頭の中は魑魅魍魎

いつの間にやらブックレビューばかり

『ヘンな日本美術史』山口晃

2013-11-30 | books
現役の画家が教えてくれる日本の美術の話。

「ヘン」というタイトルから、アウトサイダーな感じの奇妙な絵ばかり取り上げているか、もしくは日本の美術の歴史がヘンなのでそれを取り上げている本かと思っていたら全然違った。

だからと言って一般的な日本美術史というわけでもなくて、著者が気に入った/気になった日本美術について、優しく易しく語りかけてくれる本だった。すごく、すごーく面白かった。(面白かったという表現は子どものようで、避けられれば避けたいのだけれど、この本はまさに「面白い」が一番あたっているような気が)

出てくるのは、鳥獣戯画や洛中洛外図、岩佐又兵衛、雪舟、河鍋暁斎などなど。

聞いたことのある絵、観たことのある絵もあるし、全く知らない絵もある。(私は日本画も日本史にも疎いので、このブログ読者の方のほうがもっと詳しいかもしれない。だとすれが、えらそーに語ると釈迦に説法になってしまう。くわばらくわばら。)(だからと言って世界史や外国の絵に詳しいってわけでもないってことを付け加えさせていただく。蛇足、蛇足)(蛇に足をつけたら、蜥蜴に変身できるから無駄ではないのではないか?)

戻ると、子供向けに書かれているわけでもなく、詳しい人向けに書かれているわけでもなく、その中間的な塩梅がすごく良かった。

技法についてかなり詳しく解説してくれるのも、なるほどー、と思うばかり。さらに、美術の事に絡め、さりげなく現代社会や美術界に批判(?)するスマートなやり方もかっこいい。

西洋画に求められる緻密さがない日本画に対して少しダメじゃないかという偏見を持っていたのだけれど、実は日本画には少しずらすという美学があるということが分かって、見直してしまった。見たモノを描く、見ないと描けないという写実的な絵が良い絵だと思っていたけれど、そんなことは全然ないという事を読み、ちょっと後頭部に蹴りをもらった感じ。現役の画家らしい内容にもふむふむと読み入ってしまう。目鼻口は画家は力と時間をかけて描くけれど、耳には力を抜いてしまうので、画家の本質がここに出る。なるほど。それは美術以外にも言えることかも。

美術は観るだけじゃなく、やっぱり読むのも楽しい。

近代日本の美術は、美術にとどまらない、思想や経済、政治の分野でも言える問題を抱えている。それは、「西洋+日本」÷2をずっと割り切れていないということ。割れないなら足せばいいし、割りたいのなら均等に割ればいいのだけれど、割り切らないで、変なミックスをしようとして失敗しているような感じがする。うまく説明できないのだけれど。この点は自らの宿題として、もうちょっと考えさせてくださいませ。

山口晃という画家は知らなかったのだけど、検索してみると、新しい日本画と言えばいいのか、すごく実物を観たみたくなった。どこかで個展などやってないだろうか。

今日の一曲

美術と言えばアート。

アートと言えば、



ポール・サイモン&「アート」ガーファンクルで「ボクサー」(今日も強引)しかし、Youtubeを観ようとすると必ずと言っていいほど表示される某予備校のCM。しつこすぎてこんな予備校に行くもんか、と思うのは私だけだろうか。

では、また。

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『村上海賊の娘』和田竜

2013-11-28 | books
戦国時代1576年。長篠の戦いの翌年、信長は一向宗の大坂本願寺を叩き潰そうとしていた。大坂本願寺は後に大阪城になる場所。当時は海に近かった。本願寺は中国地方の雄、毛利氏に援軍を頼む。毛利としては、信長と組むべきか、それとも上杉謙信が反信長となれば謙信と組んで本願寺を助けるべきか。謙信は、加賀の一向宗に手こずっているので、大坂の本願寺を助けるかは不透明。瀬戸内海、現在しまなみ海道がある芸予諸島のとても小さな島、能島を根拠地とする能島村上氏。海賊として戦乱の世に名が轟いていた。嫁にもらってくれる者のいない、村上の娘景(きょう) 醜女だが、刀を持てばめっぽう強い。彼女を中心に置きつつ、織田軍と毛利、村上海賊らの第一次木津川の合戦を描く。

