頭の中は魑魅魍魎

いつの間にやらブックレビューばかり

『裁きの鐘は(クリフトン年代記第3部)』ジェフリー・アーチャー

2014-04-30 | books
ある世代、そしてその子、そして孫の世代へと続く年代記。重厚長大になりがちではあるけれど、面白い作品はべらぼーに面白い。ハマればノンストップ読書になってしまう。重厚長大上等。カモン重厚長大。

1920年代からはじまったクリフトン年代記。第一部「時のみぞ知る」第二部「死もまた我等なり」に続く第三部は戦後。ハリーの子セバスチャンとハリーの義兄ジャイルズ・バリントンが中心に話が進む。ジャイルズの国会議員選挙と彼のライバルの死闘。劣等生セバスチャンの成長。セバスチャンは物語の真ん中に置くには弱いキャラクターだと思っていたけれど、成長とともに頼もしい若者になっていく。(ハリーもいいけれど、自分が女性だったらこのセバスチャンに惚れてしまう)

人生には自分の本質が明らかになる決定的瞬間があり、人はその時自分自身について多くを知り、経験という口座に知恵を蓄えて、後にそれを引き出せるようにするのだとジャイルズ伯父は教えてくれたが、実際、その通りだった。

決定的な瞬間を逃さず、そこから何かを学ぶ、そして知恵を蓄える。いい言葉だ。

第一部、第二部があまりにも面白かったので、第三部にはあまり期待してはいけないだろうと思っていたら、むしろ、むしろ。より面白くなっているではないか。ジェフリー・アーチャー、御年74歳。うーむ。

ジェフリー・アーチャーはヒールの造形が非常に巧い。そうそう踵を作るのが彼ほど巧い人はね。じゃなくて、悪役。今回だとジャイルズの妻レディー・ヴァージニアとジャイルズの政敵アレックス・フィッシャー。どう嫌な奴か、語りたい。読んだ人と語りたい。でも語れない。読んで下され。

本を愛する大人の鑑賞に充分耐えるページ・ターナーなのです。

「ケインとアベル」を久々に読み返したくなりもうした。

裁きの鐘は(上): クリフトン年代記 第3部 (新潮文庫)裁きの鐘は(下): クリフトン年代記 第3部 (新潮文庫)
ケインとアベル (上) (新潮文庫)ケインとアベル 下 (新潮文庫 ア 5-4)

今日の一曲

登場人物はジャイルズ。ということで、Jガイルズバンド「堕ちた天使」Centerfold



歌詞の内容を誤解していた。2次元の相手に恋する歌だと勘違いしてた。そういう意味だったのか…同じ経験したことあるぞ…

では、また。
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店名にツッコんでください83

2014-04-27 | laugh or let me die

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『西洋美術史入門 実践編』池上英洋

2014-04-25 | books
ローマのサンティニャーツィオ・デ・ロヨラ教会の天井画はアンドレア・ポッツォによるもの。300年以上前に描かれたものなのに、遠近法を巧みに使っただまし絵になっているそうだ。ロヨラという名前でピンときた人。そう、その通り。イエズス会を作ったイグナティウス・ロヨラの名前。イエズス会の教会なのだ。描かれたのはアメリカ・ヨーロッパ・アフリカ・アジアいう「四大陸の寓意」であって…

という話から始まる本書は「西洋美術史入門」の続編。うそーん、と思うほど面白い。

イエズス会に批判的な見方をすると、天井画はある地点に立つとだまし絵に見えるので、強制してどこかに来させること自体がイエズス会の独善的な考え方を表すと考える人もいるとか。(うそーん)

カマッジョーレという北イタリアの小さな町の教会。キリストの磔刑像はずっと目を閉じていた。1999年に修復されたものは目を大きく見開いていた。元々は目を開いたものとして作られたのだけれど、閉じた状態に塗り替えられ(どうしてそうなったのかは本書に書いてある)、800年ほど閉じた状態で信者に信仰されていた。元々の目を見開いた状態に戻すのが「正しい」のか、ずっと地元の人に信仰されていた状態のままにしておくのが「正しい」のか。というようなことを考えるヒントがある。(どっちだと思います?)

