頭の中は魑魅魍魎

いつの間にやらブックレビューばかり

店名にツッコんでください181

2018-01-30 | laugh or let me die
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『貧困旅行記』つげ義春

2018-01-28 | books
漫画家つげ義春の1960年代から80年代にかけての旅行エッセイ。

基本的に宿のことと温泉のことと、日常的な風景が中心で、観光名所のことはほとんど書かれていないのでガイドブック的側面はゼロに近い。読んだからといって、行ってみたいと思う場所もほぼゼロ。

なのに、しょっぱなのエッセイは、自分のファンの女性(一度も会ったことがない)と結婚するために小倉に行くというのである。(なんじゃ、そりゃ)しかし途中で出会った女性が大阪から熊本に帰省すると言うのでそっちに付いていこうかなとも思うのである。(なんじゃ、そりゃアゲイン)

こんな風につかみどころにない著者の、場当たり的のような、ブレないようななんとも言えない姿勢と淡々とした文章を読むという不思議な体験だった。オススメなのかそうでないのかよく分からない。

貧困旅行記 (新潮文庫)

今日の一曲

Albert Cummingsで、"Lonely Bed"



バックの映像がカッコいい。では、また。
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『ウニはすごい バッタもすごい デザインの生物学』本川達雄

2018-01-26 | books
様々な生物の生態を、「なぜそのようになっているのか」詳しく優しく教えてくれる。

例えば、サンゴ礁。サンゴは綺麗な海ででないと暮らせない。しかし、海水が綺麗だということは、プランクトンなどが少なく透明な水だということになる。だとすると栄養分が少な区なるはずなのに、サンゴ礁には沢山の生物がいる。サンゴもどうやって栄養を得ているのだろうか?

その答えは藻。小さな褐藻がサンゴの中にいて共生している。その相互の恩恵関係が素晴らしい。褐藻は栄養を与え、サンゴは住処を与える。その他複雑な恩恵を相互に与えている。理想の夫婦のようだ。

他にも、巻貝は、なぜ螺旋に巻いているのかなど、興味深い話が沢山あった。もしかすると最強の生物はナマコかも知れない。動く生物と動かない生物の中間「ちょっとだけ動く」生物。隙間産業に生きる。シカクナマコは雌雄があって、海中に精子と卵子を放出して有性生殖を行うが、季節によっては無性生殖を行う!(人間で言えば、彼氏とか彼女がいる時期は有性生殖を行い、そうでないときは自家発電を行う人。まさに「おひとり様」時代の先端を行く人ではないか!)それ以外にも、食う心配がなく、食われる心配もない。ある意味、我々人類が目指す形なのかも知れない。脳のような中心になる器官がないから、体の一部がなくなっても再生できる。脳があるからこそ、様々な欲求を産み、そして欲求不満を産み、脳があるからこそ、嫉妬や妄想が生まれる。脳なんてないほうがいいのかも知れない。

面白い。大収穫本だった。

ウニはすごい バッタもすごい - デザインの生物学 (中公新書)

今日の一曲

R.E.M.で、"Everybody Hurts"



では、また。
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『氷の天使』キャロル・オコンネル

2018-01-24 | books
他人のものを盗んで生きていたストリート・チルドレンの一人だったキャシー・マロリー。ジャガーを盗もうとしたところを刑事ルイ・マーコヴィッツに捕まり、家に連れていかれる。刑事の妻ヘレンの愛情を注ぎ込まれ、養子となった。美しき天才ハッカーとなったマロリーは、刑事となった・・・ 老女が連続して殺された。そしてルイも犠牲になった。ニューヨークの高級住宅街のあるグラマシー・パークを巡る事件の捜査は・・・

人様から頂いたので読むことにした。シリーズの第8作や9作の評判がいいので気にはなっていた。

様々な登場人物がいてかなりややこしい。解決もスカッとする感じでもなかったので、やや我慢の読書となってしまった。

だからと言って続きを読むのをやめようと思うほどでもないので、「ウィンター家の少女」や「ルート66」まで我慢して読む予定。

氷の天使 (創元推理文庫)
ウィンター家の少女 (創元推理文庫)ルート66〈上〉 (創元推理文庫)

今日の一曲

Deep Purpleで、"Child In Time"



では、また。
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『藝人春秋2(下)死ぬのは奴らだ』水道橋博士

