頭の中は魑魅魍魎

いつの間にやらブックレビューばかり

『凍原』桜木紫乃

2012-08-31 | books
「凍原」桜木紫乃 小学館 2009年

1992年少年は消えた / 1945年樺太からソ連兵に襲われる危険を冒して北海道へ渡った女 / 2009年、92年に行方不明になった少年の姉は刑事になっていた。自動車販売会社の営業マンが殺害された。この三つをつなぐ一本の糸とは…

うむ。最初は面白かったのに、途中でダレてきた。予定調和な進み方、特に2サスっぽい展開の仕方に飽きてきた。しかし、こうだろうと予想した真相とは、違う真相らしきものが明らかになったのに驚き、そしてさらにまたどんでん返しがあって、やられてしまった。

「終章」これが実にいい。これがあることでこの小説の価値を2倍にも3倍にも高めていると思う。

以上、さっぱりレビューにて失礼。


凍原凍原 北海道警釧路方面本部刑事第一課・松崎比呂 (小学館文庫)
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『墨東奇譚』永井荷風

2012-08-29 | books
「墨東奇譚」永井荷風 1937年

(墨の字には正確にはサンズイがつく)

作家である私、大江と、私の小説の主人公種田をシンクロさせつつ進む随筆風小説。ちょっと読んだことのない不思議な小説。

話そのものは他愛もない。いい歳したおっさんが若い女とくっつくというようなもの。しかし、そこへステキな文章と、当時の風俗を語る描写が加わると、独自の味をもつなかなかの作品となる。

銀座の街が大きく変わってしまったと嘆く辺りで、

四竹を鳴して説経を唱っていた娘が、三味線をひいて流行歌を歌う姉さんになったのは、孑孑(ぼうふり)が蚊になり、オボコがイナになり、イナがボラになったのと同じで、これは自然の進化である。マルクスを論じていた人が朱子学を奉じるようになったんのは、進化ではなくして別の物に変ったのである。前の者は空となり、後の者は忽然として出現したのである(新潮文庫版88頁より引用)


マルクスから朱子学か。この時代、そんな雰囲気だったのね。進化とそうでないものの区別も、なるほど。これ以外にも、ステキな表現があちこちにあるけれど、基本的には男女の仲についてが多い。

69歳にして浅草六区の女優と昵懇(死語?)になった荷風らしい。

では、また。


墨東(ぼくとう)綺譚 (岩波文庫)ぼく東綺譚 (新潮文庫)
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What Am I?

2012-08-27 | days
以下、真夏の実話

地下鉄の中

お盆休み中だからだろうかとてもすいている

席に腰をおろした

隣には小学校1年生ぐらいの小さな女の子が座っていた

疲れていたのでiPodを聴き目を閉じた

すると聞こえた

「ママー」

隣の女の子がママを呼んでいるらしい

そのまま目を閉じているとまた

「ママー」

ふと目を開けてその女の子の隣を見ると

制服を着た女子高生…

ママじゃないか…

座席の正面を見ると

左は男子高校生 

その隣はおばあちゃん

その隣はおじいちゃん…

まあいいかと眼を閉じた

また聞こえる

「ママー」の声

隣を見たら

私の顔を見上げていた

私の顔を見上げていた

シーイズルッキンアットミー

目があってしまったが

また私は目を閉じた

その後彼女は先に地下鉄を降りた




私は自分の気が付かないうちに出産していたのだろうか…

それとも、私のファッションについて、

「まあまあ」と評価してくれたのだろうか…
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『狂人日記』色川武大

2012-08-25 | books
「狂人日記」色川武大 福武書店 1988年 (講談社学芸文庫2004年)

高校生、いや中学生のときだったろうか、当時夢中だった遊び、麻雀について熱い小説があると言うので手に取った「麻雀放浪記」 まさに寝食を忘れて読んだ。その作者、阿佐田哲也が純文学を別のペンネームで書いていると後に知って驚いた。しかし驚くだけで読もうとはあまり思わなかった。

