頭の中は魑魅魍魎

いつの間にやらブックレビューばかり

『早稲女、女、男』柚木麻子

2020-08-30 | books
早稲田の女子学生=早稲女の早乙女香夏子は、身を飾ることに興味がないけど美人でサッパリした性格。留年を続ける生活力のない彼氏長津田とはうまくいっていない。出版社から内定が出ると先輩から交際を申し込まれた。香夏子の高校からの友達や彼氏を取られた人など彼女を巡る連作短編集。

早稲田の女はこうこうと決めつける事に若干の違和感を覚えなくもないけれと、話はかなり面白かった。ストレートなラブストーリーとして。

裏表がなく本音に生きる香夏子がとても魅力的。彼女に対する女性の嫉妬やコンプレックスが沢山詰め込まれてる。連作としても上手。

 

今日の一曲

早稲田と言えばやはりこの人。広末涼子で、「MajiでKoiする5秒前」



では、また。



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店名にツッコんでください244

2020-08-28 | laugh or let me die

店名にツッコんでください244

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『江戸の長者番付』菅野俊輔

2020-08-26 | books
将軍や町奉行、越後屋、大奥の女中、歌舞伎役者、町人らの収入や暮らしを教えてくれる。

金1両を16万2000円を前提にして、徳川吉宗の年収はなんと1294億円、加賀藩前田家も同じぐらい。大岡越前守が2億などなど。

とっても面白く読んだ。
 

今日の一曲

BOØWYで、"B・BLUE"



では、また。


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『食王』楡周平

2020-08-24 | books
成功した外食チェーンうめもりの社長梅森は、銀行に騙され全てを失った時に築地の仲買人たちに助けられた恩を忘れていなかった。その音頭をとってくれた桶増がビルを買ってくれと言う。テナントが入らない麻布のビルを。金沢の老舗料亭万石の料理人ジュンペイは、店主から娘がイタリアンの店を出したいと言われ困っていると相談される。女子大生由佳は就職で悩む。米系企業から誘いがあったが被災地で頑張っている親を捨てることになってしまう。うめもりでバイトしていると…

いやいやいや。こりゃ面白かった。ベリー面白かった。

外食産業のノウハウや、(私の大好きな)デパートの物産展の裏側、不動産業のインチキ等蘊蓄が面白い。だけでなく、人物描写もストーリー展開もラストもある種の理想の小説の形だった。

 

今日の一曲

昔、なんて美しい声で、恐ろしいことを歌うんだろうと慄いた。竹内まりやで、"September"



では、また。


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『水を縫う』寺地はるな

2020-08-22 | books
高校1年男子松岡清澄、趣味は手芸。友達はいない。父は離婚していない。祖母は男女の区別などしないリベラルな人で、彼女の影響で手芸が好きになった。全てにゆるく感覚のずれた父と離婚した母は何かと言えば「やめとき」と言う。姉は塾で事務をしており、地味に生きていたが、結婚が決まった。派手な結婚はしたくないので、レストランで挙げることにした。清澄はウエディングドレスを作ってあげたいと思うが…

ここ何年か読んだ小説でトップ3には入る、どストライク好みだった。

男の子はこうでないと、女の子はこうでないとというジェンダーの区別についてものすごく考えさせられる。

なぜそうなのか(姉がなぜかわいいのが苦手なのか)後で分かるようなストーリー展開も上手。

もしピアノをやめたいと言った時、母が引きとめてくれていたら、あそこに座っているのは自分だったかもしれない。


「わたしはそれを人生の失敗やとは思わへんけど、それを失敗って言うんなら、あの子には失敗する権利があるんちゃうの?」


自分は料理が好きなほうだ、と結婚する前は思っていた。でも違った。私が好きだったのは「気が向いた時に、本に載っているおしゃれな料理を、そのためだけに材料を買い、時間など気にせずに、じっくり手順通りにつくること」だった。

 

今日の一曲

先日の「関ジャム」で初めて知った。YOASOBIで「夜に駆ける」


では、また。
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『破滅 梅川昭美の三十年』

2020-08-20 | books
1979年、大阪の三菱銀行北畠支店に猟銃を持って強盗に入り、銀行員や駆けつけた警官を射殺し、店内に閉じこもった梅川昭美。日本中を震撼させた大事件の一部始終を描くドキュメント。

