頭の中は魑魅魍魎

いつの間にやらブックレビューばかり

『龍華記』澤田瞳子

2018-10-30 | books
範長は27年前に興福寺に来た。祖父は摂政藤原忠実。将来院主になると期待されていた。しかし保元の乱後祖父も父も失脚し、範長の立場も低いものとなった。そして院主となったのは信円、範長の従兄弟。範長を頼りにしようとしているのに、自分ははぐれ者だからと、力仕事にしか興味がない・・・そして、平清盛による南都焼討。興福寺は焼かれる。範長や信円たちの苦労。そして、源氏による平家討伐を描く。

あんまり興味のない出来事だったからか、(自分にとっては)歴史的重大事な感じがしなかったからか、もしくは登場人物がいい子過ぎたからか、そんなには楽しめなかった。

歴史の勉強にはなるけれど、物語としてはまあまあだった。


龍華記
澤田瞳子
KADOKAWA



今日の一曲

森高千里で、「私がオバさんになっても」



昔よく、替え歌で「わたしがおばさんになったら~あなたはおじさんよ~」って歌ったっけ。エヘッ。では、また。



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『変態紳士』高嶋政宏

2018-10-28 | books
俳優によるエッセイ。舞台「エリザベート」に出ていた時に、お客さんの誰一人自分のことを観ていない、主役しか観ていないことに気づいたとか。片岡愛之助に、「今井翼はフラメンコが得意なので、歌舞伎とフラメンコのコラボをやりました。高島さんの得意技は何ですか?」と訊かれ、何も得意技がないと気づいた。そんな高島兄が気づいたのは、自分がSMが大好きだということ。そして始まるSMに対する愛・・・

こんな事書いて大丈夫か?と思うようなことばかり書いてあるけれど、ハゲしく面白かった。

小6から高2にかけて110キロも体重があったけれど、サウナスーツで激やせしたそうだ。同じ学校に石黒賢がいて、彼に「高島はガンだ」という噂を流されたそう。(「振り返れば奴がいる」では優等生キャラだった石黒は、ガキ大将ぽかったらしい)

他にも川崎のソープで童貞を捨てた後、一般人との行為では上手くいかなかったとか、アナルバイブがどうしたとか(俳優のエッセイでアナルバイブという言葉を読むとは思わなかった)

単純に笑える話が多いのだけれど、同時にすごく安心する。みんな誰もが(誰もが?)(少なくとも私は)自分が変態だと心の中で思っているはずだけれど、それが許させれるような感じ。変態でまったく問題ないんだよ、そう言ってもらってる感じ。

まさか変態に癒されるとは。意外な収穫だった。


変態紳士
高嶋政宏
ぶんか社



今日の一曲

Foreignerで、"Waiting For A Girl Like You"




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『青少年のための小説入門』久保寺健彦

2018-10-26 | books
表紙はマンガっぽいし、タイトルは、中高生向きっぽいけど、全然違う。小説が好きな大人なら(ビジネス書とか学術書とかハウツー本ではなく)、必ず楽しめる。ので、以下の、内容に触れた部分は読まないで、直接小説の方を読まれたし。私自身もどこかで書評を目にしたときに「小説好きなら楽しめる」とあったので、内容は特に確認せずに読み始めた。それが良かった。内容は読みたくないけれど、評価は読みたいという奇特な方は、★から★までを飛ばしてください。

※以下内容に触れます。

★入江一真は中2。中学受験に失敗し仕方なく公立の中学に行っている。不良グループに目をつけられ、いじめられている。そいつらに駄菓子屋で万引きするように命じられた。しかし見つかってしまい、出会ったのが、駄菓子屋の店番をする田口登。ヤンキーでえらく喧嘩が強い。登から、小説を朗読するよう命じられた。「坊ちゃん」だった。朗読すればうまいと褒められた。実は登はディスクレシア(難読症)で文字が読めず書けない。しかし面白い話は思いつくので小説にしたいと言う。内容は自分が言うから、それを文章にして書けと命じられる・・・まず手始めに、色々な小説を読むことにした。芥川龍之介や田山花袋、筒井康隆やサリンジャー。朗読すれば、登から色んな質問が来る。内容や表現の仕方について話し合っていくうちに小説修行にもなっていった。そして自分たちの小説を書くことになった・・・★

