頭の中は魑魅魍魎

いつの間にやらブックレビューばかり

『フェルマーの最終定理』サイモン・シン

2012-02-29 | books

「フェルマーの最終定理」サイモン・シン 新潮社 2000年
Fermat's Last Theorem, Simon Singh 1997

BBCの番組ホライズンで取り上げた「フェルマーの最終定理」 番組制作に関わったサイエンス・ライターが制作過程で知り得たこと、証明したアンドリュー・ワイズのインタビューなど、歴史&数学を一冊にまとめたもの。(Youtubeにその番組の一部を見つけたので、一番下に張り付けた)

超文系のワタシは、フェルマーの最終定理はもちろんのこと、微分も積分もリーマン予想もさっぱり分からない。そんなワタシなのに、この本は堪能できた。いや、正直こんなに面白いとは思わなかった。


nが2より大きい自然数であれば
Xn+Yn=Zn(XのN乗+Yのn乗=Zのn乗)
を満たす、自然数X、Y、Zは存在しない。

というのがフェルマーの最終定理。解が存在しないということを証明するのが非常に困難なんだそうだ。

n=2の場合は3x3+4x4=5x5(ピゴラスの定理)のように成り立つけれど、nが3以上の場合にはいかなる場合にも成立しないというもの。

式を理解することは難しくないけれど、証明の仕方なんてさっぱり分からない。350年間証明できなかったと言われても…

この本は、いきなりフェルマーを理解させるのではなく、ピュタゴラスから始めて、数学の基礎概念のいくつかを紹介し、数学と人間の歴史をひもといてくれる。途中の頁を開くとサッパリ分からないのに、順に読んでいくとよーく分かる凄い本なのだ。

証明をした論文をただ掲載したって分かるわけがない(100頁以上あるそうだ)巧妙にそれを回避して難しい数学を使わないでいかにその証明がすごいかを描写してくれる。学校の数学がちっとも面白くなかったという人にオススメである。読めば、フェルマーの最終定理を証明することがいかに重要なこと分かる。

東大の谷山・志村による「谷山=志村予想」によると、全ての楕円方程式はモジュラー形式と関連付けられるそうで、これがフェルマーの最終定理と大きく関わっているそうなのだが、この楕円方程式とかモジュラー形式についてはさっぱり理解できなかった。

その代わりに、今一つ理解できていなかったハイゼンベルクの不確定性原理がちょっと分かったり、ゲーデルの不完全性定理も前よりちょっと分かったような気がした。

まあ、こういう本をうんうんうなりながら読んでいる自分=カッコいいとか、自慢したいという気持ちを自分が持っている、ということを否定するわけじゃなく、オマエニハワカラナイダロ?的ないやらしい下世話な気持ちも多分あるんだろうと思う。ま、いいか。

同一著者による「暗号解読」と「宇宙生成」もひどく面白そうなので近日中には読みたいと思う。

では、また。



フェルマーの最終定理 (新潮文庫)暗号解読〈上〉 (新潮文庫)宇宙創成〈上〉 (新潮文庫)



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ヒマジネーション

2012-02-28 | poetic inspiration

「あー もー すぬちゃんはー こんなたべかたしちゃだめですよー ちゃんとおはしつかいましょーねー」

とスヌーピーのぬいぐるみに話し掛ける子供。

スヌーピーは微動だにしないのに、脳内で彼が箸を使わずに手づかみで食事をしている様を作り出す。

お金のかからない遊び。

彼女は、大人になったら、そんなことはやめてしまうだろう。

それは、

想像力という「力」を失ってしまうということなのだろうか。

その「力」を失って、代わりに何を得るのだろうか。


なんてな。


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『月魚』三浦しをん

2012-02-26 | books

「月魚」三浦しをん 角川文庫 2001年

古本屋の話。真志喜は幼い頃から無窮堂の店主の祖父と父の仕事を見てきた。しかしある事件がきっかけで… 真志喜と幼いころから親しい瀬名垣もその事件に関わっていた。月日は流れ、真志喜は無窮堂の主、瀬名垣も店を持たない古本屋になっていた。