他には、クリムトやゴッホに対して日本の絵画が与えた影響(クリムトってあまり興味がなかったのだけれど、文章を読み画像を見ているうちにすごく好きになってしまった)とか、「美術の何を見るか」「さまざまな視点で見る」ことを教えてくれる。

この先生の大学の授業を受けたいなとやや真面目に思った。

西洋美術史入門・実践編 (ちくまプリマー新書)

今日の一曲

西洋、ウエスト。Pet Shop BoysでWest End Girl



1985年の作品だけど、Too many shadows, whispering voices. Faces on posters, too many choices.という歌詞は現代にも通じるように思う。SNSとか。

では、また。




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『ドアの向こうのカルト 九歳から三五歳まで過ごしたエホバの証人の記録』佐藤典雅

2014-04-23 | books
TBSラジオの「荻上チキsession-22」で紹介されていたこの本は、エホバの証人という宗教団体にずっといた人によるドキュメント。

エホバの証人と言うと、昔ビートたけしが主演をしたドラマで確か輸血を拒否する人たちが出て来たけれど、それがその宗教だったような記憶があるくらいで、他には何も知らない。読んでみれば、驚くことばかり。

著者が父親の仕事の関係でアメリカにいたときに、元々プロテスタントだった母親が「聖書研究」の勧誘に誘われているうちに、エホバの証人にはまってしまい、その影響で子供立ちも帰依するようになったとのこと。世の仕事は不浄なものであって、大学など行くべきでないという現代においてはだいぶ異端な感じ。この世はもうすぐ終わるから、そのときにはファーストクラスにいてもエコノミーにいても変わらないわけで大学に行くことは無意味だと教えられる。ふーむ。

聖書の研究会であって宗教ではないということになっているけれど、実際は宗教団体と変わりはないように思う。

この世の終わりが1914年だと教えられるそうなのだけれど、その計算方法がかなりユニーク。

エルサレム崩壊が紀元前607年(あまり歴史的根拠がないらしい年号) + 2520年 = 1914年になるそうだ。

2520年という数字はどうやって計算するか。7つの時のあいだ、神は民を見捨てる(ダニエル四章) これが別の聖句では三時半とされているので2倍。他ではそれが1260日とされている(啓示十二章) ので1260 X 2 = 2520日 さらに、一年は一日である(民数記十四章) ということで2520年になる。だからハルマゲドンは1914年からカウントダウンがはじまっておるのだ!という豪快かつ牽強付会な解釈。うーむ。すごい。

段々と教義に疑問を持ちつつも、著者の母親、弟、妹も信者になっており、抜け出すことは容易ではない。自分で自分を脱洗脳していくプロセスは、宗教の内幕以上に読ませる。自分の経験があるからこそ、地獄の底にいたからこそ、言葉に力がある。洗脳から覚めた後何を考えたかちと長めの引用。

洗脳に関して言うと、私のカルト体験談は確かに特殊で極端な環境だった。しかし程度の差はあれど、広い意味での洗脳は社会のあらゆるところで見られる。「企業方針」という名の戦場の結果、出てくる過労死や燃えつきという犠牲。受験戦争という子供の多感な思春期を押しつぶす方式に加担する親たち。政府の意図が反映されているプロパガンダともいうべき教科書の内容。テレビ、新聞、雑誌などのメディアによる思想や価値観の押し付け。
流行だって軽い社会的洗脳から始まるものである。広告による商業主義の刷り込み。婚約指輪が給与の三ヶ月分で、結婚式が年収の予算なんていうのは広告洗脳の結果でしかない。ルイ・ヴィトンのバッグがステータスだというのも、雑誌広告による軽い洗脳のおかげだ。ブランドとは価値の刷り込みでしかない。そして広告代理店は、広告で人の意識に影響を与えることができますよ、といって広告媒体を売り歩いている。もし全てのメディア媒体が世の中から消えたら、あなたの価値観は今頃どうなっているか想像してみるとおもしろいだろう。

うーむ。宗教について、自分は関係ないと思っていたけれど、広い意味では「洗脳」されいるのはまさに自分だった。

「人生の答えを他の人に委ねた瞬間、自分の人生はなくなってしまう」

うーむ。

ドアの向こうのカルト ---9歳から35歳まで過ごしたエホバの証人の記録

今日の一曲

著者は佐藤。と言えば、佐藤竹善。秦基博とコラボしてカバーした玉置浩二のmelody



では、また。
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京都・近江八幡・彦根

2014-04-21 | travel
3月に行った京都

金閣寺は修学旅行で行った、と記憶していた。その私の記憶の金閣寺は、道路から見えた。道路からすぐ近くに見えた。道路から黄金色に輝いて見えた。入場料など払う必要もなく見えた。見えたはず…

しかし、



全然違った。あの記憶の金閣はなんだったんだろう。

じゃあ、銀閣?



