平安夢柔話

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一条天皇と猫の命婦

2013-05-26 19:19:32 | 妄想ショートストーリー
 内裏、几帳の蔭で一条天皇が笛を吹いている。

 突然、笛を吹くのを辞める一条天皇。几帳の中に1匹の猫が入ってくる。猫は嬉しそうに「ニャー」と鳴きながら、一条天皇の膝の上に乗る。
一条:おお、命婦。かわいいなあ。

 猫の命婦、嬉しそうに喉をゴロゴロ鳴らす。

一条:私はそなたに五位の位を与えてやった。位をもらった猫など、古今東西探してもそなただけしかいるまい。

 一条天皇はにこにこしながら命婦の背中を撫でる。

 突然、命婦が膝から降り、周りをきょろきょろ見回す。そして再び膝の上に乗り、顔をこすりつけて一条天皇の手をペロペロなめ、「アー」とかすれた声で鳴く。

一条:おや?そなた、おなかが空いているのではないのか?

 ちょうどその時、藤三位が通りかかる。一条天皇、鈴を鳴らして藤三位を呼ぶ。

藤三位:主上、何でございましょう?
一条:命婦がおなかを空かせているようだ。何か食べる物を持ってきてくれないか。
藤三位:かしこまりました。でも、変ですね。命婦のお食事は橘三位にお願いしてあったはずですのに。

 藤三位、心の中で、「橘三位、本当に気の利かない女」と思いながら局を出て行く。

 やがて命婦のもとに干し魚と水が運ばれてくる。命婦は目を輝かせ、一心不乱で食べている。
 やがて食事を終えた命婦、満足そうに「ギャー」と大きな声で鳴く。そして局の中を走り回る。そのうちぴょんと飛び上がり、几帳の上に乗ってしまう。そして几帳の上を歩いている。

一条:(几帳の上を歩いている命婦を見ながら)ははあ、うまいものだなあ。

 突然、命婦がバランスを崩して足を踏み外し、几帳の上から落ちる。一条天皇、びっくりして息を飲む。一瞬の後、命婦は一条天皇の前に四つ足で立っている。

一条:(命婦を抱きしめ)大丈夫か?怪我はないか?

 命婦はしっぽを振り、再び局の中を走り回る。

一条: ああ、良かった~。

 命婦、三度一条天皇の膝の上に乗り、膝の上でくるっと丸くなる。

一条:(命婦を撫でながら)本当にそなたはかわいい。ずっと元気でいてくれよ。

(登場人物紹介)
一条天皇
 第66代天皇。猫好き。

☆命婦
 一条天皇から五位の位を授かった猫。

☆藤三位
 一条天皇の乳母。平惟仲の妻。周辺人物、橘三位との関係については当ブログ内の「こちらの記事」参照。

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