うむ。だいぶ前に最初の方だけ読んで投げ出していた。なぜならBL臭がぷんぷんとするから。すると知り合いが面白かったから読めと言うので、読んでみた。

BLであることにはかわりはないけれど、それはあくまで舞台装置として使われているだけで、ちゃんと古本と人間の関わりがテーマになっていた。

なーんだ。面白いじゃんか。

ボーイズラブに関しては、ジャンルとしては決して好まない。自分がヘテロセクシャルではなくてホモセクシャルかもしくはバイセクシャルならば楽しめるのかも知れないが、残念ながらそうではない。

マンガ「きのう何食べた?」ぐらいしか読んでない。これは良かった。

きのう何食べた?(1) (モーニングKC)

しかし、女性、もしくは「腐女子」がなぜBLが好きなのか、いまだに分かるような分からないような… あくまでもキレイな顔立ちの男子がそうなっているからなんだろうとは思う。バナナマン日村とフットボールアワー岩尾のBLは見たくない…んだろうな… 美しいものなら見たいということなら… 

仲里依紗と綾瀬はるかのレズが見たいかどうかということか?男性からすると?違う?

いや、それもなんか違う気がする。

結局、腐女子のBL好きには謎が残る。

では、また。



月魚 (角川文庫)
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『食べる。』中村安希

2012-02-25 | books

「食べる。」中村安希 集英社 2011年

「インパラの朝」で開高健ノンフィクション賞を受賞した著者による、旅を「食」という観点から見つめたエッセイ。

第一話 インジェラ(エチオピア)
第二話 サンボル(スリランカ)
第三話 水(スーダン)
第四話 野菜スープと羊肉(モンゴル)
第五話 ジャンクフード(ボツワナ)
第六話 BBQ(香港)
第七話 キャッサバのココナツミルク煮込み(モザンビーク)
第八話 臭臭鍋と臭豆腐(台湾)
第九話 ヤギの内臓(ネパール)
第十話 グリーンティー(パキスタン)
第十一話 タコス(メキシコ)
第十二話 ラーメンと獣肉(日本)
第十三話 自家蒸溜ウォッカ(アルメニア)
第十四話 自家醸造ワイン(グルジア)
第十五話 Tamagoyakiとコンポート(ルーマニア)

エチオピアの「ゲロ雑巾」と呼ばれるインジェラという食い物が一番食ってみたくない度が高い。中村の文章の淡々とした感じが、その地の旅行ガイドにもならず、旅をしたい気分にもさせず、それが私は好きだ。

以下にとても心に残った文章を二つ引用して終わりにさせていただく。どちらも長い。


私は日本で毎日三回、ごはんを食べて生活している。パソコンを見ながらコーヒーを飲み、考え事をしながら料理をし、ラジオや音楽を聴きながら胃の中に何かしらを詰め込んでいきている。忙しさにかまけてファミレスに立ち寄り、ストレスをためてジャンクフードに手をだし、深夜の空腹をインスタントラーメンで抑え込む。ストレス解消のために食べた脂っこい食べ物が、体内を悪い油で浸し、結局は不愉快さばかり増していく。もっと手軽に効率的に、時間を短縮するためにと、パッケージに入った食品を買い込み、たくさんのゴミを出し、その処理が余計に面倒になる。いつもは右奥で噛んでいるのか、左なのかさえ分からない。茶碗に盛られた米の形を注意して見つめたことなどない。昨日何を食べたのか、いつ食べたのか、どんなふうに食べたのかすら思い出せない。冷蔵庫でシナシナになった野菜に、化学調味料がたっぷり入ったドレッシングをかけて食べた。箸を握りしめたまま電話に出て、「もしもし」と誰かに言った。ごはんを食べているようで、もしかすると私は、洟をかんでいたのかもしれない。(32頁より引用)



