頭の中は魑魅魍魎

いつの間にやらブックレビューばかり

『たゆたえども沈まず』原田マハ

2017-11-30 | books
19世紀末、パリに渡り、画廊を経営した林と部下の加納。浮世絵を日本から買い付けて、パリで売り、大成功した。同時期にパリにいたのは、ゴッホと弟のテオ。テオはグーピル商会という画廊の支配人として活躍していた。林と加納、ゴッホとテオの関わり、ゴッホの自殺・・・

うまい。原田マハはやはりうまい。

現実にあったことと、作者の想像をうまく混ぜて、小説に仕上げる。ゴッホとテオのことは、ほんのちょっとしか知らなかったので、「本当にこんなことがあったかも知れないね」と思いつつ読んだ。

司馬遼太郎作品と同じで、作者が創り出した部分が多いのだから、全て史実だとは思ってはいけないのだけれど、読みながら楽しむためには、全部本当にあったことだと思う方が得策な気がして、そうしてしまっている。

まあ、ゴッホの論文を書くために読んでるわけじゃないのだから、何でもいいか。

面白かった。

パソコンが完全に壊れてしまった。6年使用のダイナブック。Core i5だから充分に速いと思っていたら、新しいのはずっと速いのね。SSDにすると立ち上がりも全然違うみたい。買い換えるまで、スマホからの更新。今日の一曲はお休み。

たゆたえども沈まず
コメント

店名にツッコんでください176

2017-11-28 | laugh or let me die
コメント (4)

『コーヒーが冷めないうちに』川口俊和

2017-11-26 | books
過去に戻れるという不思議な喫茶店を巡る、連作短編集。

過去に戻れることは戻れるけれど、いくつか条件があって、その内の一つは、過去に戻っても現実は変わらないということ。それでも、現実を見る目が変われば、過去にちょっとだけ戻ることに意味があるのかも知れない・・・

ハートウォーミングで、意外性もある。とても良くできたお話。すごく売れているのそうだけれど、頷ける。普段本を読まない人が、いかにも買いそうな、「読みやすい」感じ。

ただ、こういう消化のいいものばかり食べていると、噛む力がなくなってしまうような気がしなくもない。

相変わらず、スマホからの更新なので、Amazonリンクも、今日の一曲もなし。パソコン買い換えないといけないかな。考えるのがちとめんどくさし。

コメント

『スティール・キス』ジェフリー・ディーヴァー

2017-11-24 | books
リンカーン・ライムシリーズはもう12作目。ライムは警察の顧問を辞めて、教職に就いていた。エスカレーターの開閉盤が開いて、落下した人が死亡するという事件があり、遺族の弁護士から、訴訟のためにエスカレーターの瑕疵を調べて欲しいと依頼された。被害者は保険に入っておらず、遺族は金がないので、なるべく早く和解に持ち込みたい。しかし、エスカレーターメーカーの落ち度がなかなか見つからない・・・ アメリア・サックスは、未詳40号を追いかけていた。金槌で頭を殴って殺す男だ。非常に背が高くて痩せている。この男を追いかけていると、エスカレーターの事件に遭遇した。被害者を救おうとしたが、うまくいかなかった。そして、この二つの事件には関連があった・・・

最近、リンカーン・ライムものを読むのに疲れてしまっていた。データが多すぎて。しかしどういうわけか、本作は読みやすかった。

「モノのインターネット」(IoT)がテーマ。電化製品にインターネットが組み込まれると、どんな恐ろしいことが起きるのか。自分の身にも起きそうなリアルなネタと、どんでん返し。まったく飽きずに読み終えた。

ふう。パソコンが不調なので、スマホで記入。Amazonへのリンクや「今日の一曲」はまたお休み。
コメント

『雪の鉄樹』遠田潤子

2017-11-22 | books
雅雪は、19歳の時から父母のいない少年、遼平の面倒を見続けていた。遼平の祖母には延々と嫌味を言われながらも。13年前に一体何があったのだろうか。雅雪は庭師をしている。祖父と二人で。彼の家は「たらしの家」と呼ばれている。祖父と父が何人もの女性を連れ込んだから。父が亡くなったのは13年前。果たして13年前の事件とは・・・

凄まじい。熱い。登場人物たちの思いがほとばしる。こんな凄い小説久しぶりに読んだ。

壮絶な贖罪と愛の物語。この作家の他の作品も読んでみよう。

雪の鉄樹 (光文社文庫)

(pc不調のため、今日の一曲はお休み)
コメント

『永遠に残るは(クリフトン年代記第7部)』ジェフリー・アーチャー

2017-11-20 | books
「クリフトン年代記」ついに最終巻。1920年から始まった物語は、最後は1992年で終わる。未読の人にとっては何を書いてもネタバレになってしまう。○○が国会議員になるとか、最初の「時のみぞ知る」から読み始めた人からすると想像できないような展開になる。

ここ10年でベストの小説(パソコンの調子が悪くて、短文にて失礼)

