頭の中は魑魅魍魎

いつの間にやらブックレビューばかり

『中国の歴史』1~3陳舜臣

2012-03-31 | books

「中国の歴史」陳舜臣 講談社文庫 1990年(1986年平凡社より刊行されたものに加筆訂正)

全9巻の内の3巻しか読んでないので、結論じゃない。「阿片戦争」の作者による。

これを読んで自分の知らない中国史を詳しくなっちゃえととか、流れをつかみたいという、本読みがあまり持ってはいけない下心を持って読んだため、あまり得るものがなかった。

あまりにも目的が限定されていると、読書が無意味になるという好例だった。

著者が悪いのではなく、読んだワタシが悪い。今回は人様に読ませるレビューじゃなくて、自分用のメモ。



中国の歴史(一) (講談社文庫―中国歴史シリーズ)
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『あなたの本』誉田哲也

2012-03-30 | books

「あなたの本」誉田哲也 中央公論新社 2012年(初出はアンソロジーに所収されたもの、C★NOVEL、中央公論新社Webで連載したもの、書き下ろし)

奇妙な味の短編が7編。

暴力をふるう彼と別れ逃げるようにして姉と田舎へ帰る。しかしもしかしたら、私彼のこと殺したのかも知れない…「帰省」 中三の僕が好きになってしまったコンビニ店員の名前は、天使。偶然街で会った彼女はトンデモないことを言い始める…「天使のレシート」 父親がこっそり持っていた本には、何と私の未来が書かれていた。そこを読めば自分の未来が分かる。でも読んでしまうと…「あなたの本」 スケート教室で知り合った美少女は全日本レベルのスケーターだった…「見守ることしかできなくて」 宇宙から送り込まれてきた諸星団吉は、地球で交番勤務させられることになる…「交番勤務の宇宙人」

表題作「あなたの本」のラスト、「見守ることしかできなくて」のせつない少年の気持ちとラストがすごくいい。ウルトラセブンを連想するしかない、そしてトミー・リー・ジョーンズを連想するしかない「交番勤務の宇宙人」の設定、私は結構好きだ(バカバカしいと思う人も多いだろうけど)

私は、湯船につかりながら1時間10分で読み終えてしまった。早ければいいというわけじゃないし(イツモアナタハヤイジャナイノヨ)、遅ければいいというわけでもないのだろう。しかし自分だけの個人的な作業なら(ヒトリデスルナンテアナタハサビシイヒトダワ)、早くても遅くても好きにすればいいのだろう。

では、また。



あなたの本
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Persons Unknownとthe killingという海外ドラマ+(ストレンジャー6)+(リベンジ)

2012-03-29 | film, drama and TV

スカパーのsuper drama TVでやっているTHE KILLING/キリングをずっと観ているけど、これがなかなか。




2012年1月~3月の日本のドラマは「最後から二番目の恋」以外は初回しか観てないかったけれど、海外ドラマは観ていた。

デンマークで18歳の女子高校生が殺害される。その容疑者としてあがった議員は現在市選挙に出馬する直前である。誰が真犯人なのか、二転三転する。被害者の両親、刑事、議員の周囲を細かく描写してゆくと…

て感じ。アメリカで既にリメイクされてるとか、英国ではテレビ放送で高い視聴率とったとか。初回は、全キャスト紹介の形式をとっているのであまり面白くないが、2回目以降は面白さが加速する。

FOX CRIMEで放送中のPersons Unknown



何者かに拉致され、目が覚めたらホテルの一室にいた。部屋を出ると、同じように拉致された男女がいた。しかし拉致された者たち以外にこの町には誰もいない。まるで捨てられたようなゴーストタウン。誰が何の目的でこんな面倒なことをするのか…

まだ終わっていないけれど、なかなか面白い。

ドラマは好きだけど、最近の日本のドラマはちょっとなーという方は、騙されたと思ってスカパーでドラマを観てみるのもよいのでは。もちろんレンタルDVDでもいいわけだけど。

