頭の中は魑魅魍魎

いつの間にやらブックレビューばかり

2018年夏ドラマちょいとレビュー

2018-07-30 | film, drama and TV
「義母と娘のブルース」・・・綾瀬はるかが妻を亡くした子持ちの竹野内豊と再婚する。仕事はできる女なので、仕事と同じアプローチで娘を懐柔しようとするが上手くいかないという話。綾瀬のキャラが不自然過ぎるのと、竹野内が役にはイケメン過ぎ。娘役の子が可愛いのが救い。

「絶対零度」・・・ビッグデータ解析によって、未然に犯罪を防ぐという刑事ドラマ。ストーリーはまあまあ。「わにとかげぎす」以降、本田翼がすごく巧くなってる気がする。

「健康で文化的なもの最低限度の生活」・・・区役所の新人ケースワーカーの苦労を描く。暗めの話だからこそ鬼気迫るリアルな話にするか、思い切ってコメディにすればいいのに中途半端。憲法25条とか、富める者は貧しい者を救うべきなのかとか、色々と考えさせてくれる「教育的」なドラマになるチャンスなのに、チャンスを生かしきれてない。生活保護が単なるネタにしかなってないのが激しく残念。

「高嶺の花」・・・華道の家元の娘が結婚式当日にドタキャンされる。お金のなさそうな、でもいい人の自転車屋さんと知り合って恋するのか?という話。うーん。

「グッド・ドクター」・・・山崎賢人演じる小児科医はサヴァン症候群だができる奴。周囲とぶつかりながらもまた周囲に色々考えさせる。今期の中ではかなり面白い方。

「探偵が早すぎる」・・・滝藤賢一演じる探偵が、多額の遺産の受取人になってしまったために命を狙われる女子大生広瀬アリスのボディガードになる。1回目ちゃんと観てなかったので面白くなかったのだけれど、2回目はちゃんと観たら面白かった。

「透明なゆりかご」・・・産婦人科で看護師見習いのバイトを始めた清原果那。かなり真面目な話だけれど、面白い。

「dele」・・・「自分が亡くなったらスマホやパソコンのデータを遠隔で消去して欲しいという依頼を受け付ける仕事をする足の不自由な山田孝之と、相棒の菅田将暉。これは面白い!今期ナンバーワン。

「サバイバル・ウェディング」・・・雑誌編集者波瑠が、編集長伊勢谷友介に婚活を強制される話。面白さが発見できなかった。初回観たドラマの中ではワースト。

「この世界の片隅に」・・・戦時中の呉に嫁いだ女性の話。アニメも良かったけれど、こっちもいい。主演の松本穂香がピッタリ。アニメで声を担当していたのん(元能年玲奈)がこの手の役にははまり役だと思っていたけれど、彼女に駆逐されてしまったかも。

「ヒモメン」・・・看護師の川口春奈と、同棲中の彼氏窪田正孝はヒモ。ちょっと天然な感じの川口と、悪い人じゃないんだけれど全く働こうとしない窪田それぞれに合っている気がする。


今期楽しみなのは、「dele」と「この世界の片隅に」 それ以外のドラマは2時間にも満たない映画「カメラを止めるな!」に完全に負けてる。ドラマ、もちっと頑張れや。

今日の一曲

向井秀徳で、「はあとぶれいく」



では、また。
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『43回の殺意 川崎中1男子生徒殺害事件の深層』石井光太

2018-07-28 | books
2015年、川崎で起きた、中1の少年惨殺事件。43回もカッターで切られた。被害者の生い立ち、加害少年たちの生い立ち、事件の経緯を追うルポルタージュ。

簡単に言ってしまうと、「ガラの悪い」土地で、可哀想な育てられ方をした「ガラの悪い少年」が、可哀想な育てられ方をした「ガラの悪い少年」を殺した事件ということになる。

そう言うと、「まるで自分とは関係ない」事件かのように自分から切り離せるはずだがらなかなかそうはいかない。

妙な親近感とリアリティが、まるで「自分の近く」で起こったことのように、思わせてくれる。

加害者の親に誠意がないとか、離婚した被害者の母親が父親に対して、「信じられない」ような態度に出るとか、加害者の少年が前に起こした事件の時に、少年院に送致しておけば、こんな事件は起こらなかったはずだとか、事件そのものの周辺で考えさせられることの多い収穫だった。

(事件そのもののについて、ほぼまったく全然説明してないけれど、こんなレビューで良いのだろうか)

