頭の中は魑魅魍魎

いつの間にやらブックレビューばかり

少年の罪とは『その罪のゆくえ』リサ・バランタイン

2016-01-31 | books
ロンドン、11歳の少年セバスチャンが8歳の子を殺したとして逮捕された。近所に暮らす友達同士だった。担当弁護士はダニー・ハンター。若く見えるが15年以上の経験がある。話を聞いてみると、セバスチャンはとても頭がよく、父親が母親を虐待しているらしい。ダニーは自分の過去を思い出した。ドラッグの中毒だった母親は子供を育てられず、ダニーは里子に出されていたのだ。どの里親にもなじめず、あちこちをたらい回しにされていた少年時代。ミニーという、小さな農場を経営している一人暮らしの女性のところへ里子に出された。ミニーはとても親切な女性だった。しかし、ある出来事があってミニーとはもう連絡をとっていない… 過去を思い出しながら、事件に向かうダニー。裁判の行方は。ダニーの過去は……

うううむ。これはいい。

11歳の子なのに、殺人事件の裁判にかけられるイングランド。いわゆる少年法は10歳から適用だそうだ。11歳で大人扱いされる国は、大人の国なのか、それとも野蛮な国なのだろうか。

セバスチャンの事件がどうなるか、もちろん気になるのだが、それ以上に気になるのはミニーとダニー。少しずつ過去が明らかになるのだが、ミニーの優しさが何とも読むのがつらくなるぐらい身に染みる。それほど優しくしてくれたミニーに対して、ダニーは縁を切ろうとする。それがなぜなのかということと、ミニーと過ごした日々の描写がすごく読ませる。

ただ、私の現在の心境などの個人的な事情がこの物語とたまたまシンクロしただけなのかも知れない。みなが読んで面白いと思うか、さっぱり分からない。

その罪のゆくえ (ハヤカワ・ミステリ文庫)

今日の一曲

作者はリサ・バランタイン。LISAがいた頃の、m-floで"Come Again"



もう15年も前の曲。では、また。
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映画!映画!『キネマの神様』原田マハ

2016-01-29 | books
ディベロッパーでシネマコンプレックスの担当課長に抜擢された円山歩。社内の風当たりが強くなり、業者と癒着しているという誤った情報を流され左遷。会社を辞めてしまった。娘が会社を辞めたことを知らない父親はマンションの管理人をしている。昔からギャンブルに目がなくて借金を重ね妻と娘に迷惑をかけ続けている。他に映画が大好きでよく昔の映画のことも覚えている。歩が転職した先は映画雑誌。父親が映画マニアであるということとこの転職、そして偶然が作用して、意外な展開が……

おお。これはいい。すごくいい。

まさかあのダメおやじ(年齢的にはダメじいさん)が、あんな風になるとは。ストーリーの意外性がとてもいい。

映画好きならたまらない話だと思う。この本を読んで映画館で映画が観たくなり「007 スペクター」を観に行ってしまった。

キネマの神様 (文春文庫)

今日の一曲

映画と言えば「ニュー・シネマ・パラダイス」 テーマ曲をギターアレンジしたものをPat Methenyで。



では、また。
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北欧ミステリー『特捜部Q 吊された少女』ユッシ・エーズラ・オールスン

2016-01-27 | books
17年前に起こった少女ひき逃げ事件。担当していた警官が特捜部Qに電話してきて、事件について意見を求めてきたが、カールは断ってしまった。翌日警官は勤続40年で引退式の最中に自殺してしまった。ずっと一人で捜査していたのに容疑者を挙げられなかった。あとを特捜部Qに任せたいということなのだろうか。捜査を始めたQ。怪しげな新興宗教と被害者に関係があった、

おー。これはなかなか面白かった。

カール、アサド、ローセの風変わりなメンバーによるシニカルな会話がいい。

途中で、こいつが犯人だと確信した。そして間違いなくそっちの方向に話が進んでいった。しかし、こいつではなかった。そのいい意味での裏切り方が巧かった。

しかし、最近、いや長い間、ろくなレビューを書いてない。すまぬ。

特捜部Q―吊された少女― (ハヤカワ・ポケット・ミステリ)

今日の一曲

被害者の名はアルバーテ。Eric Claptonで"Alberta"



