頭の中は魑魅魍魎

いつの間にやらブックレビューばかり

コージーな謎解き『中野のお父さん』北村薫

2015-11-29 | books
出版社に勤める田川美希。日常で起こる謎。解けないときに行くのは中野。美希の父親は高校で国語の先生をしている。彼に訊けばたいていの謎が解けるのだ。という短編集。

北村薫を読むのがすごく久しぶり。そしてこういうコージーなミステリーを読むのも久しぶり。(いや、コージーミステリーはほとんど読んだことなかった。)すごく良かった。

新人賞に応募したのは一昨年なのになぜか今年二次選考に残った話や、編集長がマラソン大会から抜け出した話、「闇の夜は吉原ばかり月夜かな」という句の解釈(落語「文七元結」や泡坂妻夫、幸田露伴まで出てくる)の話などなど。

特に俳句の解釈の話が面白かった。

読後、自分が何のために本を読んでいるのかとふと思った。ドキドキハラハラを求めて、先が読めないストーリーを堪能することが自分の目的かと思っていたけれど、こういうちょうどいい湯加減(ややぬるめ)につかるのもなかなか良いものなのだなとあらためて思った次第。

中野のお父さん

今日の一曲

主人公は美希。今井美樹じゃなくて、平山みきで「真夏の出来事」



さすがにリアルタイムでは知らないなあ。昔よく聴いていたラジオ番組(谷村新司の番組で、レギュラーゲストがばんばひろふみ(「いちご白書をもう一度」のバンバン)で彼の奥さんが平山みきだとだけ認識してた。では、また。
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『逆説の日本史4 中世鳴動編 ケガレの思想と差別の謎』井沢元彦

2015-11-27 | books
第1巻、第2巻、第3巻につづく。

またまた気になった箇所を箇条書きで。

・六歌仙は、歌の優劣で選ばれたものではなく、天皇になれなかった惟喬親王派だった者たちの怨霊を鎮めるために選んだものだった。

・刀伊の入寇(女真族が九州に侵略、藤原隆家が撃退)の際、隆家に何の褒賞も与えなかった。

・古今和歌集の仮名序で紀貫之は「やまとうたは、力をも入れずして天地を動かし、目に見えぬ鬼神をもあわれと思わせ」と書いている。歌人が神を動かすということになる。これに関して、ドナルド・キーン氏は「欧米では超自然的存在が、その霊感に動かされた詩人を通して語るのだと信じられて来たことの反対である」としている。歌人が神を動かすのか、神が歌人を動かすのか(なるほど)

・源氏物語は藤原道長の娘彰子付きの女官である紫式部が書いた。どうして藤原氏のライバルの源氏が栄えるという話を書いたのだろうか。それは「顕幽分離主義」で説明できる。

・藤原摂関体制を終わらせたのは後三条天皇。しかし息子の白河天皇は後三条の死後院政を始めてしまう。院政は、藤原氏から権力を奪い、それまで浮かび上がる機会のなかった中級貴族で優秀な人物が登用されること(大江匡房など)になった。しかし超ワンマン体制でもあった。

自分の国の歴史を語れないで何が日本人じゃ!と昔言われたときには日本史にはあまり興味が持てなかった。日本がなんぼのもんじゃい!世界を見んでなにを見んのじゃ!と言い返していた頃、私はまだ若かった。青い果実だった。食べたら苦かった。今は熟しきって食べ頃なんだから。早く食べないと… 俺は誰だ。

逆説の日本史〈4〉中世鳴動編―ケガレ思想と差別の謎 (小学館文庫)

今日の一曲

何も思いつかない。困ったときには懐メロ。Shakatakで"Night Birds"



シャカタクが、「社歌宅」か「釈迦宅」だから日本のバンドだと思っていたのは私だけだろうか。では、また。
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いつもの世界『陽気なギャングは三つ数えろ』伊坂幸太郎

2015-11-25 | books
銀行強盗に成功した4人組陽気なギャングたち。たまたまいたホテルで、ジャーナリストが襲われるところを助ける。すると当たり屋に狙われたり、痴漢にさせられそうになる。そして、そのジャーナリストに、自分たちが銀行強盗だということがばれて、脅されることになる。そのホテルには失踪したアイドルが宿泊しており、ジャーナリストはそのアイドルを追いかけていたのだった。ジャーナリスト襲撃事件の謎、彼の脅迫から逃れる術とは…

