頭の中は魑魅魍魎

いつの間にやらブックレビューばかり

『法廷遊戯』五十嵐律人

2020-09-29 | books
底辺ロースクールで行われるのは「無辜ゲーム」 授業とは関係のないところで、学生間で起こった事件について、学生が検事、弁護人、裁判官を演じる。というリアリティのないふわふわしたお遊びみたいな第一部。読むのやめようかと思ったけれど、

第二部では人が死ぬ。非常にややこしい仕掛けで、死ぬヒトあり、痴漢冤罪あり、長期の恨みあり。

面白かった。読後何も残らない、エンターテインメントとして最高だった。
 

今日の一曲

Taylor Swiftで、"betty"



では、また。


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Netflix映画「ハーフ・オブ・イット 面白いのはこれから」

2020-09-27 | film, drama and TV
Netflix アメリカの田舎。小遣い稼ぎにクラスメイトの宿題の代筆をする内向的な女の子エリー。男子ポールからラブレターの代筆を頼まれる。アスターは教養があり素敵な女性で、自分の方が好きになってしまい・・・

町山智浩氏がラジオで勧めていたので観た。久しぶりにドラマ「ホームランド」を観たら、タリバン、アフガニスタン、ロシアの事がさっぱり訳分からなくなってしまい、言わば、箸休め(味変え?)的な気分で観たらなかなか面白かった。

アメリカの田舎のリアル青春物語。笑えて感心した。

↓予告編



では、また。


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店名にツッコんでください246

2020-09-25 | laugh or let me die

店名にツッコんでください246

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『52ヘルツのくじらたち』町田そのこ

2020-09-23 | books
とてつもなく壮絶で、しかし果てしなく清々しい物語。

貴瑚は祖母の住んでいた家に越し一人で暮らすことにした。閉鎖的な大分の町では風俗上がりかとかヤクザに斬り付けられたとか根も葉もない噂を立てられる。たまたま出会った少年は口がきけず、親にムシと呼ばれ虐待されていた。この子を守りたいと思うようになった。

「この子からは、自分と同じ匂いがする。親から愛情を注がれていない、孤独な匂い」

貴瑚の過去。(以下少しネタバレ)(一番下にさらにネタバレ)21歳、義父の介護だけの人生。母から強制され介護させられていた。そんな人生から抜け出ささせてくれたのはアンさん。友達の会社の先輩。仲良くなり、そして貴瑚を介護人生から脱却させてくれた。しかし...

うーむ。今年ナンバーワンかも知れない。

虐待のような痛々しい話がトゲのように突き刺さる。しかし逃げずに耐え読み続ければ、極上の物語に翻弄される。

癒しと再生を描く最高の小説だった。まだ震えてる。

 
今日の一曲

八神純子で、「思い出は美しすぎて」



※ネタバレ 

優しいアンさんは貴瑚の事が好きだったが、実はトランスジェンダーなので告白できなかった。貴瑚は、会社の専務、主税と付き合うが、他に婚約者がいたので愛人だった。アンさんは貴瑚の事を思いその付き合いをやめさせようとするがうまくいかず、自殺してしまった。主税宛の遺書を遺して。遺書を燃やそうとする主税を貴瑚は刺そうとする。

では、また。


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『深夜航路 午前0時からはじまる船旅』清水浩史

2020-09-21 | books
午前0時から3時の間に出航する日本のあちこちの定期航路14を紹介するエッセイ。

淡々として癖のない文章が心地よい。

乗ったことのあるのは、大洗から苫小牧と、鹿児島から桜島。自分の見たものをこんな風に表現できるとプロの文章になるんだなと納得。

瀬戸内海の直島の近く、騙された五人の盲人の伝説、五人宗谷の話が興味深かった。

 

今日の一曲

RADWIMPSで、「夏のせい」



では、また。


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Netflixドラマ「梨泰院クラス」

2020-09-19 | film, drama and TV
高校生パク・セロイは転校した日に、いじめをしていたグンウォンを殴る。しかし彼の父親は巨大外食企業長家の会長でセロイの父親の上司チャンだった。父はクビ。自分の店を開こうと奮闘する。(以下軽くネタバレ)しかし、グンウォンの運転する車に轢かれてしまう。復讐のためグンウォンを暴行したセロイは逮捕、刑務所へ。

出所後金をためて居酒屋を開く。チャンと息子のグンウォンへの復讐を胸に秘めながら。

非常に好みのドラマだった。

長大な復讐譚。しかも恨みは深く、なぜ恨むのかよく理解できる。

登場人物も素晴らしい。曲がった事が嫌いなパク・セロイ。美人の同級生スアの事がずっと好き。彼女は長家に勤めている。多分彼女がセロイのスパイになって長家を潰すようは話なのだろうと想像していたらそんな単純な話じゃなかった。