日本・中国・韓国共同制作のストレンジャー6/Strangers6



飯田譲治脚本・監督。フジテレビとWOWWOWが同時に放送してる。

これはちょとどうかなという感じ。ネタが巨大地震で、それを防ぐことができる、っていう設定がちょっと私には面白く感じられなかった。一応二回目も観る予定だけれど。

Dlifeで放送中のリベンジ

タイトル通り復讐の話。



既視感あり。自分の父親が無実の罪で…父を陥れた奴らに対して…

アメリカのイケメンと美女が繰り広げる、シドニー・シェルダン的世界。SEX AND THE CITYとかビバリーヒルズ青春白書が好きな人向けなように感じられた。

では、また。
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『世界史サミット 同時代を生きた偉人たちが国境越えて大激論!』浅野典夫

2012-03-27 | books

「世界史サミット 同時代を生きた偉人たちが国境越えて大激論!」浅野典夫 徳間書店2012年

昔高校の世界史をしていた知り合いに教えてもらった「世界史講義録」というサイトがすごく面白くて少しずつ読んでいる。そこの著者が本名で書いたのが本書。同じ時代を生きた歴史上の人物が集まって話をしたらこうなるというもちろん架空の話。

これは面白い。この人物とこの人物が同じ時代に生きていたのか、というのも面白いし、会話をさせるとまたさらに面白い。


第1回サミットは、216年で、ローマのカラカラ帝、曹操、諸葛亮、卑弥呼。議題は「市民権は必要か」

第2回は、618年厩戸王、隋の煬帝、東ローマ帝国ヘラクレイオス1世、ヴァルダナ朝ルシャ・ヴァルダナ 。「議題はイスラームの苦悩」

第3回は、1077年、ノルマンディー公ウィリアム、ローマ法王グレゴリウス7世、白河天皇、宋の王安石。「政治と宗教」

第4回1215年、イングランドのジョン王、高麗の高宗、源実朝、チンギス・ハーン。「モンゴルの脅威」

第5回1453年、オイラトのエセン・ハーン、オスマン帝国メフメト2世、足利義政、フランスシャルル7世。「百年戦争の終結」

第6回1600年、エリザベス1世、徳川家康、ムガル帝国アクバル帝、イタリアの学者代表ジョルダーノ・ブルーノ。「打倒!無敵艦隊」

第7回1689年、徳川綱吉、ピョートル1世、ルイ14世「絶対君主は是か非か」

第8回1793年、ジョージ・ワシントン大統領、マリー・アントワネット、エカチェリーナ2世、本居宣長、清の乾隆帝 。「啓蒙君主は国家を救うか」

第9回1865年、リンカン大統領、坂本龍馬、カール・マルクス 。「資本主義の矛盾」

第10回1900年、ハワイのリリウオカラニ元女王、フィリピンのエミリオ・アギナルド大統領、西太后 。「押し寄せる帝国主義」

紀元前特別対談B.C.205年 、ハンニバルと項羽 。「名将の条件」



どうだろう?集まった人の名前だけも読みたくなるけど、議題を見たらもう読みたくてたまらなくなってしまう。(わけないか?)

歴史上の人物が言ってはいないけど言いそうな言葉があちこちにあって、例えば第6回では、エリザベス1世がヘンリー8世が英国国教会を作った前後の事情を説明する。すると家康はなぜ離婚するのに誰かの許可がいるのだ?と尋ね、アクバルは、言う。

なぜ神と人の間にローマ教会が割り込んでくるのか。人は皆一人ひとりが直接神と向き合えばいいのだ。神の意志を解釈する仲介者などいらぬはず。(124頁より引用)


おお。確かに。カトリックでは神父がいてプロテスタントでは牧師。神父は神の代理人であって、牧師は違う。もし神がいるとして(それが人間の妄想の産物なら話は別だけど)、それを人間が代理できるという考えよりも、アクバルが言うように信仰なんて個人のものだからという考えの方が納得できる。ふむ。ワタシはカトリックよりプロテスタント寄りだったのか(いやそういう問題ではないのか?詳しくないのでてきとーなこと言ってはアカンか)などとどうでもいいことを思ったりするのも面白い。