「世の中にはどっちかに分類できない話が多いんだ。いい話にも悲しい話にも思えるものばかりだ」
成瀬が言う。
「チャップリンの言ったあれか?人生はクローズアップで見ると悲劇だが、ロングショットで見れば喜劇だ、という」
「それとはちょっと違う」

全体に流れる、C調な感じ、唐突なストーリー展開、ストーリーとは無関係な台詞。すべてが完全に伊坂幸太郎ワールド。昔ほど楽しめなくなってきたけれど、それでも読みやすいし、この「後に何も残らない」のがいい。

エンターテイメントとはこうあるべき。なんてな。

陽気なギャングは三つ数えろ (ノン・ノベル)

今日の一曲

ギャング、と言えばBoys Town Gangで、"Can't take my eyes off you"



この曲と言うとなぜか、昔のラジオ番組「ミスDJ」(故川島なお美さんもパーソナリティーをしてた)で千倉真理さんが「つぎの曲は、ボーイズタウンギャングで、きみのひとみに~恋してる~」と紹介していたことを思い出す。では、また。
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『歴史の見方がわかる世界史入門 エピソードゼロ 近現代を礎を築いた古代・中世史』福村国春

2015-11-23 | books
世界史の大きな流れを、年号など些末なことを抜きにして解説してくれる本の古代・中世史編。なかなか良かった。

いつものように、気になった個所を箇条書きで(こんなんじゃレビューとは言えないけれど)

・宗教は「世界を神々(神仏)によって説明する体系

・大林組によると、ピラミッドを現代の技術で作ると総工費1250億円かかる。

・帝国は、異民族、異教徒の扱いが寛容だと長期間持続し、不寛容だと短期間で滅亡する。(確かに!)

・古代オリエントでは広大な土地に文明が築かれ、巨大な国家が誕生し、大河の治水は専制君主を出現させた。しかしギリシアでは狭い土地にポリスが無数に成立した。農耕に基礎を置かず、大河をコントロールする必要がなかったので専制君主は登場しなかった。(なるほど)

・哲学者ヤスパースは世界史の同時期に重要な思想が誕生したことに注目する。紀元前500年ごろ、孔子を中心とした諸子百家が中国に登場し、オリエントでは預言者が出現してユダヤ教が誕生、ギリシアではソクラテス、プラトン、アリストテレスらが活躍し、インドでは梵我一如の思想や仏教が登場した。この時期に人間が生きる車軸となる思想が生まれた。(ふーむ)(偶然じゃなくて、シンクロニシティというやつか)

・パスカルいわく「道理をわきまえたと呼びうるのは、ただ二つの種類の人しかなく、それは、神を知っているために心を尽くして神に仕えている人々と、神を知らないために心を尽くして神を求めている人々とである、ということを認めてもらいたい」(無宗教と言われる日本人も「神を知らないがゆえに、神を求めて」いるのかも知れない。ハロウィンの騒ぎも、SNSにおける同意圧力も、何やら関係あるような気がする)

歴史はいくら読んでもお腹がいっぱいにならない。男子高校生の食欲のようだ。この本が教えてくれることも少なくなかった。古代から中世を概観したい人にオススメ。

歴史の見方がわかる世界史入門 エピソードゼロ: 近現代の礎を築いた古代・中世史

今日の一曲

西半球の歴史を考えるうえで欠かせない人物、ジーザス・クライスト。彼に対して「あんたは誰だ?何を犠牲にしたんだ?あんたはみんなが言うような人物だったのか?」と歌う。Murray Headで "Jesus Christ Superstar"



では、また。
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逆転はあるのか『天国でまた会おう』ピエール・ルメートル

2015-11-21 | books
「その女、アレックス」や「悲しみのイレーヌ」でミステリー好きの後頭部を鈍器で殴打するような衝撃を与えた作者なのだから、あの手の意外過ぎる意外性で翻弄するタイプのミステリーかと思うと、全然違う。

