頭の中は魑魅魍魎

いつの間にやらブックレビューばかり

『水底フェスタ』辻村深月

2011-10-31 | books

「水底フェスタ」辻村深月 文藝春秋社 2011年(初出別冊文藝春秋2010年1月号~2011年5月号)

高校生広海。毎年夏ロックフェスが開催される陸ツ代村で暮らす。温厚な父親は村長。フェスを誘致できてから、村の活気が出てきた。広海のことが好きな同級生門音、彼女のことが好きな市村。恋はそう簡単に始まらない。村出身で元モデルの女優、織部由貴美が戻ってきた。広海と由貴美のあやうい出会いがもたらすものは…

なんと言うか、男子高校生のヴィヴィッドで瑞々しい感性が内面が上手に描かれ、頁をめくる手が止まらない。

かなり悪質な不良、達哉が出て来ても、いったいストーリーがどう進むのか見当もつかなかった。しかし彼の登場が後で重要な意味を持つ。その辺も巧い。

復讐が一つのキーワードになる。最初は不自然なエピソードが入ってきた違和感を感じたが読み進めていけば、問題なし。

辻村深月ってこういう作品を書く作家なんだとあらためて、他の作品を読もうと思った。

ついでながら、前からロックフェスって行きたいと思っていて一度も行った事がないのだが、これを読んであらためてぜひ来年行ってみたい、そう思った。

では、また。



水底フェスタ
辻村深月
文藝春秋
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映画「ヴィクトリア女王 世紀の愛」

2011-10-30 | film, drama and TV

1838年18歳で即位した大英帝国ヴィクトリア女王。彼女が即位しても権力をその手においておこうとする母親と秘書。ベルギー国王も甥のアルバートを送り込む。信頼できるのはメルバーン卿だけなのに、彼を権力の座から引き摺り下ろそうとする者たちもいる。そんな中、政略結婚のはずが真の愛へと変わってしまい…

意外なほど鬱々とした女王の描写が悪くない。私個人は歴史上の人物の華やかな面とか、歴史の中の戦争の特に細かい戦術面にはあまり興味を持てない。逆にそれ以外には興味があるので、なかなか面白く観た。

ヴィクトリア&アルバート・ミュージアムという博物館は夫の死後彼の名前をつけて出来た。私は何度かそこに行ったことがあるのだが、大英帝国の略奪の歴史&モノモノモノの雑多な収集がここまでされているのかと驚愕する&ヴィクトリアの愛を感じる場所であった。

陶器だか磁器のコーナーに行くと莫大な数のアンティークのマイセンやらウエッジウッドやらがずらーーーと並んでいる。なんじゃ、この光景は?パブなんかの外の壁につける飾り(なんて言うのか分からない、ごめん)がやはり莫大な数、ずらーーと並んでいる。なんじゃこりゃ?である。

もしロンドンを訪問することがあれば、大英博物館、ナショナル・ギャラリー、ポートレイト・ギャラリー、ロンドン塔と並んで、「ぜひ足を運んで欲しい場所」である。

とかなんとか言っても、読者諸君は「えーふるさん、外国に行ったことあるわけないでしょ?日本語すらちゃんと言えないんだからー」と思うわけである。勿論それでいいのである。私の言うことはすべて、嘘だから。

では、また。





ヴィクトリア女王 世紀の愛 [DVD]
Happinet(SB)(D)
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アイアム大物

2011-10-29 | days

ええっと、

先日ですね。

スーパーに行ったんですよ。

夕飯のための、弁当だけじゃなくて、

バナナと牛乳も買いに。

そしたらですよ、

レジでね、お金を払うときに、

レジのお姉さんが、

落っことしたんですよ。

バナナを。

床に。

床に。

おーまいがっ ですよね?

ですよね?

当然言いますよね?

お取替えしますって。

当然言いましたよ、

お取替えしますって。

でもね、わたしはね、

言いましたよ。

大丈夫ですって。

りぴーとあふたーみー

大丈夫です。

そんときにですね、

思いましたよ。

私もやっとここまできたなってね。

私もやっとバナナ落とされても、

顔色一つ変えずにね、

大丈夫だよお嬢さんて顔できるようになったってね。

大物だね。

うん、大物大物。

今年初めて自分が大物だって思ったわけですよ。

えっとね、

ただそれだけのはなしなんですよ。




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『転迷 隠蔽捜査4』今野敏

2011-10-28 | books

「転迷 隠蔽捜査4」今野敏 新潮社 2011年(初出小説新潮2010年6月号~20115月号)