30万部も売れたというウィリアム・マクニールの世界史や、網野善彦の「日本史を読みなおす」も悪くないけれど、そんな小難しい本が売れるならこんな本が売れてもいいんじゃないかなとも思う。

特に昔歴史を勉強したんだけどそれほど面白くなかったとか、すっかり忘れてしまったという人にオススメ。

では、また。



同時代を生きた偉人たちが国境越えて大激論!開催!世界史サミット 世界史 上 (中公文庫 マ 10-3)日本の歴史をよみなおす (全) (ちくま学芸文庫)
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『仙台ぐらし』伊坂幸太郎

2012-03-26 | books

「仙台ぐらし」伊坂幸太郎 荒蝦夷 2012年

仙台の出版社の「仙台学」という雑誌に書いたエッセイ+書き下ろし短編小説。

タクシーの話や、外を歩いていると声をかけられる話、心配性な話、震災の前後の話など。
2011年8月「震災のこと」というタイトルではこんなことを書いている。

三月下旬、まだ小説を書く気分にはなれなかったにもかかわらず、何とか日常に戻ろう、と喫茶店でパソコンを叩いていたのだけれど、すると以前にもあったことのある男性が寄ってきて、「こんな大変ことが起きちゃったけれど」と言った。「また楽しいのを書いてくださいね」
うまくは言えないのだけれど、その時、僕は、「ああ、そうか」と思うことができた。「僕は、楽しい話を読みたいんだ」と気づかされた。
もしくは、ネットに溢れる原発事故に関する情報に疲弊し、「情報は僕を救ってくれない」と思ったことも関係しているかもしれない。様々な情報が世の中には氾濫している。本当のことも多いのかもしれない。ただ、だからと言って、震災以降の情報で「知っておいて良かった」と癒されたものはほとんどなかった。むしろ、心がくたびれ、陰鬱な気持ちになるものが多く、全く情報を気にせず生活をしていた人と僕とでいったい何の違いがあったかといえば、僕のほうが不安でおろおろしていたという、それだけのことではないか(164頁より引用)


確かに。

震災はもちろん、震災以外の諸々の情報。マスメディアが毎日発する莫大な量の情報のうち、「知ってよかった」と思う情報は極めて少ない。自分の職業やライフスタイルのよっても違うのだろうけど。

バラエティ番組が多い。生活に癒し、あるいは笑いを求めているのなら笑えるバラエティ番組は需要を満たす供給なんだろう。しかし、日本全国にはこんなに笑いたい人たちがいるのだろうか。え?ああ。アメトーーク観ながら書いてますよ。そうですよ。

脱線を元に戻すと、巻末の「ブックモビール」という短編小説がなかなか良かった。

では、また。



仙台ぐらし
伊坂幸太郎
荒蝦夷
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断末魔

2012-03-24 | days





よく見ると、ヤモリ







挟まれて死んだ者の叫びが聞こえてくるような気がしないでもない。


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『永遠の0(ゼロ)』百田尚樹

2012-03-23 | books

「永遠の0(ゼロ)」百田尚樹 講談社 文庫2009年 太田出版 単行本2006年

26歳になったぼく、司法試験になかなか受からない。そんな中、フリーライターをしている姉から仕事の依頼。それは祖父について調べること。司法試験に合格しなくても優しく接してくれるおじいちゃんは、祖母が後に再婚した人。血のつながりのある実の祖父は特攻隊の一員として戦争で亡くなったそうなのだ。祖父に接した人たちに話をきいていくうちに、明らかになっていく祖父の人物像、知らなかった戦争の真実とは…

うーむ。やられた。すっかりやられてしまった。

書店の一角を占める「太平洋戦争コーナー」とか「戦記コーナー」にはまず行かない。レイテとかインパールとか、ガダルカナルという言葉がタイトルに入っているような本は基本的に読まない。戦争を翼賛するような話を読みたくないし、戦争の細かい戦術的なことには昔からあまり興味がないし、戦争のヒーローの物語も特に読みたくはない。電車の中で、おじいちゃんが集中して本を読んでいると、たいてい佐伯泰英か戦記物だ(というのもずいぶん偏見だけれど)