43回の殺意 川崎中1男子生徒殺害事件の深層
石井光太
双葉社


今日の一曲

中村雅俊で 「俺たちの旅」



では、また。
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『噛み合わない会話と、ある過去について』辻村深月

2018-07-26 | books
大学で同期だった男子ナベちゃんが結婚することになった。女子たちからは、人畜無害のいい人だと思われていたナベちゃん。結婚式に招待されたが、「ナベちゃんの嫁がヤバいらしい」という噂が立った・・・<ナベちゃんのヨメ>

松尾先生はアイドルグループで大成功した佑くんの弟の担任だった。テレビの撮影で松尾が教える小学校に佑くんが来るという。自分の事を覚えているという彼から告げられた意外なこととは・・・<パッとしない子>

自分に対して強権的だった母親ついて語る友達・・・<ママ・はは>

昔クラスで浮いていたゆかりは、その後塾の経営と教育コメンテーターとして有名になっていた。同じクラスでは上位カーストにいた早穂は情報誌でライターをしている。連絡を取りにくいと思っていたが思い切ってインタビューを申し込むと、意外にもOKしてくれた。ゆかりの口から出て来たのは・・・<早穂とゆかり>

どれも巧い。ネタバレしたくないので、上手く説明できてないけれど、ヒネリやオチが効いていて、人と人の記憶違いや、考え方の相違など、人間の闇の部分が巧妙に削り出されている。

悪い人ではない。真面目で、そして本音で生きているこの人には、みんながこの場所で建前で話しているなんていう、なあなあの発想がそもそもないのだ。裏表がなく、みんなが自分のように真剣にここで問題解決がしたいのだと思っている。理不尽でも我儘でもない。悪意だってもちろんない。ただ少し、ずれているだけなのだ。

「真面目な人って、義務が得意なんだよね」
「義務?」
「うん。することを与えられるとそれは一生懸命、とにかくこなすことを考える」

「ナベちゃん、幸せなんだよ。相手に必要とされて、自分も相手を必要として。そういう人に巡り合えたんだよ。それでいいのかよってみんなは言うけど、きっとそれでいいんだよ」

読んだ人と語り合いたくなる、地味なのに深い短編集だった。

噛みあわない会話と、ある過去について
辻村深月
講談社


今日の一曲

Chicagoで、"25 or 6 to 4"



では、また。
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映画「カメラを止めるな!」

2018-07-24 | film, drama and TV
ラジオで紹介されたりしていたので、Twitterで検索すると、絶賛の嵐。赤江珠緒さんが、映画館に行ったら満席で入れなかったそうだ。池袋と新宿の映画館では、何回も連続で満席だそうで、平日すら満席らしい。しかも事前に知識を入れないで観た方が良いとの事。

興味はあるけどなー、と思っていたら、何と川崎チネチッタでやっているではないか。先週始まったらしい。しかもネットで席が予約できるとな。よし、と予約したのは2日前。空席がほとんどだった。しかし、当日に見たら、全て売り切れていた。川崎ですら売り切れるのか・・・

で、観た。

すげー、すげーよ。面白いなんてもんじゃないよー。特に後半は震えるほど良かったよー。

一応ゾンビ映画なんだけれど、特にゾンビ好きじゃなくても大丈夫。映画好きなら、絶対観た方がいい。いや、面白いものが好きな人なら、エブリバディ楽しめると思う。

あとで詳しくTwitterで検索してみたら、何回も観た人が沢山いるとか、見終わった後、パンフを買う列に並んでいたら、後ろの一人で並んでいる女性が、別の一人で並んでいる女性に「話しかけてもいいですか、誰かと話したくて」と話しかけたとか、2時間かけて京都に観に行ったけど良かったとか、絶賛しか見当たらなかった。

それと誰もネタバレしてない。これだけ徹底されているのは、この映画が愛されているからだろう。

今年ナンバーワンどころか、ここ10年で観た映画でナンバーワンだった。

(もし観ると決めたなら、事前に内容については一切調べないことをオススメします。Youtubeでオフィシャルの予告編が観られますが、若干ネタバレしてるので観ないほうがいいです)


今日の一曲

Sweet Robots Against The Machine 3 with Kahoで、"Dakitime"



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『辺境の怪書、歴史の驚書 ハードボイルド読書合戦』高野秀行・清水克行

