「武士道シックスティーン」誉田哲也 文藝春秋 2007年
成海璃子と北乃きい主演で映画化されるそうだ。ゴールデンウイークから。シックスティーンが出たときからとても気になっていた。いつか読もうと思っていたら、あれれ?「武士道セブンティーン」が。あれれ?「武士道エイティーン」が。なんとだいぶ遅れをとってしまった。
こう見えても(どう見えるのだ?)あたくし幼少のみぎりに剣の道をたしなんでおりましたのよ、おほほ。ですから剣道小説というだけでもドキがムネムネしてしまいますし、剣道+青春+まっすぐ+横浜でしたら読まないわけにはいかないのですわ。
性別が変化しているかも知れないが、あまり気にしないで下さい。そんなわけで本に戻ろう。保土ヶ谷二中で全国二位にまでなった香織は推薦入学で東京の高校を選ぶ。そこには早苗がいる。そう香織を市民大会で破ったあの子がいるのだ。宮本武蔵の五輪書を片手にもう片手には鉄アレイを持って屋上で昼休みを過ごすような超剣道バカの香織と、日本舞踊をやっていたのに部活でそれがないからと仕方なく中学から剣道部に入った、早苗。勝負にこだわり過ぎる香織とこだわらな過ぎの早苗。家庭環境も好対照の二人が剣道部に旋風を巻き起こしてゆく・・・・・・
いやいや。これは良かった。フツーに友人に「これ読んだ?面白かったよ」と言える作品だ。既に現役の剣道選手の某C君に読んだ、と訊いたら読んでないというので、薦めるとともにテクニカルに分からない事(巻きゴテってどうやるの?自分の竹刀を相手の竹刀に巻き取るって全然分かんないよ)を教えて貰った。友達ってほんと便利だ。
映画化されるというのが非常にリーズナブルな事であると思う。キャラが立っていて分かりやすいし、ストーリーを通して早苗と香織の成長にいい意味で巻き込まれ安い。成海璃子さんでは本書のイメージより可愛い過ぎかとは思う。大人計画の平岩紙さんの若い頃だと目じからもあってちょうどいいんじゃないかと思う。若い頃を知らないけど。
横浜に縁がない人にとってはどうでもいい事なんだけど、出て来る地名が色んな意味で私に縁が深くてちょっと背筋がぞくっとした。
そうそう。文庫版には金原瑞人さんの解説がついている。2006年、2007年にかけて「風が強く吹いている」三浦しをん、「一瞬の風になれ」佐藤多佳子、「Run!Run!Run!」桂望美、「ランナー」あさのあつこ、と走る小説が続々と登場した。特に女性作家が書く男の子の小説ばかり。そろそろ男性作家による女の子スポーツは出ないのかと思っていたら、「鹿男あをによし」万城目学が登場。そしてこの「武士道シックスティーン」がという事を冒頭に書いて、いかにこれがいいか説明してくれている。これを読めば私のしょうもないレビューなど読まなくていい。この人が薦めている本は本当にハズレがない。
まあそんなわけで、レビューは終わりにしたい。この後、セブンティーン、エイティーンを読むかと思えば、こういう読みやすい本を読んだ後は読みにくい本をと思ってブルーノ・タウトの「ニッポン」をちょっと読みかけハックスリーの「すばらしき新世界」もちょっとだけ読んで、そしてなぜかコーマック・マッカーシーの「ザ・ロード」を読み始めた自分の思考と嗜好の構造がさっぱり分からない春の夜23:34であった。では、また。
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