うーむ。うーむ。うーむ。もひとつおまけに、うーむ。

こんなに先を読みたくて仕方がなくなるのは何年、いや何十年ぶりだろう。先が気になって、トイレにも持ち込み、いやそれは嘘だけど、中1の時読んだ松本清張「点と線」か、高木彬光「白昼の死角」か、落合信彦か、高校に入って読んだ夢野久作「ドグラマグラ」以来だろうか、こんなにも夢中になって読んだのは。

彼らが分析する古今東西の名作。普段気にしたことがないけれど、面白い小説には何が必要なのか、すごく分かってくる。(例えば、読んでいると主人公の顔が想像できるのは良い小説で、顔が想像できないのはダメな小説だとか。) そして彼らが書き始めると、細かなディテールで、そして人物で、そしてプロットで、何が大切なのか、よーく見えてくる。「情熱大陸」で宮部みゆき特集をやったって分かりはしないような、小説家の苦労とか、テクニックの使い方など、かなり高度なリアリティをもってグイグイと迫ってくる。

キャラクターもいい。登のばあちゃんもいい、一真が好きになる美少女かすみもいい。

それだけじゃない。それが何だかずっと考えていた。そうだ。迫力だ。鬼気迫るような迫力だった。そこにあるのは。そしてドラマだ。登と一真の猛烈なスピードで駆け抜けるドラマだ。すさまじいドラマがそこにあった。

小説好きによる、小説好きのための、大傑作だった。作者の久保寺さんは、もうこんなすごい作品を二度と書けないのじゃないだろうか。


青少年のための小説入門 (単行本)
久保寺健彦
集英社



今日の一曲

11月にクイーンの伝記映画が公開されるらしい。Queenで、"Bohemian Rhapsody"



トレーラーを観ると、フレディ・マーキュリー役の人がビミョウにしか似てないのが気になる。では、また。
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店名にツッコんでください200

2018-10-24 | laugh or let me die
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『ファーストラヴ』島本理生

2018-10-22 | books
真壁由紀は臨床心理士。アナウンサーの二次試験の後に、父親を刺殺したとして逮捕されたのは聖山環菜。出版社から彼女の半生を描く本をまとめてくれと依頼され面会することになった。担当弁護士は迦葉。由紀の夫の弟。由紀と迦葉は大学時代からの知り合いだが、過去に何かあったらしくぎこちないやりとりがある・・・環菜に話を聞くと、自分が嘘つきだと言ってみたり、突如面会が打ち切られたりと精神的に落ち着きがない。そして段々と分かって来る環菜の過去。と同時に分かる由紀の過去・・・裁判の行方は、娘を守ろうとしない母親。なぜ?・・・何度も繰り返す環菜との面会・・・

なんとも不思議な小説で、テーマが何なのか、何が言いたいのか、よく分からない。でも面白かった。

揺れ動く心、それを観る側の揺れる心。人の心なんて、何も絶対的な、安定したのものなどなく、常に流れふわふわとしたものしかないのかも知れない。

「愛情がなにか分かる?私は、尊重と尊敬と信頼だと思ってる」

「女の子のまわりにはいつだって偽物の神様がたくさんいるから。それで自殺してしまう子もいれば、生き延びて、トラウマを乗り越えたり、本当の愛を知って回復するケースもある」

ファーストラヴがタイトルだったと後から思い返すと、あれがメインテーマだったのかと思ったりもする。結局人間は恋だの愛だの、ラブだのラヴだのに人生の多くを左右される生き物なのだろうか。


ファーストラヴ
島本理生
文藝春秋



今日の一曲

吉岡里帆と阿部サダヲで、「体の芯からまだ燃えているんだ」



では、また。
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『翼』白石一文白石一文

2018-10-20 | books
田宮里江子は、浜松光学で営業部にいる。ずっと上司だった、城山は突然会社を辞めてしまった。本当に尊敬できる人だったのに。その後上司となった、坂巻は好きになれない人物だった。体調を崩したのでクリニックに行くと、懐かしい顔が。学生時代の親友の聖子の夫、長谷川岳志が担当医としてそこにいた。10年ぶりに会う。長谷川は、聖子と婚約しているのに、自分にプロポーズするという愚行をする輩。そしてまた今回も二人で会おうと誘って来た・・・

