頭の中は魑魅魍魎

いつの間にやらブックレビューばかり

病は気から 猿は木から 

2011-11-29 | days





のどが痛い。

風邪をひいたかも。

そういえばルゴールという薬を綿棒につけてのどの奥にぐいっと突っ込めばいいんだったっけ。

あれ、おえってなるけど なんか効く気がするんだよね。












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『錦繍』宮本輝

2011-11-27 | books

「錦繍」宮本輝 新潮社 1982年

蔵王で偶然に出会った二人は10年前に離婚していた。妻の父親が経営する会社に入社して順調に出世していた夫。祇園のクラブのホステスと心中事件があって女性は死に、彼は生き残った。当然のように離婚が決まる。彼女が別れた夫に手紙を書き、それに彼が返信する。往復書簡形式で描写される二人の物語。

いやいやいや。突如として宮本輝の初期の作品が読みたくなったので読んでみた。書簡形式の小説は久しぶりに読むけれど、この形式だからこそ描ける、密やかで細やかで、それでいて針のように鋭く炎のように立ち上がる。眼光紙背に徹すという言葉があるが、宮本輝の筆からあふれ出る光が光が紙背からこちらに向かってほとばしっているような作品だった。

勝沼亜紀という女、有馬靖明という男。二人が結婚する前の出来事、結婚中のこと、心中の経緯、離婚、後の人生、ゆっくりゆっくり語られる。取ってつけたように登場人物に過去を語らせるような作品は残念ながら多い。しかし、この作品は取ってつけたように不自然に語らないといけないはずなのに、それがない。不自然なことを自然に語る。あまりにも巧い。

「生きていることと、死んでいることとは、もしかしたら同じことかもしれへん。そんな不思議なものをモーツァルトの優しい音楽が表現してるような気がしましたの」(文庫版68頁より引用)


この生きていること=死んでいること というのがこの小説のテーマの一つでもある。哲学的で深遠な問いについて考え感じるという頭のストレッチする機会も与えてくれた。

文庫本で200頁ほどなのに、なかなかお金を出しても買えないような有難い時間を過ごせた。

信仰とは神の中ではなく、信じる者の心の中にある。だとすれば、「面白いもの」は小説の中にあるのではなく、読む者の心にあるのだろう。なんつって。

では、また。



錦繍 (新潮文庫)
宮本輝
新潮社
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『私が語りはじめた彼は』三浦しをん

2011-11-25 | books

「私が語りはじめた彼は」三浦しをん 新潮社 2004年

村川融という大学教授。そして、彼と関係する、彼の弟子、彼の妻、彼の愛人の夫、彼の息子、彼の娘、彼の娘を調べる男、彼の娘の姉の婚約者、という別の人間たちの数奇な人生。連作短編形式で語る…

いやいやいや。三浦しをんには読むたびに驚かされる。エッセイの文章の巧さと腐女子な生活に笑わされ、しかし男性の視線から描く物語の巧さにいつもため息をついていた。そして本作。私が以前に読んだどの作品とも似ていない。

純文学をミステリーの作法で描き、ミステリーを心理小説のスパイスをかけながら料理した、そんな作品だ。

パッと読んだだけですぐに意味が分かってしまう噛みごたえのない文章がない。タイトで無駄がなく、奥が深い。


彼女がしてほしいことをしてやり、してほしくないことはしない。「してほしいけどしてほしくない」ということは、どんな人間関係においてもあまりない。「してほしくないけどしてほしい」ということを、たまにスパイスがわりに振りかけると激烈な反応がある。(文庫版162頁より引用)

激しい感情は書物と同じだ。どれだけ厚くても、いつか終わりがやってくる。僕はもう、激しさをすべて使い切ってしまったから、あとはただ、はじまりも終わりもなく続いていくだけなのだ。すごく長い時間をかけて、死んではまた星を生み出す銀河のように。(文庫版248頁より引用)