それからだいぶ経って手に取ったのが本書。ナルコレプシーに悩む色川武大の最後の長編小説だ。

主人公は職を転々とする。幻覚を見る。精神病院に入院する。女に出会う。幻聴を聴く。ただそれだけの話なのに、強烈な印象を残す。彼の見る幻覚のリアルでありながら浮世離れした様。必ずしも色川本人の私小説ではないようだが、しかし自身の体験がないと書けない世界だ。

自分は苦笑いをした。幾つになってもこんなことに全力を使わなければならない自分に呆れる。あきれ返るという気分は快い。できれば、絶えまなく、自分を呆れかえっていたい。(講談社学芸文庫版17頁より引用)

寝たまま勢いよく脱糞する。尻に手を当ててみるとなんのこともない。医者は、抑圧ですよ、というだろう。そうだとしても、それだけのことだ。せきを切ったようにまた脱糞する。しかしなんでもない。誰かの手が、ちら、と男根に触れていったような気がする。(73頁)


久しぶりに、もう一度「麻雀放浪記」を読んでみようか。麻雀のテクニカルな部分には今は興味がないが、そしてたぶん昔はそれしか読み取ることができなかっただろうが、今ならもう少し別の部分が読めるような気がする。

では、また。



狂人日記 (講談社文芸文庫)麻雀放浪記(一) 青春編 (角川文庫)麻雀放浪記〈2〉風雲篇 (文春文庫)
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『宮部みゆき責任編集 松本清張傑作短編コレクション』

2012-08-23 | books

「宮部みゆき責任編集 松本清張傑作短編コレクション」文藝春秋社 2004年

以前に読みかけだったので続きを読んだ。

中学生から高校生の頃、それはそれは大量の松本清張を読んだ。ほとんどが古本屋の軒下にさらされた箱に無造作に放置された、3冊100円で売っていたもので。書評など読んだわけがなく、どれが傑作かも知らずただ安く売っているものを読んだ。そういう雑読は、ヒマな中学生だから出来たことで今は時間も気力もそうするには足りない。そしてその時代に雑読出来たことが結果として良かったと思う。

しかしミステリ以外では読み落としが多く、今回収録されている「西郷札」と「ある『小倉日記』伝」に強い印象を受けた。その二つだけ少し紹介させて頂く。

「西郷札」はデビュー作。西南戦争の時に、薩摩が発行した不換紙幣のその後を描く作品で、ドキドキしながら読んでしまった。短編でも長編並みのインパクトがある。

「ある『小倉日記』伝」はなんと芥川賞受賞作。エンターテイメント作家として有名なのに芥川賞をとっていたのか。内容は、障害のある男が、小倉で森鴎外の行方不明になった日記を探すというもの。ラストが何とも言えない。

あらためて、清張のスゴさに打ちのめされる。

上巻と下巻ではGHQ支配下の怪しさを暴露する「日本の黒い霧」と、田中義一の機密費流用事件から二・二六事件までを描く「昭和史発掘」を短く纏めたものが載っている。「帝銀事件の謎」は昔、おぉと唸りながら読んだが「昭和史発掘」はいつか大人になってから読もうと思ってそのまま何年も経過してしてしまった。。

ので、読もうと思う。

では、また。


松本清張傑作短篇コレクション〈上〉 (文春文庫)松本清張傑作短篇コレクション〈中〉 (文春文庫)松本清張傑作短篇コレクション〈下〉 (文春文庫)
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店名にツッコんでいただけますか59

2012-08-21 | laugh or let me die
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『神話の力』ジョーゼフ・キャンベル ビル・モイヤーズ

2012-08-19 | books
「神話の力」ジョーゼフ・キャンベル ビル・モイヤーズ 早川書房 1992年(ハヤカワ文庫2002年)
The Power Of Myth, Joseph Campbell with Bill Moyers 1988

神話に関して世界的権威、ニューヨークのセイラー・ローレンス大学のキャンベル教授にリンドン・ジョンソン大統領時代の報道官やテレビのコメンテーターを務めたモイヤーズが話を聞くという形式の対談本。東へ西へ古代へ中世へ近代へ現代へ縦横無尽に、神話の話をしてくれる。

うーむ。なんてスゴイ本だ。久しぶりに、知的刺激をビンビンに受けた(仮に私に「知」なるものがあると仮定して。)

