頭の中は魑魅魍魎

いつの間にやらブックレビューばかり

『静かな雨』宮下奈都

2017-01-31 | books
ぼくが勤める会社がつぶれた。代わりに見つけたのは大学の助手。早く来て早く帰ることができるようになった。そして通うようになったたいやき屋。とても美味しく、そして働いているこよみさんと親しくするようになった・・・ こよみさんは事故に遭い、記憶を失ってしまう。高次脳機能障害で、一日前のことを忘れてしまうのだ。そんなこよみさんとぼくの日々は・・・

薄っぺらく、あっと言う間に読み終えてしまえる。しかし中身は濃い。

こよみさんが高校生のお客に言う。

「もし、今、役に立たないと思っても、勉強を放棄する理由にはならない。あたしたちは自分の知っているものでしか世界をつくれないの。あたしのいる世界は、あたしが実際に体験したこと、自分で見たり聞いたりさわったりしたこと、考えたりしたこと、そこに少しばかりの想像力が加わったものでしかないんだから」

ぼくは思う。

「可能性にこだわっているのは僕自身だ、と思った。こよみさんのことをよく知りもしないくせに、記憶ができなくなったというだけのことで、未来や将来や可能性といった嘘くさくてもぴかぴか光っているものを、こよみさんからはすでに失われてしまったものだと考えているのではないか。傲慢は僕だ」


大好きな人の記憶が失われたら、我々はそうすればいいのだろう。

静かな雨

今日の一曲

タイトルそのまんま、稲葉浩志で「静かな雨」



では、また。
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『まっぷたつの先生』木村紅美

2017-01-29 | books
吉井律子はハウスメーカーで設計を担当している。本当は凝った家をつくりたいのに画一化した家しかつくらせてもらえないのに飽き飽きしている。猪股志保美はその会社の派遣社員。事務を担当している。律子は小学校のときの担任の堀部弓子といまだにやりとりがある。堀部を通して、短い間だけ担任だった中村沙世とも連絡がついた。沙世は当時、男の尻を追いかけまわしているという噂があった。律子には大変よくしてくれた先生だが、後で話を聞くと同級生の評判はよくなかった。沙世は、実際に妻子ある男性を追いかけて仙台まで行ったのだった・・・長い時を経て明らかになる人の機微・・・

ううむ。これはよかった。とってもとってもよかった。

全然期待しないで読み始めたのに、ぐっと引き込まれてしまった。絶妙なタッチで女性の心の揺れを描いている。明らかになる真相も、意外な展開もすべていい。

読書メーターを見ていると、「感情移入できなかった」と書いている人がいた。私も特定の人物に感情移入することはなかった。感情移入は小説を楽しむうえで、絶対不可欠なものではないと思う。自分のできないことをしてくれて、自分がまるでしているみたいな気分になれるというのも小説のだいご味である。特に冒険小説などでは。しかし、必ずしも自分がその中にいなくても、第三者的に俯瞰して観るようなタイプの小説もあると思う。

本作は、女の心の底を浚うのを、眺めるような小説だった。

まっぷたつの先生

今日の一曲

タイトルがなんとなく関係あるっぽい、U2で、"Two Hearts Beat As One"



小説の方は、何が「まっぷたつ」なのか、読むとなるほどと思った。では、また。
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『コンビニ人間』村田沙耶香

2017-01-27 | books
18歳から36歳までずっとコンビニに勤める古倉。仕事はできる。コンビニのために生きているような暮らし。そんな静かな暮らしの中に入り込んできたバイトは異分子。仕事をやる気がなく結婚相手を探しに来た男、白羽。コンビニで働いている人たちをバカにしている。そんな彼と関わっているうちに、古倉の人生は・・・

芥川賞をとった小説はあまり読んだことがないのだけれど、これは意外と面白かった。

コンビニという「アイデンティティ」がないと生きていけない人、はあまりいないかも知れないけれど、自分以外の何かに自分のアイデンティティを置いている人は少なくないような気がする。