2018-01-22 | books
上巻から続く。

あまり類を見ない芸能人、武井壮と寺門ジモンの話、石原慎太郎と三浦雄一郎の言い分の食い違いの話(石原が参院選に出るように、三浦に要請した。OKした三浦が、プレッシャーからか頭がおかしくなったので、辞退することになったと言う石原。そんな事はないと言う三浦)

井筒和幸監督を殴りたい三谷幸喜の話、劇団ひとりや猪瀬直樹の話。

そして、一番読ませるのは、やしきたかじんの「たかじんNOマネー」を生放送中に降板した水道橋博士本人による経緯の説明。どんどんと右傾化していく番組(観ていないので知らないのだけれど、ハカセが言うのだから間違いないだろう)から降板したかったハカセ。右傾化の裏には橋下徹応援団のプロデューサーAの姿があった。その人物に対する嫌悪感が露わにされる。温厚なハカセが語るのだから、余程のことなのだろう。やしきたかじんの仕切っていた関西テレビメディアと、関西で局地的に人気のあった橋下徹。その辺の事情がよく分かった。

単純に笑える話と、かなり堅い話が絶妙に配置されている。ストレートと変化球をうまく織り交ぜるベテラン投手のようだった。

藝人春秋2 下 死ぬのは奴らだ

今日の一曲

Santanaで、"While My Guitar Gently Weeps"



では、また。
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『隠れた脳 好み、道徳、市場、集団を操る無意識の科学』シャンカール・ヴェンダム

2018-01-20 | books
脳には様々なバイアスがあって、我々の行動を歪んだものにする、ということを科学的に教えてくれる。

まだ小さな子に、白人と黒人のイラストを見せて、どっちが悪い人かと訊くと、黒人だと答える。黒人の善良な少年の出てくるお話を聞かせたあとも、黒人のほうが悪い人だと答える・・・なぜ?  老人は偏見を平気で口にすることがある・・・なぜ?  男はこう、女はこうだとステレオタイプに考えてしまう・・・なぜ?

すべてが脳のバイアスによるものだと、大いに納得した。(疲れているので、これ以上細かく説明する気力がない。すごく面白かったのだよ。すまぬ)

隠れた脳

今日の一曲

キレイなお姉さん。Kathrine McPheeで、"I've Got You Under My Skin"


抑え目に歌い始めるあたりがたまらない。では、また。
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『藝人春秋2(上)ハカセより愛をこめて』水道橋博士

2018-01-18 | books
水道橋博士が芸能界で見聞きした面白話を、面白文章で描く。

タモリの財布を拾った人から電話がかかってくる件、いいとものテレホンショッキングにラブドールを「彼女」だと言って連れてきたリリー・フランキーの件、才能が渋滞しているマキタスポーツの権力、世界中を旅番組で巡る照英の件など、どれも面白い。

特に、照英が北極で(北緯80度!)で、ホッキョクグマに襲われそうになる話が最も興奮した。

藝人春秋2 上 ハカセより愛をこめて

今日の一曲

Elton Johnのカバー。Diana Krallで、"Sorry Seems to Be the Hardest Word"



本家より、いいかも。彼女はElvis Costelloの奥さんなんだって。知らなかった。では、また。
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店名にツッコんでください180

2018-01-16 | laugh or let me die
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『間違いだらけの子育て』ポー・ブロンソン アシュリー・メリーマン

2018-01-14 | books
興味のある所だけ、ささっと斜め読み(顔を斜め45度に傾けて読んだ) 以前に読んだ、「意志力の科学」の中で引用されてた。

頭を鍛えるよりも、自制心を鍛えることが有用。保育園での実験、「心の道具」が驚くべき成功を収めた。単純な、ごっこ遊びが、関心を持続させ(子供はすぐに飽きる)、抽象的な思考を学べる。

教育番組の方が、暴力満載の番組よりも、子供の攻撃性を助長する。子供は、その番組が意図している、「人には優しくしなくてはいけません」とか「嘘つくと後で困ります」のようなメッセージを受け取らず、ちょっとしたシーンで誰かが言った台詞「ばーか」のようなことに大きく影響を受けている。(小説に対する評価で、読者メーターの他人のレビューを眺めていると、自分と極端に違う評価をしている人がいて、大抵(私からすると、些細な事で)登場人物の○さんが可愛そうすぎる、というようなコメントを目にする事が多い。小説全体とか、プロットの妙技を評価するのではなく、ある登場人物が同感できるかで評価する。私の読み方は大人で、彼らは子供だと言うのは多分正しくないのだと思うけれど、今のところその正しくない考えしか我が脳には浮かばない)