神話が持つ普遍的なテーマ、メタファー、キリスト教のみならず仏教、ヒンドゥ教、イスラム教にまたがった解釈など、ジョーゼフじいさんの話は実に面白い。これは、いい質問があるからに他ならず、モイヤーズの知識と経験がいい本を生んでいる。

以下、自分用のメモを兼ねた引用。【】内は私のコメント。

現代には境界線がありません。今日価値を持つ唯一の神話は地球というこの惑星の神話ですが、私たちはまだそういう神話を持っていない。私の知るかぎり、全地球的神話にいちばん近いのは仏教でして、これは万物には仏性があると見ています。(文庫版77頁より引用)【仏教に関して何度となく好意的な発言がある。だったらどうしてキリスト教徒であることをやめないのだろうか】

日本には「波に乗る」という言い回しがあります。私たちがボクシングで「パンチを受け流せ」と言うようなものです。ペリーが日本の開港を強制してからまだ百二十五年しかたっていません。そのあいだに彼らは途方もなく大量の機械的物質を同化しました。ところが、私が日本で見いだしたのは、日本人がそれに埋没することなく、しっかり頭をもたげてこの機械世界を同化していったという事実です。ビルの中に入ると、やはり日本に戻るんです。ニューヨークみたいに見えるのは外面だけです。(80頁)【日本的であるということをうまく表現している】

われわれはこのことを知っている。大地は人間のものではなく、人間が大地ものだということを。(100頁)【確かに】

「イエスは昇天された」を隠喩的内包において解釈するならば、イエスが内面に向かわれたことを理解することができます。(137頁)【キャンベル教授は非科学的なことは言わない。聖書に書いてあることはある種の隠喩であるとする。それが説得力を持つ】

つらくないのは、死後だけです。「世界について楽観的な考えを持っていますか」とたずねられるたびに、私はこう言うんです。「ええ、世界はいまのままでも偉大なものです。修理しようなんて考えないほうがいい。前より少しでもよくした人なんて、ひとりもいないんです。いまよりよくなることなど、決してない。そういうわけですから、それを受け入れるか捨てるかのどちらかです。世界を矯正するとか、改善するなんて無理な話ですよ。(165頁より)【私も人類は、長い時間をかけて世界をただ住み心地を悪く、破壊しているだけだと思っているので、同意】

「神話は絵空事じゃないのか、という人がいますよね」「神話は絵空事ではありません。神話は詩です。隠喩ですよ。神話は究極の真理の一歩手前にあるとよく言われますが、うまい表現だと思います。究極のものは言葉にはできない、だから一歩手前なのです。究極は言葉を超えている。イメージを超えている。(349頁)【うーむ。なるほどね。これについては、もう少し私自身考える継続宿題としておこう】


他には、125頁にあったグロフという精神科医の話も興味深い。LSDを使って治療をするのだけど、その際に患者が「誕生の再体験」をするのだそうだ。最初は子宮の中=自分を持っていない 子宮のリズミカルな動きを感じると=恐怖を感じる そして産道を通るという困難な過程 そして光。神話が語る、自分が一つだけのものと感じる不安→もう一つの自分があればいいという願望→男と女に分かれた というのと同じ。ふむ。

インディアンについては「バッファロー落とし」の話も印象に残る。

以上引用だらけになってしまった。ジョセフじいさんの話を読んでいると、こんなじいさんになりたいなと思うのと、知識は勿論だけれど、人としても俺はまだまだだなとも思う。

では、また。


神話の力 (ハヤカワ・ノンフィクション文庫)
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ミチだと思ってた

2012-08-17 | days

横浜美術館の奈良美智展に行って来た。

昔はあまり好まなかったのだけれど、青森であおもり犬を見てからのファン。








昔は、女性っぽい作品なので、奈良ミチという女性なんだと思ってた。

以上。
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『海賊とよばれた男』百田尚樹

2012-08-15 | books
「海賊とよばれた男」(上下)百田尚樹 講談社 2012年

戦前業界で恐れられた、石油を扱う国岡商店。戦争が終わり、他の石油会社、官僚の妨害にあって商売がうまくいかない。しかし店主国岡鐵造の不屈の意志によって一つ一つ障害を取り除いてゆく。明治から戦後、石油にこだわり続けた男の一代記。