私は合戦もの戦争ものの全体の戦略を読むのは好きなのだけれど、個々の戦いについては読んでいると飽きてしまう。個々の戦いは必要に応じて熟読したり軽く読み飛ばしたりしていた。

本作は、キャラクターがビンビンに立っている。景だけではなく、全ての登場人物が主役のように輝いている。魅力的な登場人物が多い。(戦国時代や幕末に魅力的な登場人物が多いのは、単に作家がそう書いているだけなのか、乱世にはそういう人物が多く出現するという歴史的な原理があるからなのか、魅力的な人物が多いに違いないという誤った予備予備知識によるものなのか、あるいは読者としてそういう物語しか読まないからなのか。よく分からない)

多少読み飛ばしたことは否定しないけれど、こんな体たらくの私にしては、結構詳しく読み耽ってしまった(当社比)まるで映画を観ているかのような、描写上手だったからだだろうか。

今日の一曲

海賊でパイレーツ、だっちゅうのに行くと見せかけて、織田なので織田裕二に行くと見せかけて、



織田哲郎で「いつまでも変わらぬ愛を」

では、また。

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『雨のなまえ』窪美澄

2013-11-26 | books
苦しい人生を生きている者たちを描く短編集

金持ちの娘と結婚した。彼女は妊娠した。しかしおれは不倫している。不倫相手は少しアブナイ女だった。という<雨のなまえ> 呆けが始まったかも知れない義母と同居することになった<記録的短時間大雨情報> 自分は不細工なのに、大学時代に知り合ったすごい美人と結婚した。幸せな毎日だったはずの<雷放電> 高校の教師の男。クラスではいじめがある。かつて目の前で友だちが自殺していた<ゆきひら> 夫とは別居中。離婚届に判を押してくれない。PTAの活動が面倒くさい。小学校一年の息子は知らない間に他の家に入り浸っているらしい。シングルマザーの苦悩を描く<あたたかい雨の降水過程>

苦しさが痛いほど伝わって来たり、強烈などんでん返しやオチがあったり。全体として一貫したテーマがありそうでない。何の本だか説明の難しい本。面白いことは面白かった。

「あなた…お義母さんのこういうくせ、知ってたじゃないの?」
夫は黙っている。二人で目もあわさず、テーブルのどこかを見つめている。この人に恋をしたことも確かにあった。二人の間に生まれた子供を二人で育てた。それほどの縁があった。それなのに、心は近づいては失望し、それでまた近づいて、離れていく。それでも同じ家に住み続けることの愚かさを抱え続けたまま、私は澱んだ水たまりのような女になってしまった。

澱んだ水たまりのような女。巧い。他人事ではなく私も澱んだ水たまりのような男になっていないかとふと我を省みてしまった。

東京にスコールのようなこんな雨が降っても、もう誰も驚かない。地球温暖化とか、ヒートアイランド現象が原因とか、そんなことはもう誰も言わない。
いつも間にか皆、慣れてしまった。

人間は慣れる生き物である。それはビックリするほど。いい事にも悪い事にも簡単に慣れる。だからこそ、なるべく自分が幸せに、長期的に見て幸せになれるような環境に自分の身を置きたいものである。

そんな理由じゃ離婚するのは難しい、と誰からも言われた。けれど、子どもが生まれて三年たって、初詣に行った帰り、この人とはもう暮らせない、とはっきり思った。安らぐ、とか、気持ちが落ち着く、とか、そんな気持ちを子供を産んでから持ったことがなかった。
その夜、夫に向かって、あなたと暮らしていると箱の中に入れられて、その箱がどんどん小さくなっていくような気がする、息苦しくてたまらないのだ。と、床に両手をついて、吐物をまき散らすように泣きわめいた。

うーむ。考えさせられる。夫婦でも恋人でもそれ以外の人間関係においてでも、一緒にいると自分が大きくなるような関係もあるし、逆に縮こまってしまうような関係もある。必ずしも暴力をふるうような人やいつもニコニコしている人でなくても。どんな相手であっても大きくしてくれる人もいるだろうし、どんな相手でも委縮させる人もいるだろう。しかし相性の問題も大きい。結婚して子供を産んで、その後で相手は自分を小さくする人だと気づいたから、だから離婚してくれというのは確かに周囲に理解してもらうのは難しい。だったら、結婚する前に気づけよというのもたやすい。しかしなかなかそうもいかないのが人間なのだろう。少なくとも自分に関しては、後になってから重大な自分の心境の変化によって他人に迷惑をかけるより、なるべく事前に自分の心変わりの可能性を予期しておきたいとは思っているけれども。昔よりはそれができるようになっている。ような気がしているけれども幻想だろうか。