アルベールは第一次大戦に従軍し、ドイツと戦っていた。上官のプラデルは嫌な奴で、自分のことしか頭にない。ただ自分の手柄のためにプラデルがした恐ろしいことにアルベールは気づいた。するとアルベールはプラデルに殺されそうになる。穴に生き埋めにされるのだ。それを助けてくれたのは、ほとんど話もしたことのなかったエドゥアール。不運なことにエドゥアールはアルベールを助けてあげたために、自身が大きな怪我をしてしまう。プラデルには自分たちが死んだと思って欲しいので苦心して、戦地から引き上げることができた。しかしアルベールには金がない。そして命の恩人エドゥアールは実家には戻りたくないと言う。実家は大金持ちなのにも拘わらず… 

物語は、日々の生活に苦労をするアルベール、戦後成功したプラデル、エドゥアールが死んだと思っている彼の父親と姉の視線で描かれる。交錯するアルベールとプラデルの人生。幸福とは何なのか、成功とは何であるのか…

ううむ。大好物を頬張った小3の子のように読んでしまった。嫌な奴の造形、いい奴の造形。ジェフリー・アーチャーの「クリフトン3部作」と同じ系統の作品だと思う。第一次世界大戦という時代背景も少し似ている。二人が悪事に手を染めてしまうことになるというあたりも含めると、提示された謎が解けるカタルシスを味わうミステリーというよりも二人の行動の成否を味わう「冒険小説」と呼べばよいだろうか。(「時のみぞ知る クリフトン年代記第一部」「死もまた我等なり クリフトン年代記第二部」「裁きの鐘は クリフトン年代記第三部」「追風に帆を上げよ クリフトン年代記第四部」) 

エドゥアールのことなんて見捨てて暮らせば楽になれるのにと思わせるアルベール。実家を頼ればいいじゃないかよと思わせるエドゥアール。本当にお前は嫌な奴だなと思わせるプラデル。このもどかしさとか登場人物への感情移入のさせかたが尋常でないほど巧い。

近年もっとも日本で売れている外国人作家がピエール・ルメートルだそう。これだけ面白ければそりゃそうだろう。面白いものが売れるというのはやはりすごくいいことなんだろうと思う。(面白くないものが売れたり、売り方がうまいから売れるという場合と比べるとね。)

天国でまた会おう(上) (ハヤカワ・ミステリ文庫)天国でまた会おう(下) (ハヤカワ・ミステリ文庫)

今日の一曲

タイトルが天国と言えばベタベタにベタだけれど、天国への階段で。Led Zeppelinで"Stairway to Heaven"



20世紀の音楽トップ10に入れたい名曲だ。では、また。
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店名にツッコんでください117

2015-11-19 | laugh or let me die
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超絶体験、映画「エベレスト 3D」

2015-11-17 | film, drama and TV
1996年に発生したエベレストでの大量遭難事件を描く。

ニュージーランドのロブ・ホールがガイドを務めるツアーに参加した9名とガイド3名。七大陸最高峰のうち六大陸を制覇している難波康子もメンバーにいた。途中でスコット・フィッシャー率いる別の隊と一緒なってしまい、断崖絶壁の上にかかった梯子を渡るのに渋滞してしまうことになる。それで共同して行動することにした。ベースキャンプまでは順調にきたがそこからは地獄の登山が待っている。シェルパが体調不良になったり、別の参加者を下に送るためにスコットが無理をして下と往復したりして彼も体調が悪化していった。また頂上近くのヒラリー・ステップ(狭い廊下のようなところ)にあった固定式ロープは傷んで使えなかったので、新たにロープを設定なければならなかった。ここで脱落する者も出て来る。嵐がやんだ後アタックをかけて登頂に成功する者もいた。しかし時間がない。タイムリミットを大きく過ぎてしまったのにどうしても登頂したいと言う参加者と一緒にロブも同行するが、下山に失敗。その参加者は亡くなってしまう… 以降下山の地獄とは…

うううむ。IMAX 3Dで観た。自分がエベレストに登頂したかのような感覚。寒かった。ひたすら寒かった。死ぬかと思った。すげえよこの映画。観客の中になぜかトレッキングの格好をしている人が何人かいたけれど、疑似エベレスト体験ということなのだろう。