本作もその類だと思っていた。のでずっと触手が伸びなかったのに、読み始めたら、こりゃすごいなとただ思った。

一人の零戦乗りの生涯+日本軍の詳しい戦記+男の生き様+日本軍上層部の体たらく+日本軍下層部の心意気 → 読み始めれば止まらない

食わず嫌いはアカンし、自分の偏見が己の視野を狭くしとるなー、とあらためて思った。説教くさい部分は確かにあるけれど、今まで知らなかったことがあまりにも多く、ちょっと恥ずかしい気もした。

文庫版の解説を亡くなった児玉清氏が書いていて、この文章が熱い。本文を読む前に読んで、ちょっと暑苦しいなと思ったのに、本文を読んだ後に読めば納得するばかり。彼の解説を引用させてもらうと、


心を洗われるような感度的な出来事や素晴らしい人間と出会いたいと、常に心の底から望んでいても、現実の世界、日常生活の中ではめったに出会えるものではない。しかし、確実に出会える場所がこの世にある。その場所とは、本の世界、つまり読書の世界だ。もっと場所を小さく限定すれば、小説(フィクション)の世界と言ってもいい。(文庫版577頁より引用)


さらに引用する。

多々ひたすら、全ての責任を他人に押しつけようとする、そうクレイマー化しつつある昨今の日本、利己主義が堂々と罷り通る現代日本を考えるとき、太平洋戦争中に宮部久蔵のとった行動はどう評価されるのだろうか。男が女を愛する心と責任。男らしさとは何なのか。愛するとは何なのか。宮部久蔵を通して様々な問いかけが聞こえてくる。(588頁より引用)



先日の名古屋の河村たかし市長だけじゃなくて、何人もの政治家が遺族会という大きな票田を意識しているからか繰り返す、「日本は悪くなかった」という意図した「失言」。その反対側にある、日教組的な「日本の戦争責任は重大だ。深く反省すべきだ」「国旗の掲揚と国歌の斉唱は右翼的、国粋主義的なので禁止すべきだ」という主張。

どっちもしつこいし、どっちもどうでもいい。

多分真実、いや我々がどう考えればいいかということのヒントはこの本に書いてあると思う。学校の教科書…は無理だろうから、夏休みの課題図書にすればよいと思う。いや、中身を読まないで勝手に戦争を肯定する物語だと判断して「キーー!なんでこんな本をうちの子に読ませるザマスかー!」というクレイマー母がやって来るんだろう。そう言う私もそう勝手に判断してたしね。

兎角世の中は逝きにくい。あ、いや生きにくいね。

では、また。



永遠の0 (講談社文庫)
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自転車屋

2012-03-21 | days




最近、かえる顔をあちこちで見かけるような気がする。
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『料理人』ハリー・クレッシング

2012-03-20 | books

「料理人」ハリー・クレッシング 早川書房 1972年
The Cook, Harry Kressing 1965

中学生の頃、書店に並んでいるのを見て気になっていたのにずっと忘れていた。ハヤカワ文庫の100冊「強い物語。」に紹介されているのを見て、それから半年経ってから読み始めた。超スローモーな読書。

イングランドのコブという田舎町に、凄腕の料理人コンラッドがやって来る。町を支配するヒル家とヴェイル家があって、ヒル家の方のコックとなるために。素材の吟味から調理法、全てが完璧。それまで不味い料理を食わされていた人たち。痩せていた者は太り、太っていた者は痩せてゆく…

ああ。もうこれ以上言えない。文庫の背表紙の紹介文にも解説にも、何も詳しいことは書いてない。そう。意図して書いてないのだ。とにかく面白い。どんなジャンルの本かすら言いたくない。騙されたと思って読めば、大傑作と思うか、大駄作と思うかそのどちらかしかないと思う。