今日の一曲

大江千里の曲を秦基博がカバーした、「Rain」



ジャズを学ぶために日本でのキャリアを捨て、ニューヨークの学校に入った大江千里。大きな何かを得るためには、大きな何かを捨てる。男はこうでなくっちゃね。

では、また。

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店名にツッコんでください

2013-11-24 | books
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『サッカーデイズ』杉江由次

2013-11-22 | books
本の雑誌社の営業杉江さんが書いたサッカードキュメント小説、もしくはエッセイ。

中学時代にサッカー部にいたもののレギュラーになれなかった杉江さん。浦和に住み、レッズの熱狂的サポーター。娘は小学校2年からサッカーをはじめた。現在女子サッカーチームFCスマイルズにいる。コーチが足りないというので駆り出された杉江さんの苦悩の日々。なかなか試合に出られない娘。息子もサッカーをはじめた。しかしあまり興味が持てないよう。そんな杉江家の2年間を描く。

うーむ。こういう話は好み。いや、大好物。

少年少女の(特にスポーツでの)頑張りと悔し涙には涙腺がゆるゆるになる。歳をとったせいかと思ったけれど、昔からそうだった。

PKキッカーが発表されると五番目に蹴ることになったルナちゃんのお母さんが悲鳴をあげた。
「うちの子は蹴らなくていいですよ。外したら皆さんに申し訳ないですから」
半ば冗談ともつかないその言葉を発してしまう気持ちが、私には痛いほどわかった。
山下チーフコーチがルナちゃんのお母さんに語りかける。
「そんなの関係ないですよ。サッカーは誰かが悪いとかそういうんじゃないんです。みんかで勝って、みんなで負けるんです。だから一生懸命応援してください。ルナちゃん絶対決めますよ」

みんなで勝って、みんなで負ける。おー。それがサッカーか。

サッカーはミスをするものだという表現が出てきて、そうか確かにそうだなと思った。試合の中では失点にはつながらないミスが山ほどある。それは他の多くのスポーツとは違う。自分のミスも味方がリカバーしてくれるし、味方のミスも自分がリカバーできる。サッカーはあまりやったことがなく、観るのは面白いけれど、やる面白さは理解できなかった。しかし、この本を読んで、サッカーをやる面白さが初めて分かった。それはひいきチームアーセナルやオランダ代表、イングランド代表の試合をいくら観ても分からないことだった。本の力ってさぁこんなところにあるわけ。(桃井かおり風に)

各駅停車の電車は何度も駅に止まった。四十歳を過ぎて変わったことのひとつは、通勤で快速電車に乗らなくなったことだ。肩を寄せ合い、激しく押され、そうして時間にして十分も短縮できない快速電車に乗るくらいなら、少しは居心地のいい各駅停車にのんびりと揺られたほうがずっといい。

ふむ。私の場合、飛行機が着陸したらすぐに荷物を降ろして立ち上がり飛行機から出る速攻態勢をとる、ということがなくなった。それほど先を急ぐような人生ではないので。また通勤快速の類には乗ったり乗らなかったり。各駅の方が本を読むのに向いていればそっちに乗ることもある。なんて私の話はいいか。

杉江さんがコーチを始めると、

あんなに人と比較するなと言っていたはずなのに、娘がサッカーを始めてから私はいつも誰かと比較していた。

娘の成長物語に見えるけれど、実は杉江さんの成長物語であり、ある程度以上歳をとった大人が読む物語である。

サッカーや野球などを「やらせる」親、あるいは習い事をさせたり塾に行かせたりする親にとって、子どもは「自分の夢を叶える道具」のように扱っているんだろうと思っていた。しかしそうとも限らず、子どもとは「親が成長するための教材」なのかも知れないと思った。

