頭の中は魑魅魍魎

いつの間にやらブックレビューばかり

『ボダ子』赤松利市

2019-11-30 | books
大西は仕事に夢中になり家庭を顧みなかった。三回目の結婚は京都の玄人の女悦子。何かにつけて攻撃的で、一晩中愚痴が続く。娘は可愛かったが離婚した。鎌倉の女と再婚した。すると悦子から連絡があり、娘が精神を病んだ、境界性人格障害だと診断されたと言う・・・

うーむ。とってもスリリングだった。

グロテスクな表現が多いのだけれど、ギリギリ過剰にならない程度に収まってる。自分範囲の者たちのバトル+悲しい者たちの悲劇だった。


 



今日の一曲

Haley ReinhartとCasey Abramsで、 "Time of the Season"



では、また


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『つけびの村 噂が5人を殺したのか?』高橋ユキ

2019-11-28 | books
2013年山口の集落で起きた5人放火殺害事件。逮捕された男の家には「つけびして 煙り喜ぶ 田舎者」という謎の張り紙が。村での取材、被疑者への取材から分かった真実を記すルポルタージュ。

事件の謎を解く部分よりも、限界集落の歴史を描くパートの方が多く、また真実が期待していたものとは違うのが難点。しかし現実を「意外なものに」期待してしまうのはミステリー読みの悪い癖。





 今日の一曲

先日元のメンバーが残念なことに亡くなった、KARAで、「ミスター」



では、また。
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『カッティング・エッジ』ジェフリー・ディーヴァー

2019-11-26 | books
ニューヨーク、ダイヤモンド加工業者と客二人が殺害され、高価なダイヤモンドが盗まれた。そして地震が発生。さらに大物麻薬密売業者の裁判で証拠品がねつ造されたことを証明してくれた依頼されるリンカーン・ライム。

長い。果てしなく長い。従来のシリーズにあったホワイトボードに書かれた表がなくなっていて(読まずに飛ばしてした)さらに文字数が増えた。

無駄が多いわけではないんだけど、一つの事件が解決するまでの適度な長さを遥かに超えている。伏線は全て回収されるのはスゴイけど。楽しみより苦しみが勝る読書だった。


 


今日の一曲

Pink Floydで、"Money"



では、また。


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店名にツッコんでください228

2019-11-24 | laugh or let me die
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『真理の探究 仏教徒宇宙物理学の対話』佐々木閑 大栗博司

2019-11-22 | books
仏教の学者と素粒子の学者の対談。ビッグバン、相対性理論、量子力学。科学者のような釈迦、四諦、三宝。基本的な話とやや難しい話がうまくブランドされていてとっても面白かった。

・キリスト教やイスラム教では唯一の神がいるが、釈迦は神ではなく法則を発見した。
・この世は苦に満ちているが、消す方法はある。
・修行ではなく、スーパーパワーにすがるのが好都合な大乗仏教が中国で主流→日本へ入ってくる。
・一般相対性理論と量子力学がブラックホールで矛盾するのを証明したのがホーキング。


 


今日の一曲

Eurythmicsの"Sweet Dreams"とWhite Stripesの"Seven Nation Army"の Mashupを演奏するPomplamoose ft. Sarah Dugas



では、また。


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『花殺し月の殺人 インディアン連続怪死事件とFBIの誕生』デイヴィッド・グラン

2019-11-20 | books
19世紀、アメリカ。ネイティブアメリカンのオセージ族は広大な土地を所有していたが、トーマス・ジェファーソン大統領に数百万エーカーの土地を手放すよう命じられ、カンザスへと移った。その後、結局政府は土地を割り当てることにした。その中でオセージ族が代わりに割り当てられたオクラホマの土地から、石油が出ることが分かった。裕福になったオセージ族を襲うのは、1921年から関係者が24人も殺害される事件。発足当初のFBIは解決できるのか。

めちゃくちゃ面白いドキュメント。殺人事件の謎を解く過程も面白いけれど、アメリカの狂ったような歴史も非常に興味深い。

19世紀、チェロキー族の保有地の一部を政府が買い上げ、4万2千の区画に分割し、なんと1893年9月16日正午に一番乗りしたものに与えると発表した。何日も前から何万もの人垣が出来、殴り合いながら突進して行ったそうだ。クレージー。

