頭の中は魑魅魍魎

いつの間にやらブックレビューばかり

『プリズン・ガール』L・S・ホーカー

2017-08-30 | books
カンザスで父親に18年間も監禁状態にさせられていた美しいペティ・モシェンは21歳。父親からは格闘技や武器の使い方を徹底して教えられていた。そして父は死んだ… 遺言の執行人としてやって来たのはランディ・キング。父に信用されていたと言う。担当弁護士はキース・ドゥーリー。父親の遺言が公開された。そこには、父親の生命保険金100万ドルがペティのものになる。それには条件があって、ランディと結婚しないといけないとのこと。もちろん見ず知らずの中年男と結婚するなんて絶対嫌だ。それまでスーパーマーケットにすら行ったことのないペティが父親の遺品を弁護士から盗んで外の世界へ出る。そして闘う…

うーむ。うーむ。これは良かった。久しぶりに傑作を読んだ。ペティがどうなるか、応援しつつ手に汗を握り読んでしまった。

自分が信じていた父親は実は、、というようなひねりがあり、しかしその先にどんでん返しがある。気持ちのいいどんでんを返された。

戦闘マシーンのようなペティがいい。ペティが知り合う人たちもいい。そして伏線が回収されていく様も気持ちいい。

ドラマ化、映画化強く希望。日本でやるのなら、ペティは満島ひかりしか思いつかない。

プリズン・ガール (ハーパーBOOKS)

今日の一曲

ペティと関係なくもない、Tom Pettyで、"You Don't Know How It Feels"



では、また。
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『AX』伊坂幸太郎

2017-08-28 | books
営業マンをしながら、なぜか殺し屋もやっている男「兜」 殺し屋稼業から足を洗いたいのになぜか許されない。妻に叱られるのが何より怖いのに、凄腕の殺し屋…

という訳の分からない設定。なのに、なかなか面白かった。

最近の伊坂幸太郎作品は正直あまり楽しめるものがなかった。それらと比べると段違いに楽しめた。

それ以外あまり言うことがない。

AX アックス (角川書店単行本)

今日の一曲

AXで検索したら出て来た。再生回数1億回を超える、J-AX & Fedezで、"Vorrei ma non posto"



何を言ってるか分からないし、こういう音楽の良し悪しは分からない。パーティピーポーはこういうの聴くのだろうか。では、また。

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『北大路魯山人』白崎秀雄

2017-08-26 | books
北大路魯山人というと、連想するのは「北大路魯山人の愛弟子、平野雅章」と「料理の鉄人」と審査員を紹介している様。それ以外は「美味しんぼ」の海原雄山のモデルになったことぐらい。

たまたま「知られざる魯山人」という本が目に留まった。読書メーターなどで調べてみると、この本は魯山人を褒めているのだけれど、けなしている  の「北大路魯山人」の方が面白いと書いてる人がいた。褒めているよりもけなしている方が好きな、嫌な野郎な私はこちらを読むことにした。

膨大な資料と、多くのインタビューがもとになっていて、非常に細かく、生い立ちやビジネスの進め方、そして結婚生活を描写してくれる。

習字から篆刻、陶芸、料理に至るまで天才ぶりを発揮した。しかし人格には多いに問題があった。金のために結婚したわりには、奥さんの実家をないがしろにしたり。何回も結婚するが基本的には奥さんを大切にしない。そんな感じの男。

北大路魯山人〈上〉 (ちくま文庫)北大路魯山人〈下〉 (ちくま文庫)


今日の一曲

たまたま見つけた。70年代後半のポスト・パンク。3千万回も再生されている。Joy Divisionで、"Love Will Tear Us Apart"



メンバーが自殺して、新たに結成したのが、New Orderだそう。そっちなら聞いたことある。では、また。
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店名にツッコんでください168

2017-08-24 | laugh or let me die
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『ささやかな頼み』ダーシー・ベル

2017-08-22 | books
息子同士が仲良しで、お互いに親しくしているステファニーとエミリー。ステファニーは専業主婦でシングルマザー、エミリーは有名なアパレルメーカーの広報をしている。出張があるということで、エミリーは5歳の息子をステファニーに預けた。そして戻って来ない… ステファニーの書くブログ… 登場人物の裏側が明らかになっていくと…

最初は、コージーミステリーかお気楽ミステリーぐらいに思って読んでいた。しかし読み進めていくと、段々と恐ろしいものに変わっていく。サイコスリラーのような類いではないのだけれど。