永遠に残るは(上): ―クリフトン年代記 第7部― (新潮文庫)永遠に残るは(下): ―クリフトン年代記 第7部― (新潮文庫)

今日の一曲はお休みします。

コメント (2)

『かくて行動経済学は生まれり』マイケル・ルイス

2017-11-18 | books
イスラエル出身のダニエル・カーネマンとエイモス・トヴェルスキーの二人の心理学者の生い立ち、研究、そしてノーベル経済学賞をとるまでを描くノンフィクション。

人間の行動がいかに非合理的であるのか様々な例を挙げて教えてくれる。人は効用を最大にするのではなく、後悔を最小にしようとするとか、難しい数式などは使わずに、説明してくれる。

二人の生い立ちなどにはあまり興味が持てなかったのだけれど、それ以外の、冒頭のNBAのスカウトがどうして判断を誤るのかのバイアスの話や、後半の二人の理論の話はなかなか面白かった。

かくて行動経済学は生まれり

今日の一曲

矢沢永吉と布袋寅泰で、「もうひとりの俺 」



今更ながら、あらためて歌がうまいね。では、また。
コメント

店名にツッコんでください175

2017-11-16 | laugh or let me die
コメント (4)

『トップリーグ』相場英雄

2017-11-14 | books
新聞記者として同期だった酒井と松岡。酒井は新聞を辞めて、週刊誌記者になった。松岡は経済部から政治部に異動。新人にもかかわらず、官房長官に可愛がられるようになった。首相や官房長官のような大物が、うちわの懇談会に呼ぶ数人の記者のことをトップリーグと呼び、松岡はそのメンバーになれた・・・ 臨海地区の埋め立て地で、現金1億5千万入った金庫が発見された。酒井はこの事件に注目し、取材を始めた。どうやら政治家の資金らしかった・・・

ずばり、面白かった。

記者の取材の裏側とか、政治家との関係などかなりリアルな(リアルな感じがする)話があちこちにある。これが面白い。

そして、名前は変えてあるけれど、現首相や現官房長官、元首相など現実の政治家を連想させる人物も多数登場する。戦後最大の汚職事件(を連想させる)の裏側はこんな風だったかと思ってしまう。(本当はそうではないのだろうから、現実はこうだったと考えるのは間違っているのだろうけれど)

ラストについては賛否両論あるようだけれど、私は悪くないと思う。

トップリーグ

今日の一曲

ドラマ「探偵物語」の中でもお気に入りのエピソードは水谷豊が登場した会。確か妹さんを探すという話だったと思う。その中で、水谷豊と松田優作が歌う、井上陽水の「心もよう」



では、また。
コメント

『ビコーズ』佐藤正午

2017-11-12 | books
小説家としてデビューしたはいいが、2作目が書けないぼく。29歳。編集者から原稿の催促の電話がかかって来てもまともに応対できない。10年前に起きたある事件のことをいまだに引きずっている。付き合っている彼女がいるけれど、ぼくの体たらくに呆れられている……

佐藤正午の第3作。出版されたのは1986年。31年も前。なのに最近の作品と変わらない。

ダメ男が主人公なこと。女にだらしなく、金をちゃんと稼げてない。そしてテーマがはっきりしていないこと。その辺がずっと変わっていない。

今付き合っている彼女のこととか、昔の友達のこと、好きになれない祖母のこと、よくしてくれる叔母のこと、進まない仕事のこと。色々なことのごった煮なのがいい。

10年前の事件。10年経って、ある人に会いたい。果たして会えるのかというのが一番の読みどころ。何と言ったらいいか。とにかく、いいのだ。とてもいいのだ。

もしわたしたちが、いつかおとなになることだけのためにうまれてきたのなら……

友人が、女には三通りあると言ったことがある。私を好きかと行為の前に訊ねる女。行為の途中に訊ねる女。行為の後に訊ねる女。三番目が一番始末が悪い。三番目がいちばん男に騙されやすい。

「ひとりだけいればいいのね。信頼できる人間が、どこかで見守ってくれていると信じられる人間がひとりだけいれば幸せなんだわ。あのときのことを思い出すとなんとなくそう思うの」

過去を振り返ると、顔から火が出るような思いがすることがある。過去を消しゴムで消したいと思うことがある。でも、何があっても、この台詞のように、信頼できる人が一人いれば他には何もいらない、そんな風に思わせてくれた。

今日の一曲

Camila Cabello ft. Young Thugで、"Havana"



曲の前の寸劇がいい。しかし、UKチャートを見ていたら、かなりの数が、R&Bかラップものばっかりだった。ライブに行きたいとか、お金を払ってCDを買いたいとか思える曲がほとんどなかった。では、また。
コメント

『ハティの最期の舞台』ミンディ・メヒア

2017-11-10 | books
アメリカ、ミネソタの片田舎で、18歳の女子高生が殺害された。シェイクスピアの舞台でも活躍したハティはなぜ、誰に殺されたのか。彼女、彼女の学校の教師、捜査を担当する保安官の視線で、事件の前年から描く。