また、20世紀初頭、汚職まみれ、能力不足の警察や保安官に代わって、推理し尾行ししていたのは私立探偵だった。(ピンカートン探偵社は知っていたけれど、まさか捜査の補完をしていたとは)

というような歴史の話がてんこ盛り。そして事件の謎が解かれていくプロセスも良かった。ありそうでない、ドキュメント+ミステリーだった。


 


今日の一曲

フジファブリックで、「若者のすべて」



では、また。


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『ノワールをまとう女』神護かずみ

2019-11-18 | books
江戸川乱歩賞受賞。西澤奈美は元総会屋の原田のもとで企業のトラブルシューティングを生業にしてる。医薬品メーカー美国堂にトラブル発生。韓国の企業を子会社化し、その社長林を日本の本社の常務にした。すると9年前、林が日本の戦争責任を問うスピーチを行なってる動画が表に出て来た。すると「美国堂を糾す会」が不買運動、デモを始めた・・・

設定が物凄くいい。非常に現代的なテーマ、奈美のストイックな生き方など興味を引く要素が多い。

しかし、中だるみしてしまった。中盤が長い。案件一つで読ませるのは難しかった。

最初と最後は抜群に良いので、別の案件を加えながら解決していくか、連作短編集のような形式だったらもっとさらに良かったと思う。


 


今日の一曲

℃-uteで、「Crazy 完全な大人」



では、また。
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『廃墟の白墨』遠田潤子

2019-11-16 | books
明石ビルのオーナー女性明石、娘の白墨、賃借人たち。1970年代、起こった悲劇。50年経って分かった真実とは。

遠田潤子は大好きな作家。でもこれは読むのが時間の無駄になってしまった。

可哀想なキャラがそれほど可哀想に思えず、意外な展開にそれほど驚けない。誰が殺してもまあいいかと思ってしまった。


 


今日の一曲

Led Zeppelinのカバーで、尾崎亜美と小原礼と奥田民生による" Rock and Roll"



では、また。


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『べらぼうくん』万城目学

2019-11-14 | books
小説家万城目学の、大学受験失敗、浪人生活、京都大学法学部学生時代、繊維会社へ就職、小説が書きたいのに書けない苦悩といった小説家になる「以前」のことを書いたエッセイ。

「週刊文春」に連載されていたもので、とっても読みやすく面白い。 

自分には無職の才能があって、自由な時間を手に入れてもいっさい不安を感じなかった、という表現など、自虐的なようでいてそれが過剰でなく、しかしどこかで自分をほんのりとリスペクトしているのうな絶妙な配合がとてもここちよかった。(ドラマ「俺の話は長い」で、生田斗真演じる主人公の、共感できない言い訳とは対照的だった)


 


今日の一曲

Haley Reinhartによるカバーで、White Stripesの"Seven Nation Army"



先日ラグビーワールドカップでファンゾーンにてイングランド対ニュージーランドの試合を観ていたら、背後にいたウェールズのサポーターが何度もこの曲を歌っていた。

では、また。


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『ステージ・ドクター菜々子が熱くなる瞬間』南杏子

2019-11-12 | books
大きな病院を辞めて実家の病院で内科医として勤務する菜々子。演芸やピアノの演奏、スピーチ、コンサート、太鼓などステージに上がらないといけない者に持病がある場合、そのサポートをすることになったという話。

白血病や糖尿病などの病気にどう対処すべきかというテクニカルなことがとても興味深かった。


 


今日の一曲

Morgan Jamesによるカバーで、Peter Gabrielの"Sledgehammer"



では、また。


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店名にツッコんでください227

2019-11-10 | laugh or let me die
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『縁』小野寺文宣

2019-11-08 | books
少年サッカーチームのコーチが少年の母親から言われる→28歳女性が彼氏から、感じが悪いと指摘される→息子が女子高生とホテルに行ったと彼女の親から激昂される→というような話が連作短編で繋がってゆく。

巧い。とっても巧い。面白い。とっても面白い。良い。とっても良い。

最初は独立した短編集かな?それならまあまあぐらいなのかなと思って読んでいたら、すべての話が繋がってる。それも絶妙な繋がり方で。

なんつーか、とにかくいいのだよ。

 「みんな、する話は同じなんだよね。本音は隠すとかそういうことではなく、他人の価値観で話しちゃうんだ。誰かが決めた価値観でね。まあ、これは僕も含めて、ほとんどの人間がそうだけど」