赤ちゃん、DVDをただ見せておくだけで、言語能力が向上すると考えるのは間違い。赤ちゃん用DVDを見せられた子の方がそうでない子より語彙が減る。生身の人間が話すのとDVDでは大きく違うのだそうだ。また、小さい子に何ヶ国語もマスターさせようと、色んな言葉をマスターさせようとするのもどうやら間違いらしい。

小さな子を育てることだけじゃなく、自分を育てることや、大人の他人の能力をの伸ばすことに対するヒントに溢れていた。

間違いだらけの子育て―子育ての常識を変える10の最新ルール

今日の一曲

Stray Catsで、"Rock This Town"


では、また。
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『黙殺 報じられない"無頼系独立候補"たちの戦い』畠山理仁

2018-01-12 | books
都知事選によく出ているマック赤坂など、いわゆる「泡沫候補」に迫るドキュメント。なかなか面白かった。

著者は、例えば先日の都知事選なら、メジャーな候補の小池百合子、増田寛也、鳥越俊太郎だけじゃなく、立候補者たち全員を平等に、メディアは扱うべきだと言う。

確かに、3候補者以外の主張なんて何も聞いたことがなかった。同じ供託費を取られるならば、同じような扱いをすべきだとは正論だ。

しかし、政見放送で、放送禁止用語を連呼しようとしたり、都庁の前で、「レンホー、インポー、チンポー!」と叫ぶ男のような、「ヤバイ」人ばかりが紹介されており、こういう人たちを、ちゃんとメディアが追っかけるべきなのか、ちょっと考えてしまった。

大政党が支援しているからといって、きちんと政策が練られているとも限らないし、少なくとも立候補の段階では等しく候補者を扱うべきだろうと思う。

マック赤坂のような、「キテレツ?」な人をちゃんとメディアが報じるようになると、選挙はどうなるのか?普段選挙に行かない人が、何となく面白いという理由で、いわゆる泡沫候補に票を投じるかも知れ無い。それ自体はいいことでも、悪いことでもないのだろうけれど、ただ、「どうせ○○が勝つんだろう」と考え選挙に「諦めていた」人たちや、「面白いじゃん」と思う人たちが投票するようになり、投票率が飛躍的に増えるかもしれない。それは、たぶんいいことなのだろう。

面白くも何ともない、大政党が公認する候補者や、無所属だけどメジャーな候補者よりも、泡沫候補の言い分の方が聞く価値はあると思った。

黙殺 報じられない“無頼系独立候補

今日の一曲

Charisma.comで、「アラサードリーミン」


では、また。
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『鳥類学者だからといって、鳥が好きだと思うなよ』川上和人

2018-01-10 | books
小笠原諸島を中心に、鳥と島の研究をしている学者が、軽妙な文章で書いたエッセイ。

とにかく文章が面白い。

例えば、調査のために長時間外にいると、腕と顔だけ日焼けしてしまうことについて、

ユニクロやしまむらも庶民の味方ならば、着たままでムラなく日焼けできるUVスルーシャツを作るべきだ。同じ悩みを持つ同士たちに即日完売することを保証しよう。

外来種が複数いる場合は、他方から影響を受けている種を先に駆除するのがセオリーだ。食べる種と食べられる種がいれば、他者を先に駆除する方が効率が良い。料理のレシピでも保全事業でも、順番が大切なのである。角煮にコーラを入れると隠し味になるが、コーラに角煮を入れると嫌がらせにしかならないのと同じだ。いや、微妙に同じじゃないかもしれないが、とにかく順番が大切なのだ。


種の保存の話しや、学会に出席して英語が話せなくて苦労した話しとか、進化の話など。面白いうえに、ためになる。何気なくスゴイ本だった。

鳥類学者だからって、鳥が好きだと思うなよ。

今日の一曲

たまたま見つけて、すごく気に入ってしまった。オランダ出身のジャズ歌手。Caro Emeraldで、"A Night Like This"