ステファニーはエミリーの夫といい仲になってしまうので、そっち方面のミステリーかと思ったらそれもまた違う。いい意味で期待が裏切られてよかった。

ミステリーというより心理サスペンスに近いかと思う。あまり期待しないで読むと吉。

ささやかな頼み (ハヤカワ・ミステリ文庫)

今日の一曲

ドラマ「ハロー張りネズミ」の主題歌をRADWIMPSの野田洋次郎とコラボしたジャズバンドが気になっていた。SOIL & "PIMP" SESSIONSで、"Suffocation"



カッコいいぞ。では、また。
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『恐怖の地政学 地図と地形でわかる戦争・紛争の構図』T・マーシャル

2017-08-20 | books
世界のあちこちの、地理的な条件が、各国の政治、経済などに対してどのような影響を与えてきたかを解説してくれる本。

ロシアは山脈で囲まれた部分が扇形になっていて、その部分でのみ発展していったとか、アフリカがなぜ経済的な発展から取り残されたかと言うと、川が急流でしかも滝が多いので、船の運航が難しかったからとか、知らないことがたくさんあって面白かった。

プーチンのような現代の話も多く、現代国際政治のことも優しく教えてくれる。収穫だった。

恐怖の地政学 ―地図と地形でわかる戦争・紛争の構図

今日の一曲

REBECCAで、"Lonely butterfly"



では、また。
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『武士の家計簿』磯田道史

2017-08-18 | books
何を今更と言われそう。特に意味もなく読んでいなかったら、もう14年も前の本だった。

よくテレビに出て来る著者が、神保町の古書店で購入したのは、江戸時代の加賀藩の古文書。猪山家の36年分の家計簿だった。たいそう貴重なもので、ここからいろいろなことが分かった。それをとっても分かりやすく説明してくれる、稀有な本。

加賀藩の財政係だとどれだけの収入があるのか、そもそも武士にはどれだけの収入があるのか。また支出はどれだけあるのか、かなり細かく分かる。猪山家は借金が多く破産寸前だったので、家財の多くを売り払った。それがいくらだったのか分かる。茶道具が今の金銭感覚で百万円を越えたとか。

あるいは祝儀にどれだけかかったかとか、給料がどれだけ上がったのかとか、細かいけれど、とっても面白いデータを紹介してくれる。本当に面白い。

また、猪山家の幕末から明治に入ってのデータもあるので、維新が士族にどう影響したのかが金銭的に分かる。端的に言って、公務員になれれば天国、なれなければ地獄だったようだ。

読んだそばから、「ねえ、知ってる?」と人に言いたくなる本だ。オススメ。

武士の家計簿 ―「加賀藩御算用者」の幕末維新 (新潮新書)

今日の一曲

矢野顕子と上原ひろみで、「飛ばしていくよ」



では、また。
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『晩夏の墜落』ノア・ホーリー

2017-08-16 | books
プライベートジェットが墜落。生き残った画家は、泳いで岸までたどり着いた。もう一人の生存者である4歳の少年を救いながら… 乗客は、ニュース専門番組の代表とその家族や、訴追されそうな銀行家など。彼らの人生を振り返りながら、なぜ飛行機が墜落したのかを明らかにする…

ふーむ。ラストはいま一つ。なぜ墜落したのかその根本はこれなのか。まあ人間てそんなもんだよなと思いつつ、読書のカタルシスはあまり得られず。

しかし、ラスト以外はとても良かった。アメリカの富豪の暮らしだとかプライベートジェットの乗組員の暮らしだとか、ニュース番組の裏側だとか、自分とは縁のない世界を読むのは楽しかった。

しつこいけれど、ラスト。こんな理由で人が死んでいいのか?いや、人が死ぬ理由なんてなんでもいいのか。そんな風に考えると、悪くない小説なのかも知れない。でも↓のように、ポケミスと文庫同時に発売するほどではないような…

晩夏の墜落 (ハヤカワ・ポケット・ミステリ)
晩夏の墜落 上 (ハヤカワ・ミステリ文庫)晩夏の墜落 下 (ハヤカワ・ミステリ文庫)

今日の一曲

椎名林檎のバックで歌い、ギターを弾く、浮雲で「夢の途中」



来生たかおのカバー。では、また。
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『怒り』ジグムント・ミウォシェフスキ

2017-08-14 | books
ポーランドミステリー。白骨化した遺体が発見された。白骨化しているのだから、2、30年前に死んだんだろうと思っていたら、手術の跡から、10日前には生きていたことが分かった。被害者は誰で、加害者はどうやって遺体を白骨にしたのだろうか。そして動機は・・・

すさまじい殺人事件、主人公のシャツキ警部のキャラクターなど読みどころは多い。

しかししかし。ラストのオチの意味が分からなかった。ので大きく減点。いったいどういう意味だったのだろうか。シャツキが○○した?