白石一文らしい、癖のある作品。

会社員の苦労や悲哀がテーマかと思わせ、また単純な不倫がテーマかと思われせるが、ラストでドカンと暗転する。

ネタバレしないように、一応、なぜがそこまで自分に執着してくるのかということと、課長がなぜそこまで城山のことを嫌うのかがテーマなんだろうと言っておこう。いや、またさらに、「自分の運命の人と一緒にいない人生」に意味なんかあるのかないのかということも大切なテーマだった。

「どうしてあなたは、そんなふうに私に執着するの?私たちはろくに付き合ったこともないし、この前たまたま再会するまで十年間も会ってなかったし、つまり、あなたは私のことなんて何一つ知らないでしょう。何にも知らない相手のことをまるで運命みたいに考えるのは、単なる妄想のたぐいだと思わない?あなたには私を好きになるだけの材料なんてないし、好きになる資格自体がない。そうは思わないの?」

と里江子は言う。彼女に同意する。

しかし、

要するに僕という人間は、誰のことも信じられないし、誰のことも心から赦すことができない人間なんだ

という岳志にも、自分と同じだと思ったりする。岳志と里江子の対照的な考え方の対比がとても興味深かった。


翼 (鉄筆文庫 し 1-1)
白石一文
鉄筆




今日の一曲

椎名林檎と宮本浩次で、「獣ゆく細道」



では、また。

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2018秋ドラマちょいとレビューその2

2018-10-18 | film, drama and TV
「黄昏流星群」・・・銀行で出世していた佐々木蔵之介は左遷された。妻は中山美穂。旅行先で出会い好きになるのは黒木瞳。この二人の「美人」女優に全く萌えない。ミポリンよりも友人の八木亜希子の方がキレイに見える私の目が腐ってるのだろうか。今期ワースト2位。

「大恋愛〜僕を忘れる君を」・・・戸田恵梨香は医者。今はワシントンにいる松岡昌宏との結婚が決まっている。結婚式も決まり、新居への引っ越しをしている最中、引っ越し屋のムロツヨシに出会い惚れてしまった。実は戸田がずっと愛読している小説はムロが昔書いたものだった。そして戸田は若年性アルツハイマーにかかり・・・戸田恵梨香がいい。積極的にムロに向かっていく様がかわいいと思う。(女性から共感を得られるキャラかどうかサッパリ分からないけれど、個人的にはとても好きだ。)こんな風に真っ直ぐに人を好きになれるということは尊いことだと思う。永遠に生きられるわけじゃないんだから。今期ベストか。

「昭和元禄落語心中」・・・昭和52年頃、弟子を取らない名人有楽亭八雲=岡田将生がムショ帰りの弟子=竜星涼をとることにした。八雲は死んだ親友有楽亭助六=山崎雪三郎の娘=成海璃子を育てたが、彼女からは親の仇だと嫌われている。岡田が老けたメイクで何とか名人風に見せているけどやっぱり不自然。もっと歳のいった役者さんになぜやらせないのか、と思ったけど、次週から若い時を演じるらしい。落語家の半生ドラマといったところか。

「僕とシッポと神楽坂」・・・神楽坂のイッセー尾形の経営する動物病院に就職したはずの獣医は相葉雅紀。しかし院長の姿がないので、そのままやって来る患者を手当てする。広末涼子は動物看護師。別の近代的な動物病院に就職するの予定だったが、丁寧な仕事をするこっちに就職することにした。まあまあな感じ。

「忘却のサチコ」・・・前作を観てなかったので、先日の総集編を観てから望む。雑誌編集者の高畑充希は、結婚式当日に新郎に逃げられた。彼女を癒してくれるのは食事、という話。初回途中で離脱。

「今日から俺は!」・・・29歳賀来賢人が、高校生役。転校するので、髪を金髪パーマに変えてツッパリデビューする。同じ日に同じく今日からデビューした奴と、本物のツッパリたちを蹴散らす。担任が金八先生そっくりのムロツヨシ、父親は吉田剛太郎、他校のスケバンが橋本環奈、もうすぐ乃木坂46から卒業する若月佑美。昭和感満載の、くだらないとしかいいようのない話。しかし妙にハマる。面白い。(賀来賢人は「わにとかげぎす」のチャラい役が妙にうまかった)