私は旅を全くしない人生は、意味や特徴が少ないと考えています。旅をする以外の方法で、どうやって世界のことを知ればいいのか私にはよく分からないし、さらに言うと、この世界のことを何も知らないままでは、自分が何をすればよいのかを正確に知ることはできないと思うからです。だから旅をしています。十七ヶ月間旅をしてきて、たくさんのことを発見しました。いい発見ばかりとは限らないけれど、少なくとも世界のありのままの姿に、自分の素手で触れることができました。だから私は、自宅のテレビから得られる膨大な知識よりも、旅で得られるわずかな手触りにこそ真実があると考えています。あなたはいま、二十二歳。つまりこれから先、旅をする時間がたっぷりとあるということ。一つの地域を訪れ、次はまた別の場所へ……。少しずつ、一歩一歩、あなたはこの素晴らしい世界を知っていくのですね!私が訪れたことのある場所について情報が知りたいときには、どうぞ遠慮なくメールしてください。それから、もし日本へ来ることがあったら、ぜひとも連絡してください。さあ、旅にでよう。世界を楽しもう。そうすれば五日、この魅力的な惑星のどこかであなたにバッタリ会えるかも - 私たちがまだ知りもしない地球上のどこかで(197頁より引用)



食べる。インパラの朝 ユーラシア・アフリカ大陸684日

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He said,

2012-02-24 | laugh or let me die





る~る~ る~る~

由紀さおりって最近人気なんだって?夜明けのスキャット。だからちっちゃいって言うな。

そう言えばさ。由紀もさおりも名前みたいだよね。松尾スズキみたいな?それは違う?だからちっちゃいってうるせーよ。

でさ、姉ちゃんが安田祥子じゃない。苗字違うのもややこしいよね。だから、意外とちっちゃいってしつこいよ。

五月みどりと小松みどりが姉妹だってのも驚いたけどさ。

だーかーらー 奈良の大仏と兄弟じゃねえよ。

だーかーらー 大佛次郎は俺の弟じゃねえよ。

だーかーらー たのむからー 小仏ってゆわないでくれ たのむ。

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『海岸列車』宮本輝

2012-02-22 | books

「海岸列車」宮本輝 毎日新聞社 1989年(単行本)文藝春秋社(文庫)(初出毎日新聞1988年1月3日~1989年2月19日) 

伯父に育てられた兄と妹。大切に育ててくれた伯父が先日亡くなった。遺されたのは、排他的な会員制の勉強会モス・クラブ。その経営に携わるのは、兄になるのか妹になるのか。兄は金持ちの女のヒモになることで暮らしている。妹は伯父の秘書をしたりしていた。人徳で反対派を抑えていた伯父がいなくなったので、どちらが会長になっても苦労するのは間違いない。兄、妹、妹とたまたま出会った弁護士、3人の視点で描く。

うーむ。甘ったるい。傑作が多い宮本作品の中ではちとグレードが落ちる、と思いながら我慢しながら読んでいた。文庫版の解説の中で、栗坪良樹というひとが「『海岸列車』の中に登場する人物群像は、今日の私たちからみれば土地を転売してにわか成金になったような奇妙なブルジョアたちに見えてしまう」と書いている。本文を読む前にこの解説を読んだワタシは、何に言ってやがんでぇと思ったのだが、読んでみたら確かに、そのブルジョア具合、苦労が苦労に見えないブルジョア風が鼻についた。私は、巨人・ブルジョア・知ったかぶりが嫌いなのである。

ところが、文庫版の上巻が終わろうかという頃、急に骨太なエピソードが入り込んでくる。それから加速して、周という男が喋ったことを録音したテープの内容が語られてからはもう読みやめることができなくなる。

なんなんだよ。途中でやめなくて良かったけど、しかしねえ… 新聞連載らしい、書いているうちに、当初予定していたのとはあ内容が変わってきてしまった、ということなんだろうと想像する。

