頭の中は魑魅魍魎

いつの間にやらブックレビューばかり

あまりいないのよね

2012-04-29 | days

電車で座っていた。

隣におばあさん二人が。

会話が聞こえてきた。

「今日病院行ったんだけどさ、(看護師だか、受付だかちょっとよく分からなかった)あたしが、ばばあだと思ってさ、言葉づかいがひどいのよ」

「うんうん」

「あたしはばばあだけどさ、向こうだってさ、鏡を見たことあるのかしらって感じなのよ」

「うんうん」


ブサイクな男性に対しての批判がしばらく続く…いや、キビシーね。


「しかしさー、ステキなおじさまっていないわよね」

「うんうん」(と強くうなづく)

「ゴムの靴とか履いちゃってさ(たぶんジョギングシューズのことを指しているのでは)似合ってないのよ。あたし、83なんだけど(83歳なのか!)まだそういうこと思うのよね」

以上、車内の会話。



確かにステキなおじさまは絶滅危惧種だと思う。しかし、それを現実におばあさま(上品な雰囲気だった)の口から直接聞くとはね。聞いてて面白かったけど、しかしなかなか毒舌だったな。

では、また。
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『愉楽の園』宮本輝

2012-04-28 | books

「愉楽の園」宮本輝 文藝春秋 1989年(初出文藝春秋1986年5月号~1988年3月号)

バンコク、内務大臣サムスーンの愛人として囲われる女、恵子、会社を辞め世界中を放浪しバンコクにたどりついた男、野口。サムスーンと暮らして三年。なぜ恵子はこのような生活を選ぶことになったのか…

うーむ。宮本輝作品の中で、そのトップクラスの作品である、とは言えない。何がテーマなのかよく分からないのと、登場人物に感情移入しにくいのが難点。

しかし、謎が解かれていく様は悪くないし、バンコクの描き方は秀逸だ。

野口が、バンコクで身も心も溶けてしまうのだが、私自身も同様の経験があって、自分がなぜあんな風になってしまったか考えるヒントを貰った。

東南アジアでどこか永住しなければならない国、もしくはまた行きたいところときかれたら、ベトナムかマレーシアと答える事との関連はよく分からないけれど。

いや、ほんと、分からないことが多すぎる。

では、また。


愉楽の園 (文春文庫)
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『捜査』スタニスワフ・レム

2012-04-27 | books

「捜査」スタニスワフ・レム 早川書房 1978年(原著は1959年に書かれた。ロシア語なの表記不可。訳者深見弾)

英国ロンドン、死体が消えるという事件が続発する。誰が何のために…

おお。なんという小説なんだろうか。「ソラニスの陽のもとに」の作者なんだからSF的かと思えば、SF的じゃないと言えないんだけれど、SF的だとは決して言えない(気になる人は読んでみて)

事件の共通点を探すと、猫が、霧が、など統計学的に…という解決をしようとする。色々と事件を解釈してみて…という話。詳しいことは書けない。

奇妙な味を舐めてみたい、凡百の味にはもう飽きたという人にぜひオススメしたい。

ラストは賛否両論あろうかと思う。私は嫌いじゃない。

では、また。



↓新刊で買うのは困難なようだ。
捜査 (ハヤカワ文庫 SF 306)
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インド料理屋

2012-04-25 | travel




先日たまたま入ったインド料理屋のトイレに前に飾ってあった。

店の雰囲気に全く合わないのと、楳図かずおの絵っぽくてちょっと怖かった。
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『鋼鉄都市』アイザック・アシモフ

2012-04-24 | books

「鋼鉄都市」アイザック・アシモフ 早川書房 1979年 訳者福島正実
The Caves Of Steel, Isaac Asimov 1953

殺人事件を担当することになった。殺されたのは宇宙人、一緒に担当するのはロボット…
という意表をつくような冒頭から始まる。荒唐無稽なアホSFかと言えば決してそんなことはない。

地球人より宇宙人の方が出来が良いとか、宇宙人が地球に宇宙都市を建設しているとか、地球人がシティに暮らしていて、隣接する宇宙都市には簡単に行き来できないとか、様々なSF的な前提はある。そのような前提によって拘束されることによって出来上がったステキな物語がこれ。

SFが土台になっている上質なミステリだ。

1953年に書かれたとは思えない。全く古びていない。訳もいい。あちこちに現代に生きる我々に対する警句がある。

マルサス的なカタストロフィ(19世紀の経済学者マルサスによる、人口の爆発的増加によって食糧不足のが深刻化するといる一種の理論。その後食えなくなるがゆえに、人口はその後減少するとマルサスは書いていたような気がするけど、忘れてしまった)が、本書では現実化したとある。水不足も描写されていて、200年前のマルサス的世界観も、60年前のアシモフ的世界観も、どちらも我々が現在直面している世界と変わりない。