「下町ロケット」・・・ほぼ原作通りで、期待している通りの出来。イモトアヤコの役は原作ではクールビューティなイメージだったのでどうかと思っていたけれど、涙をポロポロ流すキャラへと変更されていた。ありだと思う。徳重聡演じる佃製作所のやな感じの技術者軽部は、原作より遥かにやな感じになっていてちょっとやり過ぎ感あり。しかしやはり面白い。

「ハラスメントゲーム」・・・スーパーマーケットで、異物混入事件。富山店に7年も飛ばされていた唐沢寿明がコンプライアンス室にやって来て、室長として事件を解決する。同じコンプライアンス室に広瀬アリス。丁寧に作られてる感じがした。ストーリーに強引さがないような。唐沢が演じると、爽やかな風が吹くようだ。面白かった。


今日の一曲

REO Speedwagonで、"Can't Fight This Feeling"



では、また。
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『愛なき世界』三浦しをん

2018-10-16 | books
文京区本郷のT大学の向かい辺りにある洋食屋「円福亭」で働く藤丸陽太。大将の作る美味い食事に魅せられ修行を始め、今では調理の一部を任せられるようになって来た。常連客たちの中で何をしている人たちだかよく分からない人たちは、実はT大学で植物の研究をしている人たちだった。教授の松田はいつも黒いスーツを着ていて、殺し屋のよう。宅配を始めたら注文が入り、研究室まで持って行くようになった。見たことのない世界。その中でも特に本村さんと仲良くなった。博士課程にいる女性で、シロイヌナズナの研究をしている。藤丸はこの人のことが好きになってしまう。この恋の行方は・・・植物の世界はどんなに奥深いのか・・・

うーむ。この手のお仕事小説を書かせれば三浦しをん先生はジャパンでナンバーワンだと大声で言っても叱られないだろう。

シロイヌナズナに夢中で、でも研究以外ではドジで、真っ直ぐな本村。本村に対する気持ちも真っ直ぐで、料理にかける情熱も真っ直ぐな藤丸。こういう人たちの話を読むと「真っ直ぐすぎてムカつく」とか言う人がいるけれど、そう思う人の心が曲がりすぎているのではと思わなくもない。こういう人たちがリアルに、いそうな人たちなのかということよりも、「こういう人がいて欲しい」と思わせてくれるのが大事な気がする。

植物にはあまり興味がなかった(プチトマトを育てたり、室内に観葉植物があった時もあったけれど、今は何も育ててない)のに、なんだろーこの植物に対して感じる暖かい感覚は。もしかすると優しくなったのかも知れない。(本村と話せばきっとそうなるだろう)

そして植物研究の奥深さ。かなり詳しく研究の手順が描写されていて、ピペットマンとかボルテックスとかエッペンチューブとかチビタンとか聞いたことのない器具が活躍する。易しく説明してくれているので、DNAを調べるにはどうすれば良いのかという(特に知りたくもなかった)ことも分かってしまう。こういう本を沢山、中学生とか高校生の頃に読むと、自分のやりたい仕事を考えるヒントになるのかも知れない。

全編しをん先生による、植物に対して、そして登場人物たちに対する深い愛情を感じる作品だった。

追伸 : 映像化するとすれば、本村は、欅坂46の長濱ねる一択で。お勉強できそう、ピュアな感じ、ドジな感じ、彼女しかいないだろう。


愛なき世界 (単行本)
三浦しをん
中央公論新社



今日の一曲

Larkin Poeで、"Bleach Blonde Bottle Blues"



では、また。
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2018秋ドラマちょいとレビューその1

2018-10-14 | film, drama and TV
「まんぷく」 ・・・32歳の安藤サクラが18歳を演じるという無茶な演出。そんなにつまらなくないけれど、すごく面白いというほどでもない。前回「半分、青い。」を見過ごすという痛恨のミスをしたので、一応観てる。