では、また。
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劇薬のような『坂の途中の家』角田光代

2016-01-25 | books
専業主婦の里紗子は、3歳の娘文香、夫の陽一郎と暮らす。文香は最近言うことをきかなくなっており、泣き叫ぶことも多く、とても困っている。陽一郎は悪い人ではないのだが、里紗子の気持ちをちゃんとわかってくれているわけでもない。そんな中、里紗子に裁判員の候補者に選ばれたという通知が来た。補充裁判員という形だが、裁判に参加させられることになった。事件は、母親が赤ちゃんを水を張った浴槽に落としてしまい、その子が亡くなってしまったという虐待死。証人として法廷で証言する人たちの話を聞いていると、自分と重なる部分があまりにも多く、他人事とは思えなくなる……

ううううむ。読んでいてつらくなるほどに、子育ての大変さが刺さる。子どもを産もうかどうしようかと悩む人が読んだら、産むのはやめようと考えてしまうのではないか。そんな劇薬のような小説だった。

つらい気分で読んでいたのだけれど、だんだん里紗子の内面や夫との、絶妙に気が合わない感じに没入していった。決して悪い人ではないのに、でも気遣いの向く方向がずれている。このずれ方が、リアルだしものすごく巧い。(配偶者や恋人を選ぶときに、収入や顔面、外形的な性格のような分かりやすい事柄だけじゃなくて、この小説で描かれているような、「気が合う」「気が合わない」をよく考えるとよいのだろうと思う。しかし結婚してみないと分からないほど、心の奥底に潜んでいることなのかも知れないけれど))

被告の女性に対してシンパシーを感じるのだけれど、他の裁判員の人たちはそれを分かってくれない。その気持ちのずれもまた、せつない。

人の内面を描く小説として、とても高いレベルの作品だった。

坂の途中の家

今日の一曲

結婚する、出産するのは人生の冒険。Coldplayで"Adventure Of A Lifetime"



では、また。
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店名にツッコんでください121

2016-01-23 | laugh or let me die
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輝のような『光のない海』白石一文

2016-01-21 | books
年末に風邪をひいて、治ったはずなのに、ずっと咳が止まらない今日この頃、いかがお過ごしでしょうか。そろそろ寿命が尽きる頃だからでございましょうか。なんて私事は置いておいて。

高梨修一郎は建材商社の社長になって10年。2年前にデパートの実演販売で陶製の水入れを買った。この水入れに入れると水道水でも半日で信じられないほど美味しくなる。水割りにしてもコーヒーにしても。妻と別れてから不調だった体調もよくなった。しかしその水入れを割ってしまい困っていた。実演販売員の名刺が出てきたので連絡してみた。それから不思議な縁が広がってゆく…… 会社は、得意先が倒産するかも知れず、そうすると自分の会社も危うい……死んだ妹、昔会社にいた人など、様々な人の縁がもたらす奇跡とは……

これは良かった。すごく良かった。

いまの花江の言に従うならば、そうやっていのちを支えあっているはずの夫婦であっても、それぞれが、心の真ん中に孤独の空洞を抱えていることになる。
空洞だからこそ、人と人とは支え合うしかないのだろうか?
それとも、人間なんて所詮は、ひとりひとり「バラバラ」に過ぎないのだろうか?
私には、そのどちらでもあるように思える。ただ、結局のところ我々が抱え持つ絶対的な孤独は、どんな相手、どんな出来事、どんな救いによっても決して癒されることはないのだろうという気もするのだった。

という中盤の主人公の独白。高梨はこの後もずっとこんな風に思い続けるとは限らない。

ちょっと人智を超えた何か(水入れ以外にも出てくる)はいかにも白石一文らしい。しかしそれ以外の、主人公が頼まれてもいないのに他人のおせっかいを焼く辺りは、まるで宮本輝作品のよう。主人公を含む何人かが基本的に善人なあたりも宮本輝っぽい。

まあ、私は白石一文も宮本輝も好きなので、それが混淆しても別に構わない。今度は宮本輝が白石一文っぽい作品を書いたりするのだろうか。

私たちが紡ぐ、私たち自身の物語そのものが、その余計だったり決定的だったりする他人の一行によっていつも大きく捻じ曲げられてしまう。私たちはその捻じ曲げられた物語に何とか辻褄を合わせようとチョーク片手に呻吟し、結局は、ろくに辻褄を合わせられぬまま、死という黒板消しによって書きかけの原稿をあっという間に消されてしまう。


光のない海

今日の一曲

本からは何も思いつかない。先日亡くなったDavid Bowieの発表されたばかりのアルバム"Black Star"から、ものすごく死を感じされる"Lazarus"



