平安夢柔話

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平安京散策

2009-04-07 10:13:24 | 図書室1
 久しぶりに、角田文衞先生の御著書を紹介します。

☆平安京散策
 著者=角田文衞 発行=京都新聞社 価格=1680円

☆本の内容紹介
 「源氏物語」「平家物語」など、王朝文学を追想しながら往時の遺跡60を訪ね分かりやすく解説した平安京探訪記。

☆目次
平安の都
大内裏
 豊楽院ほか
左京
 枇杷殿 堀川院 三条西殿 源経基の墳墓ほか
右京
 左獄と右獄 学館院ほか
洛東
 東北院 中川のわたりほか
洛北
 紫野の斎院 大雲寺ほか
洛西
 嵯峨院 定家の小倉山荘ほか
洛南
 安楽寿院ほか
 平安京と私 ーあとがきに代えて


 以前から気になっていて、「読んでみたい」と思っていた本でしたが、絶版のため古書店を探してもなかなか見つかりませんでした。
 しかし嬉しいことに今年の1月に復刊されたという情報を知り、こちらからネット購入しました。送料はかかりましたが、それでも買って全然損ではなかったです。

 この本は、内容紹介や目次からもわかりますように、平安京とその周りに点在する古典や平安時代史に登場する史跡を紹介したものです。内容も、貴族の邸宅はもちろん、寺社、墓所、官庁など、とても多彩です。なので、平安京への案内書として最適だと思います。それぞれの史跡が現在の京都市内のどのあたりにあるかも解説されているので、この本を片手に、京都を歩いてみるのも楽しいと思います。

 更に嬉しいことに、単なる史跡案内にとどまらず、その史跡にまつわる歴史や人物についても丁寧にわかりやすく紹介して下さっているのです。これは歴史好きにとってはたまりません。

 ちなみに「左京」の項に収められている竹三条宮の内容を少し紹介してみます。

 冒頭には、「枕草子」第六段のエピソードが紹介されています。この第六段の舞台がまさに竹三条宮なのです。

 そのあと、この邸宅は元々平生昌(桓武平氏高棟流)の邸宅であったこと、長保元年(999)、一条天皇の中宮藤原定子のお産のために邸宅を提供したこと(この時、生昌は定子の中宮大進でした)、中宮はここで敦康親王を生んだこと、翌年、定子は再び懐妊して竹三条宮にて(女美)子内親王を生んだが、翌日、その薄幸の生涯を閉じたことが述べられています。

 …と、ここまではよく知っていたのですが、その後の竹三条宮について、私はあまりよく知りませんでした。でも、この本に詳しく載っていたのです。嬉しかったです。

 すなわち、寛弘五年(1008)、生昌は竹三条宮を定子所生の皇子皇女たちに献上し、その功で播磨守に任じられます。
 一条天皇の崩御後、竹三条宮は脩子内親王(一条天皇第一皇女、母は藤原定子)の御所と定められて修築され、内親王は長和二年(1013)にこちらに移られました。その時、清少納言も脩子内親王のお供をしていたのではないかと書かれていました。

 さらに時が流れ、脩子内親王は永承四年(1049)にこの御所で亡くなり、竹三条宮は、宮の養女、藤原延子(後朱雀天皇女御、実父は藤原頼宗、母は定子の兄藤原伊周の女、そのため、脩子内親王と延子の母はいとこ同士ということになります))に、そして延子が嘉保二年(1095)に亡くなった後には、延子が産んだ正子内親王に伝えられます。

 ところが承徳二年(1098)二月二十二日に起こった大火によって竹三条宮は焼けてしまいます。これに目をつけた関白藤原師通は、代替えの御所を正子内親王に献上し、竹三条宮の故地を摂関家領とし、北に隣接する小二条殿と合併してしまいます。こうして南北二町に及ぶ二条東洞院殿が造成されたのでした。そして、
この大邸宅は、白河法皇以来、院御所ないし里内裏として大きな歴史的役割を演ずるこ
ととなったのだそうです。

 最初は受領階級の平生昌の邸宅だったのが、定子中宮の産所に提供され、やがて脩子内親王の御所となり、内親王の養女とその娘に伝領され、火事で焼けてしまったために摂関家の領地となる、何か波乱に富んだ邸宅ですね。でも、その変遷の面白さにはちょっとわくわくします。

 このように、この本では史跡一つ一つの歴史や、関わった人物について興味深く解説されています。そして、角田先生の平安京や平安時代に対する深い愛情も感じられます。何度も読み返してみたい本だと思いました。お薦めです。

*私は2008年5月、竹三条宮址の向かいにある、在原業平の邸宅址を訪れました。その時のレポートを、新緑の京都で装束体験こちらに載せてあります。竹三条宮についても少し触れてありますし、近隣にある邸宅址についても紹介してありますので、ご興味のある方はご覧になってみて下さい。


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