いや、これがつまらないと思う人とは友達にはなれないと思う…いやそれは言い過ぎか。

最後に、印象的だった箇所を引用して終わり。


「家事というものは、どんな商売よりも興味深いものです。多分、それは他のものよりはるかに個人とつながりがあるからじゃないですか?家族の誰の生活にも関連してますからね。商売は生活とは離れています。商売は生活を維持するためだけあるんです。それ自体が目的じゃないんです。商売は一つの手段です。家庭は究極の目的ですよ。そこに生活があるからです。もっと極端に言えば、それは…生活自体なんです」(183頁より引用)



料理人 (ハヤカワ文庫 NV 11)
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コメントレス

2012-03-18 | digital, blog & twitter

パールさんという方が以下のようにコメントしておられる。

昨年「服とか身に着けるものに興味が薄れてきた」と友達に言ったら、「異性に対する興味が薄れてきたからでしょ」と返事がありました。
ふるさんは違うと思いますが…


それに対するレスポンスと、何となく思いついたことを以下にだらだらと。長文注意、意味なし注意。

「服とか身に着けるものに興味が薄れてきた」ということと、「服とか身に着ける物を買いたい意欲ゼロ」ということは若干違うような気もしますがよく似ていますね。

1.シフト

服は個性の発現する場所でもありますが、同時に「殻」に過ぎないわけです。自分の本質じゃなくて。服に興味がなくなるのは、もしかすると別の何かに興味がシフトしたからではないでしょうか。その別の興味が、服よりももっと自分を楽しくさせているのなら=ベターなんだろうとも言えます。また、服という外殻でなく、中身に自分自身の何かを見出しいているからかも知れません。パールさんがどうなのかは分かりませんが、私は「外っつらを良くしようとなどとしている場合じゃねえよ、そろそろ中味をもうちょっとなんとかしろや!」と自分に言いたい気分でここ3年ほど過ごしています。

外側が、例えば名刺になんと表示されるかということなら、外側を改善するというのは名詞に表示されるテキストを、(出世したり転職したりすることで、)変えてゆくことなのでしょう。そして中身を改善するのは、筋肉の量や、知識の量あるいは質、あるいは物事に対する向かい方を変えることなのではないでしょうか。外側を変えるということと内側を変えることは別のことであり、双方を同時に変えるということはなかなか難しいことなのだろうと思います。

全然違う見方をしてみると、

2.因果関係

異性に興味がなくなったということが、服装に興味がなくなる原因となり得ますが、そう言い切ってしまうと、ちょっと最近よく聞く、占い師の洗脳っぽい感じがします。服装に興味がないということが、異性に興味がないということを原因として引き起こされている可能性はありますが、それが全てではありませんよね。異性に興味がないという状態と、服装に興味がないという双方の状態に自分があったとしても、それは片方が片方の原因になっているとは限りません。単に何かの結果として別々に存在しているだけかも知れません。

「最近やせたねー。恋でもしてるんなじゃいの」なんて言われると、最近体重が減った+最近片思いしてる=あー、恋するとやせるんだーなどと思ってしまいますが、体重が減っているのは、食事に毒を盛られているからかも知れませんし、糖尿病になったからかも知れません。もちろん恋しているからではなく。

因果関係のマジックってところでしょうか。

などというコメントレスから、激しく逸脱したことを思いました。つまらない話にて失礼。

私はただ単に、こういう事を考えたり書いたりするのが好きなだけなんだろと思いますわ。

では、また。
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『本格小説』水村美苗

2012-03-16 | books

「本格小説」水村美苗 新潮社(初出「新潮」2001年1月号~2002年1月号 単行本2002年に加筆修正して文庫2005年)

「日本語が滅びるとき」で爽やかに私の前に現れた著者。「日本語で書くということ」「日本語で読むということ」 以降全く読んでいなかった。本屋で見かけたときになぜか、ぴぴっと来たので読んでみた。

日本語が亡びるとき―英語の世紀の中で日本語で書くということ日本語で読むということ


水村が12歳で渡米して、NY郊外のロングアイランドに家族と暮らしていた。その時に父親の知り合いのアメリカ人が日本人のお抱え運転手(東太郎)を雇ったという。ひたすら真面目な東と水村の関わり。それから長く時間が経過して、彼女がスタンフォード大学で教えていたとき、東太郎のことを知っているという祐介に、東の過去についてきく。