Youtubeを観ていたら、Madonnaが1月12日のヒューストンのライブで彼のトリビュートとして曲を歌う前にHe showed me, "It's OK to be different"(他人と違っていていいんだと彼が教えてくれた)とか言っていた。(彼女の歌が今一つなのでその動画は紹介しないでおく) 彼は60年代には自分がゲイだとカミングアウトしていたそうだ。その頃の保守的な世界を考えると、勇気のある行動だったのだろう。自分の信じるものを信じ通して生きれば、長い目で見れば幸せになれる。そういうことなのだろうか。私はいったい何を信じて生きているのだろうか。

では、また。
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大河ドラマ『凍てつく世界』ケン・フォレット

2016-01-19 | books
1933年、ロンドン、ロイドは大学生で労働党の青年同盟の役員をしている。母のエセルは国会議員。共に反ファシズム運動をしている。カーラはドイツの少女。母のモードはエセルの親友で、ベルリンの雑誌記者をしている。父のワルターは国会議員。兄のエリックはナチスにかぶれている。モードの兄フィッツは英国の伯爵。長男のボーイは親ファシスト…… というようなややこしい人間関係とヨーロッパを吹き荒れるファシズムの嵐。その嵐に翻弄される人々を描く…

第一次大戦を描いた「巨人たちの落日の続編。

登場人物が多いのと、無駄な描写がないので読むのに結構時間がかかった。しかも4巻もある。

しかししかし、面白い。本当に面白い。重厚長大な人間ドラマが読みたい人は読んだほうがいい。

カーラやエリックの家のメイドが産気づいてしまった。ヒトラー・ユーゲントの制服を着たままエリックは医師の元へ急ぐが、ユダヤ系の医師の奥さんは「よくそんな格好でここへ来れたものね。ユダヤ人の医師に助けを求めるの?」という台詞をぶつける。ユダヤ人を排斥するということが個人のレベルではどういうことなのか、考えさせる。

英国でもファシストと反ファシストの戦いがあったそうで、それが具体的に描かれていて、なるほどファシズムの熱波が襲ったのはドイツだけではないのかと思った。

ロイドが好きになってしまった女性は、ロイドを相手にしなかった。そして結婚してしまった。しかしロイドと親しくなってから、こんな風に思う。

ロイドは頬を預ける枕であり、浴槽を出たときに胸を拭くタオルであり、考えごとをするときにしゃぶる拳だった。

ああ。好きになるとはこういうことなのか。ありとあらゆる場面で必要とする、そんなことなのかも知れない。

ナチス・ドイツが敗戦した後、ソ連から赤軍の兵士たちが押し寄せて、略奪、強姦と言った暴虐三昧に耽る。物資も極端に不足する。アメリカ軍の将校の愛人になるドイツ人女性も出てくる。その女性が言う。

「ドイツの女性は辛い選択をしなくちゃならないのよ。わたしたちは十五年前にドイツの男たちが安易な選択をしたことのつけを払わされているのよ。わたしの父のように、ヒトラーが商売上の役に立つと考えたり、ハインリッヒの父親のように、全権委任法に賛成票を投じた男たちのね。父親の罪が娘たちに罰を与えているのよ」

歴史のお勉強に役に立つんだろうとは思うけれど、単純に物語として抜群に面白い小説だった。

凍てつく世界 I (SB文庫)凍てつく世界 II (SB文庫)凍てつく世界 III (SB文庫)凍てつく世界 IV (SB文庫)

今日の一曲

戦争の歌。Most of them dead, the rest of them dyingと歌うPink Floydで"When The Tigers Broke Free"



では、また。
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真っ当なミステリ『調教部屋』ポール・フィンチ

2016-01-17 | books
ロンドン、銀行の秘書が行方不明になった。結婚しているが、美人だし、スタイルもよく男ごころをくすぐるタイプだった。未解決をずっと追いかけている刑事。女性が行方不明になる事件が30件以上ある。同一犯のものではないかとずっと捜査してきたが成果があがらず、担当を外され休暇をとらされることになった。休暇の間に捜査を無断で進めた・・・・・・女性たちは誘拐されたのだろうか。身代金の要求がない。どの女性も行方が分からなくなるようなタイプじゃない。裏側に潜む邪悪な影は・・・・・・