「SUITS/スーツ」 ・・・悪辣な弁護士織田裕二と偽弁護士のコンビ。アメリカのドラマが元ネタだそう。意外とそんなに悪くない。

「警視庁捜査資料管理室」 ・・・資料だけから捜査する話。初回途中でギブアップ。

「僕らは奇跡でできている」 ・・・ちょっと世離れした高橋一生が大学の生態学の講師。うーん。今後に期待。

「中学聖日記」 ・・・有村架純が新人先生なのに中3の担任を持たせられる。男子生徒が彼女のことを好きになってしまう(というありがちな設定。) この生徒の演技が今ひとつ「してはいけない」「禁断の恋」に結びつかず、イマイチ。有村架純がそれほど魅力的に見えないのはなぜだろう。でもまだ観る。

「ブラックスキャンダル」 ・・・山口紗弥加は女優だったとき、不倫スキャンダルをでっち上げられた。復讐するため顔を整形して芸能事務所のマネージャーをしている。木村多江の「ブラックリベンジ」そっくり。観続けるかビミョウ。

「獣になれない私たち」 ・・・新垣結衣は、営業アシスタントなのに、使えない営業の尻拭いをし、社長のパワハラに日々耐えている。彼氏の田中圭(また、田中圭!売れっ子)とは4年の付き合いなのに、結婚の話が出ない。台詞回しとかストーリーが少しひねってあって、なかなか面白かった。今期のベスト候補。(ガッキーが逃げ恥の頃より、お姉さんぽく見える。女性のメイクとか髪ってスゴイと思う。ほんのちょっと変えるだけで、偏差値10ぐらい上げたり下げたりできる)(ん?偏差値?)

「リーガルV」・・・弁護士資格を剥奪され、別の弁護士を表に立たせて裏方に回る米倉涼子。初回は痴漢冤罪事件。「ドクターX」そっくりな勧善懲悪もの。ものすごく痛快というほどでもなく、もうちょっと観ている方を気分良くして欲しい。人物が類型的過ぎて、深みがないのも気になる。(たとえば、「ER」では、登場人物が類型的ではなく、複雑な人物造形がされていた。そもそも人間は一言で説明できるようなシンプルなものじゃなく、複雑なものなのだから、それをシンプルにし過ぎると軽くなってしまう。軽くしないと観にくいという意見もあるだろうから難しいけど。まだ見続ける。なぜ弁護士資格をはく奪されたのだろうか。面白い展開に期待。

その2に続く・・・(え、もういらない?)


今日の一曲

このDVD、観たい!と思った。スガシカオの「スガフェス!20TH ANNIVERSARY EDITION」の宣伝映像。



ミスチル桜井君の、スガシカオそっくりコスプレに笑った。では、また。
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『監禁面接』ピエール・ルメートル

2018-10-12 | books
アランは57歳、リストラされてもう4年。就職活動はしているがうまくいかず、物流会社でバイトをしている。ある日、自分を蹴ってきた上司を激しく殴ってしまった・・・人事副部長の職に応募していたら、書類選考を通ったというか知らせがあった。次は面接になるが、奇妙なことが書いてあった。それは「人質拘束事件シミュレーション」 武装グループから会社を裏切るよう強要されるばめんで、幹部候補の資質を見るというもの。その場で人事副部長の採用試験も行なって、ロールプレイングの進行役を務めされるという奇想天外なもの。アランは事前に調査して、調査しすぎるほどに調査して、採用試験に臨む。しかし物語は意外な方角に転がっていき・・・

ううむ。先が全く読めない、不思議な作品。従来のピエール・ルメートル作品のような、殺人とかサイコ的な話は出てこない。サラリーマンの戦闘小説と言えばよいだろうか。

第一部「そのまえ」では採用試験の前、第二部「その時」は採用試験当日、第三部「そのあと」はそれ以後。構成もうまい。

長いのが難点。深く読んでもストーリーにはあまり関係のない文章が多いので軽く読み飛ばしてしまった。半分くらいの量にしてくれると丁度いいように思う。


監禁面接
ピエール・ルメートル
文藝春秋



今日の一曲

Halestormで、"All I Wanna Do"



では、また。
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店名にツッコんでください199

2018-10-10 | laugh or let me die
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映画「スリー・ビルボード」

2018-10-08 | film, drama and TV
飛行機の中で観た。

アメリカの田舎。娘がレイプされそして殺された。警察の捜査が進まないことに憤った母親。道路の横にある大きな看板に広告を出すことにした。警察を批判するような。偏狭な考えを持つ担当の警察官はこのやり方に憤慨する。何事もすぐに噂になる小さな町で闘う母の姿を描く。

