頭の中は魑魅魍魎

いつの間にやらブックレビューばかり

店名にツッコんでください133

2016-06-30 | laugh or let me die
コメント (6)

『アックスマンのジャズ』レイ・セレスティン

2016-06-28 | books
実在の未解決事件がもとになっている。1919年、ニューオーリンズを震撼させる事件が続く。斧でずたずたに殺されるのだ。「アックスマン」と名乗る人物から新聞に手紙が届く。次の火曜日にジャズが演奏されている家にいる者は襲わない。それ以外の者は殺される可能性があると予告した。事件を追いかける三者。一人は担当の警部補マイクル・タルボット。昔先輩の刑事を有罪に追い込む証言をしたせいで、警察内でいまだに人望がない。二人目はアイダ・デイヴィス。ピンカートン探偵社の事務員。親友はルイス・アームストロング(有名なジャズコロネット奏者ルイ・アームストロングの若かりし頃がモデル) 彼女は事務員の仕事には不満で、現場に出してもらうために、アックスマン事件を解決しようとしている。三人目はルカ・ダンドレア。マイクルに刑務所送りにされた元刑事。5年ぶりにシャバに戻って来た。アックスマン=イタリアマフィアだと思う人が多く、迷惑しているマフィアから、アックスマン事件の容疑者を探すように命じられた。この三人の捜査がそれぞれにあぶりだす真実は…

最近のポケミスは厚くて高いのが多い。これも477頁、1800円。ポケミスで1800円とは!しかし、それだけのことはあった。

第一次世界大戦が終わったばかり。売春宿は禁止されたばかり、禁酒法がもうすぐ施行される直前。黒人に対する差別はきつい。そしてフランス文化とアメリカ文化が入り混じったニュー・オーリンズという特殊な街。この辺のバックグラウンドがほどよくストーリーの中に入って来て、それがまたいい。

そして本筋。連続殺人の容疑者とその動機。ちょっとずつ明らかになっていく様はスリリング。単なる猟奇殺人ではなかった。

アックスマンのジャズ (ハヤカワ・ポケット・ミステリ)

今日の一曲

Loui Armstorongで"What A Wonderful World"




では、また。
コメント

『沈黙の森』C.J.ボックス

2016-06-26 | books
ワイオミング州の新人猟区管理官のジョー・ピケットが主人公。奥さんのメアリーベス、娘のシェリダン7歳とルーシー3歳の4人で暮らす。許可証なしで釣りをしたワイオミング州知事を逮捕してしまったりして、真面目なジョー。禁猟の時期にシカ撃ちをしていたアウトフィッター(アウトドアレジャーのガイド)オート・キーリーに対して違反切符を切ろうとしたら、銃が奪われ危ない思いもした。そして事件は始まる。そのキーリーの遺体がジョーの家の裏で見つかった。捜索の結果、キーリーと一緒に狩りをしていた二人も遺体で見つかる。同時にまた、見てはいけないものを見たシェリダンが狙われる…

これがデビュー作。シリーズの第8作「ゼロ以下の死」の評判がいいので、だったら最初から読んでみようかと読んでみたら、大当たり。ワイオミングの自然。ジョーの人柄。ストーリー。その全てがいい。なんでこんないい小説を読んでなかったのだろう。

狩猟管理官とか保安官の選挙とか、知らない世界を知るのも楽しい。そしてそして、なんといっても、シェリダン。何者かに脅される彼女がどう事態と対処していくのか。本書の影の主人公。かわいいシェリダンを応援しない人はいないだろう。

給料が安くて、生活に苦労させられる美人妻メアリーベスも良かった。

これからちょこちょここのシリーズを読んでいこうと思う。

沈黙の森 (講談社文庫)

今日の一曲

シェリダンから。Sheridan Smithで"Anyone Who Had A Heart"



では、また。
コメント

『黒い迷宮 ルーシー・ブラックマン事件15年目の真相』リチャード・ロイド・パリー

2016-06-24 | books
2000年、英国航空の客室乗務員をしていたルーシー・ブラックマンは仕事をやめ、日本にやって来た。21歳の彼女は六本木でホステスを始めた。同伴出勤と指名のノルマがきつい。借金もあるので生活は大変だった。そして行方不明になった。同居している友達が通報するが、警察はまともに扱ってくれない。英国からやって来た両親がマスメディアにアピールし始めた。ちょうどサミットがあってトニー・ブレア首相が来ていたので会って日本の警察に捜査することを頼めた。ブレア首相が森首相に話してから、警察の捜査が本格的に始まった。

