頭の中は魑魅魍魎

いつの間にやらブックレビューばかり

『正欲』朝井リョウ

2021-04-30 | books
男児らに公園で水鉄砲を貸して水遊びさせ、濡れた服を脱ぐのを撮影したとして逮捕された三人の男たち。大学生諸橋とサラリーマン佐々木の二人のそれまでの人生。事件を担当する検事の子供が引きこもりだったり、佐々木の同級生女性の話があったり。

「正しい欲」とは何かに迫るわけでもなく、「正しくないとされる欲」を大胆に擁護するでもなく。何のメッセージも感じられなかった。

感じさせないのがイケナイのか、感じないのがイケナイのか。

 

今日の一曲

さだまさしが「関ジャム」で紹介してた注目のアーティスト。Play.Gooseで、"Count Up! "



さだまさしがiPadで様々な本や漫画までダウンロードして読んでいるのを見て驚いた。なんて広範囲に興味のあるステキな大人なんだろう。では、また。


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店名にツッコんでください260

2021-04-28 | laugh or let me die
店名にツッコんでください260
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『ほたるいしマジカルランド』寺地はるな

2021-04-26 | books
関西の遊園地が舞台。様々な従業員の悲喜こもごも。メリーゴーラウンドオタクや真面目なインフォメーション担当、離婚して息子を夫に取られた清掃担当、Twitterで見かけた女性を好きになったメリーゴーラウンド担当など。

爽やかなのにしっとりした人間ドラマ。面白かった。

 「はたくんLOVE」などと蛍光色で書かれた巨大なうちわをつくっている妻の姿など、あまり積極的に見たいものではない。一度など、部屋でライブのDVDを流しながらひとりで光る棒を振って一心不乱に踊っているのを目撃して動揺したが、照代は「だってファンなんやもん」と平気な顔をしていた。楽しげな妻の姿を見るたびに腹の底から沸き上がるこの感情の正体を知りたくない。嫉妬では断じてないはずだが、なにかほの暗いものであることはたしかだ。

正体を知りたくない感情。巧い。

 他人は自分の人生ドラマに現れたり消えたりする登場人物のようなもので、だから当然入れ替わりがある。端役だと思っていた相手が急に重要な役をつとめたり、準主役だと思っていた相手が急に消えたりする。生きていたらそういうことの繰り返しだ。

生きるとは人生というドラマを観ることなのかも知れない。なんてな。

 

今日の一曲

先日ラジオ「たまむすび」にゲストで来ていた。T字路sで、「愛の讃歌」



では、また。


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『2020年の恋人たち』島本理生

2021-04-24 | books
久しぶりに上質な大人の恋愛物語を読んだ。

葵、32歳、会社員をしながら、死んだ母のやるはずだったワインバーを経営することになった。周囲の色々な男。同棲してるが引きこもりの彼氏。母と親しかったが自分に告白してきた男。ワインバーの従業員。愛人の子だというわだかまり。そして出会い・・・

葵という一人の女性に恋してしまった。ある種の理想の女性像。弱さと強さをいい塩梅で持つ。

ストーリー展開も絶妙。

そして、ドキッとするような言葉。

 一方で、妙に惹きつけられるものもあった。彼の話し方には変なプライドや威圧感がなくて、心を開いてる感じがした。

酒がが飲みたくなるきっかけはHALT Hungry,Angry,Lonely,Tiredの四つだそうだ。→知らなかった。

 葵さんは芯の強さと柔軟さが、同居した人ですね。

そういう人理想。

 指先が離れていくときに、わずかに淋しくなって、ああ、人は人に触れることでこんなにもたくさんのものを負ってしまうのだな、と実感する。負の感情も、幸福感も、安心も。

 私はちっとも変わっていなかったのだ。たくさんの依存交じりの関係から抜け出したと思っていたのに、また新しい束縛や依存に戻ろうとしていたのだから。

このように客観的に自分を見つめ、反省する。やはり理想の人だ。(理想の女性を見出すというのは邪道な読み方であるとは承知しています)