リアリティを求めて読んではいけない小説なのかも知れないけれど、こういう人いそうだなーと思いつつ読んだ。

コンビニ人間

今日の一曲

コンビニ人間と言えば、やはり、妖怪人間。アニメ「妖怪人間ベム」のテーマ曲



では、また。
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『棺の女』リサ・ガードナー

2017-01-25 | books
ボストン、D.Dは刑事。フローラは7年前に拉致監禁事件の被害者になった。1年以上監禁され、そして生還した。フローラはまた拉致されそうになるが、相手を殺した。そしてフローラはまた拉致され監禁されることになった・・・ 別の事件を追っていたD.Dはその事件とフローラの事件の関連に気づき、フローラの行方を追う。彼女は見つかるのか、監禁されている間、フローラは何をしていたのか・・・

これはこれは。大収穫だった。

刑事とフローラの視点双方から描かれる。刑事側からはストレートな捜査が描かれるのだけれど、フローラの側は必ずしもストレートな被害者の視線とは限らない。

そしてフローラのことは、FBIの被害者支援スペシャリストが詳しい。彼から話を聞いていくうち、事件が展開していくうちに、真実が明らかになる。

意外な過去とおぞましい過去。のけぞるしかない。

棺の女 (小学館文庫)

今日の一曲

原題はFind Herということで、Simon & Garfunkelで"For Emily, Whenever I May Find Her"



ファインド・ハーしかおおてへんやん。では、また。
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店名にツッコんでください150

2017-01-23 | laugh or let me die
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『はだかの太陽』アイザック・アシモフ

2017-01-21 | books
「鋼鉄都市」の続編。

未来、地球を飛び出し、宇宙に移住したスペーサーたち。地球人よりも繁栄し、ロボットを活用していた。宇宙で起きた殺人事件を解決するべく、呼ばれた地球人の刑事。ロボットと協力しながら解決できるのか・・・

こりゃ、面白かった。たまらん。

SFを読む意味について考えてしまった。自分の感覚、考えが絶対的なものではないことを思い知るってことなのかも知れない。

なんてえらそーに書いているけれど、読み終わってしばらく時間が経ってしまって内容を忘れてしもうた。すまぬ。

はだかの太陽〔新訳版〕 (ハヤカワ文庫 SF ア 1-42) (ハヤカワ文庫SF)

今日の一曲

本に関係あるものなにも浮かばず。今度のアカデミー賞の最有力候補と言われる、ミュージカル映画 "La La Land"から、"Another Day of Sun"



では、また。
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『外道クライマー』宮城公博

2017-01-19 | books
2012年、那智の滝を登り、逮捕された男たちがいた。そのうちの一人が、著者の宮城公博。彼のその後の沢登りを記録したエッセイ。タイのジャングルの奥地、台湾、登るのが極めて困難な富山の称名滝を冬に登るなど極めて危険なものばかり・・・

おおー。これは面白い。過去半年に読んだ本の中でベストワンかも知れない。

滝を登るとか沢を登るとかどういうことかよく分からなかったのだけれど、脇の壁を登るということらしい。読んでいると、冬の称名滝が一番手に汗握った。


↑ テレビ番組の「クレージー・ジャーニー」に宮城が登場したもの。映像で見て、そういうことかと分かった。

その沢登りそのものが読んでいて面白いのだけれど、それ以外の記述も、とても読ませる。解説の角幡唯介が「品性や良識を一切無視したPTAによって回収を命じられそうな文体」としている通り、ストレートで都合の悪いことを隠さないで、読んでいて気持ちがいい。(この本を読むか迷っている人は、巻末の解説から読むといい。いや、解説だけでも読むといい。宮城との出会いから、笑わせてくれる) 宮城はセクシー登山部というふざけた名称のブログをやっている。風俗の話が堂々と描かれていたりして素晴らしいブログだ。(誰かにモテようとしてカッコつけたTwitterとかをやってる輩にいいたい。クソツマラナインジャ、シネ。ナニモカクサズストーレトニゼンブツヅレ)

本に話を戻すと、登山という行為について大いに考えさせられる。反社会的な行為だと角幡は書いている。宮城は何も書いていないけれど、彼の言動、彼の存在そのものが超反社会的だろう。超アナーキーだろう。

沢登りと、それを記述するクレージーな男によって、笑わせられたり、感動させられたり、考えさせられる本だった。ちなみに、沢登りしたいとは1ミリも思わなかった。

今日の一曲

登る。と言えば竹下登のテーマ曲「わたしを経世会に連れてって」じゃなくて、Miley Cyrusで、"The Climb"