ベースキャンプの雰囲気や、そこから頂上までの道のり。ヒラリー・ステップとはこういう難所なのか、頂上はあんな感じなのか。そして凍傷になるとは。よーく分かった。分かりたくないくらいに分かった。

ロブと一緒に登る中にジョン・クラカワーというジャーナリストがいるのだが、映画「イントゥ・ザ・ワイルド」の原作の「荒野へ」を書いた人だった。このエベレスト事件のことも本に書いているそうだ。演じているのは、ドラマ「ハウス・オブ・カード」の主役フランク(ケビン・スペイシー)の秘書役。それとヘリで降りてくる参加者の奥さんは、同じくフランクの奥さん役だった。

ロブの奥さん(キーラ・ナイトレイ)は妊娠していて、電話でロブと話す。そのシーンは何とも胸を打つ。

冒頭にシーンで出てきたカトマンズのエネルギッシュな感じ。エベレストには登らないけれど、あの街には行ってみたいと思った。また長い吊り橋をみんなで渡っているシーンでは、ドローンを使って上から撮影していたようだけれど、そのシーンを見て、人間なんて本当にちっぽけなもんだな、と思った。

2Dで観てもたぶん面白いと思うけれど、疑似エベレスト体験をしたいのなら、そしてそんじょそこらのホラーよりも怖い体験をしたいのなら、IMAX 3Dをオススメしたい。




では、また。
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単なるサイコスリラーでない『スキン・コレクター』ジェフリー・ディーヴァー

2015-11-15 | books
究極の車椅子探偵リンカーン・ライムシリーズ。今回も微細な証拠をもとに犯人を追い詰める。

発見された遺体はタトゥを彫られていた。しかも毒物を使って彫られたのが死因だった。謎の言葉the secondが彫られていた。彫り師は相当の腕前。素早くしかも綺麗に彫れる。そしてまた別の犠牲者が。同じ彫り師によって別の言葉が彫られていた。ほとんど物的証拠を残さないこの容疑者。ある本から切り抜いた言葉を残していた。犯人の目的は、何か。なぜ毒物を肌に刻むという面倒な殺し方をするのだろうか…

いつものリンカーン・ライムシリーズと全く同じレベルで楽しめる。いい意味でも悪い意味でもそこから大きく逸脱することはない。(従来のファンなら読まねばならない作品だ)

タトゥに関するかなり技術的な話が面白かった。そしてネタバレを避けて書けないけれど、わりと深遠な殺人の目的。頭がおかしい者による犯行なのだけれど、その頭のおかしさ具合がとてもリアルで、あってもおかしくないぞこんな話、と思いつつ読んでいた。(特にミステリーでは、そんな動機あるわけないだろうとか、そんな犯人いるわけがないだろうとツッコミを入れたくなることが少なくない。ミステリーは必ずしも現実社会を投影するものではないから、非現実的であってもよいわけだけれど。読ませてくれる作品は、非現実の中に現実があるので、だからこそ読む手が止まらなくなるのだと思う)

犯人が先まで読む力もリンカーン・ライムに劣ってなくて、それもいい。

そして本作の端倪すべからざるところはラスト。ここですべて解決しただろうと思ったら、まだ先がある。まさに底の底に底がある。これが気持ちよかった。

スキン・コレクター

今日の一曲

テーマはタトゥ。とくればやっぱり、t.A.T.u.で"All The Things She Said"



では、また。
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日本を考えるぜ!『寺院消滅 失われる「地方」と「宗教」』鵜飼秀徳

2015-11-13 | books
元総務大臣の増田氏が座長を務める日本創成会議が発表した「消滅可能都市」によると、2040年には全国の自治体のうち、49.8%が消滅する可能性があるという。全国にある7万7千の寺院。(コンビニは5万2千件だからそれより多い。)そのうち住職がいない無住寺院は約2万ある。2040年になる前に既に寺は消滅の危機に瀕している。雑誌の記者をしながら京都の寺の副住職を務める筆者が全国を取材して教えてくれる渾身のドキュメントがこれ。