しかし手がかりがない。手づまりな捜査。

しかし、自らが、逗子マリーナに連れ込まれ、薬を飲まされレイプされたと警察で証言した外国人女性が、ルーシーの事件の容疑者と同じだと警察に伝えたにもかかわらず、警察は動かない。

そして捜査線上に浮かぶ、織原城二という謎の男。どんなに調べても、過去がよく分からない。彼が逮捕されてから、裁判が始まり、結審する。その過程を「ザ・タイムズ」の東京支局長が描くノンフィクション…

ううむ。面白すぎて朝までずっと読んでしまった。

単に事件を追うだけじゃなく、被害者がどういう生い立ちなのか、父親と母親の関係や金銭的な問題、英国人が日本でホステスをやるとはどういうことなのかなど、かなり描写は詳しい。捜査(の失敗)についてもかなり詳しい。

断言できるわけじゃないけれど、警察は遺体がある場所について知っていた(ようだ) でも、容疑者に「あそこに埋めました」と自供させられれば、物的証拠がなくても(なかったのだ)、有罪にできるから、自供するのを待って、時間が長く経過してしまった(ようだ) その結果、物的証拠が劣化してしまった(可能性がある)

日常生活での警察の仕事ぶりは実に見事だ。交通整理、高齢者の手助け、泥酔者は乱暴者の取り締まりなどにおいて、彼らはその能力をいかんなく発揮する。より重大な犯罪行為になると、一般的な日本人犯罪者から自白を引き出すことにかけては、きわめて優れているにちがいない。しかし、常識を超えた犯罪に対してはあまりに経験が乏しすぎた。日本の警察は融通が利かず、想像力に欠け、偏見に満ち、官僚的で、前時代的だ。ルーシー・ブラックマン事件やほかの多くの事件への警察の取り組みを見れば、日本の犯罪率の低さの本当の理由が、警察の管理能力の起因するものではなく、国民のおかげであることはあまりのも明白だ。警察の能力が高いのではなく、警察の能力が低いのにもかかわらず、日本人は常に法を守り、お互いを敬い、暴力を嫌うのだ。

ううむ。確かにそうかも知れない。

極上のサスペンスを読むようなドキドキ感と、秀逸な日本論がそこにはあった。

黒い迷宮: ルーシー・ブラックマン事件15年目の真実

今日の一曲

本とは無関係。Adeleで"Send My Love"



では、また。
コメント

『マルセイユ・ルーレット』本城雅人

2016-06-22 | books
元サッカー選手で、ユーロポールに勤める村野隼介。ヨーロッパで行われている八百長について調査している。イングランド3部でプレーしているのは水野弘臣。チームメイトから八百長に誘われた。ヨーロッパサッカー界を汚染する八百長、賭け、マフィア…

これは収穫。そんなにサッカーには詳しくないのにさらっと読めた。どうやってディフェンスの裏を書くのか、体の動きを文章で説明されて、よく分かった。サッカー小説は「アリ」なんだとよく分かった。

ヨーロッパのあちこちのある「ベッティング」屋。ペッティングじゃないよ。そっちもいいけど。英国だとLadbrokesとかWilliam Hillとか、ありとあらゆるものを賭けの対象にする業者。ウィリアム王子の息子の名前も賭けの対象になっていた。サッカーでも単に勝者だけでなく、後半36分から37分の間にボールがピッチの外に出るかどうかというような細かいことまで賭けの対象になる(とこの本に書いてあった)

八百長は、賭けがなくなればなくなるものなのだろう。LadbrokesとWilliam Hillのサイトを覗いてみたら、ギャンブル好きなら、すぐに賭けたくなるような巧妙な雰囲気だった。ギャンブルのような小悪(小さい?)はある程度必要悪だとしなければいけないのだろうか。ギャンブルはしないのでよく分からない。

マルセイユ・ルーレット

今日の一曲

サッカー映画「GOAL!」で使われた、Oasisで"Morning Glory"



では、また。
コメント

『けむたい後輩』柚木麻子

2016-06-20 | books
横浜は山手の聖フェリシモ女学院大学に入学してきた真美子。たまたま知り合えた先輩は、14歳で作家デビューした、昔から憧れていた栞子だった。栞子の父親は有名な翻訳家。煙草をスパスパ吸い、大学教授とずっと付き合っている。真美子は栞子に夢中になる。栞子に呼ばれればすぐ行くようになる。そんな真美子のことが心配でならないのは、幼馴染の美里。真美子と同じ寮に住んでいる。真美子は病弱なのだ。人を振り回し、チヤホヤされることに夢中の栞子。女子アナを目指している美里。栞子は美里を嫌い、美里は栞子を嫌う。この二人の視線から描く、真美子と、周辺の人たち…