懐古主義とか古典主義がいつもいいものとは思わないけれど、しかししかししかし、昔の人の言ったことが正しいのだなと思う今日この頃。

あそうそう。本書では、ロボットが人間の仕事を奪い、それが人間による反ロボット運動に繋がっている。それもまた昨今の雇用状況を連想する。

アシモフというおじさんがとてつもなく、知的で想像力が豊かで、優しさと厳しさを兼ね備え、そして普遍的な美を追求していて、こんなおじさんになりたいなと、思った。

では、また。


鋼鉄都市 (ハヤカワ文庫 SF 336)
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『飼い喰い』内澤旬子

2012-04-22 | books

「飼い喰い 三匹の豚とわたし」内澤旬子 岩波書店 2012年

「世界屠畜紀行」の著者。食べる前の豚を知るために、飼うための場所を借り、自分で豚を飼育し、屠畜し、そして食べるというちょっと聞いたことのないドキュメント。

うーむ。スゴイ。この本と出会わなければ、豚を飼育することと屠ることをリアルに考えると事は決してなかった。

我々が生きているのは、豚や鳥、牛、魚、野菜などの大量の犠牲に成り立っている。そしてそれを意識しなくてはいけないと人は言う。確かにそう。理屈の上ではそう。しかしいつもそんなことをリアルに感じながら暮らすことは難しい。

それをこの内澤さんが身を以てリアルにレポートしてくれるのだ。

去勢するときに玉を抜くさまを読んでいたら、電車の中で軽い貧血になりそうになってしまうくらいだった。

また、飼っていれば愛情が湧いてしまうわけで、かわいそうだから食べられないという感情についても考えさせられる。

(女性に対して失礼な言い方かもしれないが)女っぽい湿っぽい表現や感情に任せたりするような表現をせずに乾いた文体を使ってくれている。この文体がとてもいい。三浦しをんや水村美苗に共通するような気がする。彼女のような文を書く女性。彼女のように物事にアプローチする生き方をする女性が私はとても好きだ。

私のタイプなどどうでもいいか。イラストにも実に味があって、読んでも決して時間の無駄にならないベリーグッドな本だった。

色んなことを、リアルに感じてしまうこの頃さ♪by佐野元春@サムデイ

では、また。



飼い喰い――三匹の豚とわたし
世界屠畜紀行
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『葡萄と郷愁』宮本輝

2012-04-21 | books

「葡萄と郷愁」宮本輝 光文社 1986年(文春文庫1995年 初出JJ1985年5月号~1986年5月号)

1985年10月17日たった一日。日本では女子大生純子は、英国留学中の村井に手紙で求婚される。ブダペストでは、女子大生アーギがアメリカ人女性に養子にならないかと頼まれる。東京とブダペストを交互に描き、決して交わらない二人の生き方、周囲の人たちを通して、幸せとは何か、決断するとは何かを描く…

いやいやいや。まいった。宮本輝未読山脈にこんなお宝があったとは。

厳格な、けれども家族全員が揃いも揃ってお人よしな家庭に育った悦子は、他人と自分を比較して、喜んだり哀しんだりするという女性特有の性癖を、あまり表に出さなかったからである。(文庫版9頁より引用)


いきなりぶちかましてくれる。自分と他人の比較が幸福の基準になるが女性だとは。なるほど。80パーセントぐらいうなづける。

ストーリーは、それぞれの女性がどんな決断を下すのかなのだが、それに至るプロセスに一見物語と無関係の人物が入れ代わり立ち代わり現れそれが何ともうまいのだ。

純子の大学の二年先輩で、会社を辞め離婚し外国に行っていた岡部とバッタリ会う。その岡部が見せてくれた手紙。それはしばらく一緒にモロッコで暮らしていた女が夫から受け取った手紙。文庫版だと157頁にある。

この手紙を読んだときに、脊髄に細く尖った針を射ち込まれたような気持になった。

たった一冊の薄めの文庫本の中に、実は色んな形の恋愛が詰め込まれている。これから恋愛をはじめようという人、もう恋愛からは引退した人双方にオススメしたい。

では、また。



葡萄と郷愁 (光文社文庫)
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行列

2012-04-19 | travel



鎌倉で、行列している店があったので並んでみた。

たこせんべい。

生のたこをその場でギュッとプレスしてくれる。

あまりしょっぱくなくてなかなか旨かった。
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『PK』伊坂幸太郎

2012-04-18 | books

「PK」伊坂幸太郎 講談社 2012年(初出群像2011年5月号、7月号、書き下ろし)