記憶が若干曖昧なのだけれど、確か著者がラジオにゲストに来てこの本の話をしてくれたのを聴いたので興味を持ったんだと思う。

冒頭は長崎県平戸の宇久島のお寺の話。福岡でカフェをやっていた佐々木さんは常連客の日蓮宗の住職にお坊さんにならないかとスカウトされた。面白そうだと、2011年勉強のため日蓮宗の総本山身延山久遠寺に入山する。そして修行のあと2013年宇久島で住職になる。檀家は島内で80、島外で30軒程度。佐々木さんの給与は額面で月額15万ぐらい。収入を増やすには檀家を増やさないといけないけれど、離島の檀家になろうという人が現れるわけもない…

仏像が盗まれてしまう無住寺院、絶滅寸前の尼僧、葬式仏教という現実など仏教や寺院について痛々しいまでのドキュメントであり取材報告である。

著者いわくは、

本書は次の三つの側面を持っている。地方の困窮寺院の声を拾ったルポルタージュ、伝統仏教の構造をひもといた歴史書、あるいは菩提寺との付き合い方が分かる実用書でもある。

嗚呼。そのように紹介すればよかったのか。本人が一番要約が上手だった。

仏教は不必要なものなのか。対談で玄侑宗久氏は言う。

「意識よりも無意識のほうが本当のことを知っている」と私は思っています。人間が目や耳などの感覚器で把握しているのは、本当に狭い世界です。見えない世界や霊的な世界に想像を巡らせることが、どれほど大事なことか。この無意識の力を引き出すのが僧侶の役割なのです。宗教的な技術をもって、阿頼耶識に入っている、ありとあらゆるもの引き出す技術は、僧侶以外には不可能なことです。こいした宗教的な叡智を僧侶が広く提示できるかどうか。提示できていないから、「葬式仏教」とか言われるんです。

「寺」という言葉の意味をご存知ですか。「同じ状態を保つ」という意味です。「ぎょうにんべん」を付ければ、同じ状態で佇むことを意味する「待つ」。それが主君を守備する「侍」の勤めでもあります。もっと言うと、「やまいだれ」を付ければ、なかなか治らない「痔」ということですよ(笑)

ふーむ。寺院の意義について、京都や鎌倉にある「鑑賞用」のものと「葬式用」ぐらいしか認識してなかった。うーむ。考えを改める時が来たかもしれない。

「廃仏毀釈」をご存じだろうか。受験で日本史を選択した人ならきっとご存じだろう。明治政府は外来の仏教じゃなくて神道こそが、信じるべき宗教だとして、仏教を弾圧した。しかし知らなかったのは、鹿児島ではそれが徹底して行われたということ。1066あった寺、2964いた僧侶。それが1874年にはゼロになったそうだ。(もし京都や鎌倉で徹底した廃仏毀釈が行われたら、桜や紅葉を見に行くことはなかったろうし、JR東海のキャンペーンもなかっただろう。そうでなくても古きよき日本が失われているのにそれに拍車をかけるところだった。ハトヤマさんだとかアベさんだとかが政策を進めたりするけれど、後世の人からすると「お前、何やってんねん!お前の見方は短期的で視野が狭いねん!ぶっ殺すぞこの野郎!」ってことになるのかもも知れない)

また「農地改革]についてはご存知だろうか。戦後GHQの指導によって、地主の土地は小作農に分け与えられて、「自作農」が創り出された。どのくらいの金額で地主の土地が国に買い上げられたかと言うと、田は一段(300坪)で757円、畑は464円。卵7つ分だそうだ。(今で言うと、70円ぐらい?)

寺は地主だったから、農地改革の過程で多くの土地が失われた。そのことが良いことだったのか、悪いことだったのか、ちょっと考えてみてほしい。そしてこの本を読んでその答えのヒントを得て欲しい。色々と考えさせられる。(「かんがえさせれれる」と打ち込んで何度も打ち込み直した。深夜3:37 酒をだいぶ飲みながらだからそういうことにもなるだろう)

嗚呼、酔っ払いに言わせてくれ。この本は「買い」だよ。仏教や寺院、宗教を考えるだけじゃなくて「日本」について考えさせてくれる。(考えない奴は、国外退去ですよ!)