おお。おお。おお。(なぜか三連発) これは面白かった。ものすごく面白かった。

フェリシモはどう考えてもフェリスのことを指しているのだろうけれども、まあそれはいいとして。キャラクターが立っている。天然記念物のような真美子。映像化するなら綾瀬はるかだろうか。栞子は(古いけれど)石原真理子(真理だっけか?)の若い頃がぴったり。美里は人の目を惹く程度に美人であれば誰でもいいかな。

ストーリーがどう展開していくか、後半ドキドキしながら読んでしまう。

それ以外にも考えさせられることが多い。主役は真美子なんだけれど、特に栞子については。

例えば、30代、40代ぐらいの女性で、「あたしの人生こんなはずじゃなかった」「もっとあたしはできる女だったはずなのに」と思っている人は、ぜひ読んで欲しい。あなたは、もしかすると栞子なのかも知れない。

それとタイトルの「けむたい後輩」 煙草を吸ってけむたいのは栞子のはず。それが後輩の真美子の方がけむたいとはどういうことなのか。最後まで読めば納得。このラストもすごくいい。

また各章が「真美子、とりこになる(一年生編)」はどういうことか読めばすぐに分かるけれど、「真美子、とりのこされる(二年生編)」「真美子、トリコロール(三年生編)」「真美子、鳥になる(四年生編)」、どういう意味だか全然分からなくなる。本文を読んでもすぐには分からない。この洒落のきいたタイトルも好きだ。

けむたい後輩

今日の一曲

最近聴きたくなって、スマホでリピートしている曲。he=栞子、she=真美子として解釈できなくもない。The Doobie Brothersで"What A Fool Believes"



歌詞の内容についてここ数日考えているのだけれど、よく分からない。
コメント

『マプチェの女』カリル・フェレ

2016-06-19 | books
アルゼンチン。マプチェ族の女ジャナの仲良くしているゲイの親友パウラが殺された。誰が。なぜ。探偵のルベンは失踪した女性の事件を調べていた。ジャナとルベンの捜索が交差するとき、アルゼンチンの現代史の闇が浮かび上がる…

ううむ。長い。文庫で654頁。でも面白い。

アルゼンチンの軍事政権下で行われていたおぞまじいこと。これがこの小説最大のキモ。それが何であるかは読めばすぐに分かるのだけれど、おぞましいことをしていた罪人にどうお仕置きするか。それがとってもスリリング。

強烈な社会派ミステリーであり、また冒険小説でもあった。

マプチェの女 (ハヤカワ・ミステリ文庫)

今日の一曲

アルゼンチンと言えばやはり、アンドリュー・ロイド・ウェーバーのミュージカル「エビータ」 マドンナ以外にもカバーしている人は多く、Youtubeでも沢山見つかった。その中で一番だと思った、Suzan Erensで"Don't Cry For Me Argentina"



では、また。
コメント

店名にツッコんでください132

2016-06-18 | laugh or let me die
コメント (4)

『真鍮の評決 リンカーン弁護士』マイクル・コナリー

2016-06-16 | books
マイクル・コナリーのシリーズで一番多い「ハリー・ボッシュ」刑事シリーズと、弁護士の「ミッキー・ハラー」シリーズが合体したのが本作。

前作「リンカーン弁護士」の後、1年も弁護士業から離れていたハラーのところへ吉報と凶報が。吉報は金になる事件が転がり込んできたこと。凶報は、知り合いの弁護士ジェリー・ヴィンセントが殺されたこと。ヴィンセントは契約書に、自分が死んだ場合はハラーに業務を委託するとしていたのだ。しかし、ヴィンセントのパソコンは盗まれており、「どんな事件を担当していたのか知るのも大変。事件の中で最も大きいのは、映画界の大物ウォルター・エリオットが妻と愛人を殺したとされる事件。これは金になる。エリオットは、自宅で射殺された妻と愛人を見つけ警察に通報して来た。しかし、検査の結果、銃を発射した跡が手から発見されている。アリバイもないし、動機は十分。どうやって弁護していけばよいのだろうか。ボッシュ刑事はヴィンセント殺害事件を調べている。その過程でハラーとぶつかる。そしてエリオットは妙に自信ありげ。自分が無罪になる自信があるようだ。なぜ?なぜヴィンセントは殺されたのだ…

やっぱり、やっぱり。マイクル・コナリーはいい。実にいい。ひどくいい。

まさかそういうことだったかと真相が分かる瞬間。何事にも代えがたい快感が突き抜ける。

謎が解かれていく過程も非常にいい。弁護士と検事の関係とか、陪審員選定の方法、調査員の行動など、ストーリーを理解するのに必要十分なくらい細かいことを教えてくれる。これも面白かった。