読めば必ず、自分の子供時代、青春時代を振り返ってしまう青春ルックバックな傑作だった。

今日の一曲

ルックバックからオアシスの「ドント・ルック・バック・イン・アンガー」



You might find a better place to playという表現。これはサッカーをする娘にとっても、杉江さんにとっての「生きる場所探し」と言い換えてもいいし、またこの曲を聴く者の「今よりもましな場所探し」と言い換えてもいい(タイトルはルックバックするなと言っているわけで、今日も強引)

では、また。

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鳥取へ

2013-11-21 | travel
島根旅行の続きは、鳥取へ。



境港へ。漁港の中を案内してくれるツアーに参加した。



ちょうど入ってきた船から出てくるおびただしい数の魚。鋭く見つめる仲買人の視線。案内してくれる人の話もすごく面白かった。もし機会があれば、このツアーはオススメ。

境港と言えばもちろん、



水木しげると鬼太郎。これが水木しげる記念館。



こんな銅像があちこちにある水木しげるロード。



本邦初公開。うちのキレイな奥さんとキュートな子供たち

この鬼太郎な町はなかなか面白かった。

もうちょいつづく。

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『イン・ザ・ブラッド』ジャック・カーリイ

2013-11-20 | books
マティアス博士に目立たないようにしろって言われて、海辺の小さな小屋にいる男女。突然二人を襲撃する者たち… アラバマ州モビール市警カーソン・ライダーとハリー・ノーチラスのコンビの前に現れたのは漂流する船。その中には赤ん坊が。無事に病院に収容されたのに誘拐しようとする者が… 白人至上主義者で大金持ちのキリスト教伝道師リチャード・スカラーが死んだ。逆さ吊りにされ、女物の下着を着け…(以下省略)の状態で。事故か、他殺か。そして死んだ男娼。そして死んだスカラーが牛耳っていた人種差別主義の大学の学長タトワイラーも死んだ。赤ん坊の父母らしき二人は誰なのか。赤ん坊はなぜ誘拐されたのか。スカラーとタトワイラーの死、男娼の死、極右組織、マティアス博士とは誰なのか。これら全てを繋ぐと判明する真相とは…

おお。なんだこのやろーと思わず猪木風に声に出してしまった。

赤ん坊と極右の関係はなかなか見えて来ず、こういうことなのかと想像しながら読んでいたら、まさかそう来たか。

ゼロ年代最高の寝業師ジャック・カーリイ。さすが。極右、ネオナチ、人種差別主義者、キリスト教伝道師は、小説のネタとして好物なので、さらに評価が高くなってしまうけれど、それを差し引いても、ある種のミステリの奇跡だと言っても言い過ぎににならないと思うほどだ。(なぜネオナチその他がネタとして好物なのかと言えば、そこに極端な場合の人間の真実が見えるからである。そういう小説は基本的に好きだ。右でも左でも上でも下でも、極端に偏りがある人間を現実の世界で直視する機会はそれほどなく、フィクションでしかその機会がないということもあるし、極端な者たちが創りだす言動は傍観している限りは興味深いというのもある。小説は現実世界を映しだす鏡でもあるけれど、同時に自分には決して見えないモノを映し出す鏡でもある。)

「スカラーがかい?」僕は鼻で笑った、「彼は無知で使えない最低のセールスマンだったんだぞ」
ハリーがいった。「おれはガールフレンドから詩集をもらったことがある。六十年代に活躍したリチャード・ブローティガンのだ。教室についての短い詩があってな。一日の一度、父親が赤いワゴンを引っ張ってくるんだが、子どもたちが知っているのはそれだけだったという内容だ」
僕はハリーの目の前で手を振って言った。「地球より宇宙船のハリーへ、聞こえますか」「わからないのか。カーソン、それしか教わらなかったら、それしか知らないんだ。とくにゆりかごにいる頃から始まるとな」

本格ミステリは解かれる謎が、例えばアリバイや密室のトリックだったりする。ジャック・カーリーはそういう従来の本格ミステリとはちょっと違っていて、解説の酒井貞道さんの言葉を借りると、物語構造全体の論理的構築性に秀でている。