寺院消滅

今日の一曲

本とは無関係。たまたま見つけた曲。リズム感がなんだかすごくいい。ゲスの極み乙女。で「キラーボール」



では、また。
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アクション大魔王『暗殺者グレイマン』マーク・グリーニー

2015-11-11 | books
評判は良いのは知っていたけれど、どうせ一発屋だとスルーしていた。しかし気づけば続編がどばどばと出ているし、しかも非常に評価が高い。じゃ、読んでみるかと読んでみた。

グレイマン=コートランド・ジェントリーは元CIA。マンハントのプロ中のプロ。どんな武器でも使えるし接近戦にも強い。どんな経緯があったのか、CIAから追われる立場になってしまったので、英国の警備会社チェルトナム・セキュリティでまた暗殺仕事を請け負って、大きな仕事をいくつも成功させていた。グレイマンが殺したのはナイジェリアの大統領の弟。大統領はグレイマンを殺してこの首を持って来いと命じる。命じられたのは海運やエネルギーを扱う巨大コングロマリット、ローラン・グループ。ナイジェリアの巨大天然ガスプロジェクトを担当したい。そのためには大統領の言うことをきかないといいけない。それで元CIAでローラン・グループの法務担当者ロイドはチェルトナムのサー・ドナルド・フィッツロイに、グレイマンを殺すように依頼する。断るとドナルドの息子夫婦と孫が拉致された。しかしフィッツロイの部下はグレイマンの殺害に失敗した。そして始まる壮大なマンハント。グレイマンを殺すことができるのか。CIAや世界中の殺し屋たちがやって来て…

おいおいおい。よくこんな作品をスルーしていたな、俺。大馬鹿野郎だ。

登場する様々な種類の武器。グレイマンの使うテクニック。まさに巻置く能わざる冒険小説だった。「鷲は舞い降りた」とか「シャドー81」とか昔冒険小説にずっぽりと頭を突っ込んで息ができなくなっていた時代を思い出した。

グレイマンが必ずしもスーパーマンではないのは、自分が正しいことをするといモラルに縛られていることだ。もちろん敵は殺すのだけれど、誘拐されている人を見殺しにすることはできない。その辺が、浪花節的なのだろうか、読む者の心を打つ。

暗殺者グレイマン (ハヤカワ文庫 NV)

今日の一曲

暗殺者というタイトル。John Mayerで"Assassin"



では、また。
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どんでん返されたいなら『悲しみのイレーヌ』ピエール・ルメートル

2015-11-09 | books
ミステリー好きすべてが腰を抜かしたフレンチ・ミステリー「その女、アレックス」 カミーユ・ヴェルーヴェン警部シリーズのそっちは第4作だった。そしてこっちは第1作。前評判は高いけれど、どうだろう。

女が惨殺された。目は焼かれ、口からは気管がはみ出て、頬には釘が打ち込まれていた。壁には「わたしは戻った」と血で書かれていた。非常に凝った殺人事件。遺体があった部屋を借りた男を探す捜査は困難だった。すると別の殺人事件との関連が見つかった。そっちも凝った殺人事件の現場だったカミーユに執拗に迫るマスメディア…

うううむ。ネタバレを避けて、これ以上は書けない。(一番下にネタを書いておきます。皆さんのために、というより自分の備忘録に)

二部構成になっていて、第2部(全部で460頁のうち、407頁から始まるので短い)になって、それまで読んできたことがずどーんとひっくり返される。まさかこういうネタだったと気付いた人はいないだろう。

作家とは引用文から引用符を取り除き、加工する者のことである。 ロラン・バルト

という言葉が冒頭にある。実はこれが結構重要なヒントになるのだけれど、読んでいるうちに忘れる。

タイトルはあまり良くない。カミーユの奥さんの名前がイレーヌで妊娠中。今にも生まれそう。「悲しみのイレーヌ」というタイトルからああなるのだろうなと予想してしまう。原題はTravail SoigneでTravailはトラヴァーユ(昔そういう転職用の雑誌があったっけ)で仕事という意味だそう。Soigneは巧妙というような意味のようだから(仏和辞典あったはずなのに見つからない。捨ててしまったか?)、「巧妙な仕事」とか「うまい仕事」あるいは「抜け目のない仕事」「巧みなるわざ」というような邦題の方が良かったのではないだろうか。それではつまらないというのなら「凝り過ぎた現場」というタイトルはどうだろう。(そういう何かを示唆してるっぽいタイトルをつけても、オチは全く想像できないはずである)

