頭の中は魑魅魍魎

いつの間にやらブックレビューばかり

『おれのおばさん』佐川光晴

2014-09-06 | books
父親が顧客の金を使い込んで愛人に貢いだ。それがバレて逮捕、有罪になった。母親は3500万円を返すために、住み込みの介護の仕事を始めた。母の姉は札幌で児童養護施設、魴鮄舎を運営している。中二のぼくはそこに住むことになった。おばは豪快な人。北大の医学部に受かったのに、演劇にのめり込み中退した。そんなおばさんの人柄、人情、施設の運営、様々なトラブル、奄美での合宿、恋、学校の勉強。成長物語の王道を行く小説。

本の雑誌の9月号で北上次郎が褒めていたのが「おれたちの故郷」 この人の薦める小説の全てが私好みではないけれど、「男の子」+「成長」だったら100パーセント私の好み。そっちは「おれのおばさん」シリーズ(そんなシリーズあるのか知らなかった)の第四作だそうなので、順番原理主義者の私は、第一作から読むことにした。それがこれ。

なんだよー。大好きだー。思わず叫んでしまった。

想像以上に私の好物だった。(タイトルの若干のエロティシズムを感じないわけでなかったが、そっち方面は全くなかった)

東京の名門中学に入学できたのに、そこをやめなければならず、ずっとレベルの低い中学に行かなければならない気持ち、父に対する怒り、おばさんに対するリスペクトなど、主人公の思いが、そのままそのまんま、読んだそばから滲みこんでくる。信念を曲げないおばさんもすごくいい。

ドラマ「若者たち 2014」が扱っている世界とそんなに変わらない。あっちの方が役者と役柄が合わず(長澤まさみがその役?瑛太が?妻夫木が?)、ゆえに役者は単に記号だと考えないと楽しめないのと較べると、こっちは作られた役者の顔を見ないで自分の想像でいけるので、その分楽に楽しめる。

おれのおばさん (集英社文庫)

※続編「おれたちの青空」のレビューはこっち

今日の一曲

ぼくのおばさん。おばさんを性転換させて、ぼくのおじさん。ぼくの好きなおじさん。と歌う、RCサクセションで「僕の好きな先生」 



では、また。

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