後にセロイの店で働くことになる女性イソが大事な役割を演じるし、トランスジェンダーや外国人など現代的なネタも巧妙に埋め込まれている。

話がダレずタイトな作りになっているので一話観るとグッタリする、いい意味で。ただ15話とラスト16話は日本のドラマ並みに無駄に長かったので、二つ合わせて一話にまとめると最高だと思う。

一応復讐と恋がメインテーマになるかと思うけれど、セロイが二人の女性で揺れ動くシーンがある。自分だったらどっちを選ぶか、いまだに悩ましい。



今日の一曲

ドラマの映像をバックに、主題歌、GAHOで、"Start"



では、また。


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『見仏記2 仏友篇』いとうせいこう みうらじゅん

2020-09-17 | books
みうらじゅんといとうせいこうのおじさん二人による仏像見学の旅、第二弾。相変わらずの高いクオリティ。今回は滋賀や四国、鎌倉、新潟。

仏像の目が江波杏子に似てるなどの「仏像表現」も面白いのだが、二人の言動がまた堪らない。なんというか、もっと肩のチカラ抜いて生きていこーと思わせてくれる、ある種の師匠と呼びたい。

「ねえ、あれ、板垣の銅像かなあ」とタクシーの窓に鼻をつけて言った。みうらさんは眠そうな声で答えた。
「ああ、死すとも?」
「あんた、そういう締め方はないでしょう。『笑っていいとも』じゃないんだから。板垣死すともって、偉いことを言った人だよ、相手は」そう叱ったものの、ついみうらさんに呼びかけてしまう。
「それじゃ明日、死んでくれるかな?」すると、みうらさんはかったるそうに料手を上げて答えた。
「死すともー!」


 

今日の一曲

高中正義とサンタナのジョイントコンサートより、「哀愁のヨーロッパ」



では、また。


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『逆ソクラテス』伊坂幸太郎

2020-09-15 | books
小学生や中学生から見た日々の生活や「事件」を描いた短編集。
どの話もやや教訓めいたものがあるのだけれど、それが意外と嫌じゃなかった。

「型に嵌めようとするする指導者は多いよ。だって、一番効率的な教育は、型に嵌めることだから」

「抽象的な言葉を大声で叫んで怒るのは、独裁者の手法だよ。具体的な理由が分からず、恐怖を与えられると、次からはその人の顔色を窺うしかなくなるから」

「バスケの世界では、残り一分を何というか知ってるか?永遠だ」

 

今日の一曲

カシオペアで、"ASAYAKA"



では、また。


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『裁きの曠野』C・J・ボックス

2020-09-13 | books
ワイオミング州猟区管理官ジョー・ピケットシリーズ第5弾。広大な土地を所有するオパール・スカーレットが失踪。遺産を狙う息子アーレンとハンクはお互いを攻撃し合う。ジョーの娘シェリダンはハンクの娘ジュリーと仲がよくお泊まりに行きたいと言う。ジョーの家の周囲に動物の遺骸が置かれ、何者かが脅迫しようとしている。そして遠くから殺人鬼がジョーを狙ってやって来た...

安定した品質。このシリーズは間違いない。

ずっと講談社から出ていたシリーズが、諸般の事情で出なくなってしまったのが、最新作「発火点」は東京創元社から出た。評判がいいので楽しみ。

 

今日の一曲

昔。だいぶ昔。弟の車を借りると、オーディオの電源を入れた。カセットテープだったのか、MDだったのか忘れたけれど、弟オリジナル選曲のやつが入ってた。その確か第一曲目がこれで、なんといい曲かと思った。岡村靖幸で「だいすき」




では、また。


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店名にツッコんでください245

2020-09-11 | laugh or let me die

店名にツッコんでください245

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『コックファイター』チャールズ・ウィルフォード

2020-09-09 | books
フランク・マンスフィールドはアメリカ南部で闘鶏の世界に生きる。そして最優秀闘鶏家賞を取れるまで口をきかないという願を立てた。ハードボイルドな男の明暗は…

1962年に書かれ闘鶏の細かい技法や調整法、細かい金勘定をびっしりと伝えてくれる。それが退屈どころかすごく面白く、またフランクの内面もストーリーも良かった。

最初はクライムノベルかと思っていたけれど、一応ハードボイルドの範疇に入るかと思う。

女性にモテるフランクの女性観もちょっと興味深かった。

 

今日の一曲

最近のお気に入り。Blu-Swingで、"sunset"



では、また。


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『女帝 小池百合子』石井妙子

2020-09-07 | books
小池百合子の半生を綿密な取材をもとに描いた力作ドキュメント。エジプト人すらついていけない高レベルの授業のカイロ大学を首席で卒業したというキャッチフレーズで日本のテレビに登場したが、証拠を見る限り卒業すらしていないようだ。

以降、特に政治信条もなく時の権力者(細川、小沢、小泉)にすり寄り、そして敵を見つけて攻撃するだけで、参議院議員、衆議院議員、そして都知事にまでなった。

一人の人間の愚行を興味深く読むとともに、90年代以降政治がどのように進んでいったかを知る本としてもとても良かった。(彼女のした良い事については書かれていないので、やや偏った評伝かも知れないけれど)

ある新聞記者曰く、

 「結局、二十五年近く国会議員をしてきて、若狭さんみたいな頼りない政治家未満の人と、野田みたいなチンピラしか小池さんの傍にはいない。しがらみがない、孤高だ、という話じゃないんです。自分が目立つことだけを考えて、人を利用してきた結果ですよ。人望がない」

この本を読んだあとに、都知事選で彼女に投票した人はいたのだろうか?

