頭の中は魑魅魍魎

いつの間にやらブックレビューばかり

『狼たちの宴』アレックス・ベール

2022-08-31 | books
1942年ドイツ、ユダヤ人なのにゲシュタポの凄腕捜査官アドルフ・ヴァイスマンに成りすまし、前作で殺人事件を解決したイザーク。女性連続殺人事件の担当にさせられた。ウルスラがイザークを愛することに嫉妬する新聞記者バッハマイヤーが、彼を貶めようとする・・・

ドキドキしながら読んだ。イザークはナチス・ドイツの機密情報をレジスタンスに流すため危ない橋を渡る。まるで自分がユダヤ人として当時のドイツにいるかのように。

今でいうなら、トランプ支持者だらけになった共和党内で反トランプを掲げるようなものか。

 

今日の一曲

Pet Shop Boysで、"It's A Sin"



では、また。



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『ミッドナイト・バス』伊吹有喜

2022-08-29 | books
高宮利一は新潟東京都間の長距離バスの運転手。東京には料理屋を営む志穂という恋人がいる。彼女と踏み込んだ関係になろうと決めると、間が悪いことに息子が新潟の家に帰って来た。とても具合が悪く、仕事も辞めたようだ。娘は結婚を考える相手がいるが、彼の母親がかなりの曲者。そして別れた妻の具合もよくないようだ・・・

この家族以外にも様々な人物が物語に入り込んできて、ミルフィーユのような多重な話になってゆく。

素晴らしく良かった。自分が完全に利一に同化して没入してしまった。渋い家族小説の傑作でもあり、恋愛小説でもあった。

 
↓映画化されてるのは知らなかった。

 

今日の一曲

Commodoresで、"Nightshift"



では、また。


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『純喫茶パオーン』椰月美智子

2022-08-27 | books
祖父と祖母が営む純喫茶。ナポリタンが美味い。よく来る孫の来人の成長物語と周囲の人間模様。嘘をつくと鏡が光るとか、夜中の3時に物音がするから幽霊ではないかとか、初恋の人のこととか。

物凄くドラマチックというわけではないのだけれど、やや日常的が出来事がなかなか面白かった。

関西弁や東北弁をてきとうに駆使するじいちゃんが愉快だった。

 

今日の一曲

こんなバンドも曲も知らなかった。Sweetで、"Love Is Like Oxygen"



では、また。


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『たんぽぽ球場の決戦』越谷オサム

2022-08-25 | books
大瀧鉄舟は元高校球児。埼玉では有名な選手で傲慢な言動で知られていた。埼玉県大会決勝で破れ、引きこもりになってしまった。それから9年、母親が広報誌に野球サークル参加者募集中と載せてしまいあせる。昔の仲間の阪野にコーチを頼んだ。やって来たメンバーには色々問題があって・・・

非常にありがちな話なのだけれど、野球のディテールと鉄舟が昔の自分がいかに他人を傷つけていたかを知る過程がすごく読ませる。

少年野球チームにいたり、社会人野球サークルにもいた身(最高なのは練習後のビール)としては点は甘くなってしまう。

 

今日の一曲

Lisa Stansfieldで、 "This Is The Right Time"



では、また。


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『道』白石一文

2022-08-23 | books
功一郎は食品会社の安全管理担当。妻は娘を亡くしたショックで重度の鬱状態になっており、妹の碧と交代で付き添っている。40年以上前に成功したあれをやれば、この状態を脱することができるかも知れない。


※以下多少ネタバレ

高校受験で失敗した時に見せてもらった不思議な絵によって、試験の前までタイムスリップできた。今回も娘が交通事故で亡くなる前に移動できれば、娘を救える。それを試すと・・・

タイムトラベルものではなく、パラレルワールド的な世界観。我々が生きているのは、いつくもある同時並行世界の一つに過ぎないと考えると、何だか気分が良くなってきた。どの世界にいても悲劇の総量は変わらないとすれば、悩みも吹き飛ぶような感じもする。

そのネタ以外の、日常の仕事のことや、恋愛などの描写もなかなか面白かった。

 

今日の一曲

Billy Prestonで、"My Sweet Lord"



では、また。


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『風を彩る怪物』逸木裕

2022-08-21 | books
陽菜はフルートで音大受験したが失敗してしまった。田舎でカフェをやる姉のもとでしばらく暮らすことにした。するとオルガンを作る工房の人に誘われ、バイプオルガン作りに協力することになった・・・

すごく面白かった。全く知らなかったパイプオルガンの世界の深いこと。楽器とか音楽に畏怖の念を覚える。

そして挫折した陽菜や、オルガン作りに没頭する朋子の人生の物語もすごく読ませる。


 

今日の一曲

Swing Out Sisterで、 "Am I The Same Girl"



では、また。


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店名にツッコんでください294

2022-08-19 | laugh or let me die
店名にツッコんでください294
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『晩秋行』大沢在昌

2022-08-17 | books
30年前地上げで大儲けした二見興産の社長はバブル崩壊とともに行方不明。二見の片腕だった円堂は後に居酒屋を経営するが当時交際していた君香が二見とともにいなくなったことを未だに忘れられない。二見が乗ったままなくなった希少なフェラーリカリフォルニアスパイダーを見かけたという情報が入った。時価20億円の車の行方、そして君香の行方は・・・

北方謙三や志水辰夫が昔書いていたハードボイルドと似たような構造(大沢氏も書いていたと思うのだが新宿鮫以前の作品はほとんど読んでない)かと思うのだけれど、ストレートに面白かった。