再度、「その女、アレックス」を読みたくなった。解説の杉江松恋さんが書いている通りだ。

悲しみのイレーヌ (文春文庫 ル 6-3)

今日の一曲

作者はピエール。と言えば、ピエール瀧。と言えば電気グルーヴの"Shangri-La"



では、また。

※ネタバレ

1.殺人犯は、ミステリーの名作と同様の殺人現場を何回も再生していた。
2.カミーユの奥さんイレーヌは殺害される。
3.犯人は自分が書いた、無名のミステリーの殺人現場も再現しようとした(そうすれば、自分の本は売れるだろう)
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『逆説の日本史3 古代言霊編』井沢元彦

2015-11-08 | books
第1巻、第2巻に続く。道鏡と称徳女帝、桓武天皇と平安京、万葉集と言霊がテーマ。

気になった個所を。

・道鏡と称徳を茶化した川柳
 「道鏡は座ると膝が三つ出来」「道鏡に根まで入れろと詔」「道鏡に崩御崩御と称徳言い」
有名な道鏡の巨根伝説とそれにたぶらかされたと言われた称徳(本書ではそうでないという論が展開される) 三つ目の川柳は、崩御=死ぬ つまり死ぬ死ぬと称徳が言ったということ。

・黒澤明の映画「羅生門」に出て来る門は、羅城門といい、平安京の正門のこと。無残にも崩壊寸前で、この時代がいかに危険で国に予算がなかったか分かる(映画観てない。今度観よう)

・日本三大悪人の一人、平将門は藤原家が自分たちの私服ばかり肥やそうとする体制を壊そうとして乱を起こした。

・墾田永年私財法によって公地公民を崩し私有地を増やしていったのは藤原氏。これに歯止めをかけるべく、墾田の開発をストップしようとしたのが称徳と道鏡のコンビ。

・道鏡は仏教の戒律をちゃんと守っていたし60歳ぐらいだったから、称徳と性的な関係はなかった(ほんまかいな?)

・藤原仲麻呂が無謀な新羅侵攻作戦と立てたので阻止したのは称徳

そう言えば昔、美少女の知り合いがしょっちゅう「道鏡って知ってる?巨根だったんだよ」と会うたびに道鏡うんちくを教えてくれたということを思い出した。中学高校と女子高だとああいう方面に敏感になるのだろうか。それともこっちが男性だということを意識していなかったのだろうか。それともこっちも巨…だと知って…

逆説の日本史 (3) (小学館文庫)

今日の一曲

古代、と言えば古代進。と言えば、佐々木功で「宇宙戦艦ヤマト」



では、また。
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『ペルシア王は「天ぷら」がお好き?味と語源でたどる食の人類史』ダン・ジュラフスキー

2015-11-06 | books
スタンフォード大学の言語学の先生と一緒に行く、食に関する言葉の旅。

ケチャップは実は中国語だった。15世紀頃の中国人が魚を発行させて、現在の魚醤(ニョクマム)のようなソースを作った。それがヨーロッパに渡り、砂糖や酢を加えることで保存期間が長くなるようになり、そして魚醤でなくトマトを加えることで、現在のケチャップが出来上がった。(そうなのか!)とか、あるいはコンピューターを使った分析では、産地に言及したメニューが多い店は単価が高いという話。

アントレという言葉は、フランスやイギリスでは前菜になるのに、アメリカでは主菜になるのはアメリカ人は言葉の使い方が誤っていると感じる人もいるけれど、元々は主菜に使われる言葉でもあった。(アントレ=エントリー(入口)という英語になるから前菜に決まってるだろうと思っていたので、意外。そうだったのか)

ササン朝ペルシアの王が愛した肉の煮込みがシクバージ。レシピは地中海を西へと進み、シチリアではスキベッチとなり、スペインではエスカベーチェとなった。その過程で肉ではなく魚を使うようになっていった。それが日本に伝わって天ぷらとなったのだ。(そうなの!?)本書のタイトルはここから来ているわけだ。ポルトガル語のtempro(調味料)とtemperar(調味する)が語源らしい。