うーむ。基本的にこういう本は読まない。立志伝中の人を褒めちぎったような本は。モデルは1885年生まれの出光興産の創始者出光佐三だそうだ。成功した人の伝記は過去にさんざ読んで食傷気味だし、他人の成功を肥やしに出来るほどもう若くない。同様にビジネス書も自己啓発書も読まない。

さて、本書は「ボックス!」「永遠の0」の作者だからつい魔がさしてしまった。最初は戦後すぐの引き揚げから始まるのだが、その戦後すぐの臭いがちょっといやだなと思った。しかししかしいつに間にか引き込まれてしまっていた。熱い。こんなにスゴイ男たちがいたのか。国岡たち+心ある支援者 VS 官僚+石油会社 という正義VS悪の使い古された構図が、無理なくハマる。どこまでが事実でどこからかがフィクションだか分からない。(分かる必要はなかろう。)誇張と拡大解釈はあるにしても、百田のストーリーテリングの腕は高いところにある。

一旦、戦後何年かの描写が終わった後、上巻の後半は、鐵造の若いころの話になる。昔話が長いのかー、読むのめんどーだなと思っていたら、また引き込まれてしまった。百田恐るべし。

ネタバレが問題になるような本ではないけれど、全体を説明せずに一部だけ説明しよう。

例えば、下巻の第三章はこんな感じ。

国岡は誰もがやりたがらないことをやる。自分の利益のためではなく。イランが石油を国有化したため英国のアングロ・ペルシャが締め出された。イランの石油は自分たちのものだから他の石油会社がイランから石油を持ち出そうとすれが、英国は軍が出撃すると脅す。どの国も躊躇する。国岡も躊躇するがそれは、契約によって英国のものになっているのだからそれを買い取るのは盗人だからだ。しかし調べてみると、英国は法外に安い価格で権利を買っており、イランをずっと食い物してきたことが分かり、国岡は立ち上がった。メジャーの妨害があり、タンカーを借りることも出来ない。国岡の虎の子、日章丸を動かすことにした。英国の攻撃はあるのか?決死の航海は!

おお!書いていて、血が沸騰しそうだ。

いわゆる「ビジネスマン」というおじさんたちに読ませておくのはもったいない。女性たち、若者たちよ、この本を読め。そして立ち上がれ。

立ち上がって何をするのはちょっと分からないが。

では、また。



海賊とよばれた男 上海賊とよばれた男 下
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『白ゆき姫殺人事件』湊かなえ

2012-08-12 | books
「白ゆき姫殺人事件」湊かなえ 集英社 2012年(初出小説すばる2011年5月~2012年1月+集英社文芸Web)

会社の先輩が殺されたという女性が知り合いのライターに電話して、社内の情報など詳しいことを話した。ライターは取材をし、そしてまた、Web上でも面白おかしくこの件について語る。(マンマローというツイッターのようなもので)会社の同僚、地元の知り合いに取材しながら判明してくる真実は…女同志がもたらすネガティブな感情の行先は…

うーん。面白かったのかそうでなかったのか自分でもよく分からない。うーん。

ミステリの謎解き的側面についてはそんなにパワフルではない。しかし、各章が終わるたびに、巻末にあるその後にアップされたつぶやきを参照させるようになっていてこれが新鮮だ。

また、事件に無関係な者がなぜか関心の強さを見せ、それがちょっと背筋を寒くする。

現代人のちょっと嫌な感じを描くのはやはり巧い。しかし、嫌な感じを描くのと嫌な感じな人を描くのとは違う。人間の部位を描くのと、人間総体を描くのは違う。フィクションを作り物として楽しませるのもエンターテイメントだし、いかにもありそうなものに見せるのも、いかにもなさそうな作り話と読ませるのもエンターテイメント。どれが上だとは言えないけれど。

湊作品は、実は軽めのエンターテイメントだと考えればよいのだろうか…どう評価すべきか、まだ、湊かなえに関しては、判断保留状態が続く。しかし、この作家は何かを持っていると思う。今のようなハイペースじゃなくて、分厚い上下巻でもじっくり書いて欲しいものだ。