大森署の署長の竜崎は今日も忙しい。ひき逃げはあるし、殺人はあるし。エリート警察官僚だった彼が諸々あって降格人事で所轄の署長に格下げされた。しかし竜崎は超合理主義者なのでそんなこと気にしない。その竜崎は厚生省や外務省からの横槍からどう事件を解決に導くことができるだろうか…

うーむ。相変わらずの今野敏節健在。読みやすいし、スムーズ。難点は事件がちょっと小さいかなということ。しかし国際的な事件が絡んでくるので、印象は小さい感じがしたけれど、実際は大きいはず。

隠蔽捜査シリーズは、大沢在昌の新宿鮫シリーズと並んで、現代日本警察の捜査をいい意味でも悪い意味でも描写する秀逸な作品。ご興味ある方はぜひご一読を。

では、また。



転迷―隠蔽捜査〈4〉
今野敏
新潮社
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『舟を編む』三浦しをん

2011-10-27 | books

「舟を編む」三浦しをん 光文社 2011年(初出CLASSY2009年11月号~2011年7月号)

玄武書房が新しい辞書、大渡海を作る。辞書編集37年のベテラン編集者荒木はもうすぐ定年退職。後輩を見つけ育てなければならない。社内を探すと辞書編集に向いた人材として営業部に馬締(まじめ)を見つけた。彼はまじめ一本やりの27歳。辞書編集をめぐる物語+恋愛…

いやいやいや。最初のつかみでノックダウンされてしまった。

なぜ荒木が辞書編集の仕事をすることになったのか昔を振り返っていた第7頁をめくったと思ったら次の頁では37年後の現在に時間が飛ぶ。巧い。この頁の使い方が巧い。文庫になったらどうなるか分からないけれど。最初の30頁くらいは馬締を引っ張ってくるところまで描かれるのだが、ここまでの展開の無駄のなさ、スムーズさ、くすぐり、しかし意外かつ先を期待させる展開、魅力的な人物造型、その全てが詰まっている。

本書の最後を見たら、CLASSYで小説を連載していたということにも驚いた。三浦しをんがファッション誌で…うーむ。

【恋愛】特定の異性に特別の愛情をいだき、高揚した気分で、二人だけで一緒にいたい、精神的な一体感を分かち合いたい、出来るなら肉体的な一体感も得たいと願いながら、常にはかなえられないで、やるせない思いに駆られたり、まれにかなえられて歓喜したりする状態に身を置くこと。(新明解国語辞典)

という引用がある。小説の内容から離れるけど、「やるせない思いに駆られたり、まれにかなえられて」とあるので、片思いは恋愛じゃないのか?と思った。片思いの場合、決してかなえられないものね。

あるいは、馬締が事情を全て喋ってしまうことについて、

馬締はマーライオンのごとく、持てる情報のすべてを流出した。(49頁より引用)


というこの比喩。マーライオンをこんなところで使うとは。世界三大ガッカリのひとつのマーライオンが。

前にも書いたかも知れないし、「まほろ駅前多田便利軒」「風が強く吹いている」などの作品を読んでも、本作でも感じるのは、

三浦しをんは本当に男の気持ちを書くのが巧い女性作家だ。ということ。それは女として男のハートをゲットするのが巧いのとはまた別ではないかと彼女のスットコドッコイなエッセイを読むと思う。三浦しをんは新刊が出たら絶対読む作家であることはやはり変わらないが。

では、また。





舟を編む
三浦しをん
光文社
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初回ドラマレビュー2011年秋その2

2011-10-26 | film, drama and TV

「南極大陸」

既に第二回を観た。画面からあふれ出る昭和の香りが懐かしく良かったのに、二回目ではもうちょっとだけ飽きてしまった。苦難→乗り越えて→また苦難→また乗り越えての繰り返し。男臭いのや、妙に力が入っていることはいいんだけれど。

親子が一緒に観るのに適したドラマだと思う。子供から色んな質問を受けながら、親がそれに答えたり、親が「昔はなー」なんて話をしてみたり。

主役の木村氏がどうしてもっと体を鍛えないのか不思議。元山岳部の役なんだし、タンクトップ姿にもなるんだから、もうちょっと脂肪を落として筋肉をつけると役に合うと思うんだけれど。