やくざなどの脅威に怯えず、自分の身を守ることを優先しないカッコいい男の話。

続編がありそうな終わり方だった。続編がないとすれば、ある意味斬新な終わり方だった。

 

今日の一曲

ペトロールズで、「ホロウェイ」


では、また。


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『カレーの時間』寺地はるな

2022-08-15 | books
三人姉妹の末っ子俊子の息子桐矢25歳、平和主義者。娘たちに嫌われている祖父は一人暮らし。男尊女卑、封建的な祖父と一緒に暮らさねばならなくなった。祖父がどんな人生を歩んできたかも描かれる家族物語。

男らしくが口癖のじいちゃん本当に嫌だなあと思いながら読む。ストーリー展開も巧い。

ただカレーの話は別にカレーでもなくてもいいんだけどな、とも思った。


 

今日の一曲

Fiona Appleで、"Criminal"

https://youtu.be/FFOzayDpWoI

では、また。


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『偽りの眼』カリン・スローター

2022-08-13 | books
リーは弁護士。突然上司にレイプ犯の弁護を担当するように命じられる。なぜ?

※ちょっとだけネタバレ、でも80頁ぐらい読めば分かること

そいつはアンドルー、大金持ち。リーと妹のキャリーが昔ベビーシッターをしていた時、その家の父親に姉はセクハラされ、妹はずっとレイプされていた。姉妹は彼を殺し、遺体はバラバラにして隠した。アンドルーはその殺された男の息子だった・・・

キツイ性的虐待など読んでいてツライが、それを上回るヒリヒリする感じ。リーの立場で読むとひたすらドキドキする。

またドラッグ中毒のキャリーの内面描写もすさまじい。

 
 

今日の一曲

オフコースで、「君住む街へ」



では、また。


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『あきらめません!』垣谷美雨

2022-08-11 | books
①東京在住郁子61歳、夫婦ともに定年退職の歳を過ぎた。夫が山陰の実家に帰りたいと言う。義母一人暮らしの実家の隣が売りに出された。安いので東京の暮らしを捨て移住してみた。現実は?②由香、義母が家出した。義父の仕打ちに耐えかねて。地方都市における政治、男尊女卑の実態は変えられるのか?

面白かった。男性上位の状態をユーモアを交えながらしかしリアルでネガティブに描写する巧さ。

まさかあの人がこうなるのかというストーリー展開も巧妙。

地方政治なんて面白くなさそうだと思っていたけど、充分に改善の余地があるところだと思った(地方議員てこんなに給料貰ってるの?とか)

 

今日の一曲

ZZ Topで、"I'm Bad I'm Nationwide"


では、また。

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『子宝船』宮部みゆき

2022-08-09 | books
文庫屋兼岡っ引き見習いの北一シリーズ。酒屋が書いた宝船の絵が子宝を産むと評判だったが、今度はそのせいで子供が死んだと噂が・・・<子宝船>
一家3人毒殺事件・・・<おでこの中身>
その謎を解く・・・<人魚の毒>

めちゃくちゃ面白かった。「ぼんくら」のおでこが久しぶりに登場してくれるし、義理と人情に篤い江戸の人々と巧すぎるストーリー。ちょっとサイコスリラー的だったりもする。今年のベスト級。

なあ北一。人の心は畑みたいなもんでな。いっぱい種が植わってるんだよ。てめえで植えた覚えのない種もある。だから、まめに草取りするのが肝心なんだ。


※自分用ネタバレ


子供が死に自分を責めすぎる母親のために、宝船の絵が悪い、お前は悪くないと思わせようとした策略。
幸福そうな他人を何人も殺していた女。千葉で育ち、薬を売る祖母からトリカブトを扱い方を習い、千葉で殺人した後逃げ、後に江戸でも同様の犯行。江戸から千葉への移送中、海に飛び込む逃走した。

 

今日の一曲

George Benson & Joe Sampleで、"Deeper Than You Think"



では、また。


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『三日間の隔絶』アンデシュ・ルースルンド

2022-08-07 | books
潜入捜査官ホフマンが脅される。警察内部情報によってお前のことがわかったと。グレーンス警部には、17年前の未解決事件の容疑者が次々殺されてい件が。2つの件が合わさると途方も無い真相が・・・

ヤバイほど面白かった。家族を殺すと脅されたホフマンがやらされることなどドキドキさせる伏線多数あり。



※自分用ネタバレ


新人警官アメリアが黒幕だった。アルバニアの彼女の父親が武器商人だった。超高性能の銃を大量に仕入れて売る際に仲間割れして殺された。その復讐だった。

 
 

今日の一曲

Led Zeppelinで、"What Is and What Should Never Be"



では、また。




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店名にツッコんでください293

2022-08-05 | laugh or let me die
店名にツッコんでください293
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『ウェルカム・ホーム』丸山正樹

2022-08-03 | books
特別養護老人ホームに勤める新人の康介が、感じ喜び悲しみ学ぶ連作短編集。

私個人の近親者が胃ろうをするしないで揉めたこともあって、正直読むのがつらいかな、でもデフ・ヴォイスシリーズがすごく良かったからなと思って読んだ。

すごく良かった。介護をする人たちの日常がコミカルにそしてシリアスに絶妙なバランスで描かれている。

もうすぐ介護のお世話になりそうな人が、介護なんて遠い未来のことだと思ってる人(それこそ、中学生とか高校生)が、読むと得るものが多いんじゃないかなー。

 

今日の一曲

Deep Purpleで、"Wring That Neck"



では、また。


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