2002年ワールドカップアジア最終予選、日本のエース小津は調子が悪かった。にもかかわらずPKを決めることができた。それがなぜか謎に思う人たち。大臣は過去に子供を助けた、という話が絡み合う「PK」と「超人」という中篇と、プラス書き下ろしの「密使」

うーむ。泥酔して湯船に浸かりながら読んだのがいけなかったのだろうか。オチや意味はよく分からなかった。それ以外は悪くなかったけれど。

97頁に展開される反機械化論は、経済の発達に伴う機械化は余暇を生み出すが、→それは余計なことを考える時間を生み出すことになる。考えても仕方ないことを考えているうちに、→自らの存在価値なんかを求めてしまう。→虚栄心や自己顕示欲→他人を自分と較べてしまう。→他人に羨まれる仕事をしたい→自分が努力するのはなく、他人の失敗を望む消極的な競い合い社会…というものだった。

強引ではあるけれど、考えさせられる。

では、また。



PK
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『夢見通りの人々』宮本輝

2012-04-17 | books

「夢見通りの人々」宮本輝 新潮社 1986年

昭和の終わり、大阪の片隅、商店街夢見通りで暮らし、営む人たちはなかなか曲者ばかり。詩を趣味としてサラリーマンをする青年、春太。金の亡者の時計屋夫妻、盗癖のある息子。元暴力団員の兄弟の肉屋。競馬に絡む詐欺師、美容師、中華料理屋、煙草屋、スナック…オムニバス長編

おっと。これは意外な収穫。基本的には短編集はあまり読まないのだけれど、これはよかった。

裏があって、悪そうな人のその裏はいい人だったり、善良そうな人がそうでもなかったり、という人物描写もいい。短編がいくつも連なり、前に出てきた人物がまた出てきたりして、物語を作る。その物語そのものがまたいい。

大阪の人のせいなのか、言葉のせいなのか、ストレートな物言いが物語を分かりやすくしてくれると同時に、キツイはずの印象が柔らかくなる。同じ言葉でも、放つ人と方法で随分と変わるものなのね。

顔の痣がコンプレックスになっている女の話と、売春婦を買う肉屋の兄の話が特に印象的だった。

では、また。



夢見通りの人々 (新潮文庫)

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合わないのは俺のせいじゃない

2012-04-16 | days

4/15の朝日新聞の朝日求人に内田樹のコラムが載っていてすごく頷いてしまった。要約すると、


【歯科医によると入れ歯が合う人と合わない人がいて、合う人は一発で合うし、合わない人はいくら直しても合わない。本来の歯があった時の感覚が「自然」でそれ以外は全部「不自然」だから嫌だという人と較べて、歯がなくなったということを涼しく受け入れた人は入れ歯という新しい環境を受け入れられる。

武道も同様に、手持ちの戦力でなんとかやりくりして戦うもの。

結婚や就職も同様で、自分自身は変わらずに、ぴったり合う「理想の配偶者」や「理想の職業」を待っている人は永遠にそれとは出会えない】



確かに。白馬に乗った王子様がいつか自分を迎えに来てくれると思っている人は、黄泉の国からお迎えに来てもらうまで出会えないし、俺はこんなところにいる奴じゃないんだと思う奴はどこに行っても周囲に「お前どっかに行けよ」と思われる。結婚してそこそこに幸せになれる人は誰と結婚しても不幸にはならないし、結婚して不幸になった人はまた同じ誤りをする…可能性は高いのだろう。違うこともあるだろうけど。

まあ、個別のケースそれぞれに当てはまる当てはまらないではなくて、最初からぴったりとはまる何かが事前に決まっているという世界観とは全く逆の世界観がそこにある。宿命とか運命を信じるのもいいのかも知れないけれど、こういう考え方もまた悪くない。

自分としては、モヤモヤとした視界が少し晴れたような気がした。


追記:全文はこちら
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『宮崎哲弥 仏教教理問答 今、語るべき仏教』宮崎哲弥

2012-04-15 | books

「宮崎哲弥 仏教教理問答 連続対論 今語るべき仏教」宮崎哲弥 サンガ 2012年

現役の僧侶、仏教研究者と対論が5つ。

白川密成と『太陽を曳く馬』をめぐって」
釈徹宗と、「浄土真宗は仏教か、超仏教か?」
勝本華蓮と、「問いかけの本源へ」
南直哉と、「不死の門をいかに開くか」
林田康順と、「仏教にとって救済とは何か」