私個人の卑近な話で恐縮だけれど、アリバイや密室などがメインのミステリは過去にたくさん読んだので今はもう読む気がしない。代わりに冒険小説やリーガルサスペンス、サイコスリラーなどを好んで読んでいる。社会派や人情派ミステリに関してはは昔から今も読み続けているけれど。論理的構築性をど真ん中に置くミステリはほとんど読んだことがなくて、私の眼にはとても新鮮に映る。

「百番目の男」「デス・コレクターズ」のこのシリーズ、たまには後頭部を強打されたい方はぜひ。彼の作品の持つ異常なまでの面白さが身に染みる。

今日の一曲

イン・ザ・ブラッドで、藤井兄弟のF-BLOODにしようかと思ったけれど、



ザ・ドラマティックスで「イン・ザ・レイン」(強引)

では、また。

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『獅子の城塞』佐々木譲

2013-11-19 | books
イエズス会の神学学校セミナリオでラテン語を学び、信長に命じられ城作りを学びにヨーロッパに派遣されることになった戸波次郎左。。1582年天正遣欧使節団とともにインドのゴアを経由してリスボンへ。マドリッドではフェリペ2世に会い、フィレンツェへローマへ。教皇グレゴリオ13世に謁見する。初めて見る宗教の異端審問、ヨーロッパの建築物。ローマに留まってサンピエトロ寺院の普請を手伝うことになった。しかしキリスト教に寛容な信長が死んでしまった。イエズス会は次郎左に三つの選択肢を与えた。一つはキリスト教に改宗すること。イエズス会は日本に大聖堂を作りたく彼にそれを任せたい。もう一つはマラッカに大聖堂を作ること。そしてもう一つは現在世話になっている修道院から退去すること。次郎左は聖堂ではなく、城の普請を学びたい。ローマを出てフィレンツェへ。そしてネーデルラントへ。町の城壁を作ることになった。1596年のこと。ネーデルラントはスペインから独立しようとしていた…

うーむ。16世紀末の世界情勢やヨーロッパの風物、建築、宗教、人間を具体的に想像させてくれる。そう。まるで当時にタイムスリップしたみたいだ。

世界史と日本史の交差点のような快作だった。「天下城」の続編らしいのだけれど、そっちを読んでなくても何の問題もなく楽しめた。

今日の一曲

自分たちの権利のために、エスパーニャと戦うネーデルラント。権利のために戦うと言えば、ビースティ・ボーイズで「ファイト・フォー・ユア・ライト」



権利と言っても、パーティで騒ぐ権利を大人に求めてるだけの悪がきの唄なんですが。

では、また。

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『祈りの幕が下りる時』東野圭吾

2013-11-18 | books
仕事を求め仙台にやってきた女はスナックで勤め始める。しかし、後に病死してしまった。店の経営者は、彼女が懇意にしていた男性に連絡をとる。すると、遺骨と身の回りの品は、彼女の息子に引き取ってもらうように言われた。連絡をとってみると、その息子は「新参者」などの主人公、日本橋警察署のの加賀恭一郎だった。並行して描かれるのは、小菅のアパートでの女性の殺害事件。捜査の結果、滋賀県在住だと分かった。その部屋の住人である男性は行方不明。被害者の女性とその男性の関係も不明。その女性は昔の知り合いで演出家である女性と東京で会っていたことが分かった。またさらに並行してホームレスの焼死事件が起こっている。両親の離婚に伴い長らく会っていない加賀の母親。滋賀出身で滋賀で働いているのに東京で殺された女性。東京の演出家、行方不明の男性。加賀が解き明かすこれらを全てつなく一本の糸とは…

おお。これはいい。東野圭吾作品とは読み手とは言えず、世間の評価の高さと売れ行きほどは特に最近は楽しめていなかった。

しかしこういう作品があるから困る。だからやめられない。近年の東野作品ではベスト級というぐらい楽しめた。

しつこいぐらい緻密に事件に迫るやり方、「人間」をぐりぐりと抉り出す様、松本清張の諸作品、例えば「砂の器」のような昭和の名作を思い出す。どうも私はこういう小説が好きらしい。