こっちも違った。銅閣寺だったのだろうか…

予約しないと入れない仙洞御所の州浜。



その昔、キレイな石を集めるために、石を持ってきてくれたら米一升をあげたとか。合計で11万1千個の石。

同じく仙洞御所内の、紀貫之の家があった場所。



本能寺。



この道を歩いたことはあるはずなのに、一度も気づかなかった。

龍安寺。



金閣寺同様、来たはずなのに記憶にあるのとは違っていた。恐るべし、私の記憶。

近江八幡へ。



CLUB HARIEにて、焼き立てのバームクーヘンを食す。並んだ甲斐あり。うまし。

彦根城へ。



ひこにゃんとか言うらしい。

30分間ずっとくねくねと踊っていた。

「おまえは、おかまか!」と呟いたら、

目の前の30くらいの女性に、キッとにらまれた。
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『養鶏場の殺人 / 火口箱』ミネット・ウォルターズ

2014-04-19 | books
ミステリの女王と言ってよいであろう著者による、最新作は、普段本を読まない人向けに書かれたもの。だったらミステリ読みからすると物足りないかと言えば…

<養鶏場の殺人>という中篇は、実話がもとになっている。1920年の英国。精神的に不安定な女22歳エルシー・カメロンは結婚したくてたまらない。見つけた男、ノーマン・ソーン18歳。うまく自分のものにできた。仕事がなくなってしまったノーマンは親に100ポンド借りて、養鶏場を開く。しかしそう簡単に経営は順調にはいかない。エルシーからは強烈な、結婚へのプレッシャーが与えられる。冒頭に、出会ってから4年後に、ノーマンはエルシーを殺したとあるので、彼が彼女を殺したのは読者は分かる。ではどのような経緯を経て殺人に至ったのか…

<火口箱>は現代の設定。老婆と看護師が殺害された。逮捕されたのはアイルランド人労働者。しかし本当に彼がやったのだろうか。小さなコミュニティ内の偏見が生んだ、痛ましい事件とは…

うーむ。うーむ。さすが、翻訳ミステリー大賞シンジケートの書評七福神の三月度ベスト発表で、千街晶之、川出正樹、酒井貞道、杉江松恋氏の四名が三月に読んだミステリーでベストにあげただけのことはある。

読みやすいのに、深みがある。

「養鶏場」は、エルシーの嫌な女の造形と、ノーマンの内面。読んでいるうちにどんどん自分がノーマンになってしまう感情移入が起こりまくる。こういう女、いるよなー(現実に近くにいる)と思って読む読者は少なくないと思う。

だったら、ある種の殺人には正当化できるものがある…のかという哲学やら法学に関わる諸問題をつい読んだ他の人と話したくなるものがある。高校か大学でテキストとして使って、生徒にディスカッションさせたりレポートの課題にさせたりするのにすごく良いと思う。

同時に、偏見(人種に対する偏見とか、それだけにとどまらない我々が沢山持っている「合理的ではない物の見方」)に関して考えることがたくさん出てくる「火口箱」もすごくいい。テキストとして使用に耐えうるだけじゃなく、「養鶏場」が分かっている結末に向かうプロセスを楽しむものに対して、こっちは結末そのものがあっと言わせるものなので、ミステリとしても充分に楽しめるものだった。

このブログをはじめる前に読んだのでレビューはないけれど、ミネット・ウォルターズの「氷の家」や「女彫刻家」は大傑作だと思う。

養鶏場の殺人/火口箱 (創元推理文庫)氷の家 (創元推理文庫)女彫刻家 (創元推理文庫)

今日の一曲

養鶏場、チキン。BUMP OF CHICKENでstage of ground



では、また。
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『よるのふくらみ』窪美澄

2014-04-17 | books
カバーをかけないで電車内で読むのが若干恥ずかしくなるタイトルは「ふがいない僕は空を見た」の作者による連作短編集。

みひろは保育士。昔からよく知っている圭祐と付き合っている。結婚も考えている。一緒に暮らしている。セックスしたい。でも圭祐は忙しくて疲れていてなかなかしてくれない。裕太はみひろと同じ歳。みひろと同じ高校に行きたくて頑張って勉強して同じ高校に入った。しかしみひろは兄の圭祐にとられてしまった。みひろと、インポになってしまった圭祐と、みひろのことが好きな裕太。三人それぞれの視線で描く恋模様…

