頭の中は魑魅魍魎

いつの間にやらブックレビューばかり

『オリジン』ダン・ブラウン

2018-03-30 | books
「ダヴィンチ・コード」シリーズの主人公、ラングドン教授。今回は舞台はスペイン。昔の教え子のエドモンド・カーシュは、世界的に有名なコンピュータ科学者であり、未来学者となった。そして、「われわれはどこから来たのか、どこへ行くのか」という問いに対する答えが分かったので、その映像を全世界に公開すると言う。それをスペイン、ビルバオのグッゲンハイム美術館で行うのだが、その場にラングドンにいて欲しいとのことで、スペインに向かった。映像を公開する直前で、カーシュは殺された。パスワードが分からないと、映像の公開が出来ない。グッゲンハイムの館長であり、スペインのフリアン皇太子のフィアンセであるアンブラ・ビダルとともに、パスワード解読の旅に出る・・・

うーむ。肝心の、どのようにして生物が誕生したのか(原始のスープから本当に生命が誕生したしたのか、それとも神が創造したのか)という問いに対する答えと、われわれは今後どう進化するのかという問いに対する答え双方ともに、なんというかピンと来ない。面白くないし、斬新な感じもしない。この謎が延々と下巻の最後まで引っ張られたのは残念。(ピンと来ないおいらがアホなのか?)

しかし、グッゲンハイム美術館やガウディ設計のサグラダファミリアやカサ・ミラに関する蘊蓄がとても楽しかった。

オリジン 上オリジン 下

今日の一曲

Bill Evansで、"Waltz For Debby"



では、また。
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店名にツッコんでください185

2018-03-28 | laugh or let me die
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『ディア・ペイシェント』南杏子

2018-03-26 | books
川崎の佐々井記念病院で、半年前に常勤の内科医になったのは、真野千晶。父親は山梨で診療所をやっているが引退を考えている。しかし、千晶はまだ自分には学ぶべきことが沢山あるので、跡を継ぐのは早いと考えている・・・佐々井記念病院の事務長は、「患者様プライオリティ」の実践に口うるさい。しかし外来に患者が押し寄せ、入院患者もみなくてはならず、患者のクレームにきちんと対応していると、食事を摂る時間もなくなる・・・そんな中、猛烈なクレームをする患者がやって来た・・・

そんなに期待しないで読んだ。

医者のブラックな現場を、リアルに描いてくれている。医者なんて、高給取りでエラそーにしてるくせに、なんて思っていたけれど、これを読むと、むしろ同情してしまった。耳鼻科とか眼科の開業医なら全然話しは違うのかも知れないけれど、勤務医はなかなか辛いようだ。

ストーリーとはあまり関係ないが、主人公がロシアの武術「システマ」を習っているというエピソードが面白かった。鼻から息を吸い、口から吐く。これを1分間に100回くらい繰り返す。これで気持ちが落ちつけられるという。また、ゆっくりと行うスクワット。中腰で「電気椅子」状態で、苦しくなると、先の呼吸を繰り返す。すると、リラックスの神経、迷走神経が刺激されるので、パニックになった心が落ち着くのだそうだ。最近、呼吸法に興味があって、丹田呼吸などの呼吸を試している。この「システマ」呼吸もお試し中。(最近丹田呼吸をやってると言ったら、「あの変な人がやってるやつ?」と言われた。変な人っておい)

小説の方は大変面白かった。オススメ。

ディア・ペイシェント

今日の一曲

ジェニーハイで、「片目で異常に恋してる」



では、また。
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『贖い主 顔なき暗殺者』ジョー・ネスボ

2018-03-23 | books
ノルウェーミステリー、ハリー・ホーレシリーズ。救世軍のメンバーが街頭で射殺された。犯人は、クロアチアから来た暗殺者。誰が依頼したのだろうか。救世軍のメンバーの男性が女性に対して執着している。それが原因なのか。しかし辻褄が合わない・・・ハリーは、薬物中毒者の死亡事件が気になる。本当に事故なのだろうか・・・暗殺者は逃亡しようとするが、国外に出られなくなってしまった・・・