私の拙いブログよりも、文庫版の解説で翻訳家の金原瑞人さんが熱い文章を書いておられるからぜひ本屋さんで立ち読みして、それで買うか、あるいは万引きするか決めればよろしいかと思う。いや、盗んじゃだめか。

金原さんは「まほろ駅前多田便利軒」よりも本作で直木賞を与えるべきだったということと、本作を=「ミステリ+心理小説+現代小説」であるとし、個人的には最も好きだとしている。

私もマイベスト三浦しをんだと思う。

では、また。




私が語りはじめた彼は (新潮文庫)
三浦しをん
新潮社
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私の朝食

2011-11-23 | days
今日の食事はホットドッグ。

レンジでチンしたら、

ちゃんとこんな風に







そう言えば、ボンッ ボンッ て言ってた。


次にパンの中に入れて







漬物もはさんで出来上がり。






ケチャップもマスタードもなかった。

ので、ヘルシー&エコ・ホットドッグの出来上がり。




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『ドルチェ』誉田哲也

2011-11-22 | books

「ドルチェ」誉田哲也 新潮社 2011年(初出小説新潮2006年10月号から2010年11月号まで不定期連載)

練馬署の強行犯係魚住久江は42歳独身。元は警視庁の捜査一課にいたのに、今はもう殺人事件の担当をしたくない。連作短編形式で綴る、幼児の溺死事件、傷害、レイプ、交通事故…

ふむ。そんなに悪くないけどすごい傑作というほどでもない佳作。事件の捜査のラストにほろっとさせる部分があるのはなかなかだし、久江の内面や独白もへぇと読ませる部分もある。

しかし他に積ん読山脈にたくさん本がある場合、わざわざ選ばなくて良かったかな感は残った。同じ作者なら「武士道シックスティーン」はとても良かったけれど。長いこと観てないけれど、2サスの原作っぽいかな。

タイトルの「ドルチェ」は被害者の女子大生が所属しているイタリア語のサークルの名前なのでなぜこれになったのかはよく分からなかった。

では、また。



ドルチェ
誉田哲也
新潮社
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『春から夏、やがて冬』歌野晶午

2011-11-20 | books

「春から夏、やがて冬へ」歌野晶午 文藝春秋社 2011年

平田はスーパーで保安の仕事をしている。しかし万引きした女を警察に突き出さなかった。彼女の年齢が死んだ娘と同じだったから。ひき逃げされた娘、おかしくなった妻。徐々に語られる平田の過去。万引きした女と偶然会い、そして…

いやいやいや。「絶望ノート」にはがっかりしたけれど、「葉桜の季節に君を想うということ」と同じくらやられた。どんでん返された。

娘を殺した真犯人は…というのは読んでいるうちに分かる。というより分かったような気分になる。読者はみなそっちに持って行かれる。それもだいぶ終盤になって、あーそれが結末だったのかとなるほどと思う。ところが最後の最後にさらにドカンとどんでん返されるのだ。

そこには、悲しみとか人間存在とか、人間の奥底の悪とか善とか、そんなものがあった。

淡々と描写は進むし、とても読みやすい。しかしどんな落とし穴が待っているんだろうとドキドキしながら読むのが実に愉しい。そしてそのドキドキ感を決して裏切らなかった。小説を読むということに、常にドキドキとどんでん返しを求めていると同じような本ばかり読むことになり、結局飽きてしまうように思うが、こんな風にたまに読むと、やっぱり愉しい。

では、また。



春から夏、やがて冬
歌野晶午
文藝春秋

葉桜の季節に君を想うということ (本格ミステリ・マスターズ)
歌野晶午
文藝春秋
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久しぶりに靴を

2011-11-18 | days
クラークス デザート・ブーツ



とても貧しかった学生時代。アメリカに一ヶ月一人旅に行くことになった。当時ろくな靴を持っていなかった私は、一ヶ月の旅に耐えられる巨大なリュックを買いにアメ横へ行き、そして靴を買いに神保町へ。