うーむ。せつない。あったかい。悲しい気分なのに嬉しい気分。矛盾した気分が同時にやって来る。

話は地味だけど妙にリアル。かゆいところに変な方角から手が届くほどにリアル。

ぼかぁーすきだなぁ こうゆうはなし(たぶん森田健作風)

セックスをリアルに話に織り込むのが巧い。

隣の和室まで、ずるずると布団を引っ張り襖を閉めた。灯りを消して、里沙さんを抱いた。里沙さんのやわらかい体は、いくらきつく抱いても、自分のなかから逃げていくような気がした。みひろと里沙さん、ふたりへの思いをだらしなく心のなかに飼っていた俺と同じように、里沙さんが、俺とだんなさんのことを考えていたかどうかはわからない。やさしい里沙さんがついた嘘かもしれない。そう思いながら、まだかすかに、里沙さんにだんなさんより愛されていたい自分もどこかにいた。ゆるゆるとあたたかい里沙さんの体のなかに収まりながら思っていた。里沙さんは今まで会った人のなかでいちばんくらいやさしい人だ。やさしくて、そして、だらしなく人を許す。

よるのふくらみ

今日の一曲

作者は窪。くぼ。ぼく。ぼく、ドラえもーん。と言えばどこでもドア。ということで、ドアーズの「ハートに火をつけて」Light My Fire



では、また。
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『歴史が面白くなるディープな戦後史』相澤理

2014-04-15 | books
「東大のディープな日本史」「東大のディープな日本史2」に続く、入試問題を一般向けに書いた本第三弾は、一橋の問題ばかり使った現代史。

一つの大問に400文字の解答用紙、そこに3から4問の解答を記述しなくてはいけないので、どの設問にどれだけ字数を使うか自分で判断しなくてはいけない一橋。しかも東大では出ない戦後史をたっぷりと出題する。うーむ。それは面白い。近現代史は学校で習わなかったとかで、よく知らないという人は少なくないと思う。でも遠い遠い昔よりも、つい最近のことの方が、我々に与えている影響は大きいはず。

日本国憲法はアメリカに押し付けられたものなのか? サンフランシスコ講和条約について詳しく考える、財閥解体と農業改革の比較、安保闘争がなぜ盛り上がったのか? 沖縄返還に関する詳しい考察…というような内容。

昨今の集団的自衛権の解釈改憲について考えるための、日米安保体制という「過去」や、TPPについて考えるための、日本の農政のいきあたりばったりだった「過去」など、現在を考えるための「過去」がたくさんある。非常に面白かった。

歴史が面白くなる ディープな戦後史

今日の一曲

ディープなだけに、ディープ・パープル。20分ほどあってちと長いけれど、時代を感じさせる1973年のライブ映像。



では、また。
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店名などにツッコんでください82

2014-04-13 | laugh or let me die




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タイトル変更してみました

2014-04-11 | digital, blog & twitter
最初、ただなんとなく、「他になさそうだから」「長く続けるつもりはないから」という理由でつけた「ふるちんの『頭の中は魑魅魍魎』」という意味不明なブログタイトル。

まさかこんなに長く使用するとは思わなかった。2006年3月8日に始めたので、もう8年。

変更が長年の懸案だった。思いついたタイトル案は、

・「報道ツテーション」
・「ニュース23(にいさん)」
・「夜の襞まり」
・「眼光紙背を徹する(仮)」
・「ワールド・ビジネス・アッテナイト」
・「コメントすると教団から勧誘が来るブログ」
・「億の細道」

など、ろくなものがなく、結局当たり障りのないものになってしもうた。(誰に対してだかよく分からないけれど)なんとなく、気分は、ごめんなさいなのはなぜだろう。

今日の一曲

BARBEE BOYSで「ごめんなさい」



では、また。
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『長女たち』篠田節子

2014-04-08 | books
離婚歴ありの四十女に六つ年下の三十男がずっと言い寄っていた。直美がずっと断り続けていたのは母の介護があるから。でも付き合うことになった。彼は埼玉から経堂に住む彼女の近くに越してくると言う。結婚が現実化すると彼から別れが告げられた。骨粗鬆症と認知症を患う母との生活。母の見る幻影「ユキ」 別の男と付き合いそうになると妨害しようとする母。ストーリーは意外な展開を迎える… 