うーむ。かなりややこしい。というかまだるっこしい。悪くないのだけれど、長かった。

暗殺者の身元はすぐに分かるので、彼のバックグラウンドや、彼が逃げきれるのか、彼の視点で読み、また並行して、ハリーの視線で、今度は追う側を読む。その辺は悪くなかった。

また、救世軍という言葉は何となく知っていたけれど、実態は知らなかったのがある程度分かった。

「愛なしで生きるよりもっと虚しいことが一つだけあるわ、それは苦しみなしで生きることよ」(ハリーの母の台詞)


贖い主 上 顔なき暗殺者 (集英社文庫)贖い主 下 顔なき暗殺者 (集英社文庫)

今日の一曲

The Rolling Stonesで、"As Tears Go By"



では、また。
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『アンチェルの蝶』遠田潤子

2018-03-19 | books
藤太は、40歳、一人大阪で小さな居酒屋を営んでいる。すると、久しぶりに、昔の親友秋雄がやって来た。小さな女の子を連れていた。この子、ほづみを預かって欲しいとのこと。ほづみは、あのいづみの娘だった。秋雄は少年犯罪の弁護を担当している弁護士。被害者に恨まれている。それで自分の身が危険だからこの子を預けて行くのだろうか。そして秋雄は行方不明に・・・25年前の日々が蘇る。父の居酒屋を手伝っているが、毎日のように暴力をふるわれていた。そして、毎晩のように賭け麻雀・・・仲のよい友達は、秋雄といづみだけ。三人の結びつきは強かった。秋雄といづみの父親も賭け麻雀をやっていた。三人とも父親が憎い。そして起こる事件・・・

いつも、おかしなほどの熱量の遠田潤子作品。今回は、熱量というよりも、諦め、猛烈な諦めと、そして強烈な再生を感じた。

居酒屋を経営しながらも、やる気があるとは言えない主人公。なぜこんな風になったのか、過去に場面が移ると、決して投げやりな人間ではなかったことが、分かる。では何が起こったのか。起こったことは、転落なのか、それとも飛躍なのか。読む人によって違う感じがするような気がする。私は飛躍だと読み取ったけれど。

先に読んだ「オブリヴィオン」よりもずっと好みだった。

アンチェルの蝶 (光文社文庫)

今日の一曲

Amy Winehouseで、"Me & Mr Jones"



では、また。
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『テーラー伊三郎』川瀬七緒

2018-03-17 | books
海色(アクアマリン)という名の男子高校生。福島で母一人子一人生活を送る。母はボルノ漫画家で、アクアは手伝いをしている。周囲はやいのやいのと言うけれど、本人は生活のためと割り切って手伝っている。町の紳士服店のショーウィンドウで見慣れぬものが飾ってあった。マネキンがコルセットを身につけているのだ。母の漫画の手伝いを通して、昔のヨーロッパの服装は結構勉強した。これがとても美しいものだと分かった。寂れたテーラーの主人は80を過ぎた伊三郎。珍妙なファッションとずーずー弁の女子高生の三人で、古いものと新しいものを組み合わせた、コルセットのオーダーメードの店をやろうとする・・・

誰に薦められたか忘れてしまった。その人に感謝。

とっても良かった。読みやすい(読みやすいという軽すぎて、読み応えがない場合があるけれど、そういうこともなく)し、含蓄もあり、キャラは立っていて、何よりストーリーが面白い。

じいちゃん、男子高校生、女子高生という、言わば「やや、世間から打ち捨てられていた者たちの再生物語」でもあり、「ややこしくした成長物語」でもあると思う。

テーラー伊三郎【期間限定!試し読み特別版】 (角川書店単行本)

今日の一曲

iriで、"rhythm"



では、また。
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『蝶のいた庭』ドット・ハチソン

2018-03-15 | books
何人もの女性たちが長年拉致監禁されていた。解放されたうちの一人、マヤの話しを聞くのは、FBIのヴィクター。マヤはなかなか本当の話しをしようとせず、本名すらなかなか明かそうとはしない。しかし、少しずつ話し始めた。「庭師」と呼ばれた犯人と息子たち。おぞましい話の先にあるのは・・・