 「五十二歳。お肌の曲がり角を何度も曲がり、もはやどの方角へ向かっているのかもわからない年齢」


中に織り込まれている、「人間てそんなに悪くないよね?」という哲学がいい。人物描写がいい。そして台詞がいい。オススメ。
 

今日の一曲

KIRINJI  feat. 鎮座DOPENESSで、" Almond Eyes"


では、また。
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『堕落刑事 マンチェスター市警 エイダン・ウェイツ』J・ノックス

2019-11-06 | books
マンチェスター警察のエイダン・ウェイツは、麻薬密売組織への潜入捜査を命じられる。しかし司法大臣に呼び出され、娘が組織の人間と一緒にいて家に帰って来ない、様子を探ってくれと頼まれる。また、10年前に組織に不利な証言をする予定だった女性が行方不明になっている。だらしの無いウェイツは果たして真相にたどり着くのか、警察内で組織と癒着してる者は誰なのか・・・

最初は面白いと思ったのだけれと、途中少ない登場人物が割と同じような展開でもたつく感じがして、ちょっと飽きてきた。しかし、某登場人物が殺される辺りから、グッと引き込まれる。

ウェイツは何度も身が危なくなるのだが、ラスト近辺で本当にヤバくなる辺りは読むのをやめられなくなるほどに緊張感があった。次回作、ぜひ読みたい。


 

今日の一曲

Dua Lipaで、"Blow Your Mind"



では、また。


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『労働者階級の反乱 地べたから見た英国EU離脱』ブレイディみかこ

2019-11-04 | books
BREXIT国民投票の結果が発表され。まさかの離脱決定。冒頭著者の夫が叫ぶところから始まる。しかし夫は離脱賛成に入れていたというのが面白い。激しく面白かった「ぼくはイエローでホワイトで、ちょっとブルー」の著者が、英国の労働者階級が何を考えているのか、あるいはここ100年の政治を振り返り、英国社会を考察するという意外と硬い本。

なかなか面白かった。

英国のテレビ番組で、離脱派と残留派の家庭の奥さんを交換して、しばらく暮らしてもらうという企画の話が興味深かった。


 


今日の一曲

Coldplayで、"Orphans"



では、また。


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『死者の国』ジャン=クリストフ・グランジェ

2019-11-02 | books
パリでストリッパーが連続して殺害される。被害者の下着で縛られ、唇の両端は耳まで切り裂かれていた。担当はコルソ警視。パリで最も優秀だが、強引な捜査を行う男。捜査が行き詰まったとき、昔同様の事件があったことを知る。その犯人はフィリップ・ソビエスキ。強盗殺人で刑務所にいたが、出所してから画家として成功していた。ソビエスキにとって不利な証拠や有利な証拠が出て来て・・・

長い。果てしなく長い。ポケミス上下二段組で700頁強、定価3千円。しかし、物凄く面白い。

コルソの無茶苦茶なキャラがいい。ムシャクシャしたから、自分の担当でない銃撃戦に参加したりする。

ゴヤの絵画が重要な場面で使われているのだけれど、その辺も物凄く巧い。

一番は、ソビエスキがやったのか、そうではないのか。凄腕の美人弁護士が頑張るのだが、とにかくどんでん返しに次ぐどんでん返しの行き先は、想像だにしないものだった。

あとそうそう。SMやら変態性交の話が出まくるのでその辺苦手な人には薦められないけれど、大丈夫な人ならぜひオススメしておきたい。下にネタバレあり。


 


今日の一曲

The Strokesで、"Last Nite"




※ネタバレ


弁護士のクローディア・ミュレールが全て仕組んでいた。レイプ魔ソビエスキが犯した女性が産んだのがクローディアや、他の被害者だった。彼に復讐するために、ソビエスキの仕業だと思われるように、彼が描いたゴヤの贋作のモチーフを使って死体に細工をした。ソビエスキに最大限の苦痛を与えるため、事件の担当弁護士になり、一度無罪にしてから後に有罪にしてやろうと計画。しかし彼は獄中で自殺。しかし、同様の事件がまた起こる。被害者はなんとクローディア。ソビエスキは無実だと見せかけての自殺。コルソが彼女の墓に行くと、告白の手紙と、コルソの名が書かれた棺が。実はコルソもソビエスキの子供だとあった。そして、自分のいる「死者の国」でコルソを待っていると。

では、また。


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