親切な店員さんと色々と話した結果、リーガルのワラビーズを買うことにした。なぜワラビーズなのかはもう覚えていないが、同じスエードのワラビーズでは、クラークスのはソールを全て交換すると生ゴムなので高くつくが、リーガルのは合成ゴムなので比較的安いという話だった。と記憶している。

リーガル君はその後旅に耐え、後にも重宝した。

しかし長年の酷使の結果、だいぶ前にお亡くなりになった。

それから長年の間、クラークスは私のあこがれであった。(英国ではクラークスはあまり高価なブランドではないということが後に分かったが、あこがれ=高価ではないのだろう、たぶん)(小説史上最も好きなキャラクターだと思うブライアン・フリーマントルのチャーリー・マフィン(「消されかけた男」等)が確かハッシュ・パピーズの靴をぼろぼろになるまま毎日履いていた、というのもそのあこがれを加速させた)(しかしそれはクラークスではないので、あこがれの加速も意味不明ではあるが)

ということ全てをすっかり忘れていたのだが、先日突然クラークスのワラビーズではなくデザート・ブーツが欲しくなった。とても記憶力が過疎は私はなぜかは覚えていない。そして、店で試し履きをした。イケメンの店員さんは、このサンド・ベージュが何にでも合わせ易いですよと、ファッション的側面を強調する。私はファッションというより長年の怨念と執念が動機なので、その場を立ち去る。しかし私に適したサイズはUK8だということはチェックした。

直営店では2万ぐらいで売っている。Amazon以外では通販でほとんど買い物をしないのだが、楽天でチェックしてみると、1万円前後で売っていることが分かる。おーまいごっ。

大人の男としてはこういう買い方(現物を試着して、後で別のネット上の店で買う)って邪道だなと思いつつ、そして楽天に出店している店があまりにも多くてめんどくさくなりUSサイズじゃなくてUKサイズで表記している店があったから、即決その店で買う。

届いたのを履いてみたら、ジャストフィット。しかしよく見たら、UK8じゃなくてUS8サイズだった。サイズ表記はUS8=UK7.5なのでちょっと小さくなる。

サイズを間違えたのは向こうなのだから当然無料で交換できるが、家で履いたまま何時間か過ごしてみたら、革が柔らかいのでちっともきつい感じがしない。

ので、そのままこれを履くことにした。

以上、いつもブックレビューばかりでもあれかなと思いつつ、おまえがファッションについて語ってるんじゃねえよという読者諸君の心の内がマンガの吹き出しのように見える。

では、また。


クラークスデザート・ブーツとかえる

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『ファウンデーション 銀河帝国衰亡史1』アイザック・アシモフ

2011-11-16 | books

「ファウンデーション 銀河帝国衰亡史1」アイザック・アシモフ 早川書房 1984年

FOUNDATION, Isaac Asimov 1951

銀河紀元1万2千年頃、心理歴史学者ハリ・セルダンは帝国が3万年の暗黒時代を迎えるがそれを1千年に短縮できることが出来ると予言した。そのために必要なのは銀河百科辞典。それを編纂するファウンデーション

目次
【第一部 心理歴史学者】=ハリ・セルダンについての説明
【第二部 百科辞典編纂者】=後の編纂者ピレンヌ ファウンデーションをどこの星の置くか
【第三部 市長】=ハーディン 百科辞典編纂以外の機能を持たないターミナスと、侵略の意図を持つアナクレイオンの駆け引き
【第四部 貿易商人】=ファウンデーションのエージェントによる、一見貿易活動、実際は布教活動
【第五部 豪商】=主任貿易商マロウによる辺境地域の探索、政治的なやり取り