誰が殺したか、選択肢があまりないので、意外性はあまりない。

ただ、それまでのハティの行動。特に芝居好きのフォーラム内でのネット上の会話。ハンドルネームLGとの会話。ハティの内面とLGの内面。この辺りが面白かった。


ハティの最期の舞台 (ハヤカワ・ミステリ文庫)

今日の一曲

DAOKOと岡村靖幸で、「ステップアップLOVE」



しかし、こんなしょうもないブックレビューをやっていることに何か意味はあるのだろうか。では、また。
コメント

『アンダーリポート』佐藤正午

2017-11-08 | books
検察事務官の古堀。隣に住む村里悦子とちあきの母娘と仲良くしている。悦子に頼まれて小さいちあきをしょっちゅう預かっている。悦子はどうやら夫に虐待されているようだ。古掘の恋人美由起は、古掘が村里と仲良くしていることが気にくわない。そして悦子の夫が殺害された。悦子にはアリバイがある。15年経ってから、過去を調べようとした古掘・・・

佐藤正午には珍しいミステリー。

冒頭は15年後で、真相がいきなり明らかになってしまう風なのだけれど、何のことかよく分からないまま読むので、ちゃんと真相が明らかになるのは、やはり最後まで読んでから。しかも冒頭のことを忘れて読んでいたので、最後まで読んでから、最初に戻って、驚いた。そういうことか。

さすが佐藤正午。ミステリーも面白かった。しかし、なぜ「アンダーリポート」というタイトルなのだろうか。ワカラン。


アンダーリポート (集英社文庫)アンダーリポート/ブルー (小学館文庫)

今日の一曲

安全地帯で、「熱視線」



では、また。
コメント

『恋を数えて』佐藤正午

2017-11-06 | books
「賭け事をする男とだけは一緒になるな」が母の遺言だった、秋子。誰かを好きになったり、別れたり。夜の世界で働く彼女の7年を描く。ただそれだけの小説。

ただそれだけなのに、なんて女心を描くのが巧いのかと思いつつ読んだ。

よく、「女性作家だけに、女の気持ちがよく描けていた」とか言う人がいるけれど、男だから男の気持ちを書けるとか、女だから女の気持ちがよく分かっているとか、全く思わない。

男とか女とか、成分何パーセント含まれているか言えるだけだと思う。純粋100パーセント男性の人も、100パーセント女性の人もいなくて、自分で言えば、男性度60%、女性度40%ぐらいじゃないかと思う。男性度が50%を切ったら、ゲイになるかというとそういうことではなく、「女性的」な人になるということなんだろうと思う。例えば、今よりも気遣いが細やかになるのかも知れないし、肝が太くなるのかも知れない。

男でも、男性20%、女性80%の人がいるだろうし、女でも男性90%、女性10%の人がいるだろう。性としての男性・女性と、性格としても男性的なものと女性的なものは別。そう思う。

そういう話は置いておいて、堀口大學の詩が引用されていて、これが良かった。

数へうた

うそを数えて
ほんまどす

めくらを数えて
あんまどす

ととを数えて
さんまどす

とんぼを数えて
やんまどす

まぬけを数えて
とんまどす

くとうを数えて
コンマどす

したを数えて
エンマどす

これを受けて、タイトルになっている「恋を数えて」どうなるのか。ラストに登場する。巧い。

恋を数えて (角川文庫)

今日の一曲

アリスで、「夢去りし街角」



では、また。
コメント

店名にツッコんでください174

2017-11-04 | laugh or let me die
コメント (7)

『死者の雨』ベルナール・ミニエ

2017-11-02 | books
フランス・ミステリー、「氷結」の続編。女教師が自宅で殺された。ロープでぐるぐる巻きにされて。現場にいたのは、彼女が担当している男子生徒。酩酊しており、極めて怪しい。警部セルヴァズは、電話を受けた。逮捕された少年の母親から。自分の息子を救って欲しいと言う。セルヴァズと昔交際していたから・・・捜査を担当することになった。段々と出て来る容疑者たち。猟奇殺人の裏側にあるのは・・・

長い。そしてしつこい。下巻に入っても、長えなーと思っていた。正直、かなりすっ飛ばして読んでしまった。

下巻297頁に入ってから、ストーリーが急速に進む。今までに全く出て来ないネタなので、純粋な犯人捜しミステリーとしてはフェアじゃない。そんなんじゃ犯人当てられるわけねえじゃねえか。しかし面白ければいい。そして面白い。

どんでん返しとサイコ・スリラー好きにはオススメ。そうでない人は、カズオ・イシグロとか読んだほうがいいかも。


死者の雨 上 (ハーパーBOOKS)死者の雨 下 (ハーパーBOOKS)


今日の一曲

木村多江の復讐に燃える演技、そしてストーリーも興味深いドラマ「ブラックリベンジ」の主題歌。SING LIKE TALKING feat.サラ・オレインで、「闇に咲く花 ~The Catastrophe~」



では、また。
コメント