マイクル・コナリーは結構読んでしまったので、残りが少なくなってきてしまった。残っているのは、「スケアクロウ」「ナイン・ドラゴンズ」「判決破棄 リンカーン弁護士」「証言拒否 リンカーン弁護士」だけ。すぐに読みたいけれど、もったいないから、やはりゆっくり読もう。

真鍮の評決 リンカーン弁護士 (上) (講談社文庫)真鍮の評決 リンカーン弁護士 (下) (講談社文庫)

今日の一曲

作中に出て来た、ジャズ・ミュージシャン。Frank Morganで"The Nearness of You"



では、また。
コメント

『半席』青山文平

2016-06-15 | books
連作短編集。最初の表題作「半席」 どこかで読んだことがあるなあと思いつつ、でもそんなはずないよなあと思いつつ、死最終頁を見たら、既に読んだ単行本「約定」に初出してた。他の単行本に入った短編を、別の短編集に入れる?奇異な感じがしたけれど、次を読んだら分かった。これは「半席」の片岡直人を主人公にした連作シリーズだったのだ。

江戸時代、目付の下につく徒目付の直人、。事件の容疑者が「なぜ」殺したかを言わない場合、頼まれて「なぜ」を探し出す。

義理、人情、プライド。様々なものが折り重なる。そして江戸時代のかなりリアルな小役人の生活。知らなかった話も多い。

ミステリー+江戸蘊蓄 といった感じ。悪くなかった。

半席

今日の一曲

フジテレビドラマ「ラブソング」のヒロイン。藤原さくらで、CDが出たばかりの"SOUP"



視聴率がふるわないらしい。知り合いが「福山が役に合わないんだよな」と言っていた。このドラマは福山を観るのではなく、藤原さくらの成長物語として観ると結構楽しめると思う。では、また。
コメント

『国士舘物語』栗山圭介

2016-06-13 | books
80年代に国士舘大学体育学科という魔窟に入学した主人公、江口孝介。地獄の寮生活。先輩のしごき、喧嘩、酒。高校では陸上の短距離が専門で、「三重のホープ」と新聞に書かれたこともあったけれど、すっかりやる気は失せてしまった。体育学科は運動部に入らねばならないので陸上部に席は置いているけれど、実質幽霊部員。幽霊部員が卒業のためにくぐらねばならない合宿。菅平のスキー合宿では、登りのリフトが使えない。板を担いで登らねばならない。そんな血と汗と涙の怒涛の日々は…

こういう話が実は好物なのだ。非常にバカバカしいことを真剣にやる「バカ青春」物語。

加えて、(たぶん作者が実際に体験したのであろう)国士舘の実態がめちゃめちゃ面白い。

入学式には軍艦マーチが流れるなか、白いオープンカーに乗って登場するのが総長だと言うのだ。(ほんまかいな。)あるいはクラス対抗の学部内競技会でものすごく真剣に闘う様。すべてが、過剰で暑苦しく、でも(読むほうは)楽しい。

秘境への旅のような、自分では絶対にやらないけれど、体験談はぜひ読みたい、というような話だった。高野秀行の「ワセダ三畳青春記」と同様に、大学はどこに行こうかとか、そもそも大学に行くべきなのかを考えるような時期に読んでみると、それまでの固定観念がすべて吹っ飛ぶのでオススメかと。
 

 
 

今日の一曲

本とは無関係。Charlie Puthで"One Call Away"



では、また。
コメント

『市立ノアの方舟』佐藤青南

2016-06-11 | books
北関東の「野亜」市。人口も観光客も減少気味。野亜市立動物園、ピーク時は年間30万人の入園者があったが、現在では7万人を切っている。赤字続きの施設。そこへ別の部署から園長が左遷されてきた。数年に一度園長は代わるが、みな素人でしかもやる気がなかった。今回も同じだろうと職員は考えていたが、どうやら今回は違うようだ。新任の磯貝園長が素人なりに考えに考え出す計画は当たるのか。常同行動(同じ場所を行ったり来たりする)を繰り返すホッキョクグマ。ストレスが溜まっているからなのだ。職員が知恵をしぼってエサの出し方や遊び道具を考えても、頭がいいので、すぐに飽きてしまうのだ。やはりストレスのたまっているアジアゾウ。彼らのストレスを解消してあげることはできるのだろうか…