「翻訳ミステリーシンジケート」の「書評七福神の今月の一冊」で、激賞されていたので、我慢して読めばラストに何かあるだろうと期待していたけれど、期待を上回るものではなかった。残念。(良い着地点なのかも知れないけれど、そういうものを期待してないのだよなー)

蝶のいた庭 (創元推理文庫)

今日の一曲

Pat Methenyで、"And I Love Her"



では、また。
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店名にツッコんでください184

2018-03-13 | laugh or let me die
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『戦争の日本中世史 「下剋上」は本当にあったのか』呉座勇一

2018-03-11 | days
話題の本「応仁の乱」、読んでいるうちにこんがらがってしまったので、積んでおいた。同じ著者のこっちの方がよみやすそうだったので、ザザッと斜め読み。

元寇、悪党、南北朝時代などを、やや専門的に説明してくれる。概説書というよりは、一般にはこう理解されているけれど、実はこうなのではないかという別の解釈を教えてくれる感じ。

面白いとかそうじゃないとか、何とも言えない。興味のあるところだけさらっただけなので。申し訳ないっす。

戦争の日本中世史: 「下剋上」は本当にあったのか (新潮選書)

今日の一曲

Stevie WonderとJeff Beckで、"Superstition"



では、また。
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『アルテミス』アンディ・ウィアー

2018-03-09 | books
ものすごく面白かった「火星の人」(映画では「オデッセイ」)に続く、第2作。舞台は月。月にある都市アルテミス。アルミニウムを製錬する企業があり、地球からの観光客を受け入れる施設がある。5つのドームで2000人が暮らす。サウジアラビア出身のジャズ・バシャラはポーターとして非合法の物を運び、小銭を稼いでいるが、ドカンと儲けるチャンスを狙っている。旧知の大富豪から大きな仕事の依頼があった。企業の乗っ取りの手伝いをしろというのだ。報酬は大きいが命の危険もある・・・

うおー。もひとつ、うおー。

面白かった。激しく面白かった。

月の上では、我々のいる地球とはどう違うのか、これでもかと説明してくれる。なるほどそうかと、面白く読む。酸素はどうやって得るのかとか。月旅行に来た地球人はどうやって、月滞在を楽しむのかとか。

ジャズは正義の味方とはちょっと違うのだけれど、ブレない女性によるSFハードボイルドミステリーだとも言える。

映像化されてない、文章でSFを読むと、ほかのジャンルを小説を読むときよりも、「脳内映像化」の刺激がよりピリピリと肌を刺す。布団に入ると、自分が月面にいるような気分になる。

アルテミス 上 (ハヤカワ文庫SF)アルテミス(下) (ハヤカワ文庫SF)

今日の一曲

Bill Evansで、"Love Theme"



では、また。
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『特捜部Q 自撮りする女たち』ユッシ・エーズラ・オールスン

2018-03-07 | books
デンマーク・ミステリー。同じような手口で殺された女性たち・・・福祉国家だから受け取れる補助金を不正に受給しようとする女たち。その女たちに鉄槌を下そうとするソーシャル・ワーカー・・・特捜部Qのリーダー、カール・マーク警部補の片腕ローサ・クヌセンは精神的にボロボロになっていた。ローサを救えるのか?連続轢き逃げ事件と連続撲殺事件は解決できるのか・・・

最近の「特捜部Q」シリーズは、そんなにハマらなかったのだけれど、本作は素晴らしく面白かった。

轢き逃げ事件は、犯人は誰だか分かって読むのだけれど、犯人の内面(殺したくなる気持ちが分かると言えば分かる。分からないと言えば分からない)のリアルな感じ、被害者たちの体たらくも上手い。

撲殺事件は、なかなか犯人が分からないのだけれど、まさかこういう展開になるとは想像せず。こちらも上手い。まさか冒頭のナチスネタがこういう回収をされるとは。

しかし最大の読みどころは、ローサ。事件とは関係なく、精神的に病んでしまった。なぜそうなったのか、彼女の過去が丹念に描かれる。何というか、他人事ではなく、胸に突き刺さる。ローサ、頑張れ!と叫んでしまった。

ここ最近の「特捜部Q」ではベストな出来。自分好みだった。

特捜部Q―自撮りする女たち― (ハヤカワ・ポケット・ミステリ)