というような食の旅に連れて行ってくれる。しかし解説で辺境ライターの高野秀行が書いている。

ただ語源やレシピの歴史をたどるだけなら、それは雑学の域を出ない。でもここまで徹底してやれば別のものが浮かび上がる。それは古代から連綿と続く人と文化の交流史である。

まさにその通り。

今自分が置かれているところだけを見て、視野が狭くなってしまうと、周囲との関係性が見えなくなってくる。自分が一人で生きている、自分だけが自分を生かしていると。しかしそんなわけがない。ということをこういう本を読むことで意識できるようになる。日本が素晴らしいとか外国を排斥するような発言をあちことで目に耳にするけれど、日本「だけ」が素晴らしいわけではなく、その技術や知識はどこか別の国から入ってきたものかも知れず、ってことなわけである。

我々一人ひとりは、長く続く布の中の一本の糸にすぎない。そう思えば、ちょっと失敗したぐらいで深刻に考えなくても済むかも知れないし、また調子に乗って天狗になって嫌われることもないのかも知れない。なんてな。

ペルシア王は「天ぷら」がお好き? 味と語源でたどる食の人類史

今日の一曲

作者の名はダン。Dan Fogelbergで"Longer"



では、また。
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室町時代の具体例『喧嘩両成敗の誕生』清水克行

2015-11-04 | books
「世界の辺境 ハードボイルド室町時代」で辺境作家高野秀行と対談した明治大学の清水教授がまだ講師だった時代に書いたもの。そっちの本で、高野が面白かったと言い、清水先生も相当入れ込んで書いたとも言っていたので読んでみた。

室町時代に発生した「喧嘩両成敗」システム。どんな背景で登場したのか、室町時代に実際に起きた事件をたくさん紹介しながら、室町の社会をとっても分かりやすくかつ具体的に教えてくれる。

一見学術書のようだし、講談社選書メチエっていうのも敷居が高い。しかし読んでみれば、歴史の教科書とは違って、具体例がとても理解を助けてくれる。

・1432年、北野天満宮の社僧7、8人が観光で金閣寺を訪れた。稚児を連れて酔っぱらった彼らが見かけたのは、金閣寺僧が門前で立ち小便をしているところだった。「牛の小便みたいだ」というようなことを言ってからかった。言われた金閣寺僧がよせばいいのに、何か言い返した。それが社僧たちを激怒させ、金閣寺僧は寺に逃げてかんぬきをかけた。そこへ門を破壊しようとする金閣寺僧。老僧がやめるよう説得するが、その老僧に斬りかかった。変事を聞きつけた町人や僧たち。北野社僧は彼らと大立ち回りを演じ、三人が死んだ。怒った金閣寺側は北野天満宮に攻撃しようとし、全面戦争になりかけた。事態を聞きつけた、6代将軍、足利義教が奉公人を送って金閣寺側を慰留し、紛争は沈静化した。(今度、金閣寺に行ったら、門をよく見てみよう)

・親の敵を討つ「親敵」(おやがたき)は良いこととされていたが、本当は「親敵」ではないのに、そうだと偽って罪を逃れる者がいた。(へぇ)

・自分の妻を寝取った間男に復讐して殺害するのを「女敵討」(めがたきうち)と呼ぶ。鎌倉幕府の「御成敗式目」34条では、この女敵討が禁止されている。(社会通念が変化しつつあるのか)

・独眼竜政宗の曽祖父伊達稙宗によって制定された分国法「塵芥集」34条には、自害したものがその理由を書き残したならば、自害した当人に代わって伊達氏が成敗するとある。(死の軽重について考えさせられる)

というような具体例だらけ。じつに面白かった。

喧嘩両成敗の誕生 (講談社選書メチエ)

今日の一曲

喧嘩。と言えば、河合奈保子で「けんかをやめて」



彼女は水着のイメージばかり記憶にあったけれど、歌うまいし、キレイだなー。
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2015-11-02 | laugh or let me die
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