読みどころはあちこちにある。この兄とこの妹の生き方、考え方のコントラスト。兄がヒモをしている40歳の女、その娘18歳、新聞記者などそれぞれのキャラがしっかり立っていて、言動には注目すべきところがたくさんある。


「ふうん、じゃあ、女は、どんな種類の意気に感じるんだ?たとえば、ある男の努力だとか生き方とかを意気に感じて、それが恋愛に発展するって場合もあるだろう?でも、男は、ひとりの女の生き方を意気に感じて、それによって恋愛に進むってことは少ない。それは、女と比べるとって意味だけどね」(文庫版上巻331頁より引用)



おお。確かに確かに。おお。確かにそうだ。

女性の生き方がステキ→だから好きになるってことは(男性の一例であるワタシは)ない。生き方以外の諸々が素敵+生き方もステキ→好きになるってことは勿論あるけども。

なんでなんだろうか?気が向いた男性諸君、ご意見伺いたし。逆に、女性からすると、生き方がステキ→だから好き、になることが多いように(男性の一例であるワタシは)思うのですが、これは当たっておりますか?それはなぜですか?女性諸君、気が向いたらご意見頂きたし。



海岸列車〈上〉 (文春文庫)
宮本輝
文藝春秋



読みかけの本たち

万物理論 (創元SF文庫)フェルマーの最終定理 (新潮文庫)二流小説家 (ハヤカワ・ポケット・ミステリ)食べる。
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フェルメール、ヴィロン

2012-02-21 | days

渋谷のBunkamuraで開催中のフェルメール展に行って来た。「フェルメールからのラブレター展」

フェルメール以外にはあまり期待しないでいたのが良かったのか、同時期のオランダ画家の手紙に関連する絵画がなかなか。

行列の後方について、遠くから眺める。少しずつ近づく。

ほんの1メートル絵に近づくだけで全然印象が違う。

絵の具の細かいあるいは大雑把な使い方に驚く。

しかし、

美術館とか博物館の入場料の費用対効果ってどうなんだろう。

1500円で1時間半から2時間の娯楽だったら、映画。

映画と比べてより大きく強い快感が得られるのかなー。

350年の時代を越えた保存、修復された絵を見ることにかかるコストを考えれば1500円など決して高くないとも言えるけれど。

絵画を見ることが純粋なエンターテイメントだとすればちょっと高いんだろうなと思う。

単なる好き者には関係ないけれど。

そもそも純粋エンターテイメントじゃないような気がする。

じゃ、なんなんだと言われると分からないけど(分からないのかよ)

東急本店のすぐ目の前のパン屋に行った。ブーランジェリー・パティスリー・ヴィロン




豚肉のなんちゃらとピクルスがはさまったバゲットとアップルパイだけで900円以上。

たけー。

しかし、うめー。

こんな美味いパンを毎日食っていたら、他のパンが食えなくなってしまう。

美味すぎるものは、たまににしとかないとあかんのだろう。

では、また。

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耳から離れない

2012-02-20 | music

何年か前に車の中で聴いていたラジオでかかっていた。

ずっと気になってたのに誰の歌だか分からなかった。

先日、グラミー賞を6部門も取ったというアデルがそれだった。

should I give up chasingという歌詞しか覚えてなかったのに検索してヒットした。





Chasing Pavements, Adel

歌詞、メロディ、声…

その全てが沁みる染みる浸みる滲みる。

早速iPodにアルバム「19」を入れて何度も聴いている。

Disc2のアコースティックライブがなかなか。

しかし、

PCの入力。

キーがずれる。Iを入力しようとするとOを入力してる。

調子悪いね。

早く寝よう。

では、また。





Adele - 19
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『受験世界史の忘れもの』井野瀬久美恵