では、また。
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『虎狼』モー・ヘイダー

2017-01-17 | books
金持ち、オリヴァー・アンカー・フェラーズの家に侵入した二人組。妻と娘を含めて三人を監禁する。この家で飼っている犬の首輪に「助けて」と書いて放った。この犬の飼い主を探すのはジャック・キャフリー警部。担当する事件ではないのだけれど、昔兄が失踪した件での情報を得るために、犬の飼い主を探すことになった。フェラーズたちを監禁する二人の目的が分からない。身代金を要求するわけでもない。だったら目的は・・・ キャフリーは彼らの住まいを探し当てられるのだろうか・・・

過去に起こったおぞましい殺人事件(カップル二人を惨殺)が今回の事件に大きく関連れしている。その事件のおぞましさ、この本全体に流れる暗い調べ。たまらない。

物語そのものは、ヨーロッパのミステリーにしては単純というか、分かりやすい。登場人物も多くない。なので読みやすいのだが、しかし濃厚。さっぱりしているのに味が濃い。
監禁事件の顛末も面白いのだかが、それ以上に衝撃的なのがキャフリーの兄の件。シリーズでずっと追いかけているのが、幼児性愛者に殺されたが遺体が見つかっていない兄のこと。この件について、ついに事実が分かる。これには驚いた。まさか・・・


虎狼 (ハヤカワ・ポケット・ミステリ)

今日の一曲

本書の原題は"Wolf" タイトルだけじゃなく、内容すらも本に近い、Radioheadで、"A Wolf at the Door"



では、また。
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『鋼鉄都市』アイザック・アシモフ

2017-01-15 | books
今から遠い未来。地球から移民として宇宙に渡っていった者たち。宇宙国家を作り、今では地球を支配している。地球、ニューヨークシティの刑事、ライジ・ベイリは殺人事件の捜査を命じられた。殺されたのは宇宙人。そして捜査のパートナーは、ロボット!・・・

おお。SFとミステリーが見事に融合している。面白いし、考えさせてもくれる。まさか1953年の作品とは。

人口過剰になってしまったので、産児制限や食料の配給制度がある。ロボットに仕事を奪われ怒っている人たちがいる。地球では宇宙政府と仲良くやりたい人たちをそうでもない人たちがいる。この辺は、アメリカやヨーロッパ、あるいは日本の現状にちょっと通じるものがある。

訳者あとがきに、アシモフの「空想自然科学入門」にこんなことが書いてあると紹介してくれている。

「18世紀までの科学は、果樹園のようなものだった。それはよく耕され、手入れされ、整理され、薫りたかく、枝もたわわに実をつけていた。(中略)しかもそれ以後となると、人々があまりにもせっせと働きすぎたために、果樹園はうっそうと生いしげり、陽もさしこまなくなってきた。もはや隅から隅まで通り抜けることなどできなくなり、人々は道に迷ったりもとの場所へ逆もどりしてしまった。(中略)そこである者は、果樹園のせまい一部分だけで満足し、狭いところに閉じこもってしまった。
今日では、科学という果樹園は、地球をとりまく巨大な怪物となり、そこには一枚の地図もなく、誰も道を知らなくなった。有能な科学者たちも、ただ狭い部分を手探りしているにすぎない。(中略)強いて道を求めようとすると、果樹園のなかで迷子になってしまうのだ。(中略)
だが幸いなことに、わたしはSF作家だった。ちゃんとしたSF作家であるためには(わたしの考えでは)できるだけ多くの科学の分野と親しくなっておかねばならない。そこでわたしは、科学の一般化の方向にむかって、頑固に歩きつづけてきた。

ううむ。科学だけじゃない、学問の細分化とセクショナリズム。色んなこと知っている「知識人」が昔より減ってきているような気がしなくもない。

また、アシモフは大学で化学を専攻し、大学の教員になるだけじゃなく、生物学や物理学、天文学、数学の解説書、ノンフィクションもたくさん書いている。だからこそのこの発言なのだし、またこういう人の話は面白いに違いないと思わせる。

もちろん、本作は抜群に面白い。特にSFが苦手な人にオススメ。

鋼鉄都市

今日の一曲

ロボットの歌。The Flaming Lipsで、"Yoshimi Battles the Pink Robots Pt. 1"



では、また。
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『「宇宙戦艦ヤマト」をつくった男 西崎義展の狂気』牧村康正 山田哲久