2018-07-22 | books
「世界の辺境とハードボイルド室町時代」の辺境作家高野と明治の清水先生の対談は、課題図書を決めて読んで来て話し合うという読書会形式になった。取り上げるのは、

辺境に生きる者について考察する「ゾミア」、「世界史のなかの戦国日本」、イブン・バットゥータの全8巻の「大旅行記」、平将門の乱を記す「将門記」、義経らが現代語で話す「ギケイキ」、文明から孤絶した部族を描く「ピダハン」、旧石器時代から古墳時代までを描く「列島創世記」、標準語について考える「ま日本語スタンダードの歴史」

どの本もかなり難しそう。読んだことのあるのは、「ピダハン」だけ。読みたいと思ったのは町田康の「ギケイキ」。

高野はこっち側(どっち側?の人だと思っていたけれど、歴史に相当詳しく、教養溢れる人だったのに、ちょっと驚いた。ふざけてるだけの人じゃないんだ。

辺境の怪書、歴史の驚書、ハードボイルド読書合戦
高野秀行・清水克行
集英社インターナショナル


今日の一曲

Bill Evansで、"My Foolish Heart"



では、また。
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店名にツッコんでください193

2018-07-20 | laugh or let me die
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『凶犬の眼』柚月裕子

2018-07-18 | books
「孤狼の血」の続編。と言っても、内容はほぼ忘れてしまった。

広島県警の日岡は左遷され田舎の駐在になっていた。暴力団同士の争いが激化しており、組長が殺害される事件まで起こっていた。以前の事件で信頼を得た、義誠会連合の国光は指名手配がかかり逃亡中。この国光が、日岡に接触してきた・・・

前作を読んでなくても楽しめるけれど、読んでいた方がずっと楽しめる。そして忘れているよりも、覚えている方がいい。忘れていたので、やや不明な箇所があった。

いわゆるヤクザ的ドンパチものなので、「仁義なき戦い」が好きな人にはオススメ、そうでない人には退屈かも知れない。「孤狼の血」の映画は観てないのだけれど、映画化される=割とみんなに受け入れられるということなら、本作も広く受け入れられるのだろうか。よくワカラン。

前作の方がよりスリリングだったようか気がするけれど、よく覚えていない人間の言う台詞じゃないだろう。

凶犬の眼
柚月裕子
KADOKAWA


今日の一曲

Duffyで、"Mercy"



では、また。
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『六月の雪』乃南アサ

2018-07-16 | books
祖母は昔、台湾で暮らしていた。日本の植民地だった時代。孫が、祖母の思い出の地を巡るという話。

日清戦争の後、下関条約で台湾が日本に割譲されたことは教科書に載っていた。しかし、詳しいことは分からない。ので、その辺を説明してくれる「教養書」としては悪くない。

でも小説として面白いかと言うと、ちと長すぎ。あ〜ああ〜長すぎは〜きょうも〜雨だった〜。なんでやねん。どこがやねん。

と意味のないことを書いてしまうくらい、他に特に書くことがない。

あ、そうそう。台湾にいた知り合いにには、「ペタコ」という謎のあだ名を持つ友人がいたのだけれど、その語源の謎は解けたような気がする。

六月の雪
乃南アサ
文藝春秋


今日の一曲

浮雲で、「夢の途中」



来生たかおはやはり偉大だった。では、また。
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『弁護士アイゼンベルク』アンドレアス・フェーア

2018-07-14 | books
ドイツミステリー。やり手の刑事弁護士ラヘル・アイゼンベルク。夫は事務所の共同経営者なのだけれど、浮気をしたので、家から追い出した。しかし事務所を分割するのは面倒なので、仕事の上ではまだパートナーだ・・・ホームレスの少女が突然やって来た。知り合いのホームレス(ハイコ・ゲルラッハ)が殺人事件の容疑者として逮捕された。弁護して欲しいとのこと。女性を惨殺した、サイコな事件。容疑者に会ってみたら、なんと昔付き合っていた、物理学の教授だった・・・弁護することになったが、彼は依頼人として理想とは程遠く、全てを打ち明けてくれるわけではない。そして自白してしまった!・・・並行して描かれるのは、アルバニアから逃げて来た女性のこと。ドイツ国内でも何者かに追われている。この事件との関わりは?女性惨殺事件は解決するのか・・・