怒り 上 (小学館文庫)怒り 下 (小学館文庫)

今日の一曲

昔好きでよく聴いていた。The Style Councilで、"Shout To The Top"



では、また。
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店名にツッコんでください167

2017-08-12 | laugh or let me die
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『ボクたちはみんな大人になれなかった』燃え殻

2017-08-10 | books
43歳のボク。facebookで「知り合いかも?」の文がついた女性のアイコンはかつて好きになった人だった・・・週に6日エクレア工場で働いていた頃に知り合った人だった・・・エクレア工場を辞めて、「テレビ番組の美術製作アシスタント募集」という広告に応募して雇われたのは、ブラック企業だった。ひどく忙しい日々・・・景気が良くなってから出会う別の女性・・・

糸井重里さんがTwitterでおススメしてたりしたので読んでみた。正直面白かったのかそうでもないのかよくワカラン。

断片的に面白い表現があったりするけれど、全体として何が言いたいのかは不明。

気になったのは、登場する二人の女性。最初に登場する女性(ややブス)に対して未練を感じてるのかと思えば、次に登場する女性(美人)がなかなかのいい女。こっちの彼女への未練が先の女性に対する思いを上回るのかと思えば、ラストはそうでもなかったりする。この辺がよく分からなかった。

ただ、なんだかすごく新しい小説という感じがする。

ボクたちはみんな大人になれなかった

今日の一曲

今のクールのドラマの中では一番か二番に面白い「過保護のカホコ」の主題歌。星野源で、"Family Song"



過保護に育った娘という難しそうな役を演じる高畑充希が巧い。では、また。
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『フロスト始末』R・D・ウィングフィールド

2017-08-08 | books
ハチャメチャな英国の刑事シリーズ。

万年人手不足のデントン署。事件解決よりも自らの地位の方が大切なマレット署長は、フロスト警部を追い出そうと、スキナー主任警部をデントン署に連れて来た。スキナーはマレット以上の「形式ばった」ことばかりにしか気が回らない。そしてフロストが経費の書類を偽造していることに気づき、本格的にフロスト追い出しに拍車がかかる・・・ 切り取られた足が発見され、スーパーマーケットには脅迫状が届き、少女が行方不明になり、少女の遺体が発見される。フロストは今日も忙しい・・・

残念だ。とっても残念だ。

作者のR・D・ウィングフィールドは亡くなってしまったので、これが遺作になってしまったのだ。こんな抱腹絶倒、二転三転、驚愕驚愕な小説が読めなくなってしまうなんて。

フロストシリーズの特徴の一つが、同時に複数の事件を解決していくこと。事件が起こるのだけれど、すぐには解決せずに、また他の事件が起こる。で、先の事件に進展があったかと思ったら、また別の事件が起こる。現実の刑事がこんな風に忙しいのかどうか分からないけれど、これらの事件が、ラストになって全てすとーんと解決する。このスーパーな解決方法を読むために、読んでいるようなもの。素晴らしい。

他にも、警察組織や、官僚的な上司をおちょくったり、ふざけたりするフロストの言動が笑える。

そうそう。解説によると、ウィングフィールド亡き後、他の作家によって、若い頃のフロストを描く小説が発表されたそう。いつか邦訳が出るだろうか。楽しみ。イタリアのドラマ「モンタルバーノ」の「ヤング・モンタルバーノ」みたいなものだろうか。

フロスト始末〈上〉 (創元推理文庫)フロスト始末〈下〉 (創元推理文庫)

今日の一曲

先日、なんとなくついていたテレビを観ていたら、ドラマが面白かった。「わにとかげぎす」という不思議なドラマの第3話。気になって、第1話、第2話も観てしまった。やくざの情婦(?)役でパチンコ店員役がコムアイ。彼女が歌う、水曜日のカンパネラで「ユニコ」