誰に薦められたのか忘れてしまったがすごく面白かった。

梅川は15歳の時に、白昼人妻を金のため殺害し、広島家庭裁判所は、「病質的性格は容易に矯正し得ない段階に来ている」と決定し、広島少年鑑別所は「社会に放任することは極めて危険(中略)矯正教育を施すことが必要である、と家裁に通知した。

その決定の是非について正しくなかったと後から言うのは簡単なのだが、事件を起こす以前に、猟銃を所持する免許を取れたというのが不可解である。住吉警察署は厳しいのだそうだ。

未成年の時に犯した犯罪はその後の人生ではチャラになるので真っ当に生きていれば猟銃所持免許は取れるのかも知れない。それは正しいのかも知れないし正しくないのかも知れない。

少年院(もしくは刑務所で)で何が矯正され治療されるのか実体験がないので他人から聞いた事しか分からないが、犯罪を起こす「病気」を治しているのではないらしい。となると刑務所は一体何のために存在してるのかという話になるが、午前2時酔っ払いつつ眠いのでこの辺で失礼。

 

今日の一曲

The Black Eyed Peasで、"Meet Me Halfway"



では、また。


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『見仏記』いとうせいこう、みうらじゅん

2020-08-18 | books
ずっと馬鹿にしながら、しかし何となくリスペクトしていた、仏像を見る二人。単行本が出たのが93年だから、27年前の記述を読む。興福寺、法隆寺、立石寺などなど。

小学生の時に仏像をスクラップブックにしていたみうらじゅんの天才。

「私はみうらさんの正直さに嫉妬していた。彼はいつでも現在に生きていて、瞬間瞬間に集中することが出来る。観念に逃げ込むことなく、事実を感じとることが出来る」

というようないとうせいこうの言葉による描写とみうらじゅんのイラストで二人の仏像を見る旅を知る。面白かった。ただ寺に行って何となく仏像を見たような気になっていたけれど、それだと単に行っただけであって、何も感じた事にはならないんだと分かり、ハッとした。

 
今日の一曲

桑江知子で、「わたしのハートはストップモーション」


では、また。
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『カケラ』湊かなえ

2020-08-16 | books
美容整形外科医が、昔の知り合いたちから聞き込んだ話を順に描く。いじめ、自殺、整形、大量のドーナツ。

湊かなえには、「物凄く面白い」か「一人語りの形式が読みにくい」場合があるが後者だった。何もが言いたいのかよく分からず、またとっても読みにくかった。

ただヒトを考えるヒントはあった、

「久乃ってさ、美人だけど、性格はサバサバしてたじゃん。脳と口が直結してるっていうの?」
「どういうイメージ持ってる?根暗、被害者意識が強い、ひがみっぽい」
「あの時も普通に、いいよ、って答えられたのは、おまえだったからなんだろうな。他の女子なら、俺のこと好きなのかなとか、何か裏があるんじゃないかって勘繰ってしまうところだけど、久乃の場合は、ただ本当にターミネーターが見たいんだろうなって」
あまり深く考えてなかってけれど、サバサバしてて、裏表のないヒトってすごくいいし、被害者意識ばかりあるヒトはやだなって改めて思った。何となく抽象的な感じてることを、言葉で具体化するのにはちょっと意味があるような気がする、猛暑な日の夜、いかがお過ごしでしょうか。

 

今日の一曲

キリンジで「愛のコーダ」



では、また。


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店名にツッコんでください243

2020-08-14 | laugh or let me die

店名にツッコんでください243

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『きたきた捕物帖』宮部みゆき

2020-08-12 | books
北一は3歳のとき母とはぐれ、岡っ引きの千吉親分に拾われ、16になる今は親分の別の業務、文庫はんばいの手伝いをしていた。しかし親分は突然亡くなる。文庫製造販売は第一の子分万吉に与えられるが、万吉の妻は性格が悪く、北一に意地悪ばかりしてくる。岡っ引き業については親方の意向で誰にも引き継がれなかった。北一は、自分の意向とは無関係に様々な事件に巻き込まれ、解決に関わってゆく・・・