では、また。
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『お葬式』遠田潤子

2018-01-08 | books
優しくて、見た目もカッコいい父が事故で死んだ。母も亡くなっているので、ひとりぼっちになってしまった僕は、大学で建築を学んでいる。父の遺言は、一切葬儀はやるな、書斎の書類は見ずに全て廃止しろとのこと。しかし、気になって書類を見てしまった。すると、知らない女性の母子手帳があった。そこには僕の名前があった。父は知らない女性との間に子供を作ったんだ。しかし、流産か何かした。それで、その子の名前が僕に付けられたのか。僕は死んだ子の代用品なのか・・・父が高校の時に付き合っていた女性は事故で死んだそうだ。彼女の家族は父を強く恨んでいるという・・・ファザコンの僕が解いていく、知らない父の過去・・・

悪くない。決して悪くない。ただ、あの遠田潤子の作品と考えてしまうと、灰汁とダシとともにグツグツと煮込んだ感じがやや少なめで物足りない、もっと濃ゆいやつを持って来ておくれよ。

ただ、こういうスッキリしたスプライトを飲みたい場合には、むしろおススメ。BL好きの腐女子には、萌えのポイントがあるかも知れない。

お葬式

今日の一曲

もしあなたがが逝ってしまったら。Dusty Springfieldで、"If You Go Away"


では、また。
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『デッド・オア・アライブ』楡周平

2018-01-06 | books
近未来、というより、ほんの数年後の自動車会社を描いた小説。

(東芝を連想させる)コクデンは、不正会計が明るみに出てから、苦境に立っていた。家電など売れる事業は売ってしまった。残ってる事業で、何とかなるかもしれないのが電池・・・軽自動車の専門メーカーのイナズミも販売不振に陥っている。ある社員が電気自動車(EV)にシフトすべきだと提言するが、相手にされない・・・(トヨタを連想させる)タカバは、水素を燃料にするFCVを次世代の車とすべく開発しているが、高価で、水素ステーションの建設も進んでおらず、売れていない。国に働きかけて補助金も出させているのだから、簡単にやめるわけにはいかない。しかし、EVがこれから世界中で売れて行くことを知った・・・

というより3つの会社を中心にした、自動車業界小説。なかなか面白かった。

何ヶ月か前に、ラジオで、EVがこれから世界を席巻するだろうと評論家が言っているのは聴いたので、話のいくつかは知っていた。それでも知らないことはたくさんあって、「情報小説」として、楽しく読ませてもらった。

ドラマ「陸王」のように、個々の登場人物の背景やキャラについて詳しく描く、というタイプの小説ではないので、そっち方面に期待すると肩透かしをくらう。

カリフォルニアでは、今後EV以外を売るのが難しくなることや、ノルウェーのようなEVを買うことにインセンティブを与える国があったりとか、気づくと日本はEV後進国になっているのだろうか・・・(この本を読むと、EVじゃなきゃダメだと洗脳されるけれども、それが事実かどうかはよく分からない)洗脳されるのも、ある意味、本を読む醍醐味かもしれない。

デッド・オア・アライブ

今日の一曲

軽快なジャズ。bohemianvoodooで、"Adria Blue"



では、また。
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店名にツッコんでください179

2018-01-04 | laugh or let me die
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『火定』澤田瞳子

2018-01-02 | books
奈良時代始め、光明子の兄である藤原四兄弟の武智麻呂、房前、宇合、麻呂は痘瘡(天然痘)で死んだ。長屋王を自害に追い込んだから、その祟りにあったからだと言われた。その天然痘が猛威をふるった時代に、一般人の治療を行う施薬院で仕方なく雑用をする男から見たこの時代はいかなるものだったのか・・・侍医として帝担当の医師で出世街道にいた男が、無実の罪で獄に入れられた。出てきても行くところがない。詐欺師集団の仲間になりながら、昔の復讐に燃える・・・

奈良時代という遠い昔を描写しているのに、ついこの間のように感じる。

てっきり藤原四兄弟のことを描いた小説だと思って読んでいたので、想像とは違うものだったけれど、そんなことどうでもいいと思わせてくれるぐらい、面白かった。

痘瘡の恐ろしさが、嫌になるくらいに迫ってくる。まるで自分が奈良を歩いているような気持ちになる。よく出来たCGよりも、よほどリアルな感じがする。(父島に行って、海のキレイさに感動して帰ってきたら、後でNHK BSかなんかで、父島の映像を観たら、肉眼で見るよりもずっとキレイなことに衝撃を受けたことを思い出した。それ以来、自分の肉眼は信用できんとですよ。)

火定

今日の一曲

フランスの歌手、Alizéeによる、Maddonaのカバー。La Isla Bonita


では、また。
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