一見、成功したモデルケースを学ぶビジネス小説の匂いがするのだが、違う。そんなしゃらくさい小説じゃない。

動物好きの人ならたまらない、動物の不思議に満ち溢れている動物園物語だった。

「環境エンリッチメント」という言葉が出て来た。動物の置かれている環境を、なるべく本能を発揮できるよう整えてあげて、精神的にも肉体的にも豊かにしてあげようという取り組みだそうだ。動物園の動物たちにどういうストレスがあるのか、考えたこともなかった。そもそも動物園とは何のためにあるのか。人間のエンターテイメントだと考えれば、かわいいところだけ見せればいいということになる。たとえストレスにさらされていても、観客に分からなければよいということに。果たしてそうなのだろうか。たまに動物園に行く者の一人として、ずっしりと考えさせられた。

さらに、磯貝園長は、職員へのエンリッチメントを考える。そうか人間に対するエンリッチメントか。なるほど。会社なら、従業員に対するエンリッチメント、家庭なら、家族に対するエンリッチメント。個人なら、相手とか、自分に対するエンリッチメントはなんなのだろうか、なんて思ったりした。

いつだったか、クアラルンプールの空港のあちこちにIndulge Yourselfと書かれたポスターが貼られていた。どういう意味なのかと思ったのだが、たぶん「自分を甘やかす」=「ぜいたくする」=「デューティーフリーでたくさん買い物してね」という意味だったんだろう。

自分をindulgeするのとenrichするのと。似ているようでどこかが違う。

市立ノアの方舟

今日の一曲

動物園と言えば、ZOOで"Choo Choo TRAIN"



では、また。
コメント

『奥さまはクレイジー・フルーツ』柚木麻子

2016-06-09 | books
30歳、初美はアクセサリー・デザイナー。夫は女性誌の編集長、35歳。二人はセックスレス。初美はしたくて仕方がない。でも、夫はなんだかんだ言い訳して、結局してくれない。同じセックスレス仲間の羽生ちゃん(男性)と飲みに行って、一緒に愚痴をこぼす。初美の妄想は暴走して、羽生ちゃんや義弟らとあんなこと、こんなことが脳内で炸裂する…

セックスレス女性の脳の中はこんな風なのかって、ちょっと意外な部分がのぞける。そんなにしたいのか。どこまでがリアルなことなのか、よく分からないけれど。

性のリアリティは置いておくにしても、コメディとして十分に面白い。

奥様はクレイジーフルーツ

今日の一曲

本とは関係なく。先日テレビで、園子音監督が女優二階堂ふみに対談で紹介していた曲。ビジュアルも音楽も強烈なインパクト。Alabama Shakesで"Don't Wanna Fight"



では、また。
コメント

店名にツッコんでください131

2016-06-07 | laugh or let me die
コメント (6)

『ポイズンドーター、ホーリーマザー』湊かなえ

2016-06-05 | books
妊婦は被害者の殺人事件。被害者の姉が振り返る。母は私には厳しかったが、妹には甘かった。結婚して妹は家を出たが、出産のために実家に戻って来た。気が合わない妹…「マイディアレスト」  テレビの脚本新人賞の最優秀賞がもうちょっとでとれなかった、漣涼香。最優秀賞の大豆生田薫子の作品はテレビドラマ化が決まった。大豆生田が憎い、憎い…「ベストフレンド」  家電量販店での無差別通り魔殺人。容疑者として逮捕された黒田正幸のことを私は覚えている。親に虐待され、食べ物を与えられていなかった彼に、食べ物をあげていたのは私だった。私があんなことをしなければ、彼は死に、結果、多くの人が犠牲になることはなかったはずだが…「罪深き女」  優しい子に育てられた、明日実がなぜ、バーベキュー場で男性を刺殺したのか…「優しい人」  東京で女優をしている弓香。地元の同窓会に誘われるが、断る。母に会いたくないからだ。昔から自分を拘束し、あれこれ指示する母。会いたくない。キスシーンでもやろうものなら、狂ったように電話をかけてくる。おかげで仕事の幅が狭くなる。そして弓香は母に復讐する…「ポイズンドーター」  その続編が…「ホーリーマザー」

最後の二編はすごく面白い。「毒親」という最近使われる言葉。社会現象として、特に母と娘の関係で言われるけれど、本当に「よくある」ことなのだろうか、本当は母娘はどういう関係なのかは、個別に全然違う、なんてことを思わせてくれる。

「ポイズン」のラストから、「ホーリー」へのつながりが抜群にいい。意外な展開。流石。この二つだけ、立ち読みしてもいいのではないか、いやそういうことは言ってはいけないか。

ポイズンドーター・ホーリーマザー

今日の一曲

ポイズン。Poisonで"Talk Dirty To Me"



では、また。
コメント