頭の中は魑魅魍魎

いつの間にやらブックレビューばかり

『騙る』黒川博行

2020-12-31 | books
古美術品を使った詐欺を中心にした連作短篇集。中国の古い乾隆墨や狩野派の屏風など様々な道具で楽しませてくれる。読みやすく、そして物凄く面白かった。詐欺のアイデアも素晴らしい。超好み。
 

今日の一曲

Joey Alexanderで、"Warna"



それでは、みなさま、良いお年を。


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『今夜』小野寺文宜

2020-12-29 | books
犯罪に加担されられるプロボクサー直井蓮児、彼を乗せた女性タクシー運転手立野優菜、酒に溺れる警官坪田、坪田の妻で高校教師荒木香苗。連作風短編集。

人間肯定的で、どこか癒やしてくれた以前の小野寺作品と比べると、そのパワーはやや落ちた感じはするが、リアルな現代的なドラマとして楽しめた。

 

今日の一曲

先週末、MUSIC SLASHを通じた、山下達郎のアコースティックライブがオンライン配信された。4千円もしたが、その価値あり。ライブの映像は一切過去に公開されてないので貴重だし、演奏も素晴らしかった。そこで演じられた曲の一つ。山下達郎で、"BOMBER"



では、また。


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『夢で逢えたら』吉川トリコ

2020-12-24 | books
芸人真亜子はコンビを解消してから迷走中。佑里香は「正統派」女子アナなのだが、どこかうまくいかず、フリーになってから迷走中。この二人が名古屋のバラエティ番組で一緒になると不可思議な化学反応が起きて・・・

ハゲシク面白かった。一ページに一回は出てくる含蓄のある表現(当社比)キャラ設定、ストーリー展開全てが好みだった。お笑いなどのテレビ業界ドラマとしても面白く読んだ。

「パイレーツってあんたそんな、かんたんに言うけどね」あの人らは厳密には芸人ではなく容姿と巨乳を売りにした芸人風アイドルであり、我々があの路線をいくにはいろいろと、主にカップ数が足りない上にそもそもあの路線を踏襲するつもりがなく、それにあそこまで瞬間最高風速が出てしまうとやはり後々厳しいのではないか


女っぽいといわれる要素を寄せ集めて作られたのが「女子アナ」だとしたら、さらにそのうわずみの、「女子アナ」っぽいといわれる要素を寄せ集めて作られたのが上垣内佑里香という女なのかもしれない。


「中まで火が通ってるか不安だから煮込みにしちゃうんだよね。天ぷらをからっと揚げる自信がないから揚げびたしにしちゃうし、餃子をきれいに焼く自信がないからスープ餃子にしちゃう。一事が万事、ゆりちゃんてそういうふうだよね」


美人に生まれていたら人生ちがっていたはずだと、不美人を自称する女たちは口を揃えて言うが、実際美人に生まれてみても、望むように生きられるかといったらそうでもない。美貌にふりまわされて人生を棒に振る女もいれば、美貌に邪魔されて正当に評価されないと嘆く女もいる。


↓この表紙だけ見ると、子供向けかと思うけれど、中身はみっちり大人向け。



 今日の一曲

大滝詠一の「君は天然色」、藤原さくらのカバーで。


では、また。
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『アンダークラス』相場英雄

2020-12-22 | books
秋田で車椅子から転落した老女が死ぬ。ベトナムから来た介護士が自殺幇助の疑いで逮捕され、認めた。世界一のネット通販会社サバンナの山本は貪欲に新たなビジネスを開拓しようとしてる。外国からの技能実習生に対する搾取、ハラスメント。この三つの関連は・・・

ぐいぐいと読めた。サバンナはAmazonにしか思えず、ある程度実態は近いのかと想像する。松本清張社会派ミステリーの後継者ナンバーワンだ。(中学から高校の頃読んだ清張で私は出来ている)

 

今日の一曲

山下達郎の「クリスマス・イブ」、辻井伸行の演奏で。 



では、また。


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店名にツッコんでください252

2020-12-20 | laugh or let me die
店名にツッコんでください252
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『いのちの停車場』南杏子

2020-12-18 | books
東京の医大の救命救急センターを辞め、故郷金沢で在宅医療専門の診療所で働くことになった白石咲和子。老老介護、脊椎損傷の社長、ゴミ屋敷、ガンになった厚労省高官、小児がん。様々な事態を乗り切れるか。

とても良かった。読みやすく、しかし重く、でも清々しい。

現在の医療の抱える問題について色々考えさせられ、また物語としても楽しめた。

先輩の仙川は松こそが我々医療者の目指す姿だと言う。

「目指す姿って、松がですか?」
「花の中には、日差しに弱い種類がある。ラベンダーやフクシア、能登半島のキリシマツツジなんかがそうだ。ところが松は、周囲に絶妙な日陰を作ってくれる。だから松の木の下にそうした日差しに弱い花を植えると、きれいな花を咲かせることができる。庇護を求めるか弱き存在の者のために、自ら日陰を作って立つ。それが医療者というものだ」

医療者にも、さらには政治家にも、自らの欲を満たすよりも先に目指して欲しい姿だ。



今日の一曲

いのちだけに、クリス・ハートで、「いのちの理由」

 

では、また。

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『猿の罰』J・D・バーカー

2020-12-16 | books
「四猿」三部作最終巻。また死体がいくつも現れる。刑事ポーターがまさか真犯人なのかと疑わせる状況に。そして怒涛の展開。話がややこし過ぎてうまく説明できないけれど、興奮、面白かった。

 
今日の一曲

taylor swiftで、"willow"