2012-02-19 | books

「受験世界史の忘れもの」井野瀬久美恵 PHP文庫 1994年

イギリスの近代史を大学で教えている著者が、受験世界史では教えてくれなかったエピソードを色々と披露してくれる。

と言っても、受験世界史に大きく喧嘩を売るわけでもないし、歴史上の人物のゴシップばかり語るわけでもないので、むしろ良かった。

ウンベルト・エーコの「薔薇の名前」に描かれた中世キリスト教も面白く読んだけれど、イスタンブールの歴史が映画「ロシアより愛をこめて」に描かれているという話が一番面白かった。

アマゾンでは新刊は売っていないそうだけれど。



「受験世界史」の忘れもの (PHP文庫)
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加齢なる一族

2012-02-17 | days

先日バスに乗った。

優先席近辺で立っていた。

目の前には小学校3年生くらいの女の子が座っていた。

私は本を読んでいた。

すると、彼女は席を立ち、満面の笑みで私に、

「どうぞ」

席を譲ってくれたのだ。

おお。

ちょうど疲れていたのでありがたい。

おじょうちゃん、ありがとうね。

あめでも食べるかい?

ってんなわけない。

嗚呼。生まれて初めて席を譲ってもらってしまった。

いや、正確に言うと、

席を譲ろうという意思を、生まれて初めて他人から示してもらった。

席は譲るものであって、譲られるものではなかったのに。

そのちびまる子ちゃんからすると、

私はおじいちゃんに見えたのだろうか。

明日からは

入れ歯もぐもぐさせたりとか

なにかっつうと、戦争中はな~とか言ってみたりするほうが

ビジュアルとマッチするだろうか。


ドラマ「最後から二番目の恋」の中井貴一と小泉今日子の加齢なるやり取りを観ながらあらためて思う。

このドラマは面白いよ。

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『談志の落語 一』立川談志

2012-02-16 | books

「談志の落語 一」立川談志 静山社文庫 2002年(「立川談志遺言大全集」講談社2002年より構成)

先日亡くなった立川談志が書いた落語。全7巻

私は観ないと面白くない落語(例えば春風亭昇太)よりも聴いて面白い落語の方が好み。夜布団に入ってから眠りにつくまでiPodで落語を聴いていることが多いというのもその原因なのかもしれない。

好きな落語家は、立川談春、桂枝雀、古今亭志ん朝。さっぱり一貫性がない。志ん生や談志は必ずしもすごく好みじゃなかったりする。原因不明。(枝雀は観ないと面白くないではないかと言われる方がおられるかも知れないが、私は聴く方が好き)(とエラソーに語るほど落語に詳しいわけじゃないです)

読む落語は割と嫌いじゃなくて、小学生のときに「笑点」は観ないで、古典落語を紹介した本を読んでいた。

大人になってから、江戸時代から明治にかけて多くの落語を作った三遊亭圓朝の「真景累ヶ淵」を読んだりすると、おーとうなったりする。

真景累ケ淵 (岩波文庫)

「芝濱」や「文七元結」はこの圓朝の作だそうだ。知らなかった。どちらも大好きな演目。

話は戻るけれど、大人になってから落語に興味を持ったのは、この「赤めだか」

赤めだか

前置きばかり長くなってしまったけど、本作。

「ガマの油」「やかん」「紺屋高尾」「風呂敷」「狸賽」「ろくろっ首」「白井権八」「竃幽霊」「猪買い」「夢金」「明烏」「短命」が収録されている。

何度も聴いたことのある「やかん」「紺屋高尾」「竃幽霊」「夢金」「明烏」は軽く飛ばして、知らない噺をじっくり読んだ。(知らない落語がたくさんあるわけで、そんなに詳しいわけじゃないです)

読む落語は邪道なのかも知れないが、面白かったのだから、まあ良いのだろう。

「竃幽霊」の後に解説がついているのだが、どうして道具屋の所には幽霊は現れなかったんだろうかという解釈が非常に腑に落ちた。

なぜか改行多めでお送りした。

では、また。



談志の落語 一 (静山社文庫)
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『黄金の丘で君と転げまわりたいのだ 進めマイワイン道!』三浦しをん・岡元麻理恵