うーむ。流石みゆき。めっちゃくちゃに面白く、読みやすく、そしてめっちゃくちゃに心に染みる。人情とか、江戸時代の「多分こうだっただろうの想像」とか絶品である。

今何となく思ったのだけれど、この作品とか宮部みゆきの時代ものが好きだという人って、いわゆる、理想の人の気がする。こういう地に足が着いた人の方が、長く一緒にいるのに適している気がするけどどうだろう?(違ってるかなー)

 

今日の一曲

SEKAI NO OWARIで、"umbrella"



では、また。


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『メーター検針員テゲテゲ日記』川島徹

2020-08-09 | books
鹿児島のQ電力の下請け会社で電気メーターの検針員を10年勤めた人による赤裸々ドキュメント。

検針員の仕事のことなんて考えたことはなかった。家にいる時に検針らしき事が行われると郵便投函口が開けられたバタンという音がして、何か伝票が入ってる。申し訳ないがそれが電気なのかガスなのか水道なのかわからない。いや意識してない。

それが、3メートルの高さにメーターがあったり、マンションならある程度まとめて検針できるので(1件40円!)ある程度稼げるけど、田舎の一軒家だと何十キロもバイクを走らせないといけないとか、上司がめちゃめちゃ理不尽だったり、Q電力(どう考えても九州電力)がかなり頭の悪い仕事をしていたり。

面白かったし、またお仕事について考えるにもいい教科書だった。(こういう言い方は「正しくない」とは思うのだけれど、あまり勉強しなかったり、部活サボってばかりだったり、ゲームばかりやってる子供がいたら、親としてさりげなく、「これ面白かったな」とか言いながらリビングに置き去りにしておくと良いと思う。もし子供がこれを読むと、「稼げない」あるいは「理不尽な事ばかりある仕事」とはどういうものは分かり、もうちょっと勉強しなきゃとか、こんな生活脱却しなきゃと思うきっかけになるかも知れない)

 

今日の一曲

indigo la Endで、「夜漁り」



では、また。


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『もうダメかも 死ぬ確率の統計学』マイケル・ブラストランド

2020-08-04 | books
事故や暴行など外的な原因で、イングランドとウェールズで亡くなるのは百万人に一人。この一日のリスクを1マイクロモートとして、様々なリスクがその何倍あるか考えたり、様々な避妊法による妊娠率の比較、19世紀のウィーンの産科の死亡率、鉄道に乗って死ぬ確率など様々なリスクについて考える。

なかなか面白かった。

毎週エクスタシーを服用すると2マイクロモート、バイクで45キロ走ると4、マラソンが7、全身麻酔とスカイダイビングが10だそうだ。普通に生活している時に発生してるリスクの10倍なら大したことない、と言えなくもない。計算したことのないことを無闇に恐れるのは正しくないかも知れない。

 

今日の一曲

FUKUSHIGE MARIで、「沈丁花、低く」



では、また。


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『哲学と宗教全史』出口治明

2020-08-02 | books
ソクラテス、孔子、ユダヤ教、大乗仏教、ヘーゲル、ソシュール等の世界の哲学と宗教を大まかに捉える本。

ありそうでなかった本。とても読みやすく、流れを掴むのにとてもいい。一冊で深い所までは説明しきれないけれど、各章ごとに参考文献が挙げられていて、興味を持ったらそっちを読めばいいという感じ。

個人的にはエピクロス、老子、荘子、ムハンマドについて詳しい本を読みたいと思った。

後は、知り合いで物凄く狭い視野でしかモノを見られない人がいるので、フランシス・ベーコンの「洞窟のイドラ」と言う言葉があると教えてあげたい。狭い洞窟から外界を覗き見るようにしかし世界を見られないから、モノの見方が歪むこと。記憶が曖昧だけれど、高校の時、バスケ部の厳しい顧問兼保健体育の星先生が授業で紹介していたような気がするけれど違うかも知らない。イドラって、倫理か?保健か?

 

今日の一曲

太陽とシスコムーンで「ガタメキラ」



では、また。


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