正直に申し上げて、書いてあることの2パーセントほどしか理解できなかった。

自分の知らない用語が多い。仏教を理解するための基礎知識が足りないことがよーく分かった。

勉強してから出直そう。仏教に詳しい人には多分とても刺戟的な本なんだろうと思う。

高村薫の「太陽を曳く馬」の中で仏教問答がかなりあるそうで、そっちの方に興味を持った。「晴子情歌」「新・リア王」以降高村作品とはご無沙汰だった。

では、また。



宮崎哲弥 仏教教理問答晴子情歌 上 新リア王 上太陽を曳く馬〈下〉
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『草原の椅子』宮本輝

2012-04-14 | books

「草原の椅子」宮本輝 毎日新聞社 1999年(幻冬舎文庫 2001年)

カメラメーカーのサラリーマン遠間憲太郎50歳。妻とは離婚、大学生の娘と二人暮らし。仕事を通してカメラの量販店の社長、富樫と知り合い意気投合する。富樫が愛人に灯油を浴びせられ危なく命を失いかけたり、遠間が40歳の女性に一目惚れしたり… あることで知り合うことになった、人に心を開くことがなかなかできない5歳の圭輔。母親にひどい虐待を受けていた。血のつながりのない継父と暮らしている。遠間たちと触れ合うことで変化してゆく。いい仲間に巡り合えると、こんな風に人生は変わってゆく…

うーむ。私が宮本輝作品に求めるものが全て詰まっている。友情、男女の愛、冒険、そしてしつこいぐらいの真面目な教訓。

とてつもなくいい人たち。でもとてつもなくいい人たちにはとてつもなく大きな幸福がやって来る。

ラストでのタクラマカン砂漠とフンザ。何とも言えない美しい景色が目の前に広がる。私の眼は濁っているから、多分実物を見るよりも、作者の文章で読ませてもらう方が美しく見えるのではないだろうか。

ひどく今疲れているので、もっと長く文章を書こうと思っていたのに、この辺りで終わりにさせていただく。すまぬ。すごくいい小説だった。

では、また。


草原の椅子〈上〉 (新潮文庫)草原の椅子〈下〉 (幻冬舎文庫)
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『ドレフュス事件』大佛次郎

2012-04-12 | books

「ドレフュス事件」大佛次郎 朝日新聞社 1983年大佛次郎ノンフィクション文庫7(原作は1930年)

1984年、フランス。普仏戦争が終わった後、ドイツに機密情報を渡していたスパイが軍部にいた。容疑者として挙げられたのは、アルザス生まれのユダヤ系砲兵大尉、アルフレッド・ドレフュス。無実なのに、世論のうねりも加わって有罪となる。無実を信じる軍内部の者、政治家、小説家たち。エミール・ゾラが新聞に「余は弾劾する」を書いた。湧き上がる軍部に対する批判と、ゾラに対する反感。冤罪の行方は…

ドレフュス事件については、Wikipedia ずっと、ドレフィス事件だと思っていた。ドレフュスは口に出して言おうとするととても言いにくい。

大佛次郎の本を初めて読んだ。昭和5年に書かれたとは思えないほど、読みやすく勢いがある。そして熱い。

本当にあったとは思えないようなドラマティックな展開がこれでもかと続いて、文庫本172頁をあっという間に読ませる。

この軍国的な時代では祖国の危機と云う大げさな看板を見せられただけで、国民の大部分が是非の論なく味方になるのだった。新聞も反猶太同盟の機関紙「自由公論」は無論のことだが、その他の国粋主義者の諸新聞や大部数の発行をしている、所謂自由主義の諸新聞もこの輿論に追従して、国旗を振りかざし、猶太禍を唱え、祖国の危機を呼号するのだった。ジャーナリズムがニュウスの発明を初めたのである。この愛国的人心に投じさえすれば、創作された嘘でも歓迎されるし愛国心を刺戟するのだった。(60頁より引用)


ニュウスが発明されるという言葉にドキッとした。

「ごろつき船」も良かったことを思い出した。

では、また。



Amazonでは中古しか扱っていないようだ↓
ドレフュス事件・詩人・地霊 (大佛次郎ノンフィクション文庫 7)
大佛次郎
朝日新聞社出版局
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どこがいいのか

2012-04-11 | music

たまにはThe BanglesのSusanna Hoffsでも観て癒されようと開いたYoutube

観ようとしてた動画のサイドバーに表示されたAtomic Kittenというアイドル・グループ?何となく彼女たちによるカバーを観てみた。






三人組の中で最初に歌うNatasha Hamiltonという人のボーカル、三人のスタイル、ファッション、顔立ち、腰の動き… どういうわけかノックアウトされてしまった。

カワイイとキレイとセクシーが、私の好みにブレンドされていて。

他の動画では、彼女たちが若すぎたり、音楽が好みじゃなかったりするのでこの動画がベストだった。






カバー元はこちら。
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