祐介は、軽井沢の別荘にいたときに、偶然知り合った不思議な男女の女の方から不思議な話を聞かされた。それは、金持ちと別荘と、使用人と… 愛憎が大きく絡み合う物語…

おお。これは意外な収穫だった。「嵐が丘」の翻案(西洋の話を、日本語で日本の話として書く)のような作品らしいのだが、そちらを読んでいないので分からない。文庫上下で1000頁もあるのに一気に読ませる。

テーマは「歪んだ愛」「ロングラスティング・ジェラシイ」 なんでカタカナやねん。

金持ちの女たちが甘ったるいことを言う小説ではあるのだが、そしてワタシはそういうのが嫌いなのだが、水村の筆が彼女たちに対して冷たいので、その甘さに常に辛みがあって結局中和されて読みやすい。

序章「本格小説の始まる前の長い長い話」が長い。233頁もある。しかし、これ自体が面白いし、これがなくていきなり物語に入っても分かることは分かるけれど、面白みが半減する。この珍奇な作りは成功していると思う。

東太郎という人物が実在するかについて、嫁が気になる、いや夜目が、いや読めば気になる。

「中卒の組立工、NYの億万長者になる。」の著者が東太郎のモデルになっているようだが、水村は彼からヒントを得て別の人物を作り上げたらしい。

基本的にはたぶん、女性が好んで読む小説なんだろうと思うが、しかしワタシの性別が最近あいまいになっているせいか、思う存分堪能させてもらった。

日本人が、軽薄を通り越して、希薄になっている、という東太郎の言葉が身に染みる。

では、また。



本格小説〈上〉 (新潮文庫)本格小説〈下〉 (新潮文庫)中卒の組立工、NYの億万長者になる。
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『宇宙創成』サイモン・シン

2012-03-14 | books

「宇宙創成」サイモン・シン 新潮社 文庫2009年(単行本「ビックバン宇宙論」2006年から改題)
Big Bang, Simon Singh 2004

「フェルマーの最終定理」「暗号解読」の著者による。

地動説から、コペルニクスによる太陽中心モデル、惑星の楕円軌道、ガリレオ… 宇宙は永遠の過去から存在する…光の速度、相対性理論、ビッグバン、定常宇宙… 滑らかに宇宙論の歴史を振り返る。

ふむ。非常に分かりやすい。高校の物理の授業よりずっと面白い。高校の理科でトラウマのある大人(=ワタシ)が、今読んで面白い本だと思う。

二つの有力な理論の片方はアインシュタインの相対性理論からルメートルとフリードマンに導き出されたビッグバン・モデル。過去に一度だけ宇宙創造の瞬間あり、その後宇宙は急速に膨張したとする。ガモフとアルファーは、ビッグバンによって水素とヘリウムの存在比を説明できることを示す。一方、ホイル、ゴールド、ボンディによって作られた定常宇宙モデルは、宇宙は永遠だとする保守的な宇宙観に立ち返る。物質はたえず生成され、宇宙は膨張しているという要素も含んでいる。

定常宇宙モデルはとても体感的に、納得できる。しかし、過去の一瞬に全てが始まったというビッグバンの方はどうもよく理解できない。ところが、軽い元素の存在比の説明の可否、宇宙マイクロ派背景放出などビッグバン・モデルの方がずっと合理的であることが分かってきた。

ふむ。そうなのか。そういうことを門外漢になるべく数式を使わないで教えてくれるのが本書。こういう本を書ける人はほんとすごいと思う。

では、また。



宇宙創成〈上〉 (新潮文庫)ビッグバン宇宙論 (上)
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乏しい近況 不味しい現況