今日の一曲

タイトルにある祈り。と言えばボン・ジョヴィで「リヴィン・オン・ア・プレイヤー」



歌詞の内容も、小説登場人物の気持ちを代弁しているよう。

では、また。

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『蛇行する月』桜木紫乃

2013-11-16 | books
釧路の高校を卒業した仲の良かった女性たちと周囲のその後を描く連作短編集。

・ホテルの仕事に嫌気がさした清美の1984年
・フェリーの乗務員桃子が、東京へ駆け落ちした順子に会いに行った1990年
・和菓子屋の一人娘として育ち婿を得た。真面目だったはずの夫は、若い店員順子を妊娠させ二人で東京に逃げた。夫がいなくなった後の店を切り盛りしてきた弥生の1993年
・高校時代順子が告白したのにそれには応えなかった現国教師谷川と、35歳になってやっと結婚できるようになった美菜恵の2000年
・パートをしながら一人で苦しい暮らしをする順子の母、静江の2005年
・ずっと独身を通している看護師直子の2009年

主役にはならないにもかかわらず、順子の存在が大きい。和菓子屋と不倫関係になり、子供が出来て東京に駆け落ちする。夫は食堂をはじめるが生活はかなり厳しい。化粧もせず服装もみすぼらしい。そんな順子なのに、同級生から見るとまぶしく見える。その、彼女らの気持ち。痛々しいほどに胸に突き刺さる。それだけはなく、ラストの順子の言動。熱くなった。そしてせつないせつない。

気に入った言葉や気になった言葉は、

女同士の集まりは楽しくて、自分だけは不幸じゃないと思う「根拠のない自信」であふれていた。

谷川先生だなぁって、なんかわかるような気がする。いるよ、常に答えを出さない男って。ぜんぶ女に丸投げ。でも、結婚するならそういう男のほうがいいと思うけどな。長続きという点では、いちいち手応えのない男がいちばんなんだ。

結婚するなら答えを出さない男がいい。そうでないと思っていたこともあったけれど、もしかするとそうなのかも知れない。また、答えを出さない男と答えを知らない男は似ているけれど違う。

そんなこと言われたって、と思う。そんなこと言われたって、何度失敗したって、学べないものは学べない。男だって、どうして出会ったときと別れるときであんなに人間が変わってしまうのか、今だってよくわからない。

自分の役回りを理解していると、そうそう大きな間違いをしなくて済むんですよ。

女性を描くのには、連作短編で関係のある異なる人物を使っていくのが実はベストなのではないかという気がしてきた。そしてそんなやり方で女心を描く、桜木紫乃は達人の域に達している。

今日の一曲

PVが発表されたばかり。椎名林檎で「熱愛発覚中」



では、また。

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『遺産 The Legacy』笹本稜平

2013-11-15 | books
先日のドイツ発のニュース。スイスから鉄道でドイツに帰国した80歳の男性が何も身分を証明するものを持っていないことを不審に思った税関が、脱税の容疑で家宅捜索したところ、ナチスに略奪され行方不明になっていた絵画が1500点も発見されたそう。マチスやシャガール、ピカソなどの作品があり総額は1000億円以上にものぼるとか。ナチスがユダヤ人から没収した絵画は専門のユダヤ人画商が海外で売却して、収益はナチスに渡していたそうで、件の男性の父親がその仕事をしていたそうだ。たぶん戦後のどさくさで、預かっていた絵画を自分のものとしていたのだろう。細々と売っていたらしい。

ナチス、ユダヤ、未発表の絵画。なんてロマンティックな響き。シュリーマンによるトロイの遺跡発見にも同じ響き。歴史にはロマン、考古学にはロマンが満ち溢れている。

本書は組織に属さない水中考古学者、興田真佐人が主人公。大航海時代のスペインの船が、西太平洋の海底に沈んでいるかも知れないという情報を得た。大学時代の恩師の田野倉教授、スポンサーになってくれるスペインの富豪と組んで、極秘で探そうとした。しかしどこかで情報が漏れたのか、アメリカのトレジャー・ハンターも狙っていることが分かった。考古学的なことには興味がなく、金もうけだけを考えて、財宝だけを引き上げて売ってしまおうという利益追求型アメリカ人と、船全体を引き上げたい学問追求型のスペインン+日本チーム。どちらが勝つのか… 

ライバルがすぐに登場してしまうので、勝ち負けの結果はもうちょっと早く教えてくれよ感を持ちつつ読んでいたけれど、しかし話の引張り方、構成、外連味のない真っ直ぐな進み方がすごくいい。