 

今日の一曲

たまたま見つけた。この雰囲気すごく好み。BLU-SWINGで、"FLASH"


では、また。


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『マカン・マラン 二十三時の夜食カフェ』古内一絵

2020-09-05 | books
古民家のような一軒家、昼間はダンスファッションの専門店、夜はその人に合わせた料理を出してくれるカフェ。経営者は巨体のドラァグクイーンのシャール。短編集に登場するのは、早期退職の話が出た広告代理店に勤める人。シャールの同級生で中学教師は、偏食生徒に悩む。隠れ家カフェを探すライター。シャールを慕う後輩。

料理そのものも美味しそうなのだけれど、悩みの解決の仕方、ストーリー展開がとても良かった。自分の体や体調に合わせた食事ってあまり意識したことないけど、きっと良いものなのだろう。

「でも、あなた、さっき自分の見てきたものは錯覚だったんじゃないかって言ってたけどね、世の中なんて、元々全部、その人の錯覚なんじゃないの?」

私鉄と地下鉄を乗り継ぎ、さくらは新橋に戻ってきた。夕刻のニュー新橋ビル前の広場は、オヤジでごった返している。ここが鍋なら、あっという間にオヤジの佃煮が完成する。誰が食べるんだ、そんなもの・・・

 

今日の一曲

先日の「情熱大陸」も良かった。上白石萌音で、「夜明けをくちずさめたら」



では、また。


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『やわらかい砂の上』寺地はるな

2020-09-03 | books
駒田万智子、24歳。鳥取から大阪に出てきて税理士事務所で働いている。ひょんなことから、ウエディングドレスを作る女性円城寺了子の手伝いも兼務するようになった。内向的で自分の見た目や内面にコンプレックスを持っていた万智子が、了子たちとの出会いを通して少しずつ変わる。男性と付き合ったことがなかったがいいなと思う人が出てきた。しかし…

久しぶりに、読み終わりたくない、ずっと続いて欲しいと思った。

万智子の融通がきかないが真っ直ぐな性格がいい。丁寧な内面描写がいい。万智子が感じる周囲に対する違和感が大いに納得できるものだったり、あるいは周囲に言われてハッとするようなこともまたこちらもハッとする。

 「なんで受け流さなあかんの。受け流せないことやから、万智子は何年もずっと覚えていたし、気にしてたんやろ?」

 早田さんと一緒にいるあいだは、反省や探求をする余裕がない。もともとわたしは反射神経に難がある、相手が言ったことにたいして当意即妙の言葉が返せない。

 昔からショップの店員さんがなんとなく苦手だった。試着するのはもっとだ。

 異性との交際経験がないこと、心が純粋であることは、同じではないはずなのに。

 「真実でも、正論でも、相手の状況いかんによっては、受け入れてもらえんこともあるしな。ぜんぶ話せるのがいい関係やとは、私は思ってない」

 「恋愛の上澄みだけ掬って味わうなんて、許さへんで」

 「なにかが正しいとか、自分はこうするとかっていう方針はぜったい持っておかないといけないものだと思ってた。でも、それはただ自分が歩くための靴なんだよね。他人を殴るために使っちゃいけないんだって、バスの中で考えてた」

万智子の内面や出会いというツールを使いながら、さりげなーく「気持ちのいい生き方」を教えてくれた。

 

今日の一曲

あいみょんで、「裸の心」



では、また。


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『パパは脳研究者 子どもを育てる脳科学』池谷裕二

2020-09-01 | books
池谷先生に娘が産まれた。彼女を通して、子育てと脳について考えるエッセイ。

ためになることが沢山あった。

・赤ちゃんに話しかけないと死んでしまう。フリードリヒ二世の実験

・IQテストは遺伝的なものだけをテストしようとするもの(知らなかった)

・一歳児がベイズ推定を見出す。

・記憶力は正確すぎると実用性が低下する。覚えていない部分を想像力で補てんすべし。

・「才能のある人」とは反射力を上手に使える人。その場に応じて、瞬発力と即興性を持った合理的な判断ができる。何かに躓いたら、適切なアイデアを出して打開するとか、揉めた時どう発言すれば穏やかに解決できるかを、素早く思いつく。

 

今日の一曲

サイダーガールで「メランコリー」



では、また。


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