2012-03-12 | days

・ 周囲で足を骨折する者が多発。膝の皿割ったり、足首はく離骨折だったり

・ 長年の懸案。熱帯魚の水槽に新たに水草を投入した

・ パンにはまっている。ハード系の、特にクリームなどなにも入ってないパンに

・ 左わき腹痛

・ お隣さんが著名なチェリストと判明

・ 服とか身に着ける物を買いたい意欲ゼロ

・ 自転車全く乗ってない

・ ドラム式の洗濯機はやはりいい

・ PC買い換えた

・ どっかいい歯医者を探してる

・ 吉高由里子より福田彩乃

・ ドラマ「最後から二番目の恋」は面白い

・ 「MI-5」の新しいシーズン放送がはじまった。ルーカスがまさかの…

以上。何やらしまりのないツイートのようになってしまった。

では、また。
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『二流小説家』デイヴィッド・ゴードン

2012-03-09 | books

「二流小説家」デイヴィッド・ゴードン 早川書房(ポケットミステリ)2011年
The Serialist, David Gordon 2010

ハリー・ブロックは売れない作家。恋人のジェインには去られ、今は女子高生クレアの家庭教師の方が本業のようになってしまった。ヴァンパイア小説とSF、ミステリをそれぞれ別のペンネームで書いている。そんな彼のもとに、連続殺人犯で死刑囚のダリアン・クレイから、インタビューさせてくれるという申し出が。本になればすごい金が入ってくる。その代り彼がしなくてはいけないことがある…

ふむ。終盤にさしかかり全て解決したと見せかけて、どんでん返し+どんでん返しはなかなか。最近ミステリから遠ざかっているので新鮮な感じがする。

小説の中に、別のB級小説がいくつも並行して書かれ、それが自分では決して読まないような類の小説なので、それがなかなか楽しい。

事件はかなり深刻。女性4人の連続殺人で、殺す前に写真を撮りそれを捜査本部に送り付け、遺体はバラバラにして頭部以外は大型ゴミ容器に捨て、頭部だけはどこかに隠している。

というようなシリアスな時間なのにもかかわらず、語り口の軽さが読みやすさにつながっている。上下二段組みのポケミス450頁大量文字なのにあっという間に読める。長すぎなのが唯一最大の難点であるのと同時に。

ミステリの直球ど真ん中、じゃなくて内角低めに揺れながら落ちる変化球を読みたい方が楽しむ本じゃないかという気がした。

では、また。



二流小説家 (ハヤカワ・ポケット・ミステリ)


なぜか今読みたい本たち。


キャッチ=22 上 (ハヤカワ文庫 NV 133)ターミナル・エクスペリメント (ハヤカワSF)マリー・アントワネット 上 (角川文庫)贖罪〈上〉 (新潮文庫)ピアニストという蛮族がいる (中公文庫)

ドレフュス事件・詩人・地霊 (大佛次郎ノンフィクション文庫 7)

何の脈絡もない。やはり、私の頭の中には魑魅魍魎が住んでいるのだろうか。
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『暗号解読 ロゼッタストーンから量子暗号まで』サイモン・シン

2012-03-08 | books

「暗号解読 ロゼッタストーンから量子暗号まで」サイモン・シン 新潮社 2001年
The Code Book, Simon Singh 1999

「フェルマーの最終定理」の著者が次に選んだのは暗号。前作の中にちらほらと暗号のことが書かれていたので予期していた。

第I章では、1580年。スコットランド女王メアリの裁判で始まる。イングランド女王のエリザベスの暗殺を企図していたからだ。幽閉されていたメアリが外部と連絡をとっていた手段は暗号… そこから紀元前の暗号の歴史(簡単な暗号の作り方)を経てメアリの末期に至る。この第I章の展開が抜群に面白い。そこからは巻措く能わず状態に。

現代の高等数学やらコンピューターを使った複雑な暗号にしか興味がない人には退屈な展開かも知れないが、そうでもない(私のような)読者にはとても読みどころが多い。最初は簡易なところから段々と複雑な暗号へと進んでいくので門外漢でもついていける。量子力学についてはいまだによく分からないけど。

ロゼッタストーンの解読、戦時中のドイツの無敵暗号機械エニグマの暗号製作方法や関わった人たちのエピソードも読ませる。見た目は堅苦しい本に見えるけれど、暗号という一つのキーワードでくくった面白歴史本というのが当たっているように思う。

では、また。



暗号解読―ロゼッタストーンから量子暗号まで暗号解読〈上〉 (新潮文庫)
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