おっと。これはかなりの好み。タイトルが、そっち系のあれじゃないかと思わせるけれど、全然違う。かなりまっとうな刑事捜査スリラー。単純な犯人探しに留まらない。犯人の造形(はかなり重要なのでネタバレしないけれど)が非常に現代的でリアルですごく気に入った。

刑事の身がだいぶ危うくなるという意味では冒険小説っぽくもある。

タイトルは「狙われる女たち」ぐらいが良かったんじゃないだろうか。タイトルでかなり損していると思う。いや、そっち方面だと誤解されたほうが売れるという計算だったのだろうか。

調教部屋 (ハヤカワ・ミステリ文庫)

今日の一曲

部屋。Creamで"White Room"



では、また。
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メキシコアクション『暗殺者の鎮魂』マーク・グリーニー

2016-01-15 | books
「暗殺者グレイマン」「暗殺者の正義」に続く第三作。

グレイマンは南米にいた。ラオスで昔自分の命を救ってくれたエディーが殺され、彼の家族が危機に瀕していることを知った。エディーはメキシコ出身でアメリカで軍に入った。メキシコに戻り特殊部隊で麻薬カルテルの親玉を殺す任務についていた。しかしその任務に失敗してしまったのだ。狙われた麻薬カルテルの親分ダニエル・デ・ラ・ロチャはさらに、エディーの家族を殺そうとする。グレイマンは彼らの命を救うために……

うーむ。今回の舞台はメキシコ。しかも麻薬カルテル。あまり気が乗らなかった。しかし読み始めれば、読ませどころ満載の爆走トラックに乗車することになる。

基本的には麻薬カルテルVSグレイマンなのだけれど、対立するカルテルは出てくるし、CIAももちろん出てくる。(CIAからはグレイマンは見つけ次第殺せという命令が出ている。なぜなのかいまだにはっきりとは分からない)

グレイマンのハートをつかんだメキシコ人女性のヒロイン像もいい。信心深くて情熱的。中南米の女性がみなそうなのかは不明だけれど、そんなイメージをつい持ってしまう。海外の人が日本の時代劇を観ると、サムライ、ゲイシャのイメージを持つのと同じだろうか。

暗殺者の鎮魂 (ハヤカワ文庫NV)

今日の一曲

悪役はダニエル。Daniel Powterで"Bad Day"



では、また。
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『謎の毒親』姫野カオルコ

2016-01-14 | books
人生相談し、その回答を受けるという形式をとりながら、その人の両親がいかに「毒親」だったかを描写する小説。

よく分からない束縛をする主人公の親。読んでいると楽しいというより苦しい。

しかし救われる部分もある。

読んで良かったとかオススメだと手放しで言える本じゃないけれど、読んだ時間が無駄だったとも言えない。判定不能だ。

謎の毒親

今日の一曲

親の唄。Madonnaで"Papa Don't Preach"



では、また。
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ホラー『ぼぎわんが、来る』澤村伊智

2016-01-13 | books
妻と娘と暮らす男のもとへやってくる恐ろしい怪異「ぼぎわん」 人をさらい、傷つけ、殺す。思い返すと昔、大阪の祖父母の家にやって来たのもあのぼぎわんだったのだろうか。知り合いの民俗学者、オカルトの詳しいライター、除霊できる女性たちの助けを借りるが……

ホラーを読むのは久しぶり。スティーヴン・キングの「ドクター・スリープ」以来。それより前だと、10年以上前に読んだ小野不由美ぐらい前になってしまうかも知れない。

怪物の民俗学的な説明がなかなかいい。

妻と娘を必死で守ろうとする夫の目線で描かれる第一章。そして別の目線で描かれる第二章。この落差。○○だったはずが実はXXだったのか。なるほど。(結構リアルな設定だと思う)

ホラーそのものは読みなれていないので他のホラーと比べることができないのだけれど、物語の盛り上げ方や問題の解決方法がなかなか。

またぼぎわんの描写がそれほど具体的ではないので、読むほうが自由に想像できるのもいい。

今日の一曲

ぼぎわん。ぼぎーと言えばやはりこれ。沢田研二で「カサブランカ・ダンディ」



昔寮で暮らしていたとき、食堂のテーブルの上に立ってこの歌をうたったことがあった。でもなんでそんなことをしたのかは覚えていない。では、また。
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ホラー映画「イット・フォローズ」