※以下ネタバレ

ポーターが聞いた自白は、ポーター自身の記憶喪失が疑われ、裁判でビショップは無罪になる。犯罪はビショップがいた施設の子供たちが人身売買に関わった者たちへの復讐だった。施設の子供たちやビショップの父母は死んだと見せかけられていた。ラストでどうやら全てを知ったポーターはビショップを殺したようだ。
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『徒然草をよみなおす』小川剛生

2020-12-12 | books
たまたま書店で見かけた。徒然草全体の解説というより、いくつかのエピソードを取り上げて、全く未知の話を教えてくれる面白本。

こんな話が面白かった。

堀川太政大臣基具は息子が検非違使に着任したとき庁舎の唐櫃が古いので新しいものにしろと命じたら、職員に数百年も使用している価値あるものなので替えられないと言われた。

久我太政大臣通光は清涼殿の殿上の間で水を飲むときに、土器じゃなくて、「まかり」を持ってこいと命じた。土器は素焼きで使い捨てだったそう。まかりは柄杓やお椀のようなものだそうで、枕草子には、「すっごくきたないもの。なめくじ。おんぼろの板の床を掃く箒の先端。殿上の合子」 合子=まかり。長年使って汚くなっている器だけど、しきたりだから使ってる。

なんて話があって、伝統を守るべきか、革新すべきかは昔からのテーマなんだと思った。

源氏物語の現代語訳が色々出ているけれど、重厚長大でなかなか手が出ない。こんな手軽な解説本なら、もっといくらでも読みたいと思う。

 

今日の一曲

映秀。で、「東京散歩」



では、また。


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『噂 殺人者のひそむ町』レスリー・カラ

2020-12-10 | books
息子がいじめられ、郊外に越してきたジョアンナは不動産屋で働く。有名な幼児殺しの犯人がこの町に住んでいるという噂が流れる。息子の父親がジャーナリストで、その件について少し情報を得た。息子は学校でいじめられているらしく、ママ友と仲良くすれば良いだろうと考え、その情報を話してしまった。そこから、噂に尾ひれがついて・・・

リアリティをすごく感じる。息子のハロウィンの衣装がないとか、Twitterで犯人らしき人からフォローされるとか。そして、とっても意外な真相。まさかそう来るとは。犯人がこの街にいるのか、いるとすれば誰なのか。

あまり男性だとか女性だとか区別すべきではないのだろうけど、多分女性が好きな小説なんだろうと思う。

 

今日の一曲

Nirvanaで。"The Man Who Sold The World"



では、また。


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『彼女が天使でなくなる日』寺地はるな

2020-12-08 | books
九州の離島星母島の母子岩が有名になり、客が来るようになった。民宿を経営する千鶴のもとには訳あり客がやって来る。全く子育てに参加しない夫に苛立つ母親、自分の娘を思い通りにコントロールしようとする母親、彼氏を親友に取られた人。連作短篇集のような長編小説。

物凄く面白いというのとは違うが、ジワジワとくる文章があちこちにある。

「いいよね、でも、ほんとに。あんな彼氏がいるって自慢でしょ」「自慢ではないね」
誰とつきあっていようと、それは他人に自慢をするようなことではない。交際相手は自分の所有物ではないからだ。

確かに。

「人間はみんななにをしでかすかわからないし、信頼できません。ちょっとした原因と動機ときっかけがそろえば、誰でも罪を犯す可能性はある。誰でも、誰でもです。もちろん、わたしも。お金を盗んだり、他人の不幸を願ったり、子どもを捨てたりする。だから未然に回避する方法を選ぶんです。信頼なんて簡単にしてはいけないんです」

500パーセントその通りだと思う。

 
今日の一曲

流線形/一十三十一で、「悲しいくらいダイヤモンド」

りゅうせんけいひとみといと読むらしい。

では、また。
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『夜明けのすべて』瀬尾まいこ

2020-12-06 | books
藤沢美紗28歳は、普段は出来る気遣いの人なのに、PMS、月経前症候群を患っているため、月に一度非常に怒りっぽくなってしまう。同じ会社の山添孝俊25歳は大企業にいたのにうちのような、小さい会社に転職してきた。しかし、遅刻はするしすぐに帰るし、周囲に溶け込むこともなかったことに。ふと気づいたもしかすると、彼はパニック障害なのではないかと・・・

一気に一晩で読んでしまった。頁を捲る手が止まらなかった。

簡単に言うと、病める者と病める者の交流の話なのだけれど、そんなに簡素化して言ってはいけないぐらい滋味に溢れている。

苦しむ者はどれだけ苦しまないといけないのか、どうすれば楽になれるのか、ある種の答えを感じ取った気がする。

 

今日の一曲

Bill Evansで、"The Two Lonely People"



では、また。


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店名にツッコんでください251

2020-12-04 | laugh or let me die
店名にツッコんでください251
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『アンと愛情』坂木司

2020-12-02 | books
デパート地下の和菓子屋「みつ屋」で働く杏子はちょっとドン臭いけど、真面目で感受性豊か。外国人客の求める菓子を探したり、成人式の着物でやらかしたり、金沢に旅行に行ったり、バレンタインフェアだったり、好きな人にわらび餅を買っていったら、「二重三重に間違ってる」と言われた男性客の謎を解いたり、店長の様子がおかしいのが気になったりの連作短篇集。

どえりゃー面白かった。あふれる和菓子や料理の蘊蓄、ストーリー展開、杏子の成長、どれをとっても抜群。

中国と日本の山椒の違い、ところてんと寒天、煎餅の歴史など知らないことをちょうどいい塩梅で伝えてくれた。

マドレーヌの旨い「K」という店がどこだか気になる。

 
今日の一曲

Blossomsで、"The Keeper"



では、また。


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