2017-01-13 | books
「宇宙戦艦ヤマト」のプロデューサーの西崎義展は2010年父島で転落死した。あまりにも多くの人間に怒りをかっていたので、殺されたとも言われた。その西崎はいったいどんな人物だったかを明らかにする。

名門の家に生まれたにもかかわらず、受験に失敗し、大学は中退してさまよっていた西崎。ジャズ喫茶の司会者から、歌謡公演やカレンダー制作で大儲けする。しかし諸々あって逃亡し、手塚治虫の虫プロダクションに流れて来る。斜陽状態の虫プロで活躍したようなそうでもなかったような状態を経て、ヤマトの制作へと向かう。とにかくハチャメチャな男で、職場はハチャメチャ状態。愛人多数あり・・・

ものすごく面白かった。

近年、絶滅危惧種指定された「破天荒」な男。一緒に働きたいは微塵とも思わないが、一緒に酒を飲むのは楽しいと思う。

虫プロの裏側やヤマトの裏側。こんなことがあったのかと驚くことばかり。

超一級のドキュメントだった。

「宇宙戦艦ヤマト」をつくった男 西崎義展の狂気

今日の一曲

一曲じゃなくて、「宇宙戦艦ヤマト」のテレビアニメ版の第一話のうち、15分ぐらい



稚拙な画像に見えるかも知れないけれど、これを作るのにどれだけ苦労したか、本を読むと分かる。では、また。
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店名にツッコんでください149

2017-01-11 | laugh or let me die
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『無実』ジョン・コラピント

2017-01-09 | books
41歳のジャスパー・ウルリクソンは作家。ミステリーはまあまあの売れ行きだが、自叙伝はベストセラーになった。5歳の娘マディーと、脳卒中でまぶたしか動かせなくなった妻ボーリーンと暮らしている。ポーリーンがよくなるという希望を捨てていない・・・ デズは31歳、高校教師。15歳から18歳までの女性にしか欲情しない。生徒のクロエは究極の美少女だった。クロエに夢中になるが、学校にバレてクビになってしまった。それでもトレーラーハウスでクロエと一緒に暮らし始めた。彼女は父がいなくて、母が亡くなったばかりなのだ。テレビを観ていると、クロエが叫んだ。「ママの元彼だ!」 母親が亡くなる前に、テニスの先生と付き合っていた、それがジャスパーだという話をしてくれた。だとするとクロエの父親は彼かも知れないということになるが、彼と別れた後、生理が来たので、彼が父親じゃないと分かった、ということだった。デズは考える。これは金を儲けるチャンスだと・・・ デズの考えた卑劣な方法・・・ そしてクロエはジャスパーの娘として迎えられることになった・・・ ジャスパーはクロエに性的な欲求を感じてしまう・・・という話。

本書は40の出版社に出版を断られたそうだ。ぱっと見、いわゆる「ロリコン」の話っぽいので、出版に躊躇するのは分からないでもない。しかしそんなに簡単な話じゃないし、薄っぺらい「エロ本」でもない。

デズの考える方法。これがミステリー好きにはたまらないだろう。そしてクロエとジャスパーの心理。これも面白い。そしてどんでん返し、これはミステリー好きの大好物だ。

しかし、最大の読みどころは、妻のポーリーンなのだ。まぶたしか動かせずコミュニケーションに難があるが、目は見えているし、耳が聞こえている。その彼女があることを目撃してしまうのだ。目撃したことを周囲に伝えられない。必死で伝えようとする。これには、不動産と同じくらい動かない私の心も動かされてしまった。

一見ロリータ・コンプレックス+エレクトラ・コンプレックスの融合による性愛小説のように見えて(それが好みという人もいるかも知れないけれど)、実は深い家族小説だった。最後まで読めば、かなり感動してしまう。良かった。

無実 (ハヤカワ・ミステリ文庫)