2012-02-14 | books

「黄金の丘で君と転げまわりたいのだ 進めマイワイン道!」三浦しをん・岡元麻理恵 ポプラ社 2012年(初出ポプラ社ウェブマガジン「ポプラビーチ」2008年7月17日~2010年8月3日)

ポプラ社の人たち+小説家三浦しをん+ワイン評論家岡元麻理恵が、年に2、3回合計17回ワインについてお勉強じゃないお勉強をする。それぞれの回で三浦のレビュー+岡元解説が披露される。

これは意外な収穫。ワインに興味がなくても、下戸でも十分に楽しめる。読み物としてすんごく面白い。ついでにワインにも詳しくなる。

スナフキンが、向こうの言葉ではどう発音されるかというようなワインと無関係な話も面白い。

岡元さんがこんなことを書いている。ボルドー大のドゥブルデュー教授によると、どんなワインが評価されているかというと、

①飲み手を飽きさせない複雑な味。②よそでは真似できないその土地ならではの味。③伝統を踏まえつついまの時代の息吹を感じさせる味。④長期熟成が可能なワイン。(358頁より引用)


だそうである。ここを湯船につかりながら読んでいたワタシは、ああこれって人間にも、特に異性関係にも言えるじゃないか!と思った。(ワタシはなんでもかんでも人間に結びつける悪い癖がある)

評価される男、女は

①相手を飽きさせない複雑な性格。②よそでは真似できないその人ならではの発想、決断の仕方、発言。③伝統を踏まえつついまの時代の息吹を感じさせるファッション。④長期の恋愛、長期の共同生活に耐えうるビジュアル

おお。我ながらなんという素晴らしい牽強付会、我田引水(がいんでんすい、と入力してなんで変換されないんだよと思ったアホなワタシ)

ワタシの場合、①相手を飽きさせる単純な性格。②他の人と同じじゃやだと思っていて結局人と同じな発想。③着れればいいじゃんというどうでもいいファッション。④生まれつき崩れたビジュアル。

だからモテないのか。やっと分かったよ。

では、また。



黄金の丘で君と転げまわりたいのだ
三浦しをん・岡元麻理恵
ポプラ社
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『空想科学入門 アシモフの科学エッセイ1』アイザック・アシモフ

2012-02-12 | books

「空想科学入門 アシモフの科学エッセイ1」アイザック・アシモフ 早川書房 1978年View From A Height, Isaac Asimov 1963

「ファウンデーション」シリーズや映画にもなった「われはロボット」「ミクロの決死圏」、でSF界の巨匠と呼ばれ、さらにミステリー「黒後家蜘蛛の会」も書いている、作者による科学エッセイ。

ファウンデーション ―銀河帝国興亡史〈1〉 (ハヤカワ文庫SF)われはロボット 〔決定版〕 アシモフのロボット傑作集 (ハヤカワ文庫 SF)ミクロの決死圏 (ハヤカワ文庫 SF 23)黒後家蜘蛛の会 1 (創元推理文庫 167-1)

どういうわけか読み始めたら面白いなんてもんじゃなかった。

私の高校では、数学の教師はロシア語を喋り、物理の教師はラテン語を、化学の教師はサンスクリット語を喋っていた。残念ながら私は、事前にロシア語もラテン語もサンスクリット語もマスターしていなかったし、通訳も用意していなかったので…

それから月日は流れ、業務的なことあるいはそれ以外でも、アイソトープがどうしたとか、エントロピーとか、量子力学がどうしたこうしたという話が目の前を素通りしたりしてる。どうしても必要なことは学ぶけれど、それ以外については基本的にスルーしてきた。だって必要ないし、だって面白くないもの。