2016-01-11 | film, drama and TV
映画評論家の町山智浩氏がラジオでめちゃくちゃ怖いと言っていたので観てみた。

デトロイト。町がやや荒廃している。ジェイは若い女性。彼氏とセックスをすると直後に言われる。君のことを何かが追いかけてくる。それから逃げなくてはならない。俺も前にセックスした女性から感染したのだ。死んではならない。そうしたら俺のところにそれが戻ってくるからだ。何だかよく分からない不条理なことを言われるジェイ。そして彼女のところにやってくる、それ。妹や友達に助けてもらいながら、それを撃退できるのか……

自分で書いていて、これでは何だか分からない。しかし説明しては面白くない。

一緒に観に行った人はあまり怖くなかったと言っていた。私は結構怖かったし、結構楽しめた。ネット検索してみると賛否両論のようだ。

70年代の設定なのか現代の設定なのか(たぶんわざと)混乱するような設定だったり、父親が出てこないと思ったら(非常に分かりにくい形で)登場したり、母親はちらっと横顔しか出てこなかったり、登場人物たちの関係がよく分からなかったりというような、観た後誰かと語りたい系の映画。

「それ」が何を指しているのかも興味深い。

予告編↓




アメリカのドラマや映画は絶世の美女とまでいかない、クセのある美人とか精神的に少し不安定な感じの美人を起用するのがすごく巧いと思う。

では、また。
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子供の脳死『人魚の眠る家』東野圭吾

2016-01-09 | books
夫は先端機器メーカーの経営者をしていてひどく忙しい。妻は娘の小学校受験で頭がいっぱいだった。夫の不貞がばれてしまい、離婚することになった。その矢先、娘がプールで事故に遭ってしまった。医者の診断は脳死。臓器移植コーディネーターが呼ばれた。しかし土壇場で夫婦は移植を断った。最先端の医療技術の費用でも支払えるだけの金はあった。しかし娘はそう簡単には元には戻らない…… 娘の脳死を受け入れらない母親と周囲のぎくしゃくとした感じは……

脳死。人はどの段階で死んだと言えるのだろうか。哲学的で科学的な問い。

この問いに対して、考えられるアプローチはすべてやり尽くしたと言っていいぐらいよく考えられている。東野圭吾は気に入る作品とそうでない作品の落差が大きいのだが、これはなかなかよかった。

ちょっとおかしくなってしまう母親。たしかにこんな風になってしまうのも仕方ないとも思うけれど、この辺りは夫に同情してしまうところはある。こういうキャラ設定も巧い。

さて、自分の子供が、脳死と診断された。あなたなら、どうしますか?臓器移植に合意しますか?

人魚の眠る家

今日の一曲

人魚。小泉今日子で「渚のはいから人魚」



では、また。
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シリーズ最高傑作『エコー・パーク』マイクル・コナリー

2016-01-07 | books
自分におあずけして、なかなか続編を読もうとしなかったボッシュシリーズ。しかし、今回はたまらんかった。

LAPD未解決事件担当のボッシュは93年に起きたマリー・ゲスト失踪事件がずっと気になっていた。殺害された可能性が高い。怪しい男がいたが、その男の親は金持ちで、有能な弁護士がつけられてしまい接近することすら難しくなった。別の事件の担当刑事から連絡があった。マリー・ゲストの事件のファイルが見たいと。連続殺人の容疑者として逮捕された男がマリー・ゲストを殺したと自供するらしい。マリーが埋まっている場所を教えるかわりに?、司法取引をして、死刑を免れて終身刑にして欲しいのだ。被害者は他にも9人以上いるらしい。担当の検事オシェイは検事局長の選挙直前。事件解決の報道が欲しいのだ。そういう意味では正義が損なわれる可能性が高く、司法取引には気が進まないボッシュだったが、容疑者レイナード・ウェイツがマリーが埋まっている場所を教えるという現場検証へ同行することになった。しかし、ウェイツは偽名であり、何者か不明だった。そして現場で起こったことは・・・

これはボッシュシリーズ最高傑作と言ってよいだろう。

予期しない展開、うごめく謀略、悪人のキャラ設定。すべてに無理がなく、リアリティーも沸騰しそうなくらい。

こんなことが、LAでは、LAの法執行機関では、当たり前のように行われているのかも知れない。恐ろしい。

エコー・パーク(上) (講談社文庫)エコー・パーク(下) (講談社文庫)

今日の一曲

エコー。辻仁成のエコーズで「Zoo」



では、また。
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店名にツッコんでください120

2016-01-05 | laugh or let me die
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