 

今日の一曲

Gary Clark Jr. で、"Come Together"



では、また。


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2021年4月ドラマちょいとレビューその2

2021-04-22 | film, drama and TV
「桜の塔」・・・事件解決以上に警視庁の出世や派閥争いを描く。誰がどの派閥だか分かりにくいが、権謀術数の男玉木宏の暗躍がスリリングだった。

「レンアイ漫画家」・・・漫画家鈴木亮平が恋愛の実体験の話を聞きたいから、恋愛しろと命じられる吉岡里帆。設定に無理を感じないこともないけれど、恋の行方は気になる。

「生きるとか死ぬとか父親とか」・・・ジェーン・スーの原作。ラジオパーソナリティの吉田羊が、父親國村隼に振り回されたり、叔母さんの住む老人ホームに行ったり、思い出が蘇ったり。しみじみとした。

「ソロ活女子のススメ」・・・江口のり子がソロ生活を楽しむ。ひとりカラオケ、焼き肉、ラブホテル、プラネタリウム。ひとりだから恥ずかしいと思うことが恥ずかしいのかも。意外と面白かった。

「コントが始まる」・・・菅田将暉、仲野太賀、神木隆之介のコントトリオ、マクベス。売れずに辞めようかと考え中。ファミレスウエイトレス有村架純がなぜか彼らの大ファンになる。コントがかなり全面に出てくる珍しいドラマ。面白かった。

「私の夫は冷凍庫に眠っている」・・・途中脱落。

「最高のオバハン中島ハルコ」・・・美容外科医大地真央が相談する者に毒舌で対応。大地が年齢を感じさせないほど美しくて驚く。

「高嶺のハナさん」・・・仕事が出来、男性社員の誘いをいつも断る泉里香。仕事の出来ない後輩のことが好きなのに言い出せない。泉里香ファンのためのドラマか。


今日の一曲

Cyndi Lauper のカバー。Sam Smithで、" Time After Time"


では、また。



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2021年4月ドラマちょいとレビューその1

2021-04-20 | film, drama and TV
「イチケイのカラス」・・・竹野内豊が、裁判中に不明なことがあると、中断して捜査を始める。それで意外な真相が明らかになる。すごく面白いというほどでもないと思っていたら、第3話のガラス工房での殺人事件は面白かった。

「きれいのくに」・・・美容師吉田羊は税理士の夫とセックスレスながらも幸せな生活を送る。するとビジュアルが蓮佛美沙子に若返った。なんだか難しくよく分かってないが、先がすごく気になる。

「珈琲いかがでしょう」 ・・・ワゴンでコーヒーを売る中村倫也。お客さんの人生に毎週関わってゆく。良かった。

「ネメシス」・・・櫻井翔と広瀬すずの探偵ドラマ。近年こんなにつまらないドラマを観たことがない。

「大豆田とわ子と三人の元夫」・・・離婚した三人の夫たちに好かれ、付きまとわれる松たか子。観たことのない不思議なドラマ。気に入った。

「恋はDeepに」・・・環境保護論者の研究者石原さとみが海中展望タワーを企画するリゾート会社のアドバイザーになる。初回は人物紹介的だったけれど、今後面白くなる予感はせず。

「理想のオトコ」・・・美容師蓮佛美沙子が、口下手な漫画家らと知り合って恋したりするっぽい。「きれいのくに」でも彼女は美容師役のようなので少しややこしい。2回目以降観るか悩み中。

「ゆるキャン△2」・・・女子高生キャンプの話のはずが、初回は静岡グルメ。うなぎが旨そうで、店名を検索し食べログで登録した。

「リコカツ」・・・冬山で転落し自衛隊員永山瑛太に救助され惚れてしまった雑誌編集者は北川景子。すぐに結婚するが、朝の4時に起こされ家訓を唱和させられ、5時に朝食を食べたい、自分は走ってくると言われる。脳内が自衛隊で詰まってる男と全く合わないので離婚を決める。彼の親に会いに行くと、親の方が先に離婚を決めていた。こんな奴いるわけないだろうとツッコミつつ、でも笑ってしまう。今期ベストか?