では、また。



白ゆき姫殺人事件
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『起終点駅(ターミナル)』桜木紫乃

2012-08-10 | books
『起終点駅(ターミナル)』桜木紫乃 小学館 2012年(初出STORY BOX vol.15~27)

無縁をテーマとした短編集

<かたちないもの> 化粧品会社で出世した真理子39歳。昔別れた男竹原の納骨式の知らせが北海道から。思い出す過去、別れた後の竹原の思いもよらぬ人生。

<海鳥の行方> 新聞記者になって間もない里和。男性記者からはセクハラ、デスクからは暴言を浴びるつらい日々。不発弾の取材でたまたま知り合いになった釣り人の過去は…

<起終点駅(ターミナル)> 判事を辞めて弁護士になった完治。国選弁護しか受けない。なぜ妻子を捨てたのか。覚せい剤事件の弁護をした女から頼まれて…

<スクラップ・ロード> 父は失踪した。母一人子一人で育ててもらい、北海道大を卒業して銀行に就職した。しかし仕事はうまくいかない。街で見かけたのは失踪したはずの父の姿。ゴミを拾うその姿に…

<たたかいにやぶれて咲けよ> 新聞記者里和アゲイン。「湿原を見下ろす特別養護老人ホームで一人死を見つめる歌人」という記事を書こうとして取材したがうまくいかなかった。しかし死んだらいい追悼記事を書いてくれと頼まれていて取材を始めた。歌人が経営していた喫茶店KAJIN、小説家として眼が出なかった男に話を聞くと…

<潮風の家> 弟は強盗殺人でつかまり、獄中自殺した。姉千鶴子はすぐに故郷を離れ、そして30年が経った。水商売で働いた後に老人に弁当を宅配する仕事をしている。昔を思い出すと、母が亡くなった後10年も面倒をみてくれたのはひらがなしか書けないたみ子だった。久しぶりに会ったたみ子からきいた意外な話は…

うーむ。大きなどんでん返しをするような技巧に走らない代りに、人間の描写のきめ細かさが光る。(その逆が湊かなえだと思う。人間描写に難がある。しかし湊の作品は文句言いながらも結局全部読んでしまっているので、逆が悪いとも言い難い。キライだけど好きみたいな関係か=どんな関係やねん)

基本的には私は短編はあまり読まない。自分の好きな世界観やストーリー展開を楽しめるのは長編ぐらいの長さがないと難しい(と思っているからだ)その基本が変わるわけではないけれど、しかしたまには短編もいいなと思うこともある。響いたのはこんな言葉だった。

自分はまだ何も得ておらず、失ってもないのではないか。(174頁より引用「スクラップ・ロード」)

男はひとりでいると、いろいろと内側に向かって自分を掘り進めてしまうようだった。あるときから先、反省を始めてしまうのだ。その点女はたくましかった。(245頁「潮風の家」)


私の中の桜木紫乃ブームはまだ火が消えない。

では、また。


起終点駅(ターミナル)
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おとこのみち(ポエム習作)