これはかなり面白かった。

サイコ・スリラーは好物なのに、リーガル・サスペンスという美味なおかずまで添えられている。そして、二転三転という甘いデザートまで頂けた。

アイゼンベルクははっきりと書かれてはいないけれど、40歳という歳の割に若くて美しく見え、また、気にくわない職員をクビにしたりする、「強気の美人」キャラ。しかし、反抗期の娘や、別居中の夫との関係や、そして元彼氏の、など人間クサイ部分を沢山描かれる。また、やや違法なことをしてでも勝とうとする「今までなら男性が担当していた」役どころを演じている。

時代はどんどん変わっているということなのだろう。ミスが未婚、ミセスが既婚を指していたのが、ミズという表記に変わってきた。今度は、男性もミスター一択ではなく、未婚はミスッター、既婚はミズッターいうような表記に変わり、男女が入れ替わるのかも知れない。

弁護士アイゼンベルク (創元推理文庫)
アンドレアス・フェーア
東京創元社


今日の一曲

Barry Manilowで、"Copacabana"



では、また。
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『平城京』安部龍太郎

2018-07-12 | books
阿倍比羅夫は白村江の戦いでの敗戦責任をとらされ、公職を退いた後も私的な水軍を率いていた。本作の主人公、息子の阿倍船人は遣唐使船の船長をしていたが、ある事件のせいで帰国できずしばらく唐から帰国出来なかった。帰国してからも腕に焼印を押された上で、都から追放された・・・藤原京から平城京への遷都を命じられたのは船人の兄、宿奈麻呂。船人に協力するような頼んできた。膨大な人数が必要な新都建設。人の確保、小屋の建築、天智天皇派と天武天皇派の対立と、遷都反対派による妨害。果たして平城京建設はうまくいくのだろうか・・・

若き日の吉備真備や阿倍仲麻呂が登場したり、元明天皇や藤原不比等らの大物が出てきたりして、歴史の裏側を見ているような感じがする。

新都を作るのがいかに大変なのか。710年、「なんと大きな平城京」としか覚えてなかった。奈良公園に鹿が沢山いた、ぐらいしか印象に残ってなかった奈良。少し立体的な感じがしてきた。小説としてすごく面白いかと訊かれれば、まあまあだと答える。好きな人だけが読む類。お勉強になったかと訊かれれば、大いにと答える。

平城京
安部龍太郎
KADOKAWA


今日の一曲

Donald Fagenで、"I.G.Y."



では、また。
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『蒼き山嶺』馳星周

2018-07-10 | books
徳丸は長野県警を辞めて、北アルプスの遭難対策協議会で救助と山岳ガイドをしている。山を歩いていると、足元がおぼつかない中年男性がいた。よく見れば、大学の山岳部で同期の、池谷だった。今は警視庁公安部にいるという。久しぶりに登った山なので、一人では心もとないということで、ガイドをすることになった・・・池谷を追ってくる者達がいるようだ。池谷は日本海まで抜けたいというが・・・

山岳蘊蓄が沢山ある。冬場のラッセルのつらさ(やったことは勿論ない)とかアイゼン、ピッケルの重要性とか。その辺は経験はなくても、何度か読んだことはあるので、さほどの新鮮さはなかった。それでもある程度は面白く読めた。

しかし、肝心のミステリーの方がイマイチ。池谷は実は◯◯だったという意外性はあるものの、それ単発で終わってしまった感あり。

蒼き山嶺
馳星周
光文社


今日の一曲

Moodoïd & Wednesday Campanellaで、"Langage"



水曜日のカンパネラと誰だかよく分からない外人のコラボ。では、また。
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『開かれた瞳孔』カリン・スローター

2018-07-08 | books
ジョージア州グラント郡、サラ・リントンは小児科医であり、検死官でもある。レストランのトイレで、知り合いの女性で盲目の教授が惨殺されているのを見つけた。そして、別の女性も被害に・・・事件を、サラの視線で、そしてサラの元夫のジェフリーの視線で、そして被害者シビルの双子の妹であり刑事でもあるリナの視線で描く・・・

書評家北上次郎氏の大プッシュ(あちこちの雑誌で褒めてる)なのが、カリン・スローター。その処女作がこれ。

サイコ・スリラー(あるいはサイコ・サスペンス、どっち?)の手本のような作品で、キャラもプロットも良くできている。でも及第点程度かなと思いつつ読んでいたら、342頁を読んで椅子から転げ落ちそうになり、389頁を読んで、本が手から転げ落ちそうになった。