今日の一曲

Nick Jonasで、"This Is Heaven"



では、また。



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『蔦重の教え』車浮代

2021-04-18 | books
仕事で大失敗し、早期退職を命じられた武村。突然タイムスリップした。ときは江戸時代中期。保護しれくれたのは蔦屋重三郎。版元として歌麿、写楽を手掛けた凄腕。彼の側で学ぶ、人の心を掴む方法、版画の製造法、江戸の風物・・・

めちゃくちゃ面白かった。何も出来ない武村の成長譚あり、蔦重の人柄あり、そして江戸がまるでそこにあるかのように描かれる。

ビジネス小説風に教訓が差し込まれるのはマイナスだが、それを補って余りあるプラスがあった。

 「いいえ。タケさん、蔦重の仕事ぶりを見ていると信じられないかもしれませんが、あの方にあれだけ人望があるのは、約束は必ず守る、というその一点を貫かれているからでございます」

人が他人との関わりの中で、まず大切にしないといけないのは約束を守るということだろう。そうでないと信用してもらえず、人望もなくなってしまう。そして、守らない約束なら最初からすべきでないということが、蔦重には分かっているわけだ。人が生きるときにリスペクトすべきルールが学べるという意味では、歴史だけでなく、倫理の副読本でもいいかも知れない。

 

今日の一曲

不思議なドラマ「「大豆田とわ子と三人の元夫」 主題歌のどれがタイトルだかよく分からない。STUTS & 松たか子 with 3exes – Presence I feat. KID FRESINO




では、また。


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『わかって下さい』藤田宜永

2021-04-16 | books
65歳ぐらいの男性が主人公の短編集。


コンサートに行くと、昔交際していた女性が隣の席に。しかも失明していた・・・「わかって下さい」

妻に先立たれた。残されたのは彼女の連れ子。ずっと一人で血のつながらない娘を育てた。彼女が結婚すると言う・・・「白いシャクナゲ」

たまたま困った老女を助けた。昔好きだたった男性を探してると言う。一緒に探しているうちに、偶然が・・・「恋ものがたり」

マンションに突然知らない女が来て、困ったらここに来るように、安田先咲に言われたそうだ。安田のことは知らないが、女は有名女優らしい。そして安田は昔付き合った女性の娘だと言う・・・「観覧車」

画家は描く気力がなくなくなった。家庭菜園で出逢った男は70代のギタリスト。妙に気が合った。軽井沢に別荘を持ってると言う。自分も軽井沢別荘を持ってるので再会しようと言い合うと・・・「エアギターを抱いた男」

昔好きだった人と再会する喜びと悲しみと・・・「土産話」

うーーむ。素晴らしく良かった面白かった。ほとんど65歳の「男性」目線で描かれてるので女性にはサッパリ受けないのかも知れない。65歳とか、中高年男性の心理を知りたい女性は読んだ方がいい。

男として、「こんな風に女性を好きになってしまうプロセス」が溢れ出てる。

 

今日の一曲

水越恵子で、"Too far away"



では、また。


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『特盛!SF翻訳講座 翻訳のウラ技、業界のウラ話』大森望

2021-04-14 | books
翻訳家+書評家の作者が、SF好きが高じて翻訳家になる過程、翻訳する苦労、収入や、ワープロ、パソコンの使用など、89年から95年に書かれたエッセイをまとめたもの。

図書館をブラブラしていたらたまたま見つけて読んでみたら、とっても面白かった。

特にSF好きではないのだけれど、エッセイとして読みどころが多い。翻訳の仕方のような方法論はちょっとしかないのでそっちを求めると肩すかしなのだけれど。読んでみたい本のタイトルを色々ゲットできた。