ところが、さらに大人になって分子生物学とか、神経生理学、進化論、生物学、相対性理論を単に面白そうだというだけの理由でちょっと読んでみると、これが意外と面白いのだ。「複雑系」を読んだときにエントロピーという意味不明な言葉に触れ、ちょっと興味を持っていた。物理学的にどうというよりも人間社会においてどうなんだろうというような、文系的なすり替えを意識してみちゃたんだけれど(というようなえらそーなものでもないか)

すると、この本の10章(お静かに!お静かに!)に書いてあるのである。シェイクスピアの作品は、全て辞書に載っている言葉である。それを並べ替えて、高次の意味を持たせることができているということは、エントロピーが減少しているではないか!シェイクスピア自身にこれに対応するエントロピーに増加があったかと言えば、余計に食ったりしたわけではないだろう。という友人からの意見に対してアシモフが答えてくれるのだ。

ここまで読んで、しかも門外漢の人は、「エントロピーってなんやねん?」と思われるだろう。私のような素人が説明しても仕方ないけれど、秩序は壊れゆく運命にありそして元には戻せないというのが文系的理解…であっているだろうか。すまん。後はこの本を読んだ方が早いと思う。

他にも理系的で文系人間にはよく分からないことをやさしく説明してくれている本は山ほどある。しかし、文章の巧さ、比喩の豊富さ、分かりやすさ、話題の広さでいったらこの本はトップクラスだと思う。古い本だから、データは古いんだろうし、最新理論は追っているわけがないけれど、最新理論など気にならない私のような文系人間には十分である。他には生命の定義や生物の大きさ、元素記号の意味、中性子、陽子、電子、温度の最高と最低は何度なのか、というような広範囲のトピックが語られている。

特に気に入ったのはこんなこと。

ひょっとすると、われわれは静かな池の中に一時的にたまたまおこった小さなさざ波を滑りおりているにすぎないのかもしれない。それが、われわれには、増大するエントロピーの滝 - 巨大な大きさを持ち、途方もない時間にわたって続いている大瀑布 - を矢のように下っているように思われるのは、われわれ自身の視野が時間空間的に限界を持ち、極微の範囲しか見えないからかもしれないのである(198頁より引用)



うーむ。我々の視野の狭さをまた別の角度から言い当てられてしまった。いや視野が狭いのは私だけか。俺って文系だけど、理系のこういう難しい本だって分かるんだよというバカみたいなアピールをしようとしている自分の底の浅さもまた感じる。すまぬ。

では、また。



空想自然科学入門 (ハヤカワ文庫 NF 21 アシモフの科学エッセイ 1)
アイザック・アシモフ
早川書房
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土偶

2012-02-11 | laugh or let me die




幼稚園児諸兄、



貴兄が今お造りになっているその粘土の人形、二千年後にはかのようになっているかもしれませぬぞ。


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『夏草の賦』司馬遼太郎

2012-02-10 | books

「夏草の賦」司馬遼太郎 文藝春秋社 1967年

土佐の豪族、長曽我部元親。四国全土を切り取ろうとすると信長、秀吉という覇者に阻まれる。美濃から来た明智光秀につながる美しい妻、菜々。軽妙な会話と、元親の苦悩を描く。

ふむ。私の好みの重厚長大ものでなかったのでなかなか読まなかったのだが、何となく司馬作品を読みたくなったので読み始めたらこれが意外と面白かった。

権謀術数を巧く使う様と、巧く使えない様、もっと効率よく攻めて行けよとツッコミを入れたくなる様など、人間として味わいのある元親がなかなか読ませてくれる。自分が尾張に生まれていれば、と土佐に生まれた自分をしつこく悔やむ様もまた人間くさい。

ところで、好きな司馬作品と言えばみなさんは何をあげるのだろう?

ワタシは「国盗り物語」と「花神」が一番の好み。「峠」や「竜馬がゆく」「坂の上の雲」がその次かな。

以上、あっさりレビューにて失礼。

では、また。



夏草の賦 [新装版] 上 (文春文庫)花神〈上〉 (新潮文庫)国盗り物語 前編 斎藤道三
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