これはかなり面白かった。普段ドラマかバラエティばかり観ていて映画を観る機会があまりない(割に、TBSラジオの「たまむすび」で、映画批評家町山智浩の映画コーナーを楽しみに聴いているのはなぜだ?)のだけれど、町山氏が以前に勧めていたのを思い出して観た。

まさかそう来るかという意外性、町の中だけで描かれる閉鎖性、主人公のキャラクター。そして「正義」は果たして貫かれるのかというラスト。全てが好みだった。


スリー・ビルボード (字幕版)



今日の一曲

長渕剛で、「GOOD-BYE青春」 



この曲、作詞は秋元康だそうだ。知らなかった。そう言えば、去年だったか、中華街を歩いていたら、ジープが通りに止まっていて、助手席の窓が開いていた。そこから、若いヤンキー風の兄ちゃん姉ちゃんと楽しそうに話している人がいた。長渕剛だった。思わずこのGOOD BYE青春を大声で歌いながら近づいていこうかと一瞬思ったがやめた。では、また。

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『国宝』吉田修一

2018-10-06 | days
長崎の暴力団、立花組の組長権五郎は絶頂期を迎えていた。新年会には金をかけ、九州一帯の組長や家族を招き、料亭を貸し切って行なっていた。人気歌舞伎役者の二代目花井半二郎も招いていた。しかし当日対抗する組織が組長を殺しに来た・・・組長の息子は中学生の喜久雄。荒れた時代を経て、半二郎に預かってもらうことになった。半二郎の息子は、俊介。芸事のライバルとなっていった。二人のライバル、歌舞伎の世界を鮮やかに描く長編・・・

国宝というタイトルなので、人間国宝になるまでを描くのかなー、と思いつつ読んでしまうのだけれど、そういう「邪念」が特に読者を邪魔しない。こうなるだろうという予想にはあまり意味がないぐらい波乱万丈な展開をしていく。

歌舞伎には全く詳しくなく、「本朝廿四孝」とか「阿古屋」とか言われても何のことだか分からない。ということはほとんど関係ないというか、知らなくても十分楽しめる。最低限のことは説明してくれているので。

特に「女形」の演技が主題になるのだけれど、

簡単に口では立女形に必要な絶対的な威厳などと申しましたが、では実際にはどのようなものなのか、もちろん喜久雄自身もそれをきちんと言葉にすることはできません。ただ、たとえばこの武士が楽屋の廊下に立っているのいたしましょう。先輩役者に呼ばれるのをただ待っているのか、それとも単に暇を持て余しているのかわとにかく壁に寄りかかって退屈しのぎに足を揺らし、その目は汚れた床に向けられております。言ってみれば、からっぽでございます。何かを見ているわけでもなく、何かを考えているわけでもないからっぽの体。しかしそのからっの底が、そんじょそこらのからっぽの底とは違い、恐ろしく深いことが誰の目にも明らかなのでございます。生前、先代の白虎はよく言っておりました。女形というのは男が女を真似るのではなく、男がいったん女に化けて、その女をも脱ぎ去ったあとに残る形であると。

こんな風に、優しい語り口で説明してくれる。このナレーションがあるからこそ、歌舞伎の世界が柔らかく伝わってくる。

何でこんなスゴイ話を吉田修一が書けたんだろうと驚きつつ、歌舞伎の世界のスゴさと深さを存分に浴びつつ、物語の芳醇さをこれでもかも味わった。歌舞伎なんて興味ないという人こそ、読むべき。(興味のない私が、ぜひ歌舞伎を観たくなったぐらいだから)


国宝 (上) 青春篇
吉田修一
朝日新聞出版

国宝 (下) 花道篇
クリエーター情報なし
朝日新聞出版



今日の一曲

CHVRCHESで、"Do I Wanna Know?"