「俺の空 刑事編」

ご存知本宮ひろ志のマンガのドラマ化。安田財閥の御曹司、一平がその力を使いながら事件を解決。

どこか「富豪刑事」に似ているが、テイストはだいぶ違う。昔読んだ原作マンガはもうよく覚えていないけれど、こんな雰囲気だったと思う。

松重豊と遠藤憲一という怖い顔ツートップが観られるのは珍しい。


「専業主婦探偵~私はシャドウ」

夫のことだけが人生のいきがいである専業主婦深田恭子が、コスプレして探偵のアルバイトをすることになる、というような話。

これは意外と面白かった。クラクションを鳴らせないので窓から顔出して「ぷっぷー」というシーンには爆笑してしまった。夫の天丼を店ですっ飛ばすシーンも同様。

全体として深田恭子色に染められすぎたドラマなので、彼女をかわいいと思えない人にはつらいドラマになってしまうように思う。


「ビターシュガー」

観たはずなのにほとんど何も覚えていない。


「俺とスターの99日」

韓国の人気女優を日本で警備することになる警備員。二人の恋?の話。

やはりキム・テヒは美しいとしか言いようがない。女性から支持されるのかは不明だが、彼女見たさに毎週観る人は私を含めて少なくないと思う。

少女時代やKARAの持つフェミニンさはAKB48のかわいさとは違う。活躍している韓国の女優さんたちはみなその特殊なフェミニンさを持っていて、それがおとこ心をくすぐる。

キム・テヒが流暢な日本語を喋るのだが、もうちょっと舌足らずの方が好み(私の好みのことばかりですまぬ)台湾の女優リンチーリン(林志玲)とかモデルのヨンアの喋る日本語は私のハートをがっつりとキャッチする。そんなことどうでもいいか。


「11人もいる!」

10人家族+幽霊という大家族のドタバタコメディby宮藤官九郎

仕事のないカメラマンが父、田辺誠一。彼の吹っ切れたようなアホ男ぶりがいい。幽霊の広末涼子の姿が見えてしまう末っ子加藤清史郎のおっぱい好きぶりもいい。

初回からぶっ放してくれた、今クールでは一番のドラマ。


以後、録画してまで観ようと思うのは「11人もいる!」「俺とスターの99日」「蜜の味」「専業主婦探偵」

以上チープなレビューにて失礼。


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あれ?

2011-10-25 | days




冷蔵庫から出した。

あれ?中井貴一がCMでやってたのは… ミキだったような。



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『境遇』湊かなえ

2011-10-24 | books

「境遇」湊かなえ 双葉社 2011年

「告白」「少女」「贖罪」「Nのために」「夜行観覧車」「往復書簡」「花の鎖」と読んできた。今回はどうだろう。

児童擁護施設で育った<A>晴美は新聞記者。以前に語った話を勝手に、親友に勝手に出版された<B>陽子は県議会議員の妻。晴美に教えてもらった話を絵本にしていたら、夫の後援会関係者に無断で公募に応募され、受賞し、ちょっとした有名人になってしまった。自分の本当の親を知りたいという欲求+息子が誘拐された…

このブログでは、小説に関しては面白くなかった作品は基本的に取り上げないようにしている。だったらなぜ?って話なんだけれども、どういうわけか私の琴線に触れるらしく、良くても良くなくてもレビューしてしまう。

うーん。読みにくかった湊かなえ作品の中では一番読みやすかった。面白いか/面白くないかの二者択一なら、面白く「は」ない。ずっと読んできた惰性で読んでいる。それは確か。(だったら読まなければいいのにというご批判は甘んじて受ける)

最終的なオチはこれなんだろう、だからもう読まなくていいだろ?って思わせるのが痛い。頁をめくる手が止まらないというのとは違う。しかし、結果として意外な結末が待っている。それは評価する。あんまり面白くないと思う私がおかしいのだろうか?1400円は高いよ。

最近読んだのだと佐々木譲の「警官の条件」が、おばあちゃんの熟練の料理だったり、宮本輝の「慈雨の音」が、和食の料理人が何年もかけて完成させた料理だったり、江國香織の「金平糖の降るところ」が、いきつけのカフェの定番料理だったりするのと較べると、本作は駄菓子だと思う。もしくはファーストフード、ポテトチップス。

たまにちょっとだけ食べるなら駄菓子って悪くない。その代わり、駄菓子をずっと食べ続ける奴はいないし、もしいたらあまり体にはよくない。湊かなえ作品に感じるのは、その駄菓子感覚なんだろうと思う。

湊かなえ作品が出版されるたびに、書店の平台にどーんと積まれることが出版不況を表す一つの現象なのかなと感じつつ。

では、また。




境遇
湊かなえ
双葉社
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『警官の条件』佐々木譲

2011-10-23 | books

「警官の条件」佐々木譲 新潮社 2011年(初出小説新潮2010年5月号~2011年3月号)

警視庁刑事部刑事四課警部の加賀谷は暴力団幹部と付き合い、高級車に乗り高いスーツを着る。しかし、入手する情報も一流のものだった。そんな警察も風向きが変わり、加賀谷を逮捕することになった。部下の安城は加賀谷の行動を見張るために付けられたのだった。それから時は流れ、加賀谷は三浦半島で釣り船屋を営み、安城は出世して、警部になった。ところが、加賀谷が警察を去ってから、情報網がガタガタになってしまい警察は失点の連続。そんな中、加賀谷に復帰の依頼がある…

うーむ。さすが佐々木譲。北海道警察だけじゃなくて、警視庁を描かせても、抜群の安定感だ。無理な設定も無理な人物もないし、流れもスムーズ。あまりにもスムーズすぎる割りに文字数が多いので、読んでも読んでも進んでいない感じはしなくもないけれど。

読みどころは、安城率いる一課と、五課の対決が一つの軸。薬物を売る組織の抗争がもう一つ。段々真相に迫るミステリー的な展開。それと傲慢なのか懐の深い男の中の男なのかそう簡単に判別させない加賀谷という男の行動。ぶれないというただそれだけでも評価したい男。

全体としてかなり男臭い、警察小説の秀作だった。

では、また。



警官の条件
佐々木譲
新潮社
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江國香織『金平糖の降るところ』と妄想炸裂

2011-10-21 | books

「金平糖の降るところ」江國香織 小学館 2011年(初出きらら2009年月号~2011年月号)

アルゼンチンで生まれ育った、日系の佐和子(=カリーナ)とミカエラの姉妹。二人はいつも男を共有していた。しかし、佐和子は日本の大学に留学しているときに、達哉と出会い結婚する。ミカエラはアルゼンチンで秘書をしながら、19歳の娘アジェレンと暮らす。達也は飲食店を経営、東京で暮らしていたのに佐和子は所沢で暮らし、達也は東京と所沢を往復する。日本とアルゼンチンでそれぞれ幸福そうな姉妹。しかし夫には浮気相手がいるようで、そして娘は母の上司の男性と付き合っている…

いやいやいや。江國香織はやっぱりいい。乾いた、それでいて女性らしい文体、生々しい材料を食べやすく調理する手腕。さすが。何かを表現するのに過度にひねくれていないし(過度だと辟易することもある)だからと言って平均的にまとまっているわけでもない。何と言ったらいいだろう。ストライク・ゾーンの範囲内で高め低めコーナーを丁寧について緩急をうまく使う、熟練したピッチャーと言えばよいか。

風呂の中で読んでいて、突如すごく思った。私の好きになる女性は江國香織が好きだ。ん?いや、私は江國香織を好きになるような女性を好きになるのか。以下、勝手なイメージ&妄想先行

江國香織が好きな女性は、

・穏やかである。
・ヤバクね?てか、ウザくね?などと絶対言わない。
・色白である。
・太ってない。
・韓流に興味がない。
・ジャニーズにも興味はない。
・何か一つの事だけに異常に夢中にならない。
・自分の感情を他人に押し付けない。
・スカートは足が太いから苦手とか言いながら足が太くない。
・汗をあまりかかない。
・美術館や博物館が好きだ。

以上で妄想終了。

江國香織のこんな表現が好きだ。

 体を使う、ただそのことが好きだったし、気の流れや呼吸のコントロールも、理屈ではなく体が実感できることが気に入っていた。準備体操から瞑想に至る一つずつのプロセスが、確実に細胞に酸素をいきわたらせるところも。セックスの代わりになるの。友人にヨガの魅力を訊かれると、ミカエルはそうこたえる。(35頁より引用)

「あ、ごめん、マテ茶買うの忘れてた」
妻が、毎朝あの青畳くさい苦いお茶をのむことを、達哉は知っている。前回妻が泊まりに来たときに、次回までに買っておくと約束したのだった。
「いいのよ。紅茶も好きだから」
佐和子はにっこりして言ったが、その笑みはどこか淋しそうだった。
「ごめん!ごめんごめんごめん」
達哉は大袈裟に-しかし心から-謝った。経験上、女にとって「昔と違う」ということが、一大事であるらしいことを知っていた。独身のころ、達哉は自分のアパートに、当時手に入りにくかったその変な茶葉を、輸入元を調べて取り寄せて、つねに用意していたのだ。(37頁より引用)



そうそうそう。女にとって、前はああだったのに、今はこうなのね、というのがすごく嫌なことが、今とてもよく分かる。ほんとそう。でも女だけじゃなくて、男?いや私にとっても同じ。

刹那刹那、与えることが出来る最大限の愛を最大限尽くせるだけ尽くすのもいいけど、それっていつか出来なくなることだと思う。その愛を受ける方からすると、出来なくなったとき愛が減ったと思う。そう思われたくないなら、ある程度半永久的に与え続けることのできる愛を、あなたの相手に注ぐといい。それこそがLOSですよ。LOHASじゃなくて。Love Of Sustainabilityですよ。

えっと、なにえらそーに語っているのだろうか。おらのせいじゃない、江國香織のせいだ。

では、また。



金米糖の降るところ
江國香織
小学館
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『心に雹の降りしきる』香納諒一

2011-10-19 | books

「心に雹の降りしきる」香納諒一 双葉社 2011年(初出小説推理2009年12月号~2011年7月号)

刑事のおれはやる気がない。金のためなら悪い事もする。7年前に娘が行方不明になった社長からは、偽の情報で金をむしりとった。その娘の目撃情報がまたあった。これはまた金づるになるだろうか。目撃した怪しい男を調べてゆくと、2週間前に死亡した男につながった。調べていくと段々と段々と大物につながってゆく。ダメ男を描く新しいハードボイルド。

ふむふむ。ラストでそうきたか。意外などんでん返しというわけでないけれど、なかなか読ませる。

悪徳刑事だった「おれ」が、どういうわけか事件の真相を追うわけだが、その彼の内面の展開のしていき方が自然で、流れに無理がない。

Wikipediaによると、ハードボイルドとは「感傷や恐怖などの感情に流されない、冷酷非情、精神的肉体的に強靭、妥協しないなどの人間の性格を表す言葉である」「ミステリの分野のうち、従来あった思索型の探偵に対して、行動的でハードボイルドな性格の探偵を登場させ、そういった探偵役の行動を描くことを主眼とした作風を表す用語として定着した」だそうだ。

私は、軸がぶれず、自分の利益追求が先に来なくて、長いものに巻かれない主人公の生き様を中心とした物語、と解釈している。本作の主人公の軸はブレているが、元来自分の利益のためにしか行動しなかったのが、段々とハードボイルドないい奴へと変身してゆく。そういう意味でハードボイルド小説である。

悪人が善に目覚めてしまったら、どうなるか、そんな話を読みたい方にオススメしておく。

では、また。



心に雹の降りしきる
香納諒一
双葉社
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NHKのドラマ「ラスト・マネー ~愛の値段」

2011-10-18 | film, drama and TV

生命保険会社が舞台のこのドラマ、今日を含めてあと2回。

婚約者の死亡保険金を5年前、3年前に合計5千万円受け取っている魔性の女。今度は心中すると見せかけ、自分だけ助かる。勿論保険金を請求して来る。さて、この彼女の罪を明らかにできるのだろうか。

さすがNHK。アリコとかアフラックとか日本生命、住友生命なんかがスポンサーになっている民放ではちょっと放送できない内容だと思う。

最近NHKのドラマが面白くなっているのは、この辺にあるのかも知れない。「セカンド・バージン」は観てないから知らないけど、「チェイス ~国税査察官」とか、「外事警察」とか、とても面白かった。

全然関係ないけど、このドラマで部長(確か部長だった)役をやっている清水昭博という役者さんは、我が青春のバイブル「ゆうひが丘の総理大臣」に生徒役で出てた。いや、ほんとどうでもいい情報だけど。

それと、最近タイトルの中に「~」が入っているのが多いがちょっと気になる。

では、また。


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瞬間

2011-10-16 | travel

ハワイ島の南の端はサウス・ポイントと言う。

アメリカ合衆国の最南端だそうだ。





ここに設置されている飛び込み台近辺で、ふらふらしている者たち数人。

私を含めてやじ馬たちが、いけーとびこめーとはやし立てる。

すると飛び込んでくれた。

デジタル一眼レフ、オートで撮ったのに意外と写真が撮れたので満足。連続でご紹介。





















飛び込んだ後はよじ登らないといけない。





以上、夏休みの思い出日記。

では、また。


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初回ドラマレビュー2011年秋その1

2011-10-16 | film, drama and TV

以下初回観たどーでもいい印象を。

「HUNTER~その女たち、賞金稼ぎ」

火曜22時フジテレビ系列。元CA(スチュワーデスという言葉がなぜこの言葉に変わっただろうか?)の米倉涼子が一度見たことを忘れない記憶力を利用してバウンティ・ハンター(賞金稼ぎ)になるという話。

うーん。想像していたよりずっとシリアスさがなくて、お気楽な感じ。ただ映像がテレビの画面に流れている分にはいいけど、わざわざ録画してこれを観ながら夕飯を食べようというほどでは… マンガ週刊誌、例えばビッグコミックオリジナルの中に一つこんな作品があるならいいかなという印象。


「家政婦のミタ」

水曜22時日本テレビ系列。

冷たい印象の家政婦松嶋菜々子が、若いお母さんをなくして壊れそうな家族を救う(?)という話。初回は末っ子の幼稚園に行く娘が、母を無くしたという現実に向き合えない。

うーむ。それほど心温まるわけでもなく、それほど笑えるわけでもなく、それほど考えさせるでもなく、だからと言ってそれほど観ているのが嫌でもない、そんなドラマ。


「蜜の味~A Taste Of Honey」

木曜22時フジテレビ系列。父親の弟と言っても歳が近く、お兄ちゃんのように感じるARATAは東京の大学の医学部に行ってしまった。お兄ちゃんのことが大好きな榮倉奈々は頑張ってお兄ちゃんと同じ大学の医学部に無事合格した。夢にまで見たお兄ちゃんとの生活。上京してみたら、お兄ちゃんにはキレイな彼女、菅野美穂がいた…

ドロドロ三角関係by大石静。というのに興味を持っただけじゃなく、個人的に榮倉奈々は好きなので(と言うのが若干恥ずかしいのはなぜだろう?)観た。そんなに悪くないけど、もっとドロドロを加速させて欲しい。医学部の同級生の頼さんが、お?ちょっとこの子いいなと思ったら、木村文乃という女優さんで、ちふれのCMに出ていた。


今後放送のあるのは、木村さんが主役でなければいいなと思わないでもない「南極大陸」、キム・テヒが出ているので初回は観る「僕とスターの99日」、最近キレイな深田恭子の「専業主婦探偵~私はシャドウ」、クドカンの「11人もいる!」あたりは観ると思う。「ランナウェイ」「DOCTORS」「俺の空 刑事編」「謎解きはディナーのあとで」は観ないかな。

以上、読んでも毒にも薬にもならないレビューになってしまった。失礼。

読んでつまらなかった本について必ずしもレビューしないんだけど、ドラマについてはなぜかレビューしてしまう。失礼。

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映画「オーケストラ!」

2011-10-14 | film, drama and TV

1980年ユダヤ人排斥によりボリショイをクビになった多くの楽団員たち。天才と言われた指揮者アンドレイ・フィリポフは今はボリショイで清掃員をしている。ボリショイに来たファックスはパリのシャトレ劇場からの公演の依頼。そのファックスを持ち帰って、考えたのは何とシャトレ劇場で自分が指揮者として公演すること。楽団員たちを集め、シャトレと交渉する。ソリストとして指名したのは若手人気ヴァイオリニストのアン・マリー・ジャケ。アンドレイと彼女の古い結びつきも絡め、ストーリーは…ドタバタの中に温かみを含みつつ…

いやいや。もっとシリアスなものかと思っていたのに、何度も笑ってしまった。実話ではないようだ。

テイストとしては「フルモンティ」や「ブラス!」などに近い。英国の深刻な状況を笑いに変える、ハリウッド映画にはない独特のシニカルなユーモアたっぷりの映画。私はこういう映画が大好きで、この作品も充分楽しませてもらった。

マフィアや、せこい商売やら、ソ連崩壊後のロシアのだいぶ皮肉ったシーンが多い。フランスから見た現代ロシアが少し透けて見える感じがした。

ボリショイのマネージャーだったガヴリーロフがシャトレ座に電話するシーン。たぶん物凄く怪しいフランス語を駆使しているかと思う。フランス人は爆笑するのだろう。この時、ああフランス語もう少しちゃんと勉強しておけばよかった、と思った、というのは嘘で、怪しいということだけはちゃんと分かった。

原題はLe Concertなのに邦題はオーケストラ。あ、言い忘れたけど本作はフランス映画。コンサートがなぜオーケストラに変わったのかなと思いつつ。

では、また。





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Happinet(SB)(D)
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