今日の一曲

ロリータ・コンプレックスの人たちは、こういう人たちが好きなのだろうか。それとも歳が上過ぎるのだろうか。乃木坂46で「サヨナラの意味」



では、また。
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『喧嘩(すてごろ)』黒川博行

2017-01-07 | books
あの「疫病神シリーズ」の凸凹コンビが帰ってきた。

年がら年中金がない建設コンサルタントの二宮のところに持ち込まれた案件。地方議員の事務所に火炎瓶が放り込まれた。選挙のときのいざこざでやくざともめているらしい。その調停に、二宮ならその筋にも知り合いが多いだろうと頼まれた。件の暴力団は、大きな組織と関係があって、他のやくざたちには断られた。仕方ないので、既に二蝶会からは破門になり堅気になった桑原に連絡をとった。そして二人で調べてみると、出てくる出て来る議員秘書の裏の汚い仕事が。医大の裏口入学まで出てきた。その辺をネタに桑原と二人で大きなネタに仕上げて、大きく儲けようとする。大阪一のイケイケ元やくざの桑原と、大阪一イケてないコンサルタント二宮のコンビが得られるのは・・・

やっぱりこのコンビは面白い。

暴力が服着て歩いている桑原と、超小者の二宮。読者からは言動に意外性はなく、いつもの感じなのだけれど、ストーリーやネタはいつも新鮮。

水戸黄門のようにパターンや、人物はお決まりなのに、物語は黄門よりずっと面白い。

もし中学生の頃に、こういう「一見自分にもできそうな裏稼業」について書いた小説を読んでいたら、自分の進路は変わっていただろうか。将来なりたい職業に「建設コンサルタント」とか「議員秘書」と書いていただろうか。

喧嘩

今日の一曲

特に本とは関係ない古い曲。4千万回も再生されている。Crowded Houseで、"Don't Dream It's Over"



では、また。
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『痣』伊岡瞬

2017-01-05 | books
刑事真壁の妻は殺された。犯人は目の前で死んだ。それから真壁は腑抜けになってしまった。優秀な刑事だったのに。そして連続殺人事件が起こる。妻の事件と関連がありそうだ。妻を殺した奴はまだ生きてるのか・・・ 腑抜けだった真壁の必死の捜査・・・ 署長の謎の行動、行方不明になっている署長の息子。捜査本部内部の軋轢。連続殺人事件の真相は・・・

おっと。これは意外な収穫。

ものすごく読みやすいのに、ややこしい人間関係、込み入ったストーリー、意外過ぎる展開。なんだかお得な感じがする。

ややこしい2時間サスペンスが読みたい人にオススメ。ただし、事件はかなりグロいので、ご注意を。

痣 (文芸書)

今日の一曲

タイトルは「痣」ということで、Lauvで、"The Other"



では、また。
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『ボクシングと大東亜 東洋選手権と戦後アジア外交』重松優

2017-01-03 | books
フィリピンのようなボクシング大国とボクシングを通して、戦後外交をどのように行ってきたかを描く、論文のようなノンフィクション。以下のようなことが明らかにされる。

裏社会の人間瓦井が白井義男、沼田義明、小林弘、藤猛らの世界タイトルマッチのプロモーターになれたのはなぜか。山口組二代目の山口登がピストン堀口の試合のプロモートできたのはなぜか。

正力松太郎率いる日本テレビが黎明期のボクシング中継でどう活躍したのか。後楽園スタヂアムの株主だった、阪急グループの総帥、宝塚歌劇団の総帥小林一三の弟田辺宗英は戦後の日本ボクシングにどのような影響を与えたか。田辺を含めた様々なボクシングに関わる人間たちが国粋主義に傾倒していたか。岸信介の外交とボクシングはどのような関係があったのか。

活躍したボクサー、金子繁治、矢尾板貞雄、勝又行雄の奇跡。ピストン堀口は、ノーガードで撃ち合う「玉砕」型のボクサーだったが、アメリカ流のカーン博士に指導され、科学的なボクシングによって日本人初の世界チャンピオンになった白井義男のボクシング。

ファイティング原田が1965年にバンタム級、藤猛が1967年にジュニア・ウエルター級、沼田義明がジュニア・ライト級のベルトを獲得し、世界タイトルの11のうち、3つが日本のものとなり、フィリピンを越した日本。

というようなかなりマニアックは話だった。ものすごく面白かったけれど、他人には薦めにくい、力作だった。

ボクシングと大東亜 東洋選手権と戦後アジア外交

今日の一曲

デンゼル・ワシントン主演の映画「ハリケーン」でも描かれた。実在のボクサー、ルービン ”ハリケーン”カーターを歌う、Bob Dylanで、"Hurricane"



では、また。
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