大学時代の友人と久しぶりにメールのやり取りをした時に、彼がこの本から影響を受けただか、すごく面白かったと書いていた。しかしその時には興味を持てず読まなかった。何となくSF的過ぎだと思って。それからだいぶ経ってから読もうとしてみた。(その彼は意外なことに今は大学の先生だ。)実は、このファウンデーションは以後読むのは三回目。二回は最初の100頁ほどで断念。つまらないのではなく、私の記憶が正しければ、もっと早く読まなければならない本がやって来たのでそっちを優先しているうちに忘れてしまったはず。

さて、三度目の挑戦。

いやいやいや。これはすごい本だ。ローマ帝国の衰亡史+未来史+政治学+社会学 のように感じた。サイエンティフィックなフィクションが土台になっているのではなくあくまでも道具として利用されているだけ。

そんじょそこらの軽い本は、高速で読み飛ばせるが、これは読み飛ばせない。じっくりゆっくり読まないと分からなくなる。一冊読むのに通常の4倍の時間がかかった。

資源を持たないターミナスという星は日本という国に酷似していると思うが、それを1951年の書いている(雑誌の連載は1942年から1949年)のは、アシモフによる未来予測が当たっている(当たっているという言葉の定義にもよるけど。)のかも知れない。

ハリ・セルダンは未来を予言した(=預言者であって=教祖である=キリスト)と読み取れ、ファウンデーションはバチカンであるとも読み取れる。宗教と政治の駆け引きはローマ法王と時の権力者を想像させる。武器は貿易である。

とても残念なのは表紙である。こんな宇宙戦艦的なドンパチはほぼ皆無な小説なのに。

では、また。


ファウンデーション ―銀河帝国興亡史〈1〉 (ハヤカワ文庫SF)
アイザック・アシモフ
早川書房
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『マスカレード・ホテル』東野圭吾

2011-11-14 | books

「マスカレード・ホテル」東野圭吾 集英社 2011年(初出小説すばる2008年12月号~2010年9月号)

3件連続した殺人事件。次の犯行はここのホテルで行われるという警察の予測。刑事が送り込まれ、ホテルのスタッフに扮して容疑者を探す…

うーむ。軽い。実に軽い。刑事とフロントクラークの最初ぎこちなく不信感を抱いていたのが、段々と打ち解ける様は、黄門並の予定調和。それが安心するという人もいるとは思うけれど。あるいはホテルでの仕事について間接的に知ることができるという側面もあるけれど、そのために小説を読むというのは本末転倒だろう。

支払う金や時間に見合う読書であるかは、その人の金銭に関する価値観、その人の時間に関する価値観や、軽い読み物対する価値観によるかと思う。軽い読み物=駄作ではないが、本作に関しては、東野圭吾に対する期待感からすれば傑作とは言い難いし、後に何も残らないのは確か。

逆の言い方をすれば、後に何も残したくない、時間をつぶせればそれでいいという人にとっては良い本なんだろうと想像する。

あるいは、人生が重たいから、小説ぐらいは軽いものを選びたいという人もおられるだろう。私のように人生も人格も軽くてスカスカなので、小説ぐらいは少しは重たいものを選びたい、と思う人もおられるだろう。だから色んな本が売れるんでしょうな。うんうん。

とかなんとかえらそーに言いながら、知人に薦められた大島真寿美の「ピエタ」というヴィヴァルディが登場人物として登場するというあまり読んだことのないタイプの本を読み始めたがちっとも頭に入ってこない。自分の頭のスカスカさを少し感じ、そして「マスカレード・ホテル」は軽いと言うのもまた間違っているのかとも思った。

と、面白くなかったけれど、つまらないとも言えない場合の歯切れが悪い感じで失礼。



マスカレード・ホテル
東野圭吾
集英社
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The Bystrander Effect

2011-11-13 | days





傍観者であるということが結果として何を生むか、もしくは生まないのか。それについてよく考える機会を与えてくれた動画。

ニュースで殺人事件を見れば、我々は殺人事件の傍観者。イタリアの首相が交代すれば、その傍観者。急激な円高の、傍観者。日本の首相が交代しても、その傍観者。

当事者と傍観者の境界線がどこにあるのについて、なんだかじっくり考えてしまった。利害が境界を決める主要なファクターには必ずしもならない。じゃ、なんだ?