というのが冒頭の<家守娘>という中編。介護のつらさだけはなく、まさかそう来るかという展開はまさにミステリ。怖いけれど面白い。この中篇が一番印象に残った。

二つ目の<ミッション>は、親の反対を押し切って勤めていた会社を辞め、国立大学の医学部に入り、奨学金返済せずにずむ僻地勤務をした頼子。母の担当医だった園田の影響を受けた。そして、インドの山奥ヒマラヤの麓で医療に携わる。という話。

三つ目の<ファーストレディ>は、母の介護。糖尿病を患っているのに、娘の言うことを全くきかずに甘いものを貪ろうとする。なぜ母はそのような行為に出るのかということがテーマ。これも面白かった。

薬や食べ物など西洋医学を持ち込まれて、寿命が延びた生活に関して、インドの奥地の薬草医は言う。

村人は目立って長生きするようになった。それで得られた寿命が二か月半か十年か、わからない。いずれにしても長生きした。それは事実だ。特に州の役人や外国人はそういう数字で、物事を判断する。デリーやムンバイや、ヨーロッパなどから医者は国際援助団体の人間が視察にやってきた。そして無邪気に、マトゥ村の園田の試みを褒め称えた。しかし実際のところ病いは減らずに逆に増えていったのだ。この世に少しだけ長く留まることになった代わりに、村人は病いを得た。長生きはできるようになったが、健康なまま死ぬことは叶わず、病いに苦しむようになった」

物が壊れたので部品を取り換えたりして、長く使用することはとても良い事だと我々は教えられる。物は大切にしましょうと。しかし、人体という製品については、あちこちをいじって本来の耐用年数を越えて使い続けることが良い事かというのが、介護の問題の根っ子にあるように思う。あちこちをいじったりして「使用できている」のならまだいいけれど、「死んでない。ただ生きている」というのは「使用できている」ということと同じではないような気がする。

長女たち

今日の一曲

ひとの死について、思いついたのは、ズバリ。「精霊流し」さだまさし。



フォークギターをつま弾いて練習していた頃、中学生。私は本当に青かった。

では、また。
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『レッド・ドラゴン』『羊たちの沈黙』トマス・ハリス

2014-04-05 | books
ブラックサンデー (新潮文庫)サイコスリラーと言えばこれだと言えば誰でも名前を挙げるであろう「羊たちの沈黙」 「羊たちの沈黙」を髣髴とさせるとかいう言葉もよく見かけた。

トマス・ハリスと初めて出会ったのは「ブラック・サンデー」 高校生の頃だったと思う。国際謀略ものに心を蝕んでいた幼気な少年に、どういう影響を与えたのだろうか(覚えてない)

その後の出会いは確か、銀座。すごく面白い映画があるとは聞いていたのだけれど観る機会がなかなかなくて、もうすぐロードショーが終わる頃、やっているのは銀座の場末の映画館だけだった。ガラガラの映画館で観た「羊たちの沈黙」 世の中にこんなに怖くて知的刺激がある映画があるのかと思った。衝撃的なシーンでは、思わず座席から腰を浮かせてしまうほどだった。

原作もすぐに読んだ。映画も原作も同じくらい高いレベルな稀有な作品だった。すると羊の前日譚にあたる「レッド・ドラゴン」は読みたくなるに決まっている。しかしDVD(もしくはビデオ)で映画が観られることが分かったので映画を先に観た。これがイマイチ。作りがチャチな映画だった。なんだよー、と思いつつ原作を読んでみたら、映画とは全然違う傑作だった。羊と肩を並べるほど。それ以降「ハンニバル」や「ハンニバル・ライジング」も読んだけれど、羊とレッドには若干及ばない。羊はテレビ放送やDVDなどで映画版は都合7回観た。何回観ても、冒頭シーン(靄の中クラリスが走る)からぐっと来てしまう(軽いヘンタイだと思います)

羊たちの沈黙(上) (新潮文庫)レッド・ドラゴン 決定版〈上〉 (ハヤカワ文庫NV)
それから20年経って、再読してみた。

「レッド・ドラゴン」は、異常心理の専門家ウィル・グレアムはハンニバル・レクターを逮捕したときに怪我をして引退していた。妻子との生活。しかしFBIのジャック・クロフォードに乞われて、連続殺人事件を追いかけるようになった。ウィリアム・ブレイクの「大いなる赤き竜」に心酔する容疑者ダラハイドとは…