では、また。
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『人類と気候の10万年史』中川毅

2017-08-06 | books
気候がどのように変化したか、そして今後するのかを分かりやすく解説してくれる本。

ものすごーーく、ためになった(と思う)

地球は温暖化が進んでいるという。異常気象があるならば、では「正常な」な気象とは何なのか?過去のデータを見ると、ここ5億年、温暖と寒冷の間を行ったり来たりしているだけで、サイクルを繰り返しているように見える。(何が異常なのでもなく正常でもなく)

500万年前からのグラフは、むしろだんだんと寒冷化が進んでいるのと、気候の不安定さ(気温が上がったり下がったり)が増していることを示している。

80万年前からだと、温暖期と氷期が交互にやってきていることが分かる。つまり、長いタイムスパンで見ると、温暖化が進んでいるとは言えないわけである。(この本は、「温暖化なんて進んでない」と言っているわけではないけれど)

気候変動のリズムに影響を与えるのが、地球の公転の軌道の変化と自転の軸の歳差運動だそうなのだ(どちらも知らなかった)

公転の軌道は、円に近い形からつぶれた円の形へ5万年かけて変化し、また5年かけて元に戻るのだそうだ。とすると地球が太陽に比較的近い時もあれば、遠くなるときもあると。

自転の軸はコマを回した時のように、軸がぐるんと回る。これが2万3千年周期。この二つが気候変動に影響を与えていると主張したのが、セルビアの地球物理学者のミルーティン・ミランコビッチ。1920年代。セルビアの紙幣に肖像画が使われるほどの人だったそうだ。

ミランコビッチ理論からすると、現代は氷期に向かっているはずなのだけれど、実際の測定値は違っていて、メタンは5千年前、二酸化炭素は8千年前から大きく上昇していた。森林伐採による農業の開始がこれと関係しているとすると、産業革命以後人間が大量に化石燃料を使用するようになってから、二酸化炭素が大幅に増えた、という説は正しくないということになる・・・

以上の気候変動の話に続くのが、福井県の水月湖の話。(何年か前に隣の三方湖にうなぎを食べに行った時、なんか資料館のようなところに行った記憶があるのだけれど、こんなすごい発見だとは知らなかった)


水月湖の湖底には、縞模様の堆積物があって、それがなんと7万年分! こんな長期のキレイな堆積物は世界のどこにもないそうだ。厚さにして45メートル!すごい。発見するのもすごいし、掘り出すのもすごいし、分析するのもすごい。

残されている花粉を分析すると、それぞれの植物がどういうリズムで生息していたか分かる。たとえばスギの増減のリズムは、南極の気温のリズムと似ている・・・

てな感じで、文系頭をたっぷりと刺激してくれる面白本だった。

人類と気候の10万年史 過去に何が起きたのか、これから何が起こるのか (ブルーバックス)

今日の一曲

乃木坂46の新曲「逃げ水」



では、また。
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『ぐるぐる博物館』三浦しをん

2017-08-04 | books
作家三浦しをんが日本のあちこちの博物館を巡るエッセイ。

紹介されたのは、茅野市尖石縄文考古館、国立科学博物館、龍谷ミュージアム、奇石博物館、大牟田市石炭産業科学館、雲仙岳災害記念館、石ノ森萬画館、風俗資料館、めがねミュージアム、ボタンの博物館、熱海秘宝館

さすがに文章がうまくて、どの博物館にも行きたくなる。特に、奇石博物館と、龍谷ミュージアムはぜひ行きたいと思った。

ぐるぐる♡博物館

今日の一曲

向井秀徳と椎名林檎で"KIMOCHI"



では、また。
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『新任刑事』古野まほろ

2017-08-02 | books
傷害致死で指名手配がかかっている女が逃亡中。被害者は現役の警察幹部だった。10年の時効が成立する目前、その女らしき者の目撃情報が寄せられた・・・

うーむ。刑事がどう捜査するか、書類の書き方やら、上司への気遣いやら、ものすごく細かくリアルに描く。なかなか面白かった。

事件についてもどんでん返しがあり、こちらもなかなか巧い。

しかし、よく言われるけれど、警官てほんと書類仕事の量が多いのね。あらためて大変な仕事だと思った。

新任刑事

今日の一曲

ドラマ「ハロー張りネズミ」の主題歌。SOIL&"PIMP"SESSIONS feat. Yojiro Nodaで、「ユメマカセ」



今までに聴いたことのない不思議なカッコいい曲だった。では、また。
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