ストーリーの意外性を読むのではなく、大航海時代に身を捧げた一人の男の物語+考古学のロマン+世界を牛耳る投資ファンド的世界観の限界+船舶とサルベージの物語として読めば非常に面白い。ミステリとして読んでしまうとそれほど面白くない。スタンスを変えると全然違う評価になってしまうという好例だった。(例えば、クラスの中にいたら、女子の中では6番目ぐらいのかわいさの子が、AKBではセンターにいたりする、というようなことと同様…かな)

今日の一曲

航海と言えばセイリング。古くてしかも何のひねりもないけれど、ロッド・スチュワートで「セイリング」



いや、ガチでつまらんか。では、笹本つながりで、結構好きなミュージカル女優笹本玲奈



単に苗字しか合ってない。しかも曲じゃないし。ま、人生はそんなもんさー全部うそさー。

では、また。

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『まほろ駅前狂騒曲』三浦しをん

2013-11-14 | books
(町田を連想させる)まほろという架空の町。駅前にある便利屋。「まほろ駅前多田便利軒」「まほろ駅前番外地」 ドラマにもなった。最新作は、週刊文春に連載された。

ビンボーな便利屋多田と居候兼相方の行天。今回の案件は、バスの間引き運転に抗議する年寄りたちの話、無農薬野菜を売ろうとする怪しげな団体の話、行天の子供を預かる話や、キッチンまほろのマドンナ亜沙子に対する多田の思いなどなど。

三浦しをんは何も変わらない。第一作とテイストもテンションも何も変わらない。「風が強く吹いている」「神去なあなあ日常」「舟を編む」で描かれる、頑張っている人が与えてくれる前向きな気持ち、癒し、笑いは本作でも変わらない。

無農薬野菜の団体と新興宗教のエピソードの挿入の仕方が若干強引なのが玉に瑕かなーと思っていた。しかし全体468頁中の462頁目、ラストのラスト。うまい。それと、亜沙子さんと多田の関係の進行に対して、個人的には非常に思い入れを感じてしまった。

三浦しをんにNHK朝ドラマの脚本を書いてもらったらどんなものができあがるのだろうか。

今日の一曲

行天の娘、はるちゃん。連想するのはビートルズ。「ルーシー・イン・ザ・スカイ・ウイズ・ダイアモンズ」



では、また。

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『灰色の犬』福澤徹三

2013-11-12 | books
大学を出たのに、定職につかず派遣のバイトをしている遼平。高卒の友達よりも金がない。遼平の父、誠一は刑事。暴力団担当で実績をあげていたのに、情報漏えい事件の責任とらされ、本部から所轄へ左遷された。刀根は暴力団員。会長とはうまくいっていない。年下の組員の方が上納金を多く納めており肩身が狭くなってきた。その年下の組員を守るために警察と取引するように会長に命じられた。遼平はパチスロばかりの毎日で、090金融から借りることになってしまった。誠一は、署長の転任の土産に、拳銃の押収事件をでっち上げるよう命じられる。最近の暴力団担当の刑事には、コネがないので昔暴力団とのつながりがあった誠一を頼ってきたのだ。刀根と誠一の利害が一致し、そこに遼平の人生が絡んでくると…刑事とやくざが組んで、警察組織と暴力団幹部に一泡吹かせてやる…

この福澤徹三という作家とはとても相性がいいらしい。「すじぼり」「死に金」も、文体やストーリーの運び方、その全てが好み。

遼平の人生の転落の仕方と、現代の貧困ビジネス(パチスロ、090金融、ネットカフェ、派遣)の絡ませ方もうまい。警察と暴力団の持ちつ持たれつの関係もまたうまい。

終盤のドタバタ感は、逢坂剛の御茶ノ水署シリーズとか、黒川博行の悪徳刑事シリーズなどで見たことある感じはするものの、スカッとする感じはいいし、全体としては悪くない。