2012-08-08 | poetic inspiration

テレビで見ていた体臭特集

もしかすると自分も臭いのかも知れない

と気にしはじめると

気になって仕方ない

仕方ない

仕事を抜け出して買いに行った

デオドラントスプレー

早速トイレでつけてみる

乗ったエレベーターは混んでいた

一緒になったOLたちが言う

「なんかくさくない?」

「うん。すごくくさい」

「汗と、柑橘系が混じった感じ?」

嗚呼こんなにもこんなにも


メガネをやめて

思い切ってコンタクトにしてみた

会社で

「ボク、どこか変わってない?」

ときいたら、

「ああ、ちょっと変わった人ですよね」

と言われた

嗚呼こんなにもこんなにも


電車の中

隣で携帯メールやってる

ハゲおやじ

指づかいが妙に素早い

何を入力しているのか見たら

「僕の誕生日は

昭和62年7月8日です」

嗚呼こんなにもこんなにも

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『清須会議』三谷幸喜

2012-08-06 | books
「清須会議」」三谷幸喜 幻冬舎 2012年

信長の死の後、残された者たち。何を考えどう行動するのか。本能寺の変直後の会議を中心に描き、その後の柴田勝家と秀吉の賤ヶ岳の戦いを予感させる。

うーん。悪くないんだけれども、私にはあまり面白さを見出すことが出来なかった。

1. 歴史的アクロバットのような壮大なフィクションがあって、読む者をのけ反らせるわけではなく、

2. あまり馴染のない人物にスポットライトを当てて、「そんなことがあったのか!」とうならせる方向に向かうわけでもない。

3. 小説のはずなのに、舞台の台本のような感触がする。モノローグが多いのと、現代的な語り方をするのがかえって小説的な読み方をしにくくさせているように思う。

三谷幸喜らしいのは、この台本を基にして役者が台詞を読み演技するときっとすごく面白い舞台、映画になるんだろうということ。これを読みながら、具体的に自分がフィットすると感じる役者に脳内で演じさせることができる人は、十分に楽しめるんだろうと想像する。(私には無理)

関ヶ原の戦いで本物の家康は死んでしまったので、家康の影武者が本物に代わって「家康」を演じ続けていくという超弩級のアクロバットを、歴史的に「もしかすると本当にそうだったのかもしれない」と思わせる証拠を織り交ぜた傑作、隆慶一郎の「影武者徳川家康」のことを思い出した。

もし未読で、しかも歴史小説はあまり読んだことのないのなら、ファースト歴史小説としてぜひオススメする。「竜馬がゆく」や「坂の上の雲」もシビレルほど面白かったが、それ以上面白かったと言っても過言でないのは、これと「真田太平記」

すまぬ。暑いのに熱く語ってしまった。

三谷幸喜の舞台、ドラマ、映画は大好物であることを付け加えさえて頂く。

では、また。


清須会議影武者徳川家康〈下〉 (新潮文庫)真田太平記(一)天魔の夏 (新潮文庫)
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アッという間のアート

2012-08-04 | days

上野での東京都美術館で「マウリッツハウス美術館展」、国立新美術館で「大エルミタージュ美術館展」、フジフィルムで写真展「新田次郎が愛した山」、森アーツセンターで「大英博物館古代エジプト展」、

と2週間であちこち行って来た。

フェルメール以外のレンブラント等の絵画が好みなのでマウリッツハウスは良かった。エルミタージュはテーマを絞らないで展示していたのが結果、印象に残らないことになってしまった。

いや、それだけあちこち行ったから覚えてないだけか。

では、また。

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『歴史が面白くなる東大のディープな日本史』相澤理

2012-08-02 | books
「歴史が面白くなる東大のディープな日本史」相澤理 中経出版 2012年

予備校の講師が一般向けに書いた、東大の日本史で過去に出題された問題とその解き方。

83年の出題では:

(資料を参照して)藤原実頼、頼忠が朝廷から軽視された事情、公実の要求が白河上皇に聞き入れられなかった事情を手掛かりにしながら、この時代の権力者はどのような関係に頼って権力を維持していたか書けという問題が以前に出題され、その時に以下のような答えを書いたものが多くいたが、それでは低い点数しか与えられないことを考えて、もう一度同じ問題に答えろという問題が出た。

ダメな解答…おお。これは面白い。摂関が力を持っていて、というようなシンプルな答えではいけないわけね。ふむふむ。

紹介されている過去問は古代から近代まで広い。問題そのものと、その背景の解説はすごく読んでいて面白い。たぶんそれまでの流れるような説明が上手だからか、最後に載っている模範解答は短すぎてちと物足りないけれど。(字数制限があるから当たり前か。)

摂関に関する問題5と、一揆に関する問題9が特に面白かった。個人的には、この東大日本史をシリーズ化して貰って、もっと多くの問題を網羅したものを何巻も読みたいものだ。

そして突然思い立って、松本清張の「昭和史発掘」を読むことになったというのが、私にとって本書に与えられた大きな収穫刺戟だと思う。(なぜまっとうな日本史の本じゃないのだろうか…)

では、また。


歴史が面白くなる 東大のディープな日本史
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