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『王国』中村文則

2011-11-12 | books

「王国」中村文則 河出書房新社 2011年(初出文藝2011年夏号)

娼婦になりすますわたしは、社会的要人の弱みをつくるのが仕事。金のために男のいるホテルに行き、彼の写真を撮ったり、PCを盗んだりする。危ない仕事には…

いやいやいや。タイトな文章と先が予測できない展開。小説を読む真の悦び、すなわち脳の底の方に沈んでいる何かをかき乱すことがこんなにも揺らすものなのか。

ここ2ヶ月ほどで読んだ中では「舟を編む」かこれがベストだ。

中村文則のでは、レビューしたと思っていたら忘れていた「掏摸」もひどくスリリングだったし、「悪と仮面のルール」も傑作だった。

それほど分厚い本ではないし、文字がそれほど詰まっているわけでもないのに、短い言葉の中に意味をぐっと詰め込んでいるので、じっくり読まないと分からなくなる。このペースで単行本上下二段組、しかも上下巻だったら、読むだけでぐったり疲れてしまうだろうと思うほどの継続する緊迫感。

彼女がなぜそのような仕事をすることになったか、そう簡単には説明してくれない。小出しに小出しにじらされる。今は亡くなってしまった友人エリの子供翔太をなぜ救おうとするのか、その前振りでエリがどんな女性だったのか、23頁から31頁に描写されている。名古屋でエリは年下の男と出会い付き合う。そしてプロポーズされ、受けることにした。名古屋で10年勤めていた居心地の悪い会社を辞め、彼の住む東京に引っ越すことにした。ところが、幸福の絶頂にいたはずなのに、なんと彼は仕事をしておらず、さらには結婚までしていた…

なぜ彼はそんなことをしたのか?私はこの部分を読んだだけでノックアウトされてしまった。犯罪を扱う上質な純文学だと言ったら言い過ぎだろうか。

「掏摸」から継続して絶対悪の木崎が登場するが、独立した物語として充分堪能できる。

誰にでもオススメするわけじゃないが、最近の歯応えのない小説には飽きた方にはぜひオススメしたい。

では、また。



王国
中村文則
河出書房新社
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『人生教習所』垣根涼介

2011-11-11 | books

「人生教習所」垣根涼介 中央公論新社 2011年(初出長崎新聞などの新聞連載2007年2月~2008年9月号)

人間再生セミナー、第三回小笠原塾開校という広告が新聞に大きく掲載される。費用は50万。場所は父島と母島。書類選考あり最大参加者30名。セミナー最終試験合格者に就職の支援をする。事務局の代表は元日本経団連の会長。それを見て応募してくる、元ヤクザ、元フリーライター、元東大生。怪しいセミナーなのか、そうではないのか…

うーむ。この手の自己啓発臭のする本は手に取らないようにしている。しかしうっかり読んでしまったのは、舞台が父島だから。以前に行った父島を思い出せるならと期待したらその期待には充分に応えてくれた。父島のガイドブックとして、あるいは行ったことのない人が想像するにもとてもよい本だった。

肝心の小説そのものだが、最初漂う自己啓発の香りは段々と薄まってくる。講義そのものが小説内で紹介されることより、登場人物たち同士の触れ合い、過去の人生に対する反省、地元の人たちとの触れ合いが描かれるのが多くなってくるため。

単なる父島本でもなく単なる自己啓発本でもなく、父島60パーセント+成長40パーセントぐらいの成分から成っているのが悪くはない。まあすらすら読める軽いお話しではあるのだけれど。