 

今日の一曲

米津玄師で、「灰色と青」



では、また。


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『京都ぎらい 官能篇』井上章一

2021-04-12 | books
70年代に京都旅行に来ていた女性がたくさんいたという話から、人気芸姑、数寄屋は妾の家だったとかの雑多な京都+女性論。段々と後半は歴史の話登場。

大化の改新の詔で、形容端正な女子を朝廷に差し出せと命令したとか、そんな話が多くなる。「京都ぎらい 官能編」というタイトルとはほぼ無関係なのは、景表法違反だけど、まあまあ面白かった。

 

今日の一曲

never young beachで、「やさしいままで」



では、また。


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『天使と悪魔のシネマ』小野寺文宜

2021-04-10 | books
すべて死に関する短編集。死んで霊的なものになったり、天使もしくは悪魔的な人の死をコントロール存在が出て来たり。

繋がりのある短編と独立した短編がある(人名がたくさんあるので繋がりを完全には把握できてない)

途中まではまあまあぐらいだったのだけれど、ラストの2編がグッと心を鷲掴み。

じっくり時間をかけて読むというより、東京新大阪間の新幹線で読み終わって、あー面白かったとつぶやいて、一週間後にはすっかり忘れてるというエンターテインメントの王道を行く小説

 

今日の一曲

YOASOBIで、「三原色」



では、また。



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店名にツッコんでください259

2021-04-08 | laugh or let me die
店名にツッコんでください259
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『俺と師匠とブルーボーイとストリッパー』桜木紫乃

2021-04-06 | books
名倉章介は釧路のキャバレーで下働きしている。他に住む者のいない寮はボロボロ。ナンバーワンホステスと照明係が駆け落ちしたため、代わりに照明を担当することになった。そしてやって来たのは旅回りの、マジシャン(師匠)ゲイの歌手(ブルーボーイ)、ストリッパー。彼らとしばらく仕事も住まいも一緒にすることになった。

奇妙なのになぜかリアル。成長物語でもあり人情物語でもある。大変面白かった。

タイトルは著者がラジオ番組に出たとき、大竹まことから「20歳のときに釧路のキャバレーに営業で行った。一緒に海を見に行ったのが、俺と師匠とブルーボーイとストリッパーだった」という話を聞いて、その場で書かせて下さいとお願いしたのだそう。

タイトルから物語を作れるというのも稀有な才能なのだろう。

 

今日の一曲

テレビで森山直太朗が紹介してた。五輪真弓で「少女」



では、また。



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『ワンさぶ子の怠惰な冒険』宮下奈都

2021-04-04 | books
宮下奈都さんの、柴犬、大学に行く長男、大学受験挑戦の次男、高校受験の長女、小説家としての仕事。

何と言ったらいいか。都合のいいことも悪いこともさらけ出しつつ、読む者が癒やされるある意味究極のエッセイ。

こういう文章を書ける人、こういう感受性を持つ人、こういう人生を歩く人になりたいと心から思った。

 

今日の一曲

Nick Jonasで、"Spaceman"



では、また。


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『悪の芽』貫井徳郎

2021-04-02 | books
アニメファンが押し寄せるイベント会場での惨劇。行列に火炎瓶を投げつけ何人も殺害、本人も自殺。犯人は斎木、41歳、小学校時代にいじめられていたと報道された。動揺するのは安達。斎木をいじめていたのだ。物語は、なぜそんなことをしたのか探ろうとする安達、犯行を録画していた大学生、娘が被害にあった母親のその後を描く。

うーむ。びっくりするほど面白くなかった。

なぜ斎木が犯行に及んだかについては特に面白くはないので、事件後の関係者の動きが読みどころになるはず。でもそちらもそれほどでもなかった。狙いすぎて、明後日の方向に矢が飛んでいった感じ。

 

今日の一曲

Priscilla Ahnで、"Dream"



では、また。


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