「羊たちの沈黙」は、ジャック・クロフォードとFBIアカデミーの学生23歳のクラリス・スターリングが、女性の皮を剥ぐ異常殺人犯バッファロー・ビルを追いかける話。

久しぶりに読んだら、ディテールを忘れていることが非常に多く、あらためて新鮮な気分で楽しめた。キャラクター設定の巧さ、ストーリー展開、台詞、文句のつけようがない。クラリスが獄中のレクターにアドバイスをもらいにいくシーンの緊迫感は映画、原作甲乙つけ難し。

再読して感じたのは、記憶に強く残っていた容疑者の邪悪さよりも、レクターのキャラやクロフォードとクラリスそれぞれの苦悩が際立っていること。ミステリーは、ネタ一発勝負的な側面があるので、再読にはあまり向いていないと思っていた。ストーリーそのものは結構覚えていたので、また楽しめるかと思っていたけれど、真の傑作はネタだけで読むものではないらしく、杞憂だった。

羊は原作と映画ではラストが違うのだけれど、嫌な奴ナンバー1のチルトン刑務所長のことを考えると、映画の結末の方がスカッとする感じもあって好み。

バッハ:ゴールドベルク変奏曲(1981年録音)映画でレクターが移送してもらった先で、カセットテープを差し入れてもらうシーンがある。(原作にもある)この音楽が何とも物悲しく、自分でも聴いてみたいと思って、クラシック好きの友人にタイトルを訊いた。今はもうない秋葉原の石丸電機レコードセンターに行った。「グレン・グールドのゴールドベルグ変装曲はどこか」と訊いて教えられた場所に行くと、グレン・グールドというのは作曲家の名前ではなく、また変装曲ではなく変奏曲なことが分かった。グレン・グールドはクラシック界の革命児だとか大胆な解釈がどうとかあるらしいけれど、革命が起こる前のアンシャン・レジームの時を知らないのでその辺りは全て分からないまま聴いたけれど、そして今でもたまに聴くけれど、そのたびに何とも言えない不思議な気持ちになる。

今日の一曲

ハリスということで、カルヴィン・ハリス feat フローレンス・ウェルチでSweet Nothing



では、また。

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ポリティシャンは電気羊の夢を見るか

2014-04-03 | days
誰かが以下のようにブログに書いている。2010年4月27日の「ヨッシー日記」より、

小沢幹事長に「起訴相当」の議決。検察審査会は国民の常識を踏まえた判断をした。
 小沢氏は絶大な指揮命令権をもっていること。執拗な証拠隠滅が行われたこと。市民目線から起訴は相当であること、などを理由にあげた。
 「検察が身の潔白を証明してくれた」と小沢氏は言っていた。これは、裁判官が検察官を兼ねる「遠山の金さん」時代の発想だ。
 今回、検察審査会は「検察の判断は間違っている」と明確に結論を出した。検察は強制起訴に追い込まれるまでもなく、起訴するだろう。
 小沢氏はこの国民の声を重く受け止めるべきだ。少なくとも幹事長辞任は不可避である。そして、国会の証人喚問手続に応ずるべきである。

誰の日記かと言えば、我らがミスター熊手、渡辺喜美氏。

市民目線とか国民の常識とか国民の声という言葉を使う。ならば、8億円を何に使ったかと訊かれ、「熊手ともろもろ」と答えるのは、市民目線で見るとどうなのだろう。

しかし、もし釈明の記者会見で、5メートルぐらいの熊手に「もろもろ」と書かれたのを持って来て、「5億したんですよ、これは」と言うのなら、笑って許してあげたい。

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『機龍警察』月村了衛

2014-04-01 | books
人体を模して設計された全高3.5メートル以上の二足歩行型軍用有人兵器「機甲兵装」 犯罪者たちが利用するようになっていた。刑事訴訟法と警察法を改正し、現代型犯罪に対抗するため、警視庁特捜部が導入したのは「龍機兵」 従来の機甲兵装より優位にある。密造機甲兵装を使った地下鉄立てこもり事件が発生する。警察内部のSATと特捜部の対立。暗躍する犯罪組織との対決の行方は…

SFと警察ミステリを融合させた作品。「新宿鮫」とフィリップ・K・ディックが合体したよう。SF的なガジェットが多いのにもかかわらず、警察内部の人間関係や特捜部メンバーの強烈で重厚なキャラクターが、いかにもミステリ的だ。

非現実と現実の絶妙な配合。もうすぐ来る、そこにある近未来。なかなか面白かった。

LINK

今日の一曲

奥田民夫で「近未来」



では、また。
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