無駄のない文体、言葉の使い方、10年経っても20年経っても古びないものがあると思う。

今日の一曲

遼平の、言わば、負け犬の人生。そんな負け犬の人生を歌った唄。ブルース・ホーンズビー&ザ・レインジでThe Way It Is



メロディはキレイなのに、歌詞は現実的。welfare dime(生活保護の小銭?)を受け取る列に並ぶ者に対して、シルクのスーツを着た男が「仕事しろよ」と言う。貧乏人は決して浮かび上がることができない。そんなもんだよ、人生は。決して変わることはないさ。というような歌。負け犬とは社会が作り出す必然なのだろうか。勝ち組だと思っている者が実は負け犬なのだろうか。

では、また。

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島根へ

2013-11-11 | travel
9月の終わりに、島根に行って来た。その話。



行きは、寝台特急サンライズ出雲。

生まれて初めて乗った寝台車。しかも特急料金がかからないのびのび座席が取れた。各自のスペースはあるものの個室ではないというタイプ。女性客が多かった。旅に出ても元気があるのは女性が多いなー。

出雲駅からレンタカー。出雲駅周辺に人が少なく活気がなかった。

向かったのは、世界遺産石見銀山。



他にまともな写真がなかった。わざわざ行く価値があるかというとかなりビミョウ。旅の最中に、どこに行ったのですかと何度か訊かれ、石見銀山に行ったと答えると、地元の人みなが「遠かったでしょー」と言っていた。確かに遠い。そしてただ跡を見るだけで、当時を偲ぶアトラクションが特になかったのが残念。

そして出雲大社





あ。彼女が写ってた。まあいいか。

伊勢神宮とはまた違っていて、何やら空気が異なるような気がした。平日でもすごい数の人。



泊まった宿から見た宍道湖。グッドロケーション。



宍道湖のしじみが写っている。見えます?



宍道湖の夕日。



松江城。

以上。旅の話もう少し続く。(こんなことしか書けないから、旅行記向いてないな~)
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『シャドウ・ストーカー』ジェフリー・ディーヴァー

2013-11-10 | books
キャサリン・ダンスシリーズ。休暇中に知り合いの人気カントリー女性歌手と会う約束をしていたら、ストーカーから強烈な嫌がらせを受けていることを知った。自分の管轄でない地域でのことなので、本来の捜査ができるわけでもなく、地元の警察からは簡単に協力してもらえない。孤立した捜査をはじめてから段々と地元警察の信頼を得て、たどり着いた真実とは…

うーん。音楽薀蓄が多く、ダレてしまった。ストーカーの手口や心理、被害者にどのようなダメージを与えるかについては面白く読んだのだけれど。

ストーカー被害に会っている人は読むと感じる部分が多く、自分がストーカーかも知れないと思う人は読むと省みる部分が多いはず。いや、ストーカーは自分がストーカーだと自覚していないから何も省みることはないか。

とこれだけで終わりにするのもなんなので、この本をヒントにして、

あなたの隠れストーカー度チェック。いくつあてはまるか数えてみよう。(昔のニュースステーションの金曜チェック風に)

1.相手が小説、音楽、SNS、テレビ、雑誌などで不特定多数に対して発表していることに、まるで自分に対してだけ語りかけてくれているように思ってしまう。
2.相手の電話番号を教えてもらっていない。あるいは教えてもらった番号にかけるといつの間にか着信拒否されていた。
3.相手のことを一日30分以上考えてしまう。
4.相手が何かネット上で発言しないとつまらない。
5.相手のメールアドレスは教えてもらってない。あるいは教えてもらったアドレスにメールを送っても返信がない。
6.相手はきっとこういう人だろうとあれこれ勝手に妄想するのが好きだ。
7.でも相手が本当はどういう人か知らない。
8.相手が好きなものと自分の好きなものが一致しているとテンションが上がる。
9.相手の好みと自分の好みが合っていなくても、完全に無視して、なかったことにできる。
10.わたしは断じてストーカーではない。

相手が芸能人であれば別として、以上のうち、3つ以上にあてはまる場合、軽度隠れストーカー。誰かの言動に注目する暇があれば、自分の言動に注目しましょう。5つ以上でほぼ隠れストーカー。ご自分の言動がナイフのように誰かを傷つけないように気をつけて。10個で隠れストーカー免許皆伝。明日から弟子をとりましょう。なんつって。

今日の一曲

テーマがカントリー・アンド・ウエスタン。と言えば大物ガース・ブルックスにちょうど「ザ・ダンス」という曲があった。



では、また。

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