そう。意外性。相当に捻られた意外性。これが素晴らしい。犯人が誰だかは途中で想像できてしまったけれど、そのぐらい誤差の範囲内。

サラとジェフリーという、元は結婚していた二人の微妙な距離感がいい。リナという仕事はできるけれど、かなりキレやすいキャラがいい。

そして、サラの抱えるトラウマ。そして、おぞましい、おぞましすぎる殺し方。デビュー作でこのクオリティ。続編を読むのが楽しみ

開かれた瞳孔 (ハヤカワ・ミステリ文庫)
カリン・スローター
早川書房


今日の一曲

水曜日のカンパネラで、「かぐや姫」



最近テレビでリードボーカルのコムアイの姿をやたらと見かける。では、また。
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店名にツッコんでください192

2018-07-06 | laugh or let me die
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『ひと』小野寺文宜

2018-07-04 | books
鳥取から東京に出て来た、柏木は大学を中退した。親を失って経済的に苦しくなったからだ。今手元には55円しかない。住んでいる所から近い、砂町銀座の惣菜屋さんでコロッケを食べて、ここで働こうと決めた。「おかずの田野倉」での人間関係。鳥取時代の同級生の女性との再会。いつも金銭的に苦しい生活を送りながらも、楽しく生きている。ずっと他人に「譲る」ような人生を送ってきた彼が最後に・・・

これは良かった。素晴らしく良かった。書評家の北上次郎氏が勧めていたので読んだのだけれど、さすが北上センセイ。面白さ、半端ねえ(半端ないって言葉、誰が言い出したんだろう?)

ドキドキハラハラするような展開はほとんどなくて、かなり地味な話。惣菜屋さんで働く、慎ましい青年の話。なのに、どういうわけか頁をどんどんとめくってしまう。初めて読む作家だけれど、表現の仕方とか、文章との相性がいいのかも知れない。

そして、ラスト。そう来たか。巧い。がんばれ、柏木!と思わず応援してしまう、ステキな小説だった。

ひと

今日の一曲

ひとと言えば、Humanということで、The Human Leagueで、"Don't You Want Me"



では、また。
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『ののはな通信』三浦しをん

2018-07-02 | books
横浜、石川町駅近くの中高一貫女子校フランチェスカ。野々原茜は牧田はなに出会う。仲が良く、毎日のように手紙をやり取りしている。そして気づく。お互いの恋心に。昭和の終わりから平成にかけての女性同士の恋の結末は・・・手紙とメールだけで描く。

なかなか面白かった。長者町5丁目とか扇町など馴染みのある地名がよく出て来る。(長者町5丁目の交差点で待ち合わせて、扇町のラブホテルへ行くという表現が出て来るけれど、結構遠いので、なぜそこで待ち合わせる?)

二人のキャラクターやストーリー。卒業後の進路が別々になる二人のその後。おばさんになった彼女たちの人生。意外なものになる。

ドラマ『白い巨塔』で描かれたような教授夫人会が、いや~な感じなのは、そこに男性社会の地位や立場が、そのまま持ち込まれているからたという気がするの。夫の出世は私の出世。夫の地位はすなわち私の地位、といったような。また、夫を含めた周囲のひとも、同じ論法で「内助の功」を暗黙裡に期待し要求する感じ。それは実は、女子高的な単性の世界とはまったくちがうものだと思える。

私は幼いころからずっと、自分の親とどうもしっくりいかないと感じてきました。けれど、両親が私を愛していたとは思わない。私の求める愛と、親から注がれた愛とが、少しずつずれていただけで。子どものころの私が、大きな植木鉢に植わったひょろひょろした苗木だとしたら、両親は鉢の端っこ、しかも片側の隅だけに、豊富に水を注いだようなものです。「ああ、まだそこまでは根がのびていないのに」、「少し根がのびたけど、そこだけにそんなに水をもらっても根腐れしてしまうのに」という感じ

夫は、「べつにそんなことどうでもいいと思って」と言うんだけど、どうでもよくないよね?これが男女のちがいってものなのかも、と愕然としたわ。女だったら、ひとつのお葬式に参加しただけで、八百ぐらいの情報を集めてくるわよ。先生のお孫さんの人数から、友だちのだれが不倫してるかまで、観察と会話からぬかりなく把握してくるわよ。

必ずしも同性愛小説というわけではなく、人間を表現する道具の一つとして使われているだけ。最大の難点は長いこと。特に第3章が長い。それだけが残念。

ののはな通信

今日の一曲

Paul McCartneyで、"No More Lonely Nights"



では、また。
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