では、また。
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『判決破棄』マイクル・コナリー

2018-10-04 | books
LA刑事のハリー・ボッシュシリーズと、リンカーン弁護士(固定した事務所を持たず車の中が事務所)のミッキー・ハラーシリーズの融合作品。

弁護士のハラーは地区検事長から呼び出される。一時的な検事をやって欲しいとのこと。24年前に、ジェサップという男が少女を殺害した事件。新たなDNA検査によって、被害者の服に付いていた精液は、被告のものではないと分かった。既に24年も刑務所にいるので、告訴を取り下げれば莫大な額の賠償金を払わねばならない。再審となれば勝たねばならないが、検事局では多くの者が以前の事件に関わっているので、無関係の者に検事として裁判を取り仕切って欲しいとのことで、ハラーに依頼が来たのだ。難しい事件ではあるが、元妻で左遷された検事のマクファーソンとボッシュに手伝わせてくれるならと了承する。対する弁護士はなかなかの辣腕。ボッシュの捜査から様々なことが分かるが、果たして裁判に勝てるのか・・・

ううむ。面白い。面白過ぎる。トゥインタラスティングだ。

ボッシュとハラーそれぞれの目線で、章を交互に描かれる。捜査も面白いのだが、なんといっても法廷のシーン。たまらなく面白い。

陪審員は事件についてニュースを観たり新聞を読んだりしてはいけないことになっているけれど、もしそうしてしまったらどうなるのかとか、証拠の扱い方、証人の扱い方など、裁判におけるテクニックがこれでもかと出て来る。私はアメリカのリーガル・サスペンスを読むのが好きなのだけれど、一つはこの裁判で見られる闘いや闘いの技術に興味があるからだと思う。スポーツが面白いのはルールがあって、その上で闘うからだと思うけれど、裁判も同じように、ルールが厳密に決められた(しかも素人読者の私はそもそもルールに詳しくないので、ルールそのものを知るのも楽しい)ある種のスポーツなわけで、だから楽しんで読めるのだと思う。

途中の、身の毛もよだつようなシーンや、ラストの意外な展開などがわ単なるリーガル・サスペンスでない、極上のエンターテイメントに仕上げてくれる。とってもオススメ。シリーズものなので基本的には前の作品から順に読んだ方がよいのだけれど、本作はあまり以前の件が関係ないので、ここから読み始めるという手もあり。


判決破棄 リンカーン弁護士(上) (講談社文庫)
マイクル・コナリー
講談社
判決破棄 リンカーン弁護士(下) (講談社文庫)
マイクル・コナリー
講談社



今日の一曲

Mr. Bigで、"To Be With You"



先日飛行機で隣に座った女性。何というか周囲のことを完全に無視している様子で、あまり感じのいいひとではなかった。しかし後で考えてみたら、中国か韓国の人で、日本語を解さないがゆえの挙動だったのかも知れないと思った。彼女の着ていたパーカーには、2017 Mr.Big Japan Tourと書いてあった。では、また。

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『私が誰かわかりますか』谷川直子

2018-10-02 | books
東京でイラストレーターをしていた桃子。遠距離恋愛の末、東京を離れ田舎にやって来た。夫は信用金庫で働く優しい人。しかし義父がアルツハイマーになってしまった。義母は義父の世話で疲弊する。老人ホームにショートステイすれば、元々のでケチな性格のせいなのか、トイレットペーパーを大量に持ち帰って来る。義母は桃子には介護は無理だから老人ホームに入れようと言う。かなり旧弊な価値観を持つ人ばかりのこの町。長男の嫁はああしないといけない、これはしてはいけないという風に見られる。ホームに入れれば、ひどい嫁だと後ろ指をさされる。介護に悩む複数の家族、特に義理の娘(息子の嫁)の苦労を描く・・・

ふぅ。歳はとりたくないと心の底から思った。70歳ぐらいで、ポックリ逝くのが理想だけれど、無理なら後頭部に鈍器で殴ってもらっ(以下省略)

介護のリアルな姿がこれでもかと描かれる。そんな話はいくらでも聞いたり、見たりしてきたつもりなのに、どこか他人事のようにしか感じてなかったらしい。巧い小説の書き手によれば、起こる出来事がまるで自分に起こっているかのように感じてしまう。

ユーモアもあちこちにあり、単に「高齢化社会をリアルに感じる」だけの小説ではなく、物語そのものを楽しめる小説だった。


私が誰かわかりますか
谷川直子
朝日新聞出版



今日の一曲

Kings of Leonで、"Sex on Fire"



では、また。
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