では、また。



人生教習所 (2011-09-30T00:00:00.000)
垣根涼介
中央公論新社
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スパム

2011-11-10 | days

夜中に腹が減ったので、前に買ってあったスパムを食おうと思った。







しかし








嗚呼


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『おまえさん』宮部みゆき

2011-11-09 | books

「おまえさん」(上下)宮部みゆき 講談社 2011年(初出小説現代2006年8月号~2009年7月号+書き下ろし)

「ぼんくら」「日暮らし」に続く、シリーズ第三弾。遺体が取り去られても地面に残るその跡。遺体は見事に斬られていた。死んだ者は金を持っていそうになく、強盗ではないのか。怨恨か。薬屋の旦那も同じ手口で殺害されていた。おでこと弓之助、平四郎にお紺、政五郎、いつもの面子が解く謎とは…

うーん。長い。長すぎる。決してつまらなくはないのに、冗長だと思う。読み疲れてしまった。同じエピソードでももっとずっとコンパクトに書けたはず。様々なサイド・ストーリーが京極夏彦のようにこれでもかと詰め込まれているのは必ずしも悪くないはずなのに、読み終わってみると、時間がかかっちゃたなー、という思いが先に来てしまう。


レビューは書いてないけれど、「ぼんくら」「日暮らし」は実に良い小説だったので、何が違ったのだろうかと思う。悪いのは私?好きな日本人作家ときかれて、真っ先に宮部みゆきの名前を挙げる、生粋のミユキストなのに。

ふむ。物事に絶対的なものなどこの世に存在しえず、常に相対的にしか存在しないとすれば、本作ももっと私個人の状態が違っていれば、ずっと堪能できたのかなとも思う。

読者個人のゴタゴタがある方が、読書への逃避度が高まって、より堪能できるのか、むしろその逆で、ゴタゴタにエネルギーを吸い取られて、読書の集中出来ないのか、どっちだろうか。私は後者的な人間なように思う。特に最近。

では、また。



おまえさん(上)
宮部みゆき
講談社
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『007 白紙委任状』ジェフリー・ディーヴァー

2011-11-07 | books

「007 白紙委任状」ジェフリー・ディーヴァー 文藝春秋社 2011年
CARTE BLANCHE, Jeffrey Deaver 2011

英国政府通信本部が傍受したメールには「金曜夜の計画を確認。当日の死傷者は数千に上がる見込み。イギリスの国益にも打撃が予想される」とあった。誰がどのようにしてどこを攻撃するのか。あのジェームズ・ボンドがあのジェフリー・ディーヴァーによって蘇る。攻撃計画の鍵を握る男、アイリッシュマンとノアを追って、セルビア、ロンドン、ドバイそして… 攻撃を阻止できるのか…

ふむふむ。007+ディーヴァーがはっきりと具現化しているのがよく分かる。双方のいい所を掛け合わせたと言えばとても良いし、ディーヴァーらしい非常に細かく徹底した捜査はやや希薄になっているというのを悪く捉えることも出来る。

しかし、二転三転していく様はなかなかだし、映像化されることを強く意識した物語はとても読みやすい。ボンドが駆使する機器が極めて現代的なのもまたをかし。

難点は第一章にあたる「日曜日 美しく紅いドナウ」が読みにくく、入りにくいこと。書店でこの部分だけパラパラ見たときには読むかどうか迷った。第二章にあたる月曜日から始めてボンドの個人的描写から始まるとずっと読みやすいとは思った。ま、読み進めていけば気にならなくなるけど。

産業廃棄物、英国の諜報機関内の揉め事、アフリカの内戦など様々な要素を孕んで進んでいく様はいかにもディーヴァーっぽい。読んで、楽しんで、ためになって、とでも言っておこう。本来読書はためになってはいけないとは思うけど。

では、また。


007 白紙委任状
ジェフリー・ディーヴァー
文藝春秋
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