUMで"SUNRISE"



では、また。

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