「赤めだか」立川談春 扶桑社
今、一番「聴きたい」「観たい」落語家、立川談春のエッセイ 立川流入門のいきさつから、師匠立川談志の日常、稽古、弟子たちの境遇、二つ目へと登ってゆく難しさ。落語家が書くエッセイはかなり多く出版されているが、ベストと言いたい。
いや、ここ数年で出たエッセイの中でもベスト・オブ・ベストだと言いましょう。
文章の上手さ。それはある。伝説の天才、談志のことが分かる、それもある。落語の世界のしかも底辺の生活が分かる、それもある。でもこの「赤めだか」が いい!と言わしめるには何かが足りない。
それは、読者に媚びず嘘をつかず自慢をせず、エッセイにありがちなそういう余計なモノが全て削ぎ落とされているからではなかろうか。
後輩だった志らくに抜かれる箇所、なぜか築地の魚河岸へ1年も修行に行かされる話、談志に寿限無をやれと言われる箇所、ヨネスケらと飲む話、そしてなんと言っても談志と絶縁状態にある小さんに稽古をつけてもらう談春、人間国宝米朝に稽古をつけてもらう談春。読みどころは多く、落語ファンは涙を流して読まねばなるまい。