今日の一曲

Hank Williams, Jr.で、"Country Boys Can Survive"



では、また。
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『オブリヴィオン』遠田潤子

2018-03-05 | books
吉川森二は出所した。妻の唯を殺した、傷害致死で。出所すると、兄の光一が待っていた、黒塗りのベンツとともに。森二は相手をしたくない。二度と会いたくない。そして義兄の圭介もいた。裁判中には何も語らなかったので「なぜ妹を殺した?」とまた訊かれるが答えない。とにかく誰とも関わりたくない森二・・・アパートの隣に住むのは沙羅。アルゼンチンとのハーフ。唯との娘は冬香・・・ヤクザな兄は森二の特殊な能力の力を借りたい。なぜか、競艇で当てられる、予知能力があるからだ・・・

他の遠田潤子作品と比べると、ややストーリーやネタに不自然な感じがしなくもない(信仰宗教や特殊能力のあたり)けれど、しかしぐんぐんと読み進めてしまう力はやっぱりすごい。

桜木紫乃と遠田潤子は、人間の業を中心に据えて、ストーリー展開でグルングルンと読者を翻弄する、稀有な作家だと思う。どちらも読み逃せない。

オブリヴィオン

今日の一曲

Miles Davisで、"So What"



では、また。
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『プライド』金子達仁

2018-03-03 | books
高田延彦VSヒクソン・グレイシー、1997年。「世紀の一戦」と言われた総合格闘技の試合を、そのずっと前から、興行として行う困難さや、高田側の問題を中心に描くドキュメント。

こんなにも夢中になって集中して本を読むことは最近なかった。面白れーぞー!

東海テレビの子会社に努める榊原という人が興行を仕掛けるのだけれど、なぜこの人が?という説明がすごく面白い。ある一人の人のドキュメントとして、抜群に面白い。

そして、高田延彦の闘いの裏側。私としては、第一回のUFCをビデオで観た時のホイス・グレイシーの強さに腰を抜かした事を忘れなれない。そのホイスよりずっと強いヒクソンについてはずっと興味を持っていた。

猛烈に強いヒクソンの裏側。兄との確執などの家庭の問題。全然知らなかった。そして、ヒクソンとヨガの出会い。真の強さの源泉を見た。(私もヨガ、やりたいです。カラダ柔らかくしたいです。それ以上に精神的なものに興味あります。でも、どこに行けばよいのでしょう?)

榊原という人から見る「ビジネスの成功、失敗」、高田延彦から見る「格闘技に対するモチベーションの維持」、ヒクソンから見る「ヨガの重要性、無の境地の重要性」を読む、複合的ドキュメントだった。

続編、強く希望

プライド

今日の一曲

Awesome City Clubで、「ダンシングファイター」



では、また。
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『がん保険のカラクリ』岩瀬大輔

2018-03-01 | books
がんにかかる確率、がんでかかる費用を考えると、がん保険とは、かなりコスト高なもののようである、というのと話。がん保険を売っている保険会社の代表取締役が書いているというのが驚き。

・高額療養費制度があるので、がんで100万かかっても、月9万程度の支払いで済む。
・入院日数は、減少傾向にある。
・重粒子線治療のような先端医療は、費用がかかるが、がんと診断された人の中で、受けた人はたったの0.3%

非常に興味深かったのは、著者のお父さんが定年退職した。銀行から退職金を使った一時払い終身保険(1000万払うと、10年後に1055万受け取れる)を勧められたのだけれどどうなのか?と質問されたという話。

回答は、<運用利回り(0.55%)が魅力的でないし、途中解約ペナルティがあるので、やめた方がいい。そもそもの老後は、長年加入した保険があるなら解約して、老後の資金にした方がいい。医療保険はこの年齢では保険料が高く、保証が薄いからやめた方がいい>とのものだった。

何というか、保険会社の人なのに、何とフェアなことを書いてくれるのか、と思った。がん保険や医療保険に入ろうかやめようかという人にオススメ。

がん保険のカラクリ (文春新書)

今日の一曲

Beck Bogert & Appiceで、"Superstition"



保険なんて、superstition? では、また。
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