青砥35年ぶりに、昔好きだった須藤に会う、病院で。そして、お互いを元気付けるためにちょこちょこと会うようになった。須藤は病院の売店で、青砥は印刷会社で働く。二人の淡い恋は実るのか・・・
ずばり今年ベスト。冒頭、須藤亡くなっていることが分かる。ので、結末は分かっているはずなのに、目頭が熱くなってしまった。
しかしお手軽な感動を生むとか悲しい出来事が描写されるのではなく、かなりリアルに中高年の想いが描かれる。その細かさに、ニヤッとしたり、ハッとしたり、しみじみとそーなんだよーと呟いたり。
「おととい、わたし言ったでしょ。『青砥を元気づけようとしたら、たいへん健全な気持ちになった』って。あれは青砥の不安をダシにして、いいきもちになったわけではないんだ。困っているだれかの気を引きたくて、どうしたらいいのか、自分になにができるのか、つい、ちょっと本気で考えてしまったのが健全だと思ったんだ」
ウミちゃんは、きっと、須藤が死ぬまで答え合わせをするんだろうな。特に悪気もなく。
各章のタイトルも巧い。
第五章は「痛恨だなぁ」 六章は「日本一気の毒なヤツを見るような目で見るなよ」 七章は「それ言っちゃあかんやつ」 九章は「合わせる母がないんだよ」 これを見るだけでもどんな話なのか期待が膨らむ。表現がものすごく巧みで、一気にこの作者のことが好きになってしまった。
これは中高年必読書。40を過ぎた人は予防接種や人間ドックのように、必ず受診することを、強くオススメしたい。
今日の一曲
ドラマ「グランメゾン東京」の主題歌